不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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たまにバトル物の作品を読むと憎しみの心で戦うより、無の心で戦う方が強かったりする。

わからなくは無いのだけど、たまには邪悪な心のままで強いキャラとか見てみたいな。

……そんなキャラがいたら多分、退場するんでしょうけどね。

それではお楽しみください。


第17話 「……でもな、お前がどうしてもって言うなら考えてやら無い事もないぞ。」

7月27日

 

 2年になってから色々あったが、明日から夏休みが始まる。とは言っても、あまり関心が無かったので朱美に言われるまで気にしなかったのは内緒だ。当然のことながら他の生徒は浮き足立っている。かく言うオレ自身も楽しみなんだが。

 

「じゃあ、旅行は8月10日から一週間ほどで決まり、ね。」

「うん、うん、りょーかい。大勢で旅行なんて……楽しみだねっ。」

 

 学校は午前で終わり、教室から出て廊下に出る。彩たちは既に帰宅しているので、いま近くに居るのは妙と侑祈だけ。麗華と妙もさすがに機嫌が良いのか、楽しそうに雑談をしているのが分かる。

 

「うっし、なら俺たちは海に行ったときの為に練習しようぜ。」

「なんの練習だよ? 人工呼吸か?」

「……いいな、それ。一応リストに追加しよ。」

 

 旅行先は海が有名な観光地。となれば同行者でなくても、誰かが溺れて救出なんて事になる可能性も少なくないだろう。

 

「どうせくだらない事だろうが、そのリストにはなにが書いてあるんだ?」

「えっと、夏で開放的な女を落とす言霊と夏で開放的な女のイエスサインを知る方法とか。」

「実にくだらない内容だな。お前くらいの外見なら誰かが寄ってくるんじゃないか?」

 

 侑祈の外見はそれほど悪いとは思えない。では、なぜ彼女が居なかったりモテないのか。それは近くにオレがいたりすることと、喋ると残念男子というのがバレるからだろう。

 

「それはわかるけどさ、ナンパもやってみたいじゃん。」

「なら、そんなんじゃなくて黙ってる練習しとけよ。」

「黙ってたら、ナンパできないじゃん!」

「逆ナン待ちってやつだな。」

 

 学園の門まで来るとそれぞれの帰り道に別れる。

 

「それじゃあね。」

「うん! またね!」

 

 妙は余程楽しみなようで、出来もしないスキップ? をして帰る。

 

「ありゃあ、いつかはしゃぎ過ぎて転ぶのが目に浮かぶぜ。」

 

 オレたちは普段どおり、これといった会話も無く帰り道を進んでいく。

 

「やっぱりお前でも楽しみなんだな、旅行。」

「当然でしょ、アンタだって楽しみなんじゃないの?」

「そりゃ楽しみだ。海なんて見たこと無いし、大勢で旅行なんてのも初めてだ。」

「でもよ、前に佐竹から聞いたんだが大勢で騒ぐの嫌いなんだろ。」

 

 いつもなら静かに誕生会をしていたらしいが、この前は友達と呼べるやつらを初めて招待したらしい。

 

「今でも嫌いよ。でも、知り合いと騒ぐのは悪くないかもって思い始めただけよ。」

「ふぅん。」

「一応言っておくけど、アンタも誰か連れて行きたい人がいるなら言いなさいよ?」

「お、麗華からオレを気遣う台詞が出てくるなんて。こりゃ致命的なバグだな。」

「どうせ友達の一人もいないでしょうに。」

 

 人を見下したような目で見られる。

 

「じゃあ、マブだちの亮を連れて行こうぜ!」

「本気で言っているの?」

 

 感情の篭らない言葉で却下された。さすがにまだ根に持っているみたいだ。ま、あんな事されれば一生許す事なんてなさそうだけど。

 

「冗談だ、軽いジョークじゃねぇか。なら、えっちゃんとみっちゃんは?」

「出来なくは無いけど、彼女たちが断わるんじゃないかしら。」

「……いや、最近のあいつ等は逞しいからな。来るかもしれないぜ。」

 

 なんつーか、ハングリー精神が1次元上昇した感じだしな。

 

「もうちょっと、普通の友達はいないの? サッカーボールとかラグビーボールとか。」

「オレはどんだけ痛い子なんだ。友達を蹴るほど落ちぶれてねぇ。」

 

 したとしてもボディブローくらいだ。

 

