不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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物事に完全は無い。

何かを作るにしても間違いが無いか見直す。
その日は何も見つけられなくても、月日が経てば見つけてしまうかもしれない。

今日の自分に出来なかったことがあったとしても明日の自分には出来てるかもしれない。
それは昨日の自分に出来なかったことを今日の自分が出来たから。

それではお楽しみください。


第20話 「生憎と手加減はしてやれねぇ日でなっ。」

7月31日

 

「と、言うわけで今日はこのプラン通りに行動してもらう。」

「おう……って納得できるかっ!」

 

 両手を思いっきり頭の上まで振り上げる。今すぐちゃぶ台をひっくり返したいが部屋の中にあるわけでもないし、気分だけ味わうためにジェスチャーで表現する。

 

「相変らず訳の分からない行動をするな、貴様は。」

「勝手に人の予定を決めるんじゃねぇよ、それにあたかも説明したかのように話すのはやめろ。」

 

 誰だって何の説明も無しに予定を決められたらちゃぶ台くらいひっくり返したくなるだろ。

 

「仕方がない、もう一度言うからちゃんと聞いておけ。」

「一回も聞いてねぇから。」

 

 尊にしては珍しくオレの自室を訪ねて来たので仕方なく少しばかり真面目に耳を傾ける。

 

「ボディーガードはプリンシパルの身を守る事が使命だがそれだけじゃない。プリンシパルの体調も気にかけなくてはならないのはわかるな。」

「耳が腐るほど聞かされたぜ。」

 

 ボディーガードは外的要因から対象者の命を守ることが主な役割だが、体調面でも異常が無いか気にしなければならない。例えば、逃がすとき体調が悪いにも関わらず無理をさせて死んでしまっては笑い話にもならないだろう。

 

「海斗如きでも分かると思うが、中里が来てからお嬢様方に疲れが見えるだろう?」

「そりゃあんだけ露骨に嫌ってれば誰でもわかる。」

 

 亮の様子を見る限り嫌悪感を抱くほど態度が悪いって事でもないんだが。

 

「そこでだ。僕としてはあまり取りたくない手段だが、少しの間でも中里から離すために外出を許可しようと思う。」

「おお……ボディーガード鉄仮面であるお前からは想像もしない提案だ。」

 

 前までの尊なら外出なんてさせなかっただろうに。二階堂に来たことで良い方向へ変わって行ってるのかもしれないな。

 

「鉄仮面は余計だ。そこで彩お嬢様に訪ねたところ行くのであれば柏も一緒にと言われたんだ。」

「はぁん。そこでオレが柏の面倒を見ろって事か。」

「僕としては騒がしくなる原因である海斗を連れて行きたくは無いのだが、僕自身が柏の相手をするわけにはいかない。」

「なんだよ、また気品が云々ってことか。」

「よくわかったな、そのとおりだ。」

 

 ツキはともかくとして、柏は禁止区域の出身だろうから当然か。

 

「外出と言っても公園や繁華街を歩くだけだが、柏とも会話をしないと彩お嬢様が悲しまれるからな。」

「いいんじゃないか。麗華と違って彩は歩きたいにも関わらず車だったりするし。」

 

 どこかの過保護な尊のせいで。

 

「でも、麗華はどうするんだ?」

 

 お嬢様方ってことは麗華も含まれているはずだ、だが麗華が外出するとなると無条件に亮が付いて来てしまう。

 

「……麗華お嬢様は、屋敷に残って下さるそうだ。自分が行けば中里が付いてきてしまうからと。」

 

 顔に力を入れて妙に芝居がかったように泣くのを堪える尊。本人はそんなつもりじゃないんだろうけど。

 

「ま、登下校で歩いてるし当たり前だよな。」

「彩お嬢様の為にご自分を犠牲にするとは……さすがお優しい麗華お嬢様だ!」

「麗華に関しては相変らずか。」

 

 彩との関係が良好になりかけてるだけマシなのかもしれない。

 

「その話しが出たって事は許可は当然―」

「ああ、昨日中に許可は貰ってある。」

 

 随分と手回しがいいこった。

 

「そういうことなら協力しよう、今から行くのか?」

「ああ、準備が出来たら庭に来てくれ。」

 

