間違いながらそれでも俺は戦車に乗るのだろう。   作:@ぽちタマ@

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彼に休日はないのかもしれない

『因果応報』、『情けは人の為ならず』。まぁ、両方とも言えることが、自分がやったことは自分に返ってくるってこと。

 情けは人の為ならずの方は勘違いしているやつが多いが、これは別に人に情けをかけるなではなく、因果応報と一緒で自分がやったことは自分に返ってくるという意味である。

 結論。つまり、俺がなにをいいたいのかと言うと……。

 あんな作文書くんじゃなかったと、今更ながら後悔しているわけなのである。

 いや、ね。書いてた時はテンションがおかしかったのだろう。自分でもなかなかに酷いものを書いた自覚はある。あるんだが……。いや、それでもこの結果になることは予想できないだろ。

 なんで戦車道のやつら全員に読まれているのか……。責任者は誰か!?……見せたのは平塚先生で、書いたのは私である。つまるところ俺が悪い。……どうしよもねーな、これ。

 

 ――八幡の黒歴史に、また新たな1ページ。

 

 とごぞのギャラクシー英雄伝説みたいなナレーションで言ってみたけどミジンコもかっこよくない。むしろより一層むなしさが込み上げてきただけだった……。

 あぁ、今日の空は青いなぁ…とか、現実逃避をしていたら、平塚先生がしゃべりだす。

 

「ではまず、君たちの練習を見させてもらおう。それから各々の改善点を私なりに考えてみるとしよう」

 

 まぁ、まともっちゃまともだな。いきなり実践あるのみよ!とか言い出さないあたりましである。今のところはだが。

 

「あの…平塚先生。私たちはどうしたら?」

 

 由比ヶ浜がおずおずと、平塚先生に質問をする。

 

「ん?あぁ、君たちか。君たちはまだ戦車がないからな。比企谷にどうにかしてもらえ。君たちを集めたのは彼だからな、責任をとってもらいたまえ」

 

 こっちにまるごと雪ノ下たちを投げつけてきやがったよ、あの先生。

 というか責任とか言わないでもらえます?そんな言葉聞きたくない。むしろそんな言葉は俺の辞書にはない。よって、俺は責任を果たさなくても―――。

 

「……いいな?比企谷」

 

 ギロリと、そんな言葉が似合いそうな目付きで平塚先生は俺を睨んでくる。

 あれ?なんで俺睨まれたの?もしかして心を読まれたんだろうか?いやしかし、そんな弾圧には俺は屈しない。毅然とした態度で断ってやる!

 

「二度目はないぞ」

 

「……はい」

 

 毅然とした態度ってなんだっけ?そんなの俺は知りませんね。……というか、なんで心が読めるんですか、平塚先生。俺とあなたのシンクロ率200%かなんかなんですか?サードインパクト始まっちゃうの?世界は終焉に向かうんですねわかります。そして気づけばお前が悪いと言われると。……あれはちょっと理不尽すぎると思いましたマル。

 

「じゃあ、西住ちゃん。いつものよろしく~」

 

「では、今から練習を始めます!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 会長に促され、西住の前より板についている号令とともに、他のやつらも動き始める。

 なんか俺がいない間に西住が成長している……。なんだろうか?この気持ちは?……あれか、我が子の成長を喜ぶ親の気持ちなのかもしれん。最初の頃の西住とは雲泥の差である。成長したなぁ、西住。

 

「……ヒッキー。なに変な顔してるの?」

 

「由比ヶ浜さん。それはデフォルトよ」

 

 おいこら、変な顔ってなんだよ!慈愛に満ちた顔をしてただろ!え?目が腐ってるからダメ?そこは勘弁してほしいわ……。あと、雪ノ下。そういうフォローはいらないから、悪意しか感じねーよ。

 

「比企谷くん。僕たちはどうしたらいいのかな?」

 

 そうか、戸塚がいるんだった。ちゃんとやらんと!