「そう? アンタなら鈍器で殴ったりしてるんじゃない?」

「出来なくは無いが、オレの拳自体が凶器だから鈍器なんていらん。」

「そういう台詞は成績をあげてから言わないとカッコつかないわよ。でも、よく宮川を殴ったりしてるわよね。」

「あれはツッコミってやつなんだよ。」

 

 たま~にみぞおちとか狙う場合もあるが。

 

「ツッコミって頭叩いたりじゃないの? それも手加減して。」

「ほう、そんな事を知っている癖にオレには手加減しないよな?」

「あれは躾けだから別よ。」

 

 心の弱い人間だったら虐待と感じても可笑しくないと思うぞ。

 

「なら飴と鞭って言葉を知ってるよな、そろそろ飴をくれても良いんじゃないか?」

「最高級の衣食住を提供してあげてるじゃない。」

「そりゃそうだが、もっとこう小説とか、小説とか、小説とかあるだろ。」

「……小説しかないじゃない。」

 

 それ以外に欲しいのなんて思いつかないからな。

 

「おかえりなさいませ、麗華お嬢様。」

 

 二階堂の庭に入るといつものようにツキが出迎える。

 

「ただいま。」

「それと海斗にお客さんが来てる。」

「よぉ、遅いぞ朝霧。」

 

 龍は結構な時間待っていたのか、ベンチに腰を下ろしている。

 

「来るなんて連絡貰ってねぇし、当然だろうが。」

「出来ればどこかのスペースノイドみたいに驚異的な勘で分かって欲しかったですね。」

「残念ながら地球人なんでな。」

 

 隣には射命丸が同じく腰を下ろしている。なんともまぁ、オープンなことで。

 

「海斗は人間じゃないと思うんだけど、色々とね。」

「あぁん? 人間以下だって言いてぇのかよ。」

「誰もそんなこと言ってないじゃない。」

 

 さらには紫までベンチに腰を下ろしていた。

 

「自分自身でそう感じていた、ということでしょうかね。」

「そう卑屈になる必要はないぜ、朝霧。」

「なってねぇよ!!」

 

 と、なんだかんだで漫談をしたが明らかにツッコミを入れなくてはいけない点があるのに気付く。

 

「龍と射命丸は分かるが、なんで紫も居るんだ?」

「もちろん、暇つぶしに決まってるじゃない。」

 

 いつものことか。

 

「……男性の方はこの前見たけど、女性のお二人は見覚えが無いわね。」

 

 さすがの麗華も好奇心のほうが少し勝っているみたいだ。

 

「……お前紫が見えるのか?」

 

 オレは紫を指して、麗華に訪ねる。

 

「実際ベンチに座ってるんだし、当然見えるわよ。」

「あっそう。」

 

 既に見えてしまっているのなら、何もすることは出来ない。紫に軽く目線を送り、真意を確かめようとする。

 

「この屋敷に住んでいる方々になら平気だと判断したまでよ。なにをするにしても障害にはなりそうもないしね。」

 

 普段会話するときの雰囲気と違っていたからか、麗華は横槍を入れてこない。

 

「じゃあ私は先に戻ってるわ、出掛けるなら帰りは遅くならないように。」

 

 どうやら気を利かせて部屋に戻るようだ。

 

「なぁ、こいつらは南条で世話になったんだ。旅行に連れて行っても構わないか?」

「……アンタが世話になったんなら仕方ないわね、数人程度なら許可してあげるわ。」

 

 そう言うとそのまま部屋に向かう。

 

「そうか、サンキューな。」

 

 麗華に旅行参加と外出の許可を貰い、龍たちのところへ向かう。

 

「急で悪いが、8月10日から一週間ほど旅行に行くんだがおまえらも来るか?」

「そりゃ男の俺としちゃ願っても無いが、係わり合いが無いからな。」

「その辺は心配しなくていい、なんせお人好しの集まりだからな。それに日本に来たんだ観光地の一つや二つ行っても損はしないだろ。」

「……とりあえず詩音にも聞いてみないとな。後日連絡する形でいいか?」

「ああ、早めに連絡をくれればそれで構わない。」

「了解した、なら連絡先を教えてくれ。それと場所はどこなんだ?」

 

 龍に言われて携帯を取り出し、手渡す。

 

「勝手に登録してくれ、場所は浅海ってとこだったかな。」

「浅海……か。」

 

 聞き覚えがあるのか、普段とは違い複雑な表情だが聞くほどでもないだろう。

 

