不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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最近バラエティ番組を見て思うんですけど。

計算して笑いをとるのってどうやるのかな?

多分バラエティ番組を見てもあんまり意味が無さそうだし。

やっぱり落語とか、伝統的なものを見るべきかもしれない。

それと注意です!!

8月11日にアンケート募集終了いたします。

アンケートの回答は活動報告かメッセージにください。

感想欄に書くのはNGらしいので。

それではお楽しみください。

●2015年2月4日 文字数が少なかったので37、38、39話の3話分を合わせて修正投稿致しました。第3章までで本文の文字数が少ない話は引き続き修正していきます。


第12話 「いやいや、オレはまだ訓練生だぞ。」

 彩が電話してから数分後、麗華はご丁寧にノックしてから部屋に入る。

 

「一体何のよう……ってどうして海斗もいるの?」

「丁度土産を渡してたとこだ。」

「お土産ねぇ、私は貰ってないんだけど。」

 

 腕を組みながら、怒ったような目付きになる。

 

「色々あって忘れてたんだよ、丁度いい。ほれお前の分だ。」

 

 彩と同じ土産を手渡す。

 

「……戴いておくわ。それで用はこれ?」

「そんなわけないじゃないですかっ。」

 

 そんなわけって……。

 

「わかってるわよ、それで用件は?」

「よし、出て来い。」

 

 オレの背中に隠れていた柏が姿を現す。

 

「……前からペットを飼いたがっていたようだけど、まさか人間を飼うなんてね。」

「やっぱそう思うよな、流石のオレもこれは引いたぜ。」

「海斗さんも、お姉さまもそんなこと言わないでくださいっ。」

 

 うっすらと涙目になっているようだ。

 

「冗談よ、それでこの子はどうしたの?」

「えっと、海斗さんが出かけた日に私の部屋で見つけたんです。」

「……その日から今日まで匿ってたのね。」

 

 そう言うと麗華は柏を見つめる。

 

「はい、少なくともお姉さまには。と思ったんですけど……。」

「この子が嫌がったってとこ?」

「はい。」

 

 特に何も言う必要はないが、柏の印象に悪いイメージを持たれたら厄介だな。

 

「多分、麗華に会うのが嫌だったわけじゃないと思うぞ。」

「じゃあ理由は?」

 

 柏から視線をオレへと移す。

 

「なんつーか……他人に会うのが怖かったんじゃないか?」

「だとしても、すぐに親御さんへ連絡しないと。今も探し回ってるかも知れないし。」

「あなたの家はどこなの?」

 

 再び視線を柏へ戻し、訪ねる。

 

「……。」

「あなたの親御さんは?」

「……。」

「この子、あまり喋らないみたいで。」

 

 その場の空気が悪くなると感じたのか。彩が間に入る。

 

「なら、少し強引になるけど――」

「あー、ちょっといいか?」

「なに。」

「コイツは事情が複雑でな。できればこの屋敷に置いてもらいたい、そのために麗華を呼んだんだ。」

 

 柏の頭に手を置きながら喋る。考えすぎかも知れないが、麗華は勘が鋭いからな。オレが柏と知り合いで、用件も大体察しがついてるのかもしれない。

 

「アンタこの子のこと知ってたの?」

 

 さすがに他人だと言えば、この話題は堂々巡りになるだろう。

 

「ああ、街で何度か見かけて話したこともある。」

 

 彩は驚いた表情だが、やはり麗華は表情を変えない。

 

「……だったら早く言いなさいよね。一応お手伝いとしておいてあげる。」

「ありがとうございます、お姉さま。よかったね、柏。」

 

 彩は自分の事のように嬉しがりながら、柏に近寄る。

 

「自分で言っといてなんだがそんな簡単に決めていいのか?」

「複雑な事情があるんでしょ。それにさっきのお礼も兼ねてるし。」

「そうか、あんがとな。」

「……アンタらしくない発言ね。」

「そうだな、オレもそう思う。」

 

………。

 

……。

 

 その後、柏を彩に任せてオレは再び土産を渡す旅路へと向かう。廊下を歩いていると前方にメイドらしき姿を確認する。

 

