やはり好きな音楽やクラシックは効果があるようだが無音は良くないらしい。
理由は音がしないと孤独感で溢れるらしい。
…分からなくないが、無音も楽しいと思うんだけどな。
それと注意です!!
8月11日にアンケート募集終了いたします。
アンケートの回答は活動報告かメッセージにください。
感想欄に書くのはNGらしいので。
それではお楽しみください。
●2014年10月29日 文字数が少なかったので34、35、36話の3話分を合わせて修正投稿致しました。第3章までで本文の文字数が少ない話は引き続き修正していきます。
第11話 「……あなたのいるところに、わたしは……いる。」
混ざり合うには時間を要する。水に塩を混ぜるにも棒でかき混ぜ、馴染ませる。それは二つの物語が交わるときでも変わらない。交わりあい、馴染んでから、変化が生じてくる。二つの物語が交わった瞬間では大きな変化は生まれない。大きな変化が起こるには多少、馴染んでいなければならない。その変化は結果を変えるのか、過程だけを変えるのか。
………。
……。
7月20日
「数週間ぶりの暁東市はどうだ?」
一日かけて南条邸のある山奥から都会の暁東市へ到着した。新幹線を降りてすぐオレは薫に尋ねる。
「実家も良いがやっぱり皆が住んでいるここも素敵だよ。」
「空気とか汚いけどな。」
二人並びながら駅から歩く。
「海斗はこの後どうするんだ?」
「本来なら手を貸してくれた爺さんに一言言ってやりたいが……。」
さすがに今回は爺さんの手助けがなければこんなにもスムーズに物事が進まなかっただろう。いや、まてよ。数週間経ってるし別にスムーズでもなかったな。幻想郷なんて変なとこ行くし滝から落ちるしで。こりゃ逆に礼を貰いに行くほうがいいな。
「ま、気が向いたら行くさ。いつでも会いに行けるからな。それに二階堂を空けてたから気になる事もある。」
「わかった、そう伝えておく。」
神崎の屋敷近くでお互い立ち止まり、向かい合う。
「それじゃあ、またな。」
オレは軽く右手を上げて二階堂の屋敷へ向かう。
「なぜだか知らんがオレの勘が二階堂に戻れと言っている。」
まさかオレの帰りを皆で祝う準備でもしているのかもしれない。そしてドッキリで祝う屋敷の奴等を準備中に帰って逆に驚かせと。
「泣くまでおどろかしてやるぜ。」
………。
……。
屋敷に着いたのは良いが門に人の気配は感じられない。
「オレが居ない間に気配遮断スキルを習得でもしたのか?」
辺りを見ても、祝い事の準備をしている様子は見られない。
「……きっと中に入れば物凄い装飾をしているのだろう。」
そう願いながら扉を開け、中に入る。
「なんも変わってないな。あれ? なんだか目頭が熱くなってきやがった。」
帰る連絡をしたにも関わらず、誰一人待っていないなんてさすがのオレもいじけちゃうぞ。
「とりあえず麗華の部屋にでも行くか。」
特にやることも無いのですぐさま目的の場所へ。
「それにしてもツキの奴もいないのか?」
常に屋敷を掃除しているメイド長のツキなら出迎えていなくても掃除をしていそうだが。その姿も見当たらない。
「……見慣れない金髪だな。」
麗華の部屋まで来るとなにやら麗華と男が言い争っている。
「中々に、熱い展開じゃねぇか。」
オレが黙って見物しているとなにを思ったのか男は麗華を壁に押さえつける。無論、麗華も抵抗しようと手を振りかざすが受け止められ、足を蹴り上げるがそれも受け止められる。
「鍛えてない女ならこうなっても仕方ないな。」
体の構造は男と女では差がある。鍛えたりすれば多少の差を埋める事は可能だが、麗華は鍛えていない。それなら抵抗できなくて当たり前だ。オレは気配を消し、その男の後ろへ近付く。
「流石にこの状況を黙って見てるほどの落ちこぼれじゃないんでな。」