 

「とりあえずは――」

 

 戦車がなくて、ここでやることは1つだな。とりあえず、初心者が二人いるし、大雑把な動きを教えるとするか。

 ということで、例のごとく大活躍の戦車シミュレーションボード盤先生を頼るとしよう。こいつまじ便利だな。優秀すぎるわ。むしろ、俺なんかよりも仕事をしている気がしてきた。

 初心者の由比ヶ浜と戸塚をプレイヤーにして、俺はやり方を二人に教える。といっても、最初は流れとルールをさらっと教えただけだが。

 

「流れはわかったか?」

 

「僕はなんとなく理解できたと思うよ」

 

 戸塚は大丈夫そうだな。問題は……。頭にクエスチョンマークが踊りまくっている由比ヶ浜だな。

 

「雪ノ下」

 

「……なにかしら?」

 

「由比ヶ浜にやり方を教えてやってくれ」

 

「え?ヒッキーは?」

 

「俺は一旦、西住たちの練習を見てくるわ。その間に教えといてくれるか?」

 

「なぜ私なのかしら?」

 

「適当に選んだだけだ。気にするな」

 

 雪ノ下の訝しげな視線を他所に、俺は練習を見に行こうとしたら……。

 

「あれ?せんぱい。私はなにをしたらいいんですか?」

 

 そういや、一色がいたんだったな。すっかり忘れてた。……いや、覚えてた覚えてた。うん。忘れてなんていない。

 

「戸塚にアドバイスをしてやってくれ」

 

 ちょっと適当すぎたかしら?……別になんにも思いつかなかったわけじゃないよ?ホントダヨ?ハチマン、ウソツカナイ。

 

 

 ====

 

 

「平塚先生はどうだ?西住」

 

「あ、八幡くん」

 

 例のごとく、Ⅳ号から体を乗り出して練習をしている西住に話しかけ、俺に話しかけられた西住が指示をだしⅣ号が止まる。

 前から思っていたんだが、あれって危なくないか?西住が言うにはあぁやったほうが状況がよくわかるらしい。あと、滅多なことがない限り当たらないとも言っていた。

 

「平塚先生……すごいね」

 

「そんなにか?」

 

「どこの流派にも入ってなかったんだよね?」

 

「たしか、全部独学らしいぞ」

 

 蝶野さんに聞いた話では。

 

「……あれで全部独学、すごいね。……私もああいう風になりたいなぁ」

 

「え?平塚先生みたいにか?」

 

「うん」

 

 それはおすすめしませんよ西住さん、と心のなかで俺は思う。

 平塚先生も、西住同様に戦車から体を乗りだし全体に指示を出している。その姿はとても生き生きしていた。水を得た魚、もしくは白い悪魔にのったニュータイプ。

 いや、たしかに、戦車を動かしている平塚先生はかっこいい。かっこいいけど……。

 

「なんで戦車道やめちゃったんだろ?」

 

 西住、それは知らないほうがいい。あの人が戦車道を始めた目的が武部と一緒で男子にモテるためだから。

 

「……なんでだろうな」

 

 男子にモテなかったから!とか、口が裂けても西住にはいえないわ。

 しかし、あの人まじですごいな。平塚先生が今のっている戦車は会長たちの38(t)。まるでその38(t)は生涯の主でも見つけたと言わんばかりに動きが別格に違う。

 あの人教師にならないほうがよかったんじゃ…と思う反面、そうなっていたら俺は平塚先生に会うこともなかったんだろうなと思うとなんとも言えないな。

 

「そういえば、ハチ。結局、なんでみぽりんの家に呼ばれたの?」

 

「そうですよ、八幡殿」

 

「みほさんに聞いても、教えて貰えないものですから」

 

 西住と話していたら、他のやつらも戦車から顔を出してくる。

 冷泉のやつは顔を出すや否やもう寝てるんだが……。あれ、顔を出す意味あったか?