「で、おまえらはどうする?」

「私は行きたいのですが……コレばっかりは厳しいですね。」

「あなたたちと行けば必ず目立つからね。」

 

 目立ちたくないって言ってるわりには良くこっちに来てる気がするんだが。

 

「おまえらは事情があるからな、仕方ないだろう。」

「逆に海斗さんがまた来てくれればいいんですけどね。」

「……旅行が中止にならないかぎり、可能性としては0に近い。」

 

 それこそ自然災害や急なトラブルが無い限りな。

 

「おし、登録完了だ。」

 

 龍から携帯を受け取る。

 

「それじゃ、今日は用事があるからこれで失礼する。多分、夕方には連絡すると思う。」

「さて、じゃあ私たちも行きましょうか?」

 

 意外にも三人の目的は同じようで、紫と射命丸も揃って外へ向かう。

 

「なんだ? お前たち三人でどっかに行くのか?」

「はい、街の見学にです。」

「奇遇だな、オレも街まで用事があるんだ。」

「じゃあ海斗さんも一緒に行きましょうよ。」

「途中までならな。」

 

 オレたちは四人で二階堂を出て、街へ向かう。

 

「それにしてもなんでお前たちと龍が一緒にいたんだ?」

「もちろん、偶然よ。」

 

 特に表情も変えずに即答する。

 

「なんでかな、紫が言うと偶然さが欠片も感じられないんだが。」

「それは私も感じますけど、本当に偶然なんですよ。」

「お前が言っても全然変わらん、むしろ悪意を感じるぞ。」

「そんで、お前はどこに行くんだよ?」

「禁止区域だ。」

 

 そう言う可能性が無いわけじゃないと思ってたけどな。ある程度、生活に必要な場所を回ればこれと言って見学する必要は無い。暁東市は観光地でもないしな。となるとボディーガードを仕事にしている以上、危険と思われる場所を気にかけるのは当然と言ってもいい。

 

「やっぱりな……ひょっとしてお前たちもか?」

「私はまたデパートに行こうと思ってただけなんですが。」

「ええ、使いがっての良い品物があれば持って帰ろうかと思ってたの。」

 

 幻想郷の生活水準を考えればデパートが気になってもおかしくないか。どうやら、オレの考えすぎだったみたいだな。

 

「あの、禁止区域ってなにがあるんですか?」

「見るべきものは何も無い場所だ、おまえらは気にするな。」

「その言い方だと朝霧も行ったことがあるようだな、考える事は同じか。」

「ま、ボディーガードの勉強をしてれば嫌でも興味はできるからな。」

 

 気がつくと繁華街を歩いていて、龍は立ち止まる。

 

「それじゃ、俺はこの辺で。」

「一応言っとく、気をつけろよ。」

「ああ、気をつけるさ。一応な。」

 

 そう言うと龍は細い路地に向かい歩いていく。

 

「それじゃあ、私もこの辺で別れましょうか。」

「デパートに行くんじゃなかったのか?」

「と思ってたんだけど、繁華街も見ておきたいのよ。だから文は先に行っておいて頂戴。」

「そういうことならわかりました。おそらくカメラコーナーに居ますので。」

「で、そう言う海斗はどこに行くのかしら?」

「……デパートだ。」

「海斗さんもデパートなら一緒に行きましょう。」

 

 目的地が一緒だと分かると射命丸が同行を求めてくる。

 

「それじゃ、文をよろしくね。」

「ったく、わかったよ。」

 

 紫には何かやる事があるようだが、気にしていても仕方が無いだろう。オレは射命丸と共にデパートを目指して歩き始める。

 

「海斗さん、今日はクレジットカード持ってないんですか?」

「持ってねぇよ。」

「残念です、持ってたら拝借しようと思ったんですが。」

「まだ諦めてねぇのな。」

 

 回りに人が居なくなるのを確認して紫は移動する。

 

「さて、海斗も行ったことだし会いに行きましょうか。」

 

………。

 

……。

 

 射命丸とは別れて、オレは立ち読みをしている。それに、さっきのこともあったので禁止区域について少し調べてみた。危険だと言われていても、見物に行く奴等は多い。そういった一般人からの情報がネットを使えば誰でも観覧する事が出来る。だが、その情報はどれも些細な事に過ぎない。どれもが上っ面だけの情報だ、嘘では無いが真実は他にある。

 