男の頭を右手で掴む。
「……っ!!」
男はオレの手から逃れようと試みるが麗華を抑えていては逃れる事は容易には行かない。
「っ!」
掴まれていた男の腕から力が抜け、麗華はオレの背後へと移動する。
「アンタにしては良いタイミングね。」
言われると同時に空いた壁に男の額を壁に押し込む。
「僕が、背後を取られるなんて……。」
「よっ。まさかこんな変体がオレの代わりなのか?」
男はなにやら呟いているが気にせず、麗華に訪ねる。
「ええ、そのまさかよ。」
「で、どうするよ?」
「……離していいわ。」
そう言われ、男の頭から手を離す。男は金髪で耳が隠れるほどの長さ、それに白いスーツを着ている。顔はどちらかと言うとさわやかタイプって言われそうな顔立ちだ。
「お前が代わりのボディーガードか。」
その男からはどことなく懐かしい感じがする。男も何かを感じているのかオレを見続ける。
「アンタら知り合いなの?」
「そんな訳ないだろ、名前すら知らん。」
「じゃあ一応紹介してあげる、中里亮。元ボディーガードよ。」
男から視線を逸らさず、聞く。
「なんで元なんだ?」
「無理矢理キスしようとしたからにはそれ相応の罰を与えるのよ。」
なるほど、麗華はこのボディーガードをクビにしたいようだ。ま、当然だよな。
「すみません、僕自身この胸の高鳴りが抑えられず……。」
「許せそうに無いから、却下ね。」
「じゃあオレは部屋に戻る。麗華もおっさんに言うならすぐ言って来い。」
さすがにこの場で麗華と金髪をまた二人きりにしたら何が起こるかわからない。
「そうするわ、じゃあまた後で。」
麗華はおっさんのいる書斎に向かう。
「ま、プリンシパルに手を出すのも仕方ないよな。ただ惚れた相手が悪かったな。」
中里の肩に手を置く。
「……キミの名前を聞いてもいいかな?」
「朝霧海斗だ。」
オレの名前を聞いた途端、中里は何かを思い出したかのような表情に変わる。
「海斗か……なるほど、これで繋がった。」
「何がどう繋がったんだ?」
「僕を覚えていないかい?」
オレの中で中里亮と言う人物には会ったことがない。もちろん禁止区域でもだ。
「ああ、覚えてねぇな。」
「そうか。杏子ちゃんは良い女になってるかい?」
「てめぇ……アキラか。なんで亮って名乗ってんだ。」
アキラ。幼い頃オレが禁止区域で初めて友達になった男の名だ。そして、初めて失った友達。
「キミは昔から杏子ちゃんが絡むと雰囲気がトゲトゲしくなるね。」
先ほどとは違い、上機嫌に会話するアキラを睨み付ける。
「ごめん、ごめん。亮が本名なんだよ。」
「友達とか言っておきながら偽名を使うとはな。」
「友達じゃないよ、元友達だ。」
アキラは笑いながら訂正する。
「懐かしい再会だったが、どうやらお前はクビだ。それじゃあな。」
会話を終わらせ、自室に戻ろうとする。
「まってくれ海斗。このままクビにされたら麗華お嬢様が恋しくて、頭が変になってしまうかもしれない。元友達なら僕を救ってくれないか?」
とぼけた顔と演技口調で言ってくる。
「残念だが、お前の頭は既に変だから救いようが無い。」
アキラの戯言に付き合う必要は無い。
「そうか、そんな頭なら昔の話をしても可笑しくないよね。」
「……。」
「もちろん、クビにならなければそんな事にならないかもしれない。どうせ麗華お嬢様には話していないんだろう? それに麗華お嬢様との関係が修復できたのなら、お互い過去の事は忘れようじゃないか。」
さすがにオレの過去を話せばそれなりの事が起きる。出来れば、そんな面倒ごとは避けたい。
「ま、やってみるだけやってみるさ。」
「さすが、僕の元友達だね。」
「お前もさっきみたいに無茶すんなよ? あんなの続けてやったらアウトだ。」