 いや、それより。

 

「西住、なんで隠してるんだ?」

 

 別に変なことはなにもなかったと思うんだが。あったといえば、イッツミーの着替えを覗いてしまったのと、まほさんを姉さん呼びしたこと。……あれ?よく考えると普通じゃないな、これ。

 

「……八幡くんが言っていいなら大丈夫だと思うよ?」

 

 なるほど。西住は俺が関係していたから言わないでいてくれていたのか。確かに、婿養子云々は俺とまほさんの問題でもあるしな。

 まあ、でも。西住も関係あるっちゃあるんだし、西住が言っても問題ない気もするんだが。

 そして武部たちが早く教えなさいよばりにこちらを見てくる。

 

「俺が呼ばれた理由は――」

 

「婿養子にならないかって言われたんだよね?」

 

 俺が話そうとしたら、突如として横槍が飛んできた。

 

 ………。

 ………。

 待て。今、この人どこから現れたんだ?冗談抜きで気配とかなんにも感じなかったんだが。俺の索敵スキルに反応しないとかこの人まじなにもんだよ……。

 

「で、合ってるよね?比企谷くん?」

 

 振り向くとこれはそこには、雪ノ下 雪乃の姉、雪ノ下 陽乃がそこにはいた。

 

「……なんでいるんですか」

 

「なんでとは酷いご挨拶だね。人がわざわざ家から戦車を持ってきたのにその言いぐさはないんじゃない?お姉さん、悲しいなー。よよよ」

 

 完全に西住たちが面食らっている。今この人に対応できるのが俺だけかよ。勘弁してくれ。

 

「うそ泣きはいいんで。雪ノ下ならここにはいませんよ、雪ノ下さん」

 

 雪ノ下に戦車を届けに来たのならそっちに行ってくれませんかね。正直、あなたとはあまりしゃべりたくない。いや、しゃべりたくないというよりも、しゃべってしまうとどうなるかわからないから怖いと言った方が正しいのかもしれない。

 

「いやー私、比企谷くんに何かしたっけかな?警戒され過ぎな気がするんだけどなー」

 

 あってすぐに人を異常者扱いしといてよく言うよ、この人。別にそのこと自体は間違ってないし、否定もしないが。

 

「妥当だと思いますよ?雪ノ下さんは、なんというか……怖いので」

 

 その強化外骨格並みの笑顔がなかったら、俺もここまで警戒しないんですけどね。

 西住の笑顔が純真無垢とするならば、雪ノ下さんの笑顔はまさしくその逆と言ってもいいだろう。――計算されている。それこそ、一色のあざとさなど軽く一捻りできるぐらいには。

 

「……怖い。へぇー、やっぱり君は面白いね、比企谷くん。ますます気に入っちゃった」

 

 雪ノ下さんは、たぶん普通のやつなら見惚れるであろう素敵な笑顔でそう言ってくる。けど、俺にはただただ恐ろしいだけだった。なんというか、蛇ににらまれた蛙とでも言うべきか。

 え?なんで今ので気に入られるの?おかしくない?俺が今発言したワードで気に入られる要素なんて皆無だっただろ?

 

「というか、婿養子云々をなんであなたが知ってるんですか……」

 

「それはいくら比企谷くんと私の関係でも言えないなー。企業秘密だよ」

 

「俺とあなたの関係なんて知り合い以外の何者でもないと思うんですが?」

 

「つれないこと言うねー。このこの~」

 

 脇腹つんつんするのやめてください。普通に恥ずかしいから。

 

「雪ノ下に用があるんじゃないんですか?」

 

「え?私一言もそんなこと言っていないよ?」

 

「じゃあ、なんで……」

 

「ねえ、知ってる?比企谷くん。雪乃ちゃんが私に頼ってきたの、初めてなんだよ?」

 

 ……いきなりなんの話だ?

 

「それはどういう……」

 

「雪乃ちゃんね。初めて負けたって言ってたな」

 

「はい?」

 

 ちょっと話が変わりすぎてついていけませんよ?雪ノ下さん。

 

「それがきっかけだったんだろうね」

 

「いや…あの…?話が見えないんですが」

 

 俺がそういうと、雪ノ下さんは、わからない?それならしょうがないねー、と言って行ってしまった。たぶん、雪ノ下のところにでも行ったのだろう。

 ……結局、何しに来たんだ?あの人。わからん。

 

「――っは!ハチ、今の人誰!?いやそれより、婿養子ってどういうこと!?」

 

 どうでもいいが、俺は今からこいつらをどうにかしてなだめないといけないのか……。みなさん?ちょっと殺気立ちすぎじゃないですかねぇ。なにがそんなに気に入らないの?