「おっ、えっちゃんにみっちゃんじゃねぇか。」

「あ、朝霧さま。」

「お帰りになられていたんですね。」

 

 この二人は数多くいるメイドの中でもある事が切欠で関わりを持った。外見に関しての詳しい描写は……いらないだろう。

 

「やっぱり私たちは所詮、紹介すらされないんですね。」

「まぁな、でも名前があるだけマシだろ。」

 

 えっちゃんは落ちこんだのか、顔を少し伏せる。

 

「エリ! 私たちが諦めたらそこで可能性は失われてしまうのよ!」

 

 なんだか知らないが、余程熱い志を持っているようだ。

 

「みっちゃんの言うとおりだ、この世に0%と100%は存在しない。だから物好きな読者がいれば主役を張るって事もある。」

 

 えっちゃんは何かを決心したかのような表情になる。

 

「そうですね、私も諦めません!」

「そうか、なら二人に褒美をやろう。」

 

 尊とツキに渡す予定だった土産を二人に渡す。

 

「お饅頭ですか!? ありがとうございます!」

「まさか私たちの分を買ってきていただけるなんて。」

 

 二人とも大事そうに饅頭を抱きかかえる。どうやらこの屋敷の住人は饅頭が余程好きなようだ。

 

「何言ってんだ? 余りもんにきまってんだろーが。それよりツキを見なかったか?」

「屋敷のどこかを掃除してるんじゃないでしょうか?」

「見かけなかったから聞いてんだろ?」

 

 オレはえっちゃんの頬を片手で掴む。

 

「なんで喋ってない私をいじめるんですかっ!」

「きっとお前の家系が悪いんだ、そうに違いない。」

 

 ツキの居場所が分からない以上ここにいても仕方がない。それに渡すはずだった土産もあとはオッサンのだけだしな。そう思い、頬を掴んでいた手を離す。

 

「ま、今日もがんばれよ。それじゃあな。」

 

 時間も潰したことだしそろそろ帰ってきてもいい頃合いだろう。その場をあとにして書斎へと向かう。

 

………。

 

……。

 

 色々無理を言ったからな、多少態度は良くしといた方が良いかもしれない。書斎の扉をノックして、反応を待つ。

 

「……あいている。」

 

 許可を得たので部屋へ入る。オッサンは机に書類を広げて珍しく仕事をしているようだ。それからソファーには佐竹が座っている。

 

「なんだ戻ってきたのか。」

 

 表情を見ずとも声色だけで機嫌が悪くなった事がわかる。

 

「そりゃあ戻ってくるぜ、まだクビになってねぇしな。」

「ふん! そうなるのも時間の問題だ。全てにおいて貴様より優秀な中里君がいる。」

「そいつはどうかな? 少なくとも本を愛する心と顔だけは圧勝だ。」

「…………。」

 

 気に食わなかったようで元から強張っている顔が更に強張っていく。

 

「そんなことで勝っても自慢にならないぞ。」

 

 ソファーに座っていた佐竹が話しに入ってきた。

 

「別に、自慢なんてしねーよ。事実を述べたまでだ。」

「それと……一応迷惑をかけたからな、土産だ。」

 

 そう言い、持っていた土産を何も乗っていない机に置く。

 

「ほう、海斗にしては珍しいな。」

 

 さすがに付き合いが長いせいか、佐竹はすぐに感づく。

 

「今回の件に関しては無茶したからな。」

 

 他の訓練生であればここまで行動に移すことは難しかっただろう。が、幸いにもオレの周りには強い権力を持つ人間がいたから出来たことだ。

 

「……用はそれだけか?」

「ああ。もう部屋に戻る。」

「だったらすぐに戻れ。」

 

今日は仕事があるようで普段よりもピリピリしているようだ。いや、オレに対してはいつもこんな感じか。

 

「じゃあな、佐竹。」

「ああ、後でな。」

 

 用を済ませ、書斎を出る。

 

「さて、土産も配り終えたし自分用に買った菓子でも食うかな。」

 

………。

 

……。

 

「ってなんでお前がオレの部屋にいるんだ?」

 

