星降る空より来たるもの   作:ようぐそうとほうとふ

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星降る空より来たるもの

アローアロー

地球の皆さん、聞こえますか。

私はドルテ。ドルテ・エッフェンブルグ。

UG-1587船団を率いるローランサン号の副艦長です。

此方は宇宙の遥か彼方から、あなたたちの星を目指して進んでいます。

この通信が届く頃には、私たちの船もあと数年で地球にたどり着く頃でしょう。その頃には私はもうとっくに死んでしまっているけれど、この声を聞いたあなたが私たちの子どもたちを優しく迎えてくれることを祈っています。

突然こんな電波を受信して驚いているかもしれません。この電波は地球に向けて、私たちが地球を脱した時に広く普及していた通信機器全てに届くように発信しています。

あれから500年近く経っているので、ひょっとしたらこの電波は誰にも届いていないかもしれないけれど、私たちは定期的にこうしてみなさんへメッセージを発し続けるつもりです。

このメッセージへのお返事は直接会って聞けるんだろうか、と。考えるだけでこの危険な旅程も些か楽しく感じます。

 

私たちの説明もしないといけませんね。

私たちは第4次世界大戦が起きる前に発足された核兵器並びに生物兵器に対抗する新たな防衛策を研究する機関の人間です。

正式な名称はありません。秘密裏に組織された私たちは、第二次世界大戦以後に静かに続いた東西の冷戦時に計画された巨大宇宙ステーション並びに宇宙探索船団プロジェクトへ参加しました。

私たちは西暦2300年に地球を離れ、以後宇宙で研究を続けてきました。

1945年に初めて核が使われて以来、核兵器は飛躍的な進歩を遂げ、地球を何千回も焼き尽くす数の核兵器が製造されてきました。そして第3次世界大戦で使われた生物兵器も、第2次世界大戦よりも凶悪に、より多くの人間を殺すように開発が進んでいました。

私たちの使命はそれら破壊の技術を上回る技術を開発し、既に汚染が手遅れなまでに進んだ地球を再生させることでした。

そして戦争が始まり、地球にはいくつものキノコ雲が上がり、真っ赤に燃える海が船団の強化ガラスを照らしました。私たちはこのままだと撃墜されると判断し、月の軌道を離れて長い宇宙の旅へ出かけました。

そしてついに宇宙へ出て30年で、500年前地球を覆い尽くした放射性物質の厚い雲を除去する技術を開発しました。その装置は完成次第地球に向けて発射され、今頃衛星軌道上で放射性物質を除染しているはずです。あなたたちの頭上で煌く星の一つが、きっとそうでしょう。計算だとちょうど今頃、地球の空を覆う放射性物質は取り除かれているはずです。

早期に開発された放射能の中でも枯れない植物の種も今頃地球で芽吹き、花を咲かせているのではないかと思います。

…ああ、今近くで大きな重力の歪みを観測しました。これ以上の情報はおそらく、その時空の窪みに吸い取られていくでしょう。

話の続きは、無事この星間を抜けてから。それではまた。

 

 

こんにちは。私はドルテ・エッフェンブルグ。

UG-1587船団を率いるローランサン号の副艦長です。この声は、地球のありとあらゆる通信機器へ向けて発信しています。

前回の通信から一週間経ってしまいました。というのも、あの巨大な星の死が今まで見たことのないようなブラックホールを生み出したせいで船団の一部と逸れてしまったからです。

我々は常に、最低限度の人員で動かなければなりません。船一つ一つもそうですが、船団の船の数も本当に必要最小限のものです。宇宙にある限られた資源をいくら技術を用いて増やせたとしてもすぐに限界がくるのです。

宇宙の旅は資源をいかに効率的に使うかという点が一番頭を悩ませる問題です。放射性物質除去装置にしたって、それを作る鉄やレアメタルは非常に限られていました。それに加えて酸素を作り出す機械や海を美しく戻す機械を作ろうとしたら、とても足りません。かといって地球に戻っても待ち受けてるのは過酷な環境です。資源以前の問題です。