 尊は伝えるべき用件を伝え終わるとそそくさとオレの部屋を出る。

 

「ってなんで貴様も外に出てくるんだ!」

「だって準備って言っても外出用のスーツは着てたし、終わってたんだよ。」

 

 持ち物は強いて言うなら携帯くらいなもんだし。

 

「そこは空気を読んで遅れて来たりするんじゃないのか。」

「ドラマの見すぎじゃね? 柏が居ないで尊だけだったら彩とこっそり外出して置いてってやるけどな。」

「ふん! 置いて行かれるなら常に見張っているさ、海斗に遅れをとるはずも無い。」

 

 勝ち誇った顔で廊下を歩く尊。驚きを隠せずに立ち止まってしまうオレ。

 

「……そんな堂々と彩のストーカー宣言されるとこっちも対応に困るぞ。」

「なぜそんな解釈をするんだ、貴様はっ!」

 

 すぐさま怒りの表情に変わり、オレの胸倉を掴んできた。

 

「彩を見張るんだろう? それって完全なるストーカーじゃん。」

「見張るのは彩お嬢様ではない! 海斗のほうだ!」

 

 近くにいたメイドや執事たちは尊を汚い者を見る目へと変わっている。

 

「そんな……同性ですのに宮川さまも海斗さんを狙っていたんですか?」

 

 廊下を歩いてるといつの間にか彩と柏に遭遇し、合流していたようだ。

 

「男でも平気だが、まさかお前からそう思われていたのは分からなかったぜ。」

「かいとは男にもモテるんだね。」

「全然嬉しくねぇな。」

「か、勘違いしないでくださいっ、これは……海斗の言葉遊びに付き合ってやっただけです。」

 

 彩が居ると分かったら、胸倉を掴んでいた手はいつの間にか離れていた。

 

「冗談ですよ、宮川さま。」

 

 亮が見える距離にいないからか、少しだが彩の顔が和らいでいるように見える。

 

「そうだと良いですけど、それより準備の方はいいのですか?」

「はい、海斗さんたちの声が聞こえたので見に来ました。ねっ、柏。」

「うん、どうせなら一緒に玄関を出ようと思って。」

「中々に考えてるじゃないか、なぁ尊。」

「……そうだな。」

 

 なんだかんだでオレたちは四人で屋敷を出て、外へ向かう。

 

「行き先は決めてあるのか?」

「これと言って特に決めてある訳じゃないですけど、とりあえず公園に行きたいです。」

 

 前を歩いている彩の手を見るといつの間にか柏と手を繋いでいる。

 

「繁華街とかは見慣れてるし、散歩するなら自然が多いに越した事はないか。」

「……。」

 

 尊は何も言わずに彩と柏の手を見つめる。

 

「そんなに手を繋ぎたいならオレと繋ぐか?」

「誰も手を繋ぎたいだなんて言っていないっ。」

「わーってるよ、そんなに気にすんなって。別に繋いだからって手洗いすれば済む話だろう。」

 

 尊が彩の護衛を始めてからは他人が触れる事を注意していたから気になっているようだ。

 

「貴様に言われなくても分かっている。」

「だといいけどな。」

 

 それぞれ喋っているとあっという間に目的地である公園に到着した。

 

「それにしても暑いというのに人が多いですね。」

 

 今日の気温はまだ夏本番じゃないのでそれほど暑くはないはずだが、それでも暑い。それに加え夏休みで人も多く、人口密度も普段より高くなっている。

 

「海斗さん、宮川さま、お花を見に行っても宜しいでしょうか?」

 

 公園に来たのが久しぶりだからか、屋敷に居たときより眩しい笑顔を見せる。

 

「見たいなら勝手に行けばいい、オレたちは離れすぎないようにしておく。」

「ですが危険なものにはあまり触れないようにお願いします。」

「ありがとうございます、柏も行きましょ。」

 

 彩が柏の手を引っ張り連れて行く。知り合って間もないが、あそこまで積極的な姿は初めて見る。

 