 自室に戻るとそこには一人のメイドがいた。名前はツキ。髪は紫で三つ網があり、背は低く、痩せている。この屋敷の古株でオレより若いくせにメイド長という役職を持つ。

 

「心優しいメイドは部屋で海斗の帰りを待ってたのです。」

「心優しいメイドは勝手に人の菓子を食わんし、部屋にも入らん。」

 

 机の上には菓子の入っていた箱が置いてある。

 

「言っとくがお前は心の醜いメイドだからな。」

「私の心が醜いと? 許せませんね。」

 

 バリッ、ボリッ。

 

「心だけじゃないな。行動や声、存在すらもだ。」

「もっとポッチャリ体系が良いんですね?」

「どこをどう受け取ったらその答えが出てくるんだよ。」

 

 バリッ、バリッ、モグッ、モグッ。

 

「こらこら食うのを加速させるな。どこぞのサイボーグじゃあるまいし。」

「かそぉくそぉぅち!!!」

「どことなくアクセントがちげぇし。」

「……仕方ないから、海斗の分も残しておいた。」

「当然だろ。」

 

 ツキのポケットから一つだけ姿を現す。

 

「他は?」

「これ以外全部食べてしまいました……テヘッ。」

 

 言ってる言葉と違い無表情で首を傾け、舌をペロっと出す。

 

「いつから食ってんだよ、食うの早くね?」

「冴えない姿をした男が荷物を持って部屋を出たすぐ後に食べました。」

 

 ようするにオレが土産をみんなに配ってる間、ここに居たわけか。

 

「ま、元々お前にも土産をやる予定だったから良いや。」

「……? なんかいつもと違う。」

「てめぇなんかにわかるかよ。」

「ほら、食ったんならさっさと掃除して来いや!」

 

 幸いにもツキは軽いため、子猫を投げるかのように部屋の外へ出す。

 

「わっ。」

 

 同時にすばやく扉を閉める。

 

「さて、最近ご無沙汰だった小説でも読むとしよう。」

 

………。

 

……。

 

「聞いた話によると土産を買って来ていたそうじゃないか。」

 

 夕飯の時刻になり食堂で飯を待っていると尊が話しかけてきた。

 

「まさか、土産をもらえなくてふてくされてるわけじゃないよな。」

 

 尊は急に視線を逸らす。

 

「あ、当たり前だ!」

「……実を言うとお前にも土産を用意していたんだが貧乏な下っ端メイドにあげちまった。」

「そういう理由なら仕方ないな、尊徳。」

 

 今日は珍しく二階堂で食事をするようで佐竹も現れる。

 

「いいえ、どうせ海斗のことです。元々買っていなかったのでしょう。」

「じゃあ土産話でも聞かせてやるよ。」

 

 普通じゃあ体験出来ないことをしたし、ネタは多少増えたからな。

 

「宮川直人、お前の兄貴に会ったぜ?」

「直人兄さんだって……分かる嘘を吐くな。」

 

 どうやら、尊は信じていないようだ。

 

「いやいやマジだって、休暇があって遊びに来てたらしい。もちろん尊が会いたがってるって言っといたぜ。」

 

 これは嘘だけどな。

 

「なんてことをしてくれたんだっ! もし来る事になったらおかずを一品どころじゃないぞ!」

 

 尊はオレを睨む。

 

「あれ? 確か兄弟は凄く仲が良くて一緒に寝るほどじゃなかったか?」

「誰が好き好んで嫌いな兄弟と寝なきゃならないんだっ!」

「悪い、悪い。だったら土産をやるよ。」

 

 オレは今日の夕飯で出ているマッシュルームを尊に全て渡す。

 

「嫌いな食べ物が出来たのか?」

 

 それを見ていた佐竹が薄ら笑いながら訪ねて来る。

 

「ちげぇよ、前にキノコばっかり食わされたからだ。当分は嫌になるほどな。」

「土産の話を逸らすな、海斗。」

 

 どんだけ土産に執着してるんだよ。

 

「……じゃあ、白黒の魔法使い、赤白の巫女と出合った話をしてやろう。」

「そんなくだらない話ならしなくていい。今日はマッシュルームで勘弁してやる。」

 

 マッシュルームで良いのかよ!