本来であればプリンシパルに手を出すなど一回でもボディーガード追放ものだ。
「わかってるよ。それじゃあ僕は部屋で待ってる。」
アキラはそう言い残し部屋に戻る。
「ったく、まさか数年経って今度は表の世界で出会うなんてな。」
退屈を通り越して、警戒しないといけないかもしれない。アイツも禁止区域で生きていられた存在だ。表の人間と違い何を考えてるかも分からないし、脅威の対象にもなる。
………。
……。
「まさか、彼と再会するなんて夢にも思わなかったな。」
海斗と分かれてすぐに僕は自分の部屋へ向かう。
「よりにもよって表の世界で、しかもお互いボディーガードに関係してるとはね。」
上機嫌だった表情がだんだん強張ってくる。相手が僕に心を開いたかは態度でも分かるが、眼を見ても分かる。この屋敷に来て、数週間。殆どの人間と良好な交友関係を持てたと言っても過言ではない。ただ、先ほどの麗華お嬢様やメイド長のように心を一向に開かない人間もいる。
「あの時も初めて僕の邪魔をしたのは彼だったっけ。」
今まで欲しいものは全て手に入れてきた。力、戸籍、金、女。数えればキリがないほど。だけど彼の大事な女性だけは面倒だった。
「ただの興味本位だったからどうでもいいけど。少し気分が悪くなったのは覚えてる。」
僕が求めているのは清らかで凛々しい女性。まさに麗華お嬢様は今一番、僕の理想に近い女性だろう。
「彼に頼みごとをするのはあまり良い気分ではないけど、目的のためなら手段は選ばないよ。」
僕の魅力に気付いていない今では彼の方が関係を改善するのに適している。
「もし、改善されないようなら……強行策も考えておかないとね。」
………。
……。
「さて、ここに居ても仕方ない。」
色々面倒をかけたからな、少し様子を見るついでにアキラのことも言っておくとしよう。
「とりあえず、麗華のとこにでも行くか。」
書斎に向かった麗華を追いかけるためにオレも書斎に向かおうとする。
「ずっとそこに居たの?」
どうやら書斎から帰ってきたようだ。
「ま、ちょっとな。それより部屋で話さないか?」
「そうね。」
麗華が部屋の扉を開き、続いてオレも入る。コイツがオレのプリンシパル。背は低く、髪はピンクのツインテールで黒いリボンがついている。口当たりも強く、他人を極端に嫌う傾向がある。さすがに資産家の娘だけあって態度はでかい。が、胸は小さい。俗に言う虚乳だな。
「アンタ今、失礼な事考えたでしょ。」
「はっ。なに言ってんだか? 虚乳のどこがしつれ――」
ガブッと両足に何かが噛み付いたような痛みが走る。
「字が違うっ!!」
と同時に頭を思いっきりぶたれる。
「日本語ってのは複雑なんだ、勝手に文字を決め付けるのはどうかと思うぞ。」
「どんな意味でも私を馬鹿にしてる事は変わらないわよね?」
「それはお前の受け取り方次第だな。」
足元に居るのはチーター、しかも二匹。名前はソナタとカナタ。もちろん子供だ。
「はぁ、数週間空けて戻ってきたけど全然変わらないわね。」
麗華がベッドに座ると足を噛んでいたチーターは麗華のそばへ。
「数週間で変われたら人間はあまり苦労しないだろうな。それよりもおっさんにさっきの事伝えたのか?」
「残念ながら、居なかったわ。」
「そうか、なら丁度いい。亮の事なんだが考え直さないか?」
麗華の表情が少し、曇る。
「……アンタ、頭でも打ったの?」
頭だけじゃなく、滝に色々打ち付けられたけどな。
「亮がここに来たのはオレの責任だろ、それをオレが戻ってすぐクビにしたらおっさんの立場が無くなる。そこでだ、オレと兼用かなんかして少しの間でもいいから居させられないか?」
元々勘が鋭いこともあり、オレに疑いの眼差しを向ける。
「私は前と同じ環境を望んでるんだけど。」