「訓練校に居たときは夏休みも少なかったからあんまり考えなかったが、学校が休みだと暇だな。」

「僕たちは居候させてもらってる分これでもマシだろう。他の生徒たちは一日中自由に行動している。」

「たとえペアにされたお嬢様が出かけることになっても普段は正式な護衛がついてるからか。」

「だからその分、僕たちはより多くの経験が積めるというわけだ。」

 

 本気でやるなら必要なんだろうけどな。

 

「あれあれ? 朝霧くんと宮川くんじゃな~い!」

 

 少し前から気付いていただろうに飄々とオレたちに近付く。

 

「おはようごさいます、柊先生。」

「どうして公園なんかにお前が居るんだ? 教師ならずっと学校に居ろよ。」

「ひどーい、教師だってたまには休みが必要なのよ、それより朝霧くん! どうして電話に出てくれなかったの?」

「二回着信があったが、アレはお前か。」

 

 どおりで知らない番号だったわけだ。学校から電話が来た事なんてなかったし。

 

「まてよ、オレの電話番号なんて教えてないぞ。」

「だって名簿で二階堂さんに電話してわざわざ聞いたんだもん。」

「そんなに急を要する用事が海斗なんかにあったんですか?」

「なんかってなんだよ、オレでなくちゃ出来ない仕事でもあったに違いない。」

 

 それはどんな仕事なのかと聞かれたら答えるのに2日ぐらい掛かりそうだけどな。

 

「誰でも良かったんだけど確実に暇そうなのが朝霧くんくらいしか思いつかなくて。」

「なるほど。夏休みであれば麗華お嬢様が外出しない限り暇ですからね。」

 

 尊は納得したようで大きく頷く。

 

「おいおい、これでも最近は後輩の相談に乗ったりして忙しいんだぜ?」

「正確には後輩の幼なじみからだろ?」

「後輩で問題児と言うと……」

 

 オレたちの会話を聞き、朱美はその後輩が誰なのか考えている。

 

「教師なら当然、生徒の名前ぐらい覚えてるよな?」

「ズバリ、林真己登くんでしょ。彼って中々職員会議の話題にでるし。」

 

 さすがに佐竹を殴るほどだし、教師たちに知られていて当然か。

 

「じゃあ私はそろそろ行くわね。夏休みだからって浮かれて体調を崩さないように。」

 

 時計を見てからだったので恐らく、待ち合わせの時間が近付いてきたのだろう。

 

「なに教師みたいな事言ってんだよ。」

「今日は休暇だけど教え子の前じゃ、いつでも教師なんだから。」

 

 そう言いながら朱美は歩いて公園を後にする。

 

「いいかげんな事言いやがる。」

 

 すると突然、ポケットに入れてある携帯から音が鳴り響く。

 

「噂をすればなんとやら、かもしれないぞ。」

 

 携帯を取り出し相手の名前を見てから電話に出る。

 

「何かあったのか?」

「この前お話した手紙の事なんですが、小春ったらその友達を呼び出した見たいなんです。」

 

 真己登は寮だし、尊たちはあんまり気にかけないだろうし。どう考えても厄介ごとに絡まるフラグってやつだ。

 

「……はぁ、今どこに居るんだ?」

「駅前です。」

 

 確か交番があったし、あそこなら人通りも多い。一応、危ないって認識はあるみたいだ。

 

「わかった、今から行く。少しまってろ。」

 

 そのまま通話をやめて携帯を閉じる。

 

「つーことで少し駅前まで行って来るわ。」

 

 近くにいる尊に伝える。

 

「まったく、彩お嬢様より後輩の幼なじみを優先するとは。」

「お前が傍にいれば心配することは無いだろ?」

「……彩お嬢様には伝えておく。」

「わかった、屋敷に戻るときは連絡してくれ。」

 

 特に急ぎの待ち合わせでもないだろうし、歩いて駅前に向かう。

 

「朝霧さんっ、お待ちしてました。」

 

 駅に着くとオレが見つけるより早く紗代のほうから話しかけてきた。

 

「その友達はもう話し合ってるのか?」

「いえ、まだ来てないので待ってます。」

 

 紗代が先に歩き、交番の近くで歩みを止める。

 

「どうしてこんな男を呼んでくるのよ、紗代。」

「だって、危ないよ……。」

「ま、そう怒るな。本当に一人で会うつもりか?」

 