 

7月21日

 

 この前までは特にやることもなく釣りを楽しんでいたが今日からはそうもいかない。なぜなら今のオレは学生という身分だからだ。早朝、見慣れた天井の部屋で目を覚まし。見慣れたメイド長が勝手に入ってくる。そこで他愛も無いネタに付き合ってから麗華と共に学園に行く。これが最近の日常だった。それだけじゃない。この前まで学園に居なかった薫がいて、漸く学園はいつもの風景に戻る。そのときオレはある事に気付いたんだ……こんな日常なら変わらずにいても楽しめるかもしれない、と。

 

 だが屋敷にはいつのまにか亮がいて、さらには急に柏が現れて。今までとは違う日常へと変化していた。オレはどちらを求めているのだろう? 非日常と言えるほど刺激が溢れた世界なのか。日常と言えるぐらい変わらず平凡な日々が繰り返される世界なのか。ま、今はまだこのままでいいだろう。急ぐ必要も無いからな。

 

「……それにしても休学して戻ってきたが。相変らず殺気を向けやがるなアイツは。」

 

 学園が終わり屋敷に戻ってきたが気になることがあり、再び学園に戻っている。2年になって新しく来た教師、柊朱美。理由は分からないが常にオレへ強い殺気を込めてくる女。生徒に気付かれないほど薄く、他人の目を気にせず殺しにくると思わせるほど尖っている。その殺気はまるで鋭い刃を持ったナイフのよう。

 

「いい加減見られ続けるのはうんざりだし、今日こそは理由でも聞いてみるか。」

 

 これまで何度か訪ねたが決まってはぐらかされていた。見続ける方は楽かもしれないが見られ続けるのはこの上なくうざったい。朱美がどこにいるのか分からないため、とりあえず気配の無い教室を覗く。

 

「……ここにはいないか。」

 

 教室に居ないとなると教師である朱美は職員室にいる可能性が高い。

 

「けど職員室で理由を喋るとは思えないよな。」

 

 そう思い、学園の外にでる。

 

「おっ、朱美か。」

 

 門の近くには今から帰ろうとしている朱美を見つけた。

 

「早速、尾行するとしよう。」

 

 これで如何わしい店にでも入ったらそれをネタに脅すのも悪くない。

 

「……殺意の理由は分からなくても、ヒントくらいはあるかも知れん。」

 

 そんな思惑を抱きながら追跡をするが想像とは違い繁華街から駅へ向かっているようだ。

 

「もしかしたら禁止区域に、と思ったんだがな。」

 

 そのまま駅に着いて朱美は810円の切符を購入したところまでは確認したものの小銭が無いオレにはそれ以上の追跡は出来ず、尾行は早くも終わってしまった。

 

「少しくらいは常に小銭を持ち歩いてた方が良いかもしれないな。」

 

 追跡したにも関わらず気に掛かることはなかった。もちろん、殺意を抱いている理由のヒントすらも無い。

 

「さすがにこのまま帰るってのもつまらないな。少し立ち読みでもしてくるか。」

 

 最寄のデパートに入り、真っ直ぐ書店へ目指す。

 

「そういや、翔子って奴が盲目だったな。」

 

 亮の妹である翔子のことを、ふと思い出す。

 

「目が見えない奴は普段どう感じてんだろうな。経験した事もないし調べてみるか……ついでに妖怪や吸血鬼、昔の日本についてもな。」

 

 ほんの少し時間を潰す予定だったが思いのほか調べたい事が多かったようだ。オレが屋敷に戻ったのは夕食が終わった後……コックを脅し料理を作らせた事は言うまでもないだろう。

 

7月22日

 

 早朝、尊に直人から食事の誘いがあった。これだけなら別に可笑しいことじゃない、たとえ仲が悪いとしてもだ。だが、その席にオレも来ないか? とあった……また会おうって言ったし、行かないわけには行かないよな。

 

「まだ知り合って間もないが尊と同じで、直人は変に天然が入ってるからな。」

「面倒なことにならないといいが。」

 