余程、亮を気に入らないらしい。まったく何をしてたんだか。
「それも分かるがそこは肝要なお前だからこそ頼むんだ。嫌だからって理由で誰かの人生まで弄ぶ権利なんて、誰も持ってない。そんな大人に、お前がなるのは見てられない。」
オレは麗華を見つめる。
「……わかったわよ。少しの間は保留にしといてあげる。まさか、海斗なんかにまともな事言われるとは思わなかったわ。」
どうやら、落ち着きを取り戻した事で自分がしようとしていた事を理解し始めたようだ。
「さすが麗華だな、一部を除いて肝要で助かる。」
「一部ってどこを除いてるのよ。」
「お前も落ち着いたようだし、明日にはちゃんと謝りに来させるさ。」
「そうね、明日ならちゃんと聞いてあげられそう。」
「ああ、随分と反省している様子だったからな。聞いてやってくれ。」
この件を伝えに行こうとドアノブに手を掛ける。
「そういやアイツの部屋はどこなんだ?」
「そんなことも聞かずに来たの? ホント抜けてるわね。」
「うっせーな、お前の電話に一度も出られなかったから落ち込んでると思ったんだよ。」
「……アンタの隣よ。それに中里の関係者がその隣。」
心なしか、表情が柔らかくなったように見える。
「ほら、行くならさっさと行く!」
「はいはい。」
「まったく、抜けてるんだか鋭いんだかどっちなのよ……。」
………。
…….
アキラの関係者か。厄介なヤツじゃないと良いんだけどな。
「面倒だがすぐにでも伝えに行くか。アイツは目的の為なら手段を選ばない男だ。」
麗華の部屋を後にしたオレは真っ直ぐアキラの部屋へ向かう。
「……アイツの関係者なら先に会っておいた方がいいかもな。」
目的の部屋ではなくアキラの関係者がいる部屋のドアノブに手を掛ける。
「そっちは僕の部屋じゃないんだけどな。どうやらキミのほうこそ頭がおかしいみたいだね。」
隣の部屋からアキラが喋りながら出てくる。
「少なくともオレたちはおかしい部類になるだろうな。」
「キミはともかく、僕を同じ扱いにしないでほしいな……それでどうだった?」
「なんとか兼用ってことになりそうだ。あくまで保留らしいが。」
「そう、キミにしては出来すぎだね。」
やはりオレなんかに手を借りたのが嫌なのか、不服な表情だ。
「明日なら謝罪を聞いてくれるそうだ。少なくとも今後の進展はお前次第だから安心しろ。」
「ふぅん、中々に物事を考えているようだね。昔のキミからは想像出来ないよ。」
値踏みするようにオレの表情、身体、気配から情報を探る。
「……しかし、頭が良くなっても力が失われているなんて滑稽だよね。それだけじゃない、穢れた身体のほかに野蛮な匂いを感じるよ。」
禁止区域にいれば他人の行動に関して鋭くなる。ましてや、オレがいた特区となれば外見だけでそれなりの情報を得ることが可能だ。もちろん生に貪欲な生活を続けていればあらゆるものを察知する力も磨かれてしまう。たとえ幻想郷や妖怪の存在を知っていなくとも、何かあることぐらいなら感じることが出来るだろう。
「そんなことより、お前の関係者を紹介してくれないか?」
「屋敷に住んでいる以上は仕方ないか。翔子入るよ。」
そう言うと関係者がいる部屋に入る。部屋の中に一人の女性がいた。
「っ! おはよう、ございます……亮様。」
見た目からしてアキラと同じボディーガードとは思えないほど身体が痩せている。おそらく走ったりするのも難しいだろうと思えるほどに。にしても身体が震えている、どうやら怯えているようだ。
「翔子、様はやめてくれないか。」
「ご、ごめんなさい、亮……様。」
「コイツもボディーガードなのか?」
「いいや、違う。もちろん、使用人でもない。」
身体を見ればその事は明らかだろう、それに様呼びさせていたとすれば思いつくのは。