 

「どういうことってそのまんまの意味だよ」

 

「じゃ、じゃあ、八幡殿は西住殿と結婚してしまうんですか?」

 

「ん?ああ、違う違う。西住の方じゃない、まほさんの方な」

 

「……まほさん?」

 

「私のお姉ちゃん」

 

「みほさんの……?」

 

「というかなんで名前呼びしてるのよ!?」

 

 え?ツッコむとこそこ?もっとほかにあるんじゃない?

 

「なんで婿養子じゃなくてそっちをツッコむんだ……」

 

「そ、そっちもだけど!こっちも重要なの!」

 

「別に深い意味はねぇよ」

 

 俺がそういうと、全員ジト目で俺を見てくる。

 え?なに?

 

「へぇー、深い意味はない……ね」

 

 これが武部。

 

「普段名前呼びしない八幡殿がですか……?」

 

 これが秋山。

 

「理由は本当にないんですか?」

 

 そして五十鈴。

 

「強いていうなら呼び分けとしか」

 

「私は名前呼びしてくれないのに……」

 

 最後の西住にいたっては、なぜか不貞腐れている。珍しい、どうしたんだ?

 

「あのぉ……。それで結局、八幡殿は結婚してしまうんですか?」

 

「まだそれは決まってないな」

 

「まだ?それはどういう……」

 

「とりあえず、黒森峰にというか西住流に喧嘩売ってきたからな。もし決勝戦で負けたら婿養子が確定する」

 

「え?喧嘩!?ど、どういうことなの!?」

 

「いやだって、西住を勘当するとか言ってたからついでに?」

 

「なんでそんなコンビニ寄ってこうか?みたいなテンションで喧嘩売ってるのよ!」

 

「どのみち負けられないんだから別に構わんだろ」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

「でも、なんか納得です」

 

「どういうことだ?秋山」

 

「いえ、西住殿の練習の時の力入りようがすごかったので、さっきの話を聞いてなるほどと思いまして」

 

「そんなにか?」

 

「ちょっと、一年生チームの方たちが怯える程度には……」

 

 どんだけ気合入ってるんだ、西住。ほどほどにしとかないと「麻雀って…楽しいよね?」みたいなことを笑顔で言ってくるどこぞの嶺上使いみたいに、魔王とか呼ばれちゃうよ?

 そりゃ、俺なんかにまほさんを渡したくないのもわかるけど。

 

「ほどほどにしとけよ?西住」

 

「うぅ……すみません」

 

「いや、謝らなくていいから。あんま無茶するなよ?」

 

「そういえば、八幡さん」

 

「どうした?五十鈴」

 

「今度の日曜日、空いてますか?」

 

 確か、その日は大会前の最後の休みって言ってたっけか、会長が。

 

「生憎、用事があってな」

 

「……家でゴロゴロするのが用事とか言わないでしょうね?」

 

「………」

 

「………」

 

 やだ、武部さん。なんでそんなにこっちを見てくるのかしら?あと、顔が恐いわ。

 

「生憎、用事が――」

 

「特になし、と。それで、華?」

 

 強行突破しようとしたが、ものの見事に阻止されてしまった。

 

「あ、はい。展示会があるので来てもらえませんか?」

 

 展示会?

 

「それって華道のか?」

 

「はい」

 

「なんで俺を?」

 

「母がその……八幡さんを連れてくるようにと」

 

 まじ?なんで俺を招集してるんだろうか?五十鈴の母ちゃんとはあまり会いたくないんだが。だってほら、あんなことがあったのに会うのとか気まずいじゃん?

