不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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最近は台風が多く、そのせいで雨も風も強い日が続きました。

そのお陰で気温も日に日に落ちてきています。

ですがまた数ヵ月後には熱い熱い夏が来ると思うと気分が落ち込んでしまう事があります。

嫌な事はいくら時間が経っても忘れにくいですね。

それではお楽しみくださいませ。


第21話 「面倒ごとは嫌なので、見かけても連絡しません。」

8月1日

 

「おはようかいと。」

「おう、意外に早起きなんだな。」

 

 何をする事もなくイスに座っていると柏が部屋に入ってきて、お互いに軽く挨拶を交わす。

 

「お仕事しなくちゃいけないから。」

「そういや仕事って何してるんだ?」

 

 挨拶を終えると仕事まで少し時間が余ってるようで、ベッドに座る。麗華に住めるよう頼んだときに手伝いという名目でと言っていたが、子供にやれることは限られてくる。

 

「ツキにやり方を教えてもらいながら屋敷中を掃除してるの。それで今日はやすたかの手伝い。」

 

 掃除の事はアイツの右に出る奴は居なさそうだし、適役だな。少し前だが神崎の道場を掃除するときもツキの助言無しでは捗らなかっただろう。

 

「やすたか? そんな奴居たっけか。」

「庭でお仕事してる大きい人。」

「安藤のことか、それにしても呼び捨てかよ。それで安藤には何を教えてもらってるんだ?」

「雑草を抜いたり、水あげたりのお手伝い。昨日なんてヒラヒラした雑草を抜いたら泣いて喜んでた。」

「ヒラヒラって……それ雑草じゃなくて多分花じゃないのか。」

 

 きっと前任の庭師に泣きながらすみませんと繰り返していた事だろう。

 

「そうなの? 花なんてあんまり見た事ないからわかんない。」

「確かにあそこじゃ滅多に見かけないしな。」

「それと翔子とも遊んでるよ、話しを聞かせてもらったりして。だけどたまに怪我が増えたりしてるの。」

「目が見えなくて、慣れていない屋敷に住んでれば多少の怪我は仕方ないだろ、しかも手伝ってもらう様子も無い。」

「そういう傷も増えてるけど、そうじゃなくていじめられてるような傷が増えてる気がする。」

「お前がそう思うなら、そうかもしれないな。出来るとすれば亮だけか。」

「かいと、翔子をたすけてあげられない?」

「亮が関わってるならそれなりの確証が必要になるからな、お前が傍にいて何かあったらすぐに呼べ。」

「うん、そうする。それじゃ仕事の時間だから、また後でねかいと。」

「言って来い、ほどほどに頑張るんだぞ。」

 

 柏の頭を撫でて、部屋から送り出す。

 

「朝から幼い子を拉致、監禁とは大胆ですね。早速通報をば。」

 

 隠れて覗いていたのか、ツキはすぐさま携帯を取り出す。

 

「朝っぱらから何言ってるんだ、向こうから来たんだからセーフだろ。」

 

 コイツは本気で通報する場合があるので注意しつつも、会話を続ける。

 

「来るものは拒まず、去るものは負わず?」

「わかってるなら話しは早い。」

「海斗じゃなかったらセーフだけど、海斗だからアウト。」

 

 考える仕草を一切しないで、即答で答える。

 

「なんでだよ! じゃあ尊だったらセーフだったのか?」

「……うーん、セウト?」

「どっちだよ、それ。」

「でもお金の力でセーフになる。」

 

 尊の家もそれくらいの財産はあるだろうしな。

 

「今の世の中じゃあ、それで通る事が多いってのは何か間違ってると思わないか。」

「どうやら、掃除道具たちが掃除をしたくて私を呼んでいるようなので急ぐことにする。」

「おうおう、明らかに分かるような嘘を吐くな。絡んどいて逃げ切れると思うなよ?」

「逃げるんじゃなくて、戦略的撤退。」

「言葉は違うが、意味は然程変わらないな。」

「しつこい男は嫌われるってよく言われてる。」

「しつこい男を通り越せば好まれるってのも良く言うぜ。」

「でも海斗だからアウトになる。」

「ここでもまだ続くのか。」

「普段は使えないけど、野球選手だったらきっと凄かった……かも。」

「アウト量産男としてか、オファー殺到に違いないな。」

「もちろん、自軍の限定で。」

「激しく使えない男じゃねぇか、まずプロになれるのかすら危ういぞ。」

「どうせボールを打ち返せるほどの動体視力もないんだし、身体に当てるしか出来ないに違いない。」

「なにを言う、オレほどの動体視力を持っていれば投げられた球すべてをピッチャーの顔面に打ち返すぜ。」

「そんなことしたら、きっと退場。もしくは野球界追放。」

「~界追放された男ってなんかかっこよくね?」

「全然かっこよくないけど、ロマンは少し感じる。」

「だろ。」

「じゃあ私は仕事しなくちゃいけないから、人間界を追放された物よ。」

「無駄口言ってないで早く行って来いよ、メイド界を追放された邪気め。」

 

 朝の運動? を終えるとやることも無いので最近のお気に入りである屋根の上に向かう。

 

「やっぱそんなに早くは治ってねぇか。」

 

 オレは肩を動かしたり、身体を少し捻って回復具合を確かめる。昨日、禁止区域の連中と少しやり合ったがどうやら体はまだ本調子じゃないらしい。と言ってもそんな事は些細な事で動けるのなら大差はそれほどでもない。

 

「朝に電話って事はまた朱美か?」

 

 音が鳴っている携帯のディスプレイを見るとこの前登録し直した、紗代の名前が表示されている。

 

「よう、どうした。」

「あ、あの、昨日は本当にありがとうございました。海斗さんが来てくれなかったら――」

「もういいって、気にするな。」

「はい……そ、それと小春が会いたいそうなんですが時間ありますか?」

「時間は空いてるがもう少し時間を置いたほうがいい。まだ十数時間しか経ってないんだ、急ぐ必要は無いさ。それに小春だけじゃなくお前だって相当疲れただろう。」

「そう、ですね。小春にはそう伝えておきます……。」

「男たちの事も気になってるのか?」

「……酷い事をしようとしたのは変わりありませんが顔見知りだし、気にはなります。」

 

 あの場に着いたときには既に意識を絶たれていた。すぐさま病院で治療を施せば間に合ったかもしれないがオレは小春しか連れて行っていない。その後に誰かが男たちを助けたというのは考えにくいし、おそらく禁止区域の連中に持っていかれたはずだ。が、その事実を紗代たちに言っても後味が悪いだけだろう。

 

「悪いが小春を連れ帰るので精一杯だったからな、見てないんだ。」

「そうですか……それじゃあ後日改めてお伺いします。その時は連絡しますので。」

「わかった。」

 

 通話を終え、携帯をポケットに入れる。

 

「普通の学生には刺激が強すぎるだろうに、よく連絡をするもんだな。」

「海斗……って居ない?」

 

 麗華がノックもせず入ってきたと思うとオレが見当たらない為に部屋の中を探す。トイレやクローゼット、さらにはベッドの下まで覗いている。

 

「随分と探し方が下手だな、窓が開いてるんだからそれぐらい分かりそうだと思ったんだが。」

 

 部屋の中を探しても見つかるはずも無いので自ら声を発する。

 

「……アンタが上れるとは思わなかったのよ。それでなにしてたの?」

 

 少しばかり驚いたあと何か思い出したのか、納得した表情に変わっていく。

 

「青空の下で読書してたんだよ、っと。」

 

 答えながら屋根から窓を使って部