「ならおまえの女か?」
「それも違う、僕の妹さ。ただ血は繋がってないけど、ね。」
オレはその女性に近付く。どうも視点が定まっていないようだ、しかも近くに杖もある。
「そうか、目が見えないんだな。オレは朝霧海斗だ、一応挨拶をしておこうと思ってな。」
「は、はじめまして、翔子……です。」
関係者が厄介なら注意する必要があったが、その心配はなさそうだ。
「それじゃあ挨拶も済ませたし、オレは部屋に戻るわ。」
アキラとはお互い言葉を交わさずに部屋を出て自室に戻る。
「戻ってきて早々のイベントにしちゃあ濃いよな。」
南条邸や幻想郷といった数々のイベントがあったが、まさか二階堂の屋敷に戻ってきても尽きないとは。
「これといってやることもないし、土産でも配って一眠りするか。」
おっさんは居ないみたいだし先に彩たちだな。それぞれに渡す土産を手にして、部屋から出る。
「おっ。」
どうやら早速エンカウントしたようだ。
「……貴様、彩お嬢様が外でお前なんかを待っていてくださっていたのに何故部屋に戻ってるんだ!」
「え、おまえら待ってくれてたの?」
「僕は反対したが心優しい彩お嬢様がどうしてもと言っていたからな。」
でも、実際に居なかったら意味無いよな。因みにコイツは宮川尊徳、今後の呼び名は尊だ、以下略。
「勝手に人の紹介をしておきながら略すなっ!!」
「うおっ、まさか勝手に頭の中を覗いてツッコンでくるとは。遊んでいたわけじゃ無さそうだな。」
「ふんっ、貴様と違って何事においても復習は欠かさないんだ。」
「決まった時間しかやらないくせに。」
「それでいて僕は限られた時間で最善を尽くすタイプなんだ……そんなことよりあの男には会ったのか?」
ツッコミの復習ってなんだよ。
「ああ、代わりに来たボディーガードだろ。」
「そうか、ここだけの話しだがアイツからは何か不気味さ感じる。」
さすがの尊でも感じる部分があるらしいな。
「だが屋敷の住人は殆ど気付いてはいないだろう。見た目や行動、経歴だけみればボディーガードの理想とも言える。」
「そういやどんな経歴なんだ?」
見た目や行動は気にならないが、経歴は気になる。普通、禁止区域にいるヤツには戸籍が無い。表の世界に来るだけならやりようがある、だが、戸籍がないとなれば仕事を見つけることは出来ない。
「父親は元国会議員、母親は元女優。幼少期までは日本に居たが父親が政治に専念するためアメリカへ移ったそうだ。しかも、最年少でボディーガードの資格を取得。少なくとも2年以上は僕たちのような訓練生ではなく、正式な活動をしている。悔しいが実績を積んでいるだけあって普段の行動ですら隙は見当たらない。」
戸籍があるだけじゃなくて父親が元国会議員とはな。それにしてもアメリカで活動してたのが何故急に日本に戻ってきたんだ。その目的にはオレの事は含まれていない。なんせお互い忘れてたからな……となると、二階堂あるいは暁東市が関わっているのかもしれない。
「きっと何かを企んでいるに違いない。もしそうなら麗華お嬢様に危険が……かと言って海斗如きでは護衛は愚か、接し方もなっていない……やはり麗華お嬢様に相応しいボディーガードはこの僕を置いて他に居ないっ!!」
どうもさっきから黙っていれば勝手に妄想を膨らませて興奮してきているようだ。理由はすぐわかると思うが尊は麗華に恋心を抱いている。それに加えてオレたちの学園は男子ばかりで女に対しての免疫がまったくと言って良いほどない。ともなれば仕方のないことかも知れないが。
「少しは落ち着けよ。」
「いや、今この瞬間にも麗華お嬢様に危険が迫るかも知れないんだぞっ!!」
今日の尊は中々、勘が冴えてるな。実際キスされそうになってたわけだし。