 

「ハチは責任とらないと。たぶん今度の展示会で決まるんでしょ?家に戻れるかどうか」

 

 ああ、そういうことか。責任云々はどうでもいいが……。そうか、それだと行かないといかんのかもしれんな。

 

「……わかった。俺が煽った手前もあるしな、行けばいいんだろ?」

 

「ありがとうございます」

 

 ぺこりと、五十鈴は俺に頭を下げてくる。

 

「あの、八幡殿」

 

「……なんだ、秋山?今この流れじゃないといけないのか?」

 

「大変恐縮なのですけど、その日、うちに来てもらえますか?」

 

「……生憎、その日は用事が――」

 

「いやいや、もうそのネタはいいから……」

 

 ネタとか言わないでもらえます?実際に展示会に行くんだし間違ってはいないだろ、間違っては。

 

「それで?なんで俺は秋山ん家に行かないといけないんだ?」

 

 五十鈴と違ってなにも接点がないと思うのだが。

 

「……その、私が八幡殿を名前呼びしているのがバレてしまって……」

 

 ああ、うん。わかったわかった、そういうことね。

 

「秋山」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「すこぶる行きたくないです」

 

「な、なんで敬語なんですか!?そんなに行きたくないんですか!?」

 

 ばっ、お前。だってこれあれでしょ?うちの娘はお前にはやらん!とか言われるそういう流れなんでしょ?俺にはわかる。秋山の親父さん、前に俺が来てた時も勘違いしてたし、そのまんま放置しといたらいいんじゃね?めんどくさいし。

 

「そもそも俺が行ってどうするんだよ。余計に火に油を注ぐだけじゃないのか?」

 

「八幡殿に来てもらえないと私、戦車に乗れなくなってしまうんです」

 

「いや、なんでそうなる」

 

「父に、得体の知れんやつと戦車の中で一緒にいるのは許さん!と言われてしまい……」

 

 えー。

 

「そもそも俺と秋山は同じ戦車に乗ってないだろ……」

 

「うちの父、とても頑固で、それ以上話を聞いてくれないんですよ」

 

 確かに、あの髪型は頑固そうだ。え?関係ない?

 

「だから、誤解を解きにきてほしいと?」

 

「……はい。すいません」

 

 これも放置できない案件だな。秋山が戦車に乗れなくなるのはいかんし。なんか俺の休日が着々となくなっているんだが……。だ、大丈夫、これだけなら家でゴロゴロする時間くらい……。

 

「八幡」

 

 のそりと起きた冷泉が、俺に話しかける。

 

「なんだ?冷泉」

 

「おばぁが会いに来いって……」

 

 おい、これ以上の俺のスケジュールを乱すのは許さんぞ!

 

「一応聞くが、なんでだ?」

 

「前に病院に送ってくれただろ?おばぁがそのお礼を言いたいって……」

 

「ちなみに拒否権は?」

 

「私が放置しすぎて、おばぁがかんかんだから来てもらわないと困る」

 

 理由が酷くない?放置ってことは前から言われてたのかよ。前者の二人にくらべても俺が行く理由が見当たらないんだが。

 

「おばぁが恐いから来てもらわないと困る」

 

 今度は迫真の顔で言われてしまった。いや、怖いんならなんでそうなるまで放置してたし。

 

「ハチ、行ってあげたら?麻子のメンタルが乱れたら試合にも支障が出るかもだし」

 

「いや、こいつそんな繊細な心してないだろ……」

 

 俺から言わせてもらえれば図太さの塊といっても過言ではない。

 

「普段の麻子ならそうなんだけど。おばぁが絡むと、ね」

 

 サンダース戦のあとの冷泉を思い出す。確かに、いつもと違って感情が揺れ動きまくっていたな。

 でもなあ、なんて言ったらいいんだろうか?はっきり言って自業自得だろ、これ。いやまぁ、早めに言われていたからといって俺が行っていたかは定かではないけども。

 しかし、武部の言う通り、試合前の不安要素はできるだけ取り除いておきたいし。……はぁ、めんどくさい。

 

「……わかった」

 

 なんで試合前に保護者あわせた三者面談をしないといけなくなったのか……。ここで武部まで来たら、この前の西住とあわせてあんこうチームはコンプリートするんだが。

 というか冷泉のやつ、俺が答えたらもう寝てやがるし。あんにゃろ……。

 

「とりあえず、話はこれで終わりだな?俺は雪ノ下たちのところに戻るわ」

 







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