 この前の話を聞いた限りだと素直に応じる連中とは思えない。

 

「もちろん。こう見えても空手やってるし一人や二人殴ってやるわ。」

 

 相手がその人数だったら良いんだけどな。

 

「そうか。それでも人気のない場所に行ったりするのはやめた方がいい。」

「そんな事言われなくても分かってるわよ!」

 

 オレがなにを言っても聞かないか。

 

「わかってんならいい。じゃあオレは用があるから帰るぜ。」

「ちょ、ちょっと待ってください朝霧さん。」

 

 紗代が追いかけてくるが知らないふりをしてそのまま歩く。そして小春に声が聞こえない場所まで離れてから立ち止まる。

 

「見たとおりオレが忠告しても聞かないだろうし、お前から再度言っておけ。」

「朝霧さん、用事があるのにすみませんでした。」

「気にするな、それと何かあったらすぐに連絡しろ。真己登は電話に出れないだろうしな。」

「はい、ありがとうございます。」

 

 駅前を離れて公園に戻る最中に携帯を見るとメールが届いている。差出人は尊。

 

「もう屋敷に戻っちまったか、じゃあオレも戻るかな。」

 

 陽射しが強いこともあり、屋敷に戻ったみたいだ。運動も十分にしていない温室育ちの彩じゃ数十分も外に出れば疲れても無理はない。涼むだけならデパートにでも行けばいいが、尊なら屋敷に戻るだろう。繁華街から住宅街に入り、周りに人気が無いことを確認する。

 

「……できればあいつ等のこと見ててくれ。」

「それは私に対する依頼と解釈しても?」

 

 紫は声を掛けられるとわかっていたのか、すばやく返答する。

 

「解釈するのは勝手だが生憎と報酬になるような物は持ってないぜ。」

「なら、海斗の宝物を頂戴。」

「宝物なんてもんはねぇけど、本なら一冊くれてやる。」

「……見てるだけならそれくらいの報酬で構わないわ。じゃあ何かあったら呼ぶわね。」

「ああ、部屋に篭ってるだろうからいつでも良い。」

 

………。

 

……。

 

 屋敷に戻ってから特にやる事もなかったので小説を読んでいると外はいつの間にか暗くなっていた。どうせ何もなく、小春たちが家に帰れば紫から連絡が来るだろう。そう思い続きを読み始めようと視線を小説に移した時だった。

 

「残念ねぇ、私もそれを望んでたんだけどそうは行かないみたいよ。彼女たち追いかけられてるわ。」

 

 紫がオレに伝えると同時に着信が来る。

 

「どうした?」

「あ、朝霧さん……こ、小春が大変なんです!」

「今どこに居る?」

「え、えっと……大人の店が沢山あって……ど、どこなのかは。」

 

 声を聞く限り、紗代自身も追われて間一髪逃げれたといったところか。

 

「わかった、とりあえずすぐ行くから電話切らずに待ってろ。」

 

 部屋を出て正面玄関から出る時間も惜しいため、やむを得ず窓から飛び降りる。

 

「普段の海斗からは想像も出来ない行動ね。」

 

 2階から飛び降りてすぐに大人の店が多くある路地へ向かう。

 

「詳しい場所、分かってるなら案内しろ。」

「スキマで送ってって言わないのね。」

「言ったらタダで送ってくれるのか?」

「もちろん追加料金発生ね。」

「だったら走るだけだ。」

 

 急ぐ必要があるため、他人の目を気にせず走る。どうやら案内をしてくれるようで、紫もついてくる。

 

「紗代!」

 

 案内があったおかげで、時間を掛けずに紗代を見つけることが出来た。

 

「あ、朝霧さん! 小春がこの先にっ。」

 

 その指差す方向には懐かしさを感じる場所に通じているのが分かる。

 

「……とりあえず駅前でこの女と一緒に待ってろ。」

 

 紫を指差す。

 

「仕方ないから見といてあげる、早く行ってらっしゃい。」

 

 この状況で紗代に認識させないほど空気が読めないわけでもないようだ。

その言葉を聴いて、オレは小春が進んだ道を進む。細い路地を進んで行くと男の悲鳴が聞こえてくる、恐らくすでに生きてはいないだろう。男を生かしておいてもその価値はあまり無い。たまに価値を見出す奴もいるけどな。男の悲鳴を頼りに進むと遠目だが女を確認する事ができる。幸いにも服が破れて、意識が無い程度で済んでるみたいだ。