「少なくともオレが帰ってきた以上、好き勝手にはさせねぇよ。」
「……海斗らしからぬ発言だな。お前は本当に海斗なのか?」
ああ、確かにオレらしくない発言だろう。それもこれも全部アイツらのせいだ。仮に、アキラが居なければまだマシだったんだろうな。
「誰が好き好んでオレになりたがるんだよ?」
「それは確かに。」
なんだか自分で言ってて悲しいのは秘密だ。
「少なくともオレだけじゃあ足りないし、さすがに主席であるお前だけでも足りない。なら共同戦線を張らないか? もちろん、亮が居る間だけだが。」
アキラに警戒心を持っている奴が多いに越した事はない。しかも尊は主席だ。表の世界に住んでいる人間の中ではマシな方だろう。
「貴様と手を組むのは嫌だが、少しでも麗華お嬢様に危険が及ぶ可能性があるなら答えはもう決まっている。」
そう言うと尊は自室に戻ろうとする。
「だが勘違いするな。ただ一時的に協力するだけだ……一時的にだぞ。」
「ああ、わかってるよ。」
まったく素直じゃないよな。
「用も無いし僕は自室に戻る。恐らく彩お嬢様、メイドのツキも屋敷に居るはずだ。」
「ああ、また後でな。」
尊と別れたオレはまず、ツキを探すため屋敷内を歩く。
「どうせツキのことだし、どっかで掃除でもしてるんだろ。」
が、屋敷をぐるぐる回っても姿は見当たらないし、掃除をしている形跡も無い。
「探してないときはいつの間にか出てくるくせに探すとこれだ。先に彩のところに行くか。」
彩の部屋まで移動し、ドアをノックする。
「オレだが、少し時間いいか?」
「はい! 入ってきてください。」
土産を渡すだけだから部屋に入る必要は無いんだが。
「……じゃあ入るぞ。」
ドアノブを捻り、部屋の中に入る。彩の部屋は麗華と違い自分に合わせたような内装だ。ベッドやカーテンなどピンク色で統一されていて、熊のぬいぐるみだっておいてある。麗華の部屋は意外に使用人と同じで、音楽を聴く機械があるだけ。それにくらべると彩の部屋はまさにお嬢様の部屋と言っても可笑しくない。
「海斗さん、ずっとお待ちしてました。」
髪の色は姉である麗華とおなじでピンク色。長さは腰までで多少結んでいる。背は平均的で胸はそれなりにデカイ。麗華とは対極と言ってもいいな。
「それにしてもいつ戻ってたんですか? 玄関でお出迎えをしようと待っていたのですが。」
「どうやら入れ違いになったみたいだ。オレも屋敷内を探したが誰も居なかったし。」
「そうでしたか……てっきり私を避けているのかと。」
どうやら本気でそう思っていたらしく、安心したような表情になる。
「いやいや、避ける理由が見当たらないだろ。ツキなら喜んで避けてやるけど。ほれ、一応土産の饅頭だ。南条邸近くの駅で買ったから味までは保障しないけどな。」
「わぁ、ありがとうございますっ。」
ここまで嬉しがるとは……余程饅頭が好きなんだな。
「で、オレが居ない間なんかあったか?」
「それが……ですね。」
「そんなに言いにくそうってことは亮のことじゃないな。」
「まぁ、中里様についても困っていないとは言いきれませんけど。」
麗華に続き、彩との関係も悪いみたいだな。
「……何が出てきても叫ばないと約束してくれますか?」
「ああ。」
「それじゃあ……。」
「あー!!!!」
「っ! 急に叫ばないでくださいよっ、海斗さん。」
「……悪い、尊に土産を渡すつもりが忘れてたことを思い出したんだ。」
「はぁ、そんなことで叫ばないでくださいっ。」
尊とそんなこと……か、今度尊に言ってやろう。
「おいで柏。」
そんな事を考えていると彩はクローゼットに声をかける。
「なんだよ、漸くおっさんに逆らって大好きなペットでも飼ったのか?」
クローゼットの中から出てきたのは白い毛が生えた動物。