 中庭のベンチに座りながら空を見上げる。

 

「そんなに空を見上げてますけど、空になにかあるんですか?」

 

 近くにいた大柄な庭師が訪ねる。

 

「……悩んでるんだが。」

「ああ、それは失礼しました。悩んでいる顔に見えなかったので……。」

 

 コイツは最近、二階堂に来た安藤と言う庭師。大柄な身体とは反対に正確は臆病で気が小さい。因みに言うが決して忘れていたわけではない。そう、会わなかったから帰って来た日に紹介出来なかったのだ。

 

「お前には極悪毒舌庭師と言う称号をやろう。」

「えっ、いいんですか? 称号を私なんかに。」

「やっぱただの庭師で。」

「はぁ。考え事をしているなら私は花の手入れをしてきますね。」

 

 オレが悩んでいたとしても自分には力になれないと思っているからか。そそくさと安藤は仕事に戻った。

 

「そうよねぇ、どこからどう見ても悩んでる顔には見えないわよ。」

 

 どこからとも無く、女の声が聞こえてくる。二階堂の屋敷で尚且つ女となると人物は限られる。だが、周りに人影は無い。

 

「今はもう考え事してないからだ。」

 

 オレは視線を空から外さず、声だけ発する。

 

「それにしても、本当に追いかけてくるなんてな。」

「あら? 追いかけて欲しくて事前連絡をくれたんじゃないの?」

「かもな。」

 

 その妖怪は唐突に姿を現す。

 

「分かってると思うが、姿を見られたら騒ぎどころじゃ済まないぜ?」

「大丈夫よ、スキマで普通の人間には見えないようにしてるから。」

 

 どうやら紫は何度も同じことをやっているようで手馴れているようだった。

 

「スキマ便利すぎだろ。」

 

 そう言うとスキマを多用する妖怪はオレが座っているベンチに腰を下ろす。

 

「海斗の言ったとおり以前より会える回数は減りそうね。人の多い都会なら仕方ないことだけど。」

「だろ?」

 

 視線を空から右隣に居る、紫へと移す。

 

「うん、会話してるならやっぱり相手の目を見なくちゃ雰囲気でないわよね。」

「よぉ、にい……朝霧、となりにいらっしゃる綺麗な女性を紹介しろ!」

 

 ここに居る理由は分からないが中国風の服を着た龍が威圧をかけながら聞いてくる。

 

「龍がここに居る事にもツッコミたいが、他の人間には見えないんじゃなかったのか?」

「……どうやら普通の人間を侮ってたみたい。」

「それなりの人間だったら見られるかもしれないってことか。」

「そうみたいね。」

「……そういや南条邸で感じたことのある気配だ。」

 

 確か気配は感じてたって言ってたし、不思議な話じゃないか。

 

「よし。じゃあ次はお前だ、なんでここに居るんだ?」

「仕事の都合だ。確か二階堂に居るって言ってたからな、会えるかと思ってよ。」

 

 紫がいても特に驚いた様子も無く、平然と答える。

 

「って、そんなことよりこの女性を紹介しろよ。」

 

 オレは紫に目で尋ねる。

 

「はじめまして私はスキマ妖怪の八雲紫よ。」

 

 ベンチから立ち上がり、微笑みながら妖怪だということも含めて挨拶をする。

 

「妖怪? ま、気にしなくていいか。俺は龍だ、よろしく。安いものだがコレをどうぞ。」

 

 手に持っていた包み紙を紫に渡す。

 

「海斗に渡すつもりじゃなかったの?」

「そのつもりだったが、ここはお嬢さんを優先させるべきかと。」

「どうせここの駅で買った土産だろ? だったらいらねぇよ。」

 

 龍が買ってきた土産の袋には見覚えがある。

 

「そ、だったら遠慮しないで戴きますわ。」

「それにしても南条邸で多少感じた視線は紫さんか?」

 

 気になっていたのか、龍はすぐに訪ねる。

 

「ええ、そうよ。」

「そうか……ここまで凄いと尊敬を通りこして嫉妬に変わりそうだ。」

「普通逆じゃね?」

 