それを考えて至った結論は最高の資源は生き物である、というものでした。

つまり生物がそのまま酸素を作り出したり、放射性物質を除去したり、海を綺麗にすればいいというものです。我々の遠い遠い先祖がミトコンドリアと融合し酸素をエネルギーに換えるように、様々な汚染物質を体内で変換するような生き物を作ればいいと考えたのです。

みなさんにはむしろ、旧時代的に感じるかもしれませんね。

ですが私たち残された資源は僅かな鉱物と薬剤、食料。そしてノアの方舟のように種の保存を目的に連れてきた代表的な動物たちだけだったのです。

研究は速やかに始まりました。何故なら資源の問題を解決しない限り、宇宙にポツンと存在する私たちは残り50年ほどで餓死してしまうことがわかっていましたから。

我々はまず、電気と水を必要としました。宇宙へ持ち出した植物は生産プラントで大量に栽培していますが、それを維持する電力と水が足りませんでした。科学により水や電気を作り出すと、如何してもロスが生じます。そのロスが限界を迎えるまえに、それそのものを生み出すものが必要でした。

連れてきた動物たちは動物園のように檻の中に入れていたわけではありません。2300年でもすでに実用段階まで来ていた五次元圧縮装置内にて保存されていました。この装置は簡単に説明すると対象をぎゅっと圧縮し、その状態のまま時間を止めて持ち運ぶものです。パソコンの圧縮ファイルのようなものだと思ってください。

この技術は宇宙渡航においてありとあらゆる場所で役立っています。やはり運ぶものが重ければ重いほど、エネルギーを食うので。

宇宙船団初期は大きな鉄の箱のような形でした。しかしここ500年でそれはかなり小型化し、手のひらに乗るボールのような形に収まりました。

欠点としてあげられるのは、しまえるのがせいぜい生体一つ分の情報量である点でしょうか。ですがそれはボールを複数持ち運べばいいだけの話です。

とにかく我々はその動物たちのうち数種を選び出し、実験を開始しました。

第1回目の実験は繁殖力の高いネズミと偶々産まれて数が増えてしまったカメ。そして数の多かった犬が選ばれました。

元の遺伝子を組み替え、さらにそこにデータとして保管されていた別種の遺伝子を書き込み、新たに発見された未知の分子や放射能を放つ原子などが組み込まれました。

私はもともと実験動物に対して特別な感情を持っていませんが、中には酷い状態で死に至り、宇宙へ捨てられた個体もいるようです。

第1回実験は失敗しました。しかし、その失敗を踏まえて第2回、第3回と実験は繰り返され、ついに電気を発生させるネズミの開発に成功したのです。

体毛はけばけばしい色へ変わり、本来餌を貯めるはずの頬は帯電し、常に赤く染まっていました。成功第一例のネズミは、古い古い映画になぞらえてアルジャーノンと名付けられました。その後アルジャーノンを多くのメスと交配させ、より安定した電気ネズミを作り出すことに成功しました。

アルジャーノンとその子孫は私たちに多くの恩恵を与えました。我々は次に水一滴から大量の水を生み出す水ガメ、植物を組み入れて光合成を行う緑ガメ。そして植物を遺伝子改造した、食べれる厚い花弁を咲かせる肉の花を作りました。

勿論、私たちの船にも彼らの子孫が乗っています。彼らの弱点は寿命がとても短いことですが、幸い先程説明したボール内では時間は完全に止まっているため5〜10年ほどは生きれるようです。体内に組み込まれた化学物質や放射性物質により細胞の劣化が早いために死亡しても体はすぐさま崩壊しチリとなり、欠片も残らないのは私たちにとってはありがたいことでした。

別の船団では食用に毒性のものを一切含まないものも開発されていると聞きますが、私たちの船団には植物プラントがありましたしわざわざ彼らを食べることを考えたりしませんでした。

散り散りになった船団は特殊なネットワークを用い、常に連絡を取り合っています。ああ、言い忘れていましたが他の船団も今地球に向けて飛んでいる最中なんです。着くのは私たちが一番先になりますけど、きっと10年の間に沢山の船団が様々な実験生物を連れて戻ってくるんでしょう。