「まぁなんだ。人間でも金さえあればペットに出来るが……まさかお前がそんな人間だったとは。」
今出てきているのは足、それも幼い子供の足だ。
「勘違いしないでくださいっ! 海斗さんが出かけたらこの子が私の部屋にいたんです。」
「どれどれ、どんな顔して……。」
その少女は素足のまま現れた。長い白髪で服はおそらく彩のお古だろう。この屋敷でアキラと会った時と同様……いやそれ以上の驚きがある。見た目はあの頃と殆ど変わっていない。
「どうかしましたか?」
「いや、どうもしない。」
禁止区域にオレが住んでいた頃は常に親父がいた。その時まだ幼いオレは親父が居なければ生きてはいなかっただろう。だけど、親父のほかにもう一人オレの傍にいる女がいた。その女は名前も名乗らず、理由も言わない。それに加え成長が止まる病気らしい。だが、それでもオレをずっと見守っていた……なんでその女が二階堂にいるんだ?
「お姉さまや他の方に相談したかったのですが、この子が嫌がるので……。」
ま、あまり存在を知られたくはないよな。
「……。」
何も喋らないまま少女はオレに近付き袖を掴む。
「まぁ。」
どうやら殆どと言っていいほど無反応だったようで彩が驚く。
「そういやお前、柏って名前なのか?」
「えっと名前が無いと呼ぶときに困るので私が勝手にそう言ってるだけです。」
申し訳無さそうに彩が答える。
「そう言うことか。」
「それで海斗さん、どうすればいいでしょうか?」
「どうするもなにもずっとここにかくまっておく事は出来ないしな。とりあえず麗華には会わせる。」
先程まで無反応だった少女が掴んでいるオレの袖を引っ張り、首を横に振る。
「……。」
オレはその場にしゃがみこみ、柏と同じ目線に合わせる。
「お前にも分かるだろうがこのまま隠れているには限界がある。かといって屋敷で行動するにも主であるおっさんの許可が必要だ。」
柏はコクリと頷く。
「だけどおっさんは堅物だから難しい、だが次に権力がある長女の麗華ならなんとかしてくれるはずだ。安心しろ麗華は信用してもいい人物だ。なにしろオレがここに居れるのもアイツのおかげだしな。」
「……。」
柏は少し考えてから、再びコクリと頷いて答える。
「じゃあ、悪いが彩は麗華を呼んでくれないか?」
「……はい、わかりました。」
今までずっと首を横に振るだけだった柏が頷くとは思っていなかったのだろう。驚きが治まらないまま、部屋の電話で麗華を呼ぶ。
「まさか、ずっとオレを見ていたなんてな。」
彩に聞かれないように小声で喋る。
「……あなたのいるところに、わたしは……いる。」
柏も小声で呟く。
「確か前からそんなこと言ってたよな。それを今も変わらず実行しているって事か。」
「……。」
このところ街では普段見かけないような連中が多くなっている。そう、禁止区域の連中だ。今までも表に出ていた奴もいるが数はそこまで多くはない。最近は異常と言っていいほど出てきている……まるで何か行動を起こすための準備をしているかのような。それでも恐らく柏はそれに関係なくオレの傍にいるんだろう。ほんと、物好きな奴がいたもんだ。
いかがでしたでしょうか?
バラエティ成分多めとか言っておきながら早速シリアスでしたね。
中里登場回は仕方ないと思いますが。
一応今回は約3000文字で作りました。
次回は4000文字を目安にしたいかな。
なお引き続き活動報告にて「ルート分布」のアンケートを実施しています!!!
8月11日にアンケート募集終了いたします。
回答は活動報告に書き込みあるいは僕自身にメッセージをお送りください。
ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想がありましたら我は放つ、光の白刃!!とお願いします!