 

「悪ぃな、今回はお預けだっ!」

 

 そのまま速度を落とさず、小春に乗りかかろうとする男を蹴り飛ばす。男は吹っ飛ばされるとそのまま意識がなくなったようでピクリとも動かない。そして周りにいる奴等はオレという男が現れた事で標的を小春からオレへと移す。周りにあるのは人間だった物と動いている人間が数人。

 

「表の人間が調子に乗るんじゃねぇ!」

 

 一人の男が声を発しながら拳を振るう。多少余裕がある状況でそれなりの腕前があればわざと食らってやるのも面白いが。

 

「生憎と手加減はしてやれねぇ日でなっ。」

 

 表の連中とは違い、ここで生きてきただけあって手加減は感じられない。それでも男の拳は威力もなければ速度もなく、カウンターをどうぞと言われているようだったので容赦なく男の顔を思いっきり殴る。どんなに鍛えても顎を殴られて脳が揺さぶられれば立っていることは難しい。ましてや身体を鍛えてるわけでもないような男はすぐさま意識を飛ばして崩れ落ちる。

 

「テメェ……生かして―」

 

「返してくれねぇんだろ? だったら動けなくさせてやる。」

 

 格上であるオレを目の前にして、チンタラ喋ってる男の顔を殴り、何も言わずにただ体当たりを仕掛けてくる男には蹴りを食らわせる。

 

「つ、強ぇ……。」

 

 四人ほど意識を絶てば勝手に周りが怯え始める。近くに区域をまとめている実力者が居なければこの程度で十分だ。

 

「この近くに居なくても今の奴等が誰かを呼んでくるってことも考えられるし、早いとこ駅前に行かせてもうぜ。」

 

 男たちが去っていくなか、オレは小春に上着を着させて背中に背負う。

 

「とりあえず最悪な事態にならなかったのは良いが、問題はこの後だよな。」

 

 夜遅くの外出でさらには無断で窓からとなると説明を求められても少し困ることになりそうだ。

 

「こ、小春っ!」

 

 駅前に着くと紗代が駆け寄ってくる。

 

「服が破れたりしてるが、怪我は無い。ただ精神的にはくたびれてるだろうが。」

 

 小春を降ろして、紗代に預けながら経緯を軽く話す。

 

「……ん。さ、紗代? ……ひっ!」

 

 意識が戻ると先程のことを思い出したのかオレを見て怯える。

 

「とりあえず早いとこ帰れ、それと今日くらいは一緒に居てやったほうがいい。」

「はい、ありがとうございましたっ!」

 

 紗代にそう言い残して少し急ぎ足で屋敷へ向かう。

 

「今日は助かった、サンキューな。」

「でも、見てただけで止めなかったし。そんなこと言われる覚えがないんだけど。」

 

 感謝の言葉を一応は言ったものの、紫が言うとおり何もしていないので微妙ではある。

 

「それでも、お前に紗代を預けた事で自分のことに集中できたからな。」

 

 もし紫が居なければ、小春の事を心配しすぎてその場に留まって他の奴等に目をつけられていたかもしれない。

 

「そう、その言葉が聞けただけで依頼を受けた甲斐があったわ。」

「なら、本を1冊ってのは無しにしないか?」

「それとこれとは話しが違うわよ。」

「あっそう。」

 

 報酬は本を1冊だったし、オレが誕生会で書いた本でもやればいいだろう。そうだ! 直筆のサインをつければ価値が跳ね上がり、逆に何かをもらえるかもしれないしな。




いかがでしたでしょうか?

戦闘描写をしましたが相手が弱い事もあって、高度な戦闘ではありませんでした。

久しぶりにこの物語を構想したときにやりたいイベントをやることが出来て……満足ですっ!!

因みに言うとこのほかに実現できているイベントはエア早苗だけだったり。多分。

さてさて、結局ストックなんて出来なかったのでマイペースに進めていきます。

読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想、ご指摘がありましたらお気軽にメッセージ等にお願いします。
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