 龍の表情を見る限り、手合わせしたいと考えているとすぐに分かる……自分より上かあるいは同等の奴と戦いたがるのはコイツの悪い癖だな。ま、オレにも分からなくは無い気持ちだが。

 

「所詮、人外である妖怪にオレたち人間は科学を使わないと五分にすらならないだろう。」

「朝霧が言うってことは、本当に妖怪なんだな。中国じゃなくて日本で会うとは思わなかったぜ。」

「いやいや、中国にいても普通なら会えないと思うぞ。」

 

 こうは言っているが恐らく龍に実感はあまり無いのだろう。姿だけでは人間だし、漂う気配は異常で未知の領域だ。認識できていない、と表現しても平気だろう。それでも、あまり変わらない様子を見ると適応力がそれなりに高いみたいだな。

 

「なぁ、朝霧。いま時間あるか?」

「さぁな、確認をとって来ないと分からん。なにすんだ?」

「仕事で当分はこの辺にいるんだが、地理を把握したい。周りを気にかけるボディーガードが居るなら、そいつは適役だろ。」

「なるほど。わかった、少し聞いてくるからココで待ってろ。紫もだ。」

 

 紫と二人きりにしても、平気だろう。オレは麗華の部屋に向かう。

 

「……紫さん、朝霧とどんな関係なんだ?」

「関係って……アナタと同じ友達よ。」

「友達ねぇ。なら恋人として立候補してもいいのかな?」

「残念ね。普段だけじゃなくて、ここぞって時にも力を抑える人は対象外だわ。」

「こりゃ、手厳しい。恥ずかしいところを見られたもんだ。」

 

………。

 

……。

 

 ドアをノックして麗華を呼ぶ。

 

「麗華ー、ちょっといいか?」

 

 数秒待つと、扉が開く。

 

「どうかしたの?」

「友人が街の案内をしてほしいとの事だから外出の許可をくれ。」

「そんな分かる嘘が通じると思ってる?」

 

 なんかそう言われる気は……してたさ。

 

「ふん、今中庭のベンチに居る男が友人だ。嘘だと思うなら確認しやがれ。」

 

 ついでに紫が本当に見えないのかを確認したい。

 

「……見た感じ中国人の男?」

「さすがのお前でも見えたのな。背が低くて見えないとか言ってくるかと思ったぜ。」

 

 ズビシ!!

 

「アンタは私を怒らせに来たのかしら?」

「……もう、怒ってるじゃねぇか。」

 

 蹴られたスネがヒリヒリする。

 

「ま、案内だけならいいわ。帰りは昨日みたいに遅くならないでね。」

「わかってる。それと男の隣に女は居ないか?」

 

 部屋に帰ろうとした麗華に再び確認を取らせる。

 

「女? 男しか見えないわよ。」

「そうか。じゃあ行ってくる。」

 

 一般人には見えないようだが、龍が見えるとなると亮や柏にも見られる可能性があるな。いや、尊や佐竹にも多少の可能性はあるか。そんな事を考えつつ、麗華に許可を貰ったので、龍の待つ中庭へ。

 

「っておまえら、なにしてんの?」

 

 中庭についてみると紫がスキマを出していた。

 

「紫さんに言ってこの屋敷の外観を見せてもらってるんだ。」

「龍が外観を見たいって移動しようとしたからね、スキマで見たほうが楽じゃない。それと海斗に友人がいるって言っても、相当なお人好しでなきゃ信じないだろうしね。」

 

 どうやら麗華とのやり取りを聞いていたらしい。

 

「で、どうだったんだ?」

 

 外観を見終わったのか、紫はスキマを閉じる。

 

「おっけーだったぜ。」

「おし、なら早速頼む。できれば紫さんのオプションもつけてくれ。」

「どうせ、勝手についてくるんだろうよ。」

 

 オレは呆れた表情で屋敷の玄関へと歩き始める。

 

「わかってるじゃない。」

 

………。

 

……。

 

 少し歩いて繁華街までやってきた。とりあえずは生活で必要なものを売っている場所を教えている。

 

「それにしても日本にいると犯罪率の低さを実感させられる。」

 