「そんなことより、この状況を何とかしないとな。」

「あれ? 海斗さん、なにをしていたんですか?」

 

 カメラを見終わったのか、射命丸が合流する。

 

「なにって、ただ立ち読みしたり、インターネットを使ってたりだな。」

「おかしいですね、その行動をしても警察沙汰になるとは思えませんが。」

「いや、ほんと。オレもそう思う。」

 

 そう言うオレを数人の警官が取り押さえている。近くには膝をついて、顔を抑えている男といつもこの時間に本屋のレジをしているおっさんが倒れていて少なくともこの状況だけを見ればオレが何かしたんだろうと思われても仕方が無い。

 

「……嘘なんて吐いてませんよね?」

 

 当然ながら、真偽を確かめるため質問してくる。

 

「なんで吐く必要があるんだよ。オレは争いを好まないんだ。」

 

 表に来て、下手に暴れても余計にややこしい事になるってのが分かったからな……経験者は語るってやつだ。

 

「例えば買おうと思った本をレジに持っていくとき、誰かとぶつかって本が汚れたらどうします?」

「とりあえず両足折って逃げられなくした後に、顔が判別できなくなるほど殴る。」

 

 射命丸の馬鹿みたいな質問に馬鹿みたいに答える。ま、本当にする可能性もあるけどな。

 

「…………。」

 

 すると周りにいる警官共が急に力を強めてオレを押さえ込む。

 

「貴様、前科持ちだろ?」

「その声と顔なら暴力を振るっても違和感ないしな。」

「まてまて! 今のは明らかな誘導尋問だろうが! それに外見で判断するんじゃねぇって。」

「そうですねー、暴力を振るっても不思議じゃないですね。」

 

 分かるように明らかな棒読みだ。

 

「てめぇ……わざとやりやがったな。」

「では、紫さんと待ち合わせしているので失礼しますね。」

 

 写真を少し撮ったかと思えば、そのままカメラコーナーに向かおうとする。

 

「あ、カメラを買ってくれるというのであれば弁護しても構いませんよ?」

「生憎と脅しには屈しないようにしてるんだ。」

「そうでしたか、じゃあ今日はこれで。」

「……でもな、お前がどうしてもって言うなら考えてやら無い事もないぞ。」

 

 妥協案を出すが、それに応じず射命丸は離れていく。

 

「え? ねぇ、マジで放置すんの? なんだったら最新型を知り合いから貰う事も出来るかもしれないんだけど?」

「そうですね。最新型も良いですが、生憎と今はこれで満足しているので大丈夫です。」

 

 立ち止まり振り返ったと思えば、わざわざ断りを入れるとはな。言うだけ言って、スッキリした表情をしながらエスカレーターで上の階へ。

 

「くそう、こうなったら仕方が無いか。大人しく従うとしよう。」

 

 オレを抑える警官はやれやれといった感じで連行していく。もちろん警察署に行って事情を話すとすぐに帰された。

 

「すげー時間を無駄にした気分だ、せっかく小説を読んでたのによ。」

 

 特に何も無く、警察署まで出るとポケットに入っている携帯が鳴る。

 

「あ? 電話……じゃなくてメールか。」

 

 そのメールの差出人は龍で、内容は旅行に参加させて欲しいとの事だ。

 

「よく、あの女も一緒に行く気になったよな。いったいどんな方法を使ったんだか。」

 

 今日はもう時間が遅いから、後日改めて挨拶に来るようだが詩音も来るんだろうか?

 

「了解って返しておけばいいか。」

 

 慣れない手つきでメールを打ち、すぐさま送信する。

 

「さて、あんな中途半端に読書を止められたんだ。読破しにデパートに戻るしかないよな。」

「……もし、射命丸がいたら麗華で言うところの躾けを実行させてもらうとしよう。」

 

 こうして無事、読みかけの小説を読破することに成功したオレだったがデパートから帰る頃には日が暮れていた。急いで帰ると何とか晩飯には間に合うことが出来たものの麗華から壮絶な躾けをされたのは言うまでもないだろう。




いかがでしたでしょうか?

本来であれば尊姉と遭遇していましたが、色々漫才をしたことで時間がずれてしまったようです。

たまに幻想入り動画を見たりしてますが、やっぱり良いもんですね。
誰かが作ったのを読んだり、見たりするのは楽で。

ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想がありましたらヴォルテック、ヒートッ!とお願いします!
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