 

…今日の通信はここまでにします。

また。

 

 

……

 

私はドルテ。ドルテ・エッフェンブルグ。

UG-1587船団を率いるローランサン号の副艦長です。

これがきっと、私たちの送る最後のメッセージになります。

恐れていた事態が起こりました。

実験生物たちが私たちに牙を向けたのです。

開発の段階で我々は彼らの体格を大幅に変更しました。体を巨大にする必要に応じ彼らの頭蓋の容積を結果、彼らは信じられないほど知恵をつけました。

ボールに閉じ込めようにも彼らは不思議な技を使い、ボールをはじき返します。何故彼らが牙を剥いたのか、私にはさっぱりわかりません。野生の本能でしょうか?そんなものがあの実験生物たちに残っているとはとんだミスです。

たかが動物にやられてしまうなんてありえない。屈辱的だ。

しかし生身の牙を持たない人間が一メートル近い凶暴な武器を持つ動物に勝てるはずはなかった。彼らを乗せていたブロックは全滅した。消火ガスを使ったが効果は薄かった。仕方なく、そのブロックは遺棄した。他の船もそのように処置した。

これでこの船団はもう地球にたどり着けないことが確定した。

私たちの生命維持は難しい。もう実験生物無しではたどり着くことは不可能だ。

他の船団でもこのようなことが起きないよう警告を出した。今後は圧縮装置内にプログラムを施し、彼らの脳を弄ることになるだろう。彼らの戦闘本能は抑制され、従順な奴隷へと変換させるほかなくなった。

もし地球に戻って彼ら実験生物達を活用することになっても、決して彼らを野生に返してはいけない。

攻撃抑制を加えられても、野生に帰った彼らが交配を繰り返せばいずれそんな物はなくなるだろう。

人類に対していつまで彼らがおとなしくしているかはわからない。しかし彼らの短い生のサイクルを考えるとそれはそう遠くない未来だ。

恐らく、ボールから逃れて10世代も経れば脳神経に施した魔法は解ける。

我々の船にも30種類ほどの実験生物を圧縮したボールがある。もしこの声を聞いているのなら、ボールに中の生き物を絶対に外へ放してはいけない。これだけは忘れないでくれ。

もし野生の彼らを見つけたら必ずボールで捕まえてくれ。

地球でどの様に彼らが進化し変容していくのかは未知数だ。何か特殊な個体が出たら新種が生まれるかもしれない。

私たちはとんでもない生物を生み出してしまった。これでは旧世代の生物兵器と変わらない。

彼らは良きパートナーだ。しかし遺伝子に刻まれた凶暴性を打ち去ることは困難だ。たとえボール内で常時脳を弄られていたとしてもふとした弾みに野生に戻らないとは限らないのだから。

 

ああ…一度でいいから美しく蘇った地球を、見たかった。

 

 

そこで音声は途絶えた。

その不思議な機械を弄ったことを後悔した。

ここは約200万年前の地層が露呈したアラスカの凍土。

謎の金属反応を捉え派遣された調査団のうち1人がたまたま発見した、飛行機のブラックボックスに似た機械。

200万年前に墜落した宇宙船は恐ろしい破壊兵器から逃げ、我々には理解し得ない科学技術を持ち帰ってきたらしかった。

この地球では過去に人類による致命的な戦争があった。

それだけでも驚くべきことだがなんとも信じがたいことにこの船にはまだ実験生物を入れたボールが存在しているらしい。

電気を作り出すネズミや、水を大量に生み出すカメ。にわかには信じがたい。

周囲を隈なく掘ると、確かに球状の何かが発見された。それは酷く劣化しており今にも崩れ落ちそうだった。

私はそのボールのスイッチのような突起を恐る恐る押した。

 

 

18世紀後半、アラスカへの調査に参加したフランスのダジリン伯爵によりポケモン30種類が発見された。

以後ヨーロッパを中心に研究が進み、19世紀に入ると次々に新種のポケモンが隕石墜落現場や太古の遺跡付近から発見された。




文系につきガバガバ理論。きになる方がいたら申し訳ありません。




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