 目的の場所以外にも地形や歩いている人間を観察しているようだ。

 

「確かに表向きは他国と比べればそうかもしれないが、現在での犯罪率が低いだけで犯罪を起こしにくいのかと言われればそれは違う。」

「その中でも資産家が多く住んでいる高等区は格好の的だな。」

 

 さすがに直人と同等の力を持つだけあって、中々鋭い。

 

「ふぅん、やっぱり見てるところが違うな。観察力はバッチリか。」

「劣るとは思わないが、さすがにボディーガードと比べるなよ。」

 

 コイツは実力もあり、自信もある。そこらへんのボディーガードなんかよりよっぽど優秀だ。

 

「いや、訓練生と比べればお前の方が上だぜ?」

「訓練生とは比べるんじゃない。これでも一応プロの部類だ。」

「でも、海斗のことは気にしてるみたいじゃない。」

「そりゃ実力のある奴は別だろう。注意しておかないとな。」

 

 龍は笑いながらオレを見る。

 

「いやいや、オレはまだ訓練生だぞ。」

「冗談言うなら、もっと笑える冗談にしろ。」

 

 一応表向きは正式な訓練生なんだが。

 

「そういや、どうしてお前は薫の婿候補として来たんだ?」

 

 直人は係わり合いがあったようだがコイツには無い。と、すると理由が気になる。家柄と言われれば不思議じゃないが、龍はそこまで求めているとは思えない。

 

「……やっぱり、鋭いな。詩音は日本人を嫌っている、それはお前でも分かるだろ?」

「あんなもん、オレじゃなくても赤ん坊でも分かりそうだぜ。」

 

 詩音は龍の妹で、極度の日本人嫌い。理由までは分からないが日常で生活する際にも影響を及ぼすほどの嫌い方をしている。

 

「薫ちゃんと結婚することで詩音の日本人嫌いを克服出来ないかと思ったんだ。」

「そこまで嫌いでも、時間が解決してくれるかもしれないんじゃない?」

「確かにその方法もあるかも知れないが……残されている時間は多くないんだ。」

「まさか、お前病気なのか?」

 

 限りなく少ない可能性だが思い浮かんだ要因を答えてみた。

 

「それは無い。もちろん詩音もな。」

「なら、日本に居られる日数かしらね。」

「……正解だ。さすがにずっと日本に暮らしたいとも思っていないからな、俺も。」

「だとしても、あそこまで極端だとすぐに克服は難しいだろう。」

 

 容赦なく、刃物を投げてきたりする女だしな。

 

「そうだよな。すまない、こんな話をして。」

「別に気にすんな。今日はこれで帰るぜ?」

 

 日も暮れて、辺りはオレンジ色に変わっていた。

 

「ああ。それじゃまたなお二人さん。」

 

 軽く手を振って、龍は新しい住居へと帰った。二階堂の屋敷へ帰りながら着いてきている紫に話しかける。

 

「……一つ言っておく、前までの屋敷だったらそこまで気にしなくてよかったんだが今は厄介な人物が二人いる。おそらく龍と同じように気を抜いていたら姿を見られかねない。一人は白いスーツを着た金髪の男、もう一人は白髪の幼い少女だ。中でも金髪の男には注意しろよ。」

「ご忠告ありがとう。今日は私も失礼するわ、それじゃ。」

 

 オレが二階堂の屋敷に着く前には紫の気配は消えた。恐らく紫も気付いているだろうが、龍は他に理由を隠しているようだ。その理由がどうあれオレがその件に関わることは無さそうだが。




いかがでしたでしょうか?

今回は遂にツキが登場しました。
……なんとかここまで登場を伸ばしてキャラの特性を掴んでいたのは内緒です。

最近お風呂で侑祈と海斗が共闘するお話を思いつきました。
どのルートか、分かりませんが組み入れたいと思います。

なお引き続き活動報告にて「ルート分布」のアンケートを実施しています!!!

8月11日にアンケート募集終了いたします。

回答は活動報告に書き込みあるいは僕自身にメッセージをお送りください。

ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想がありましたらナァイス、ブルマ。とお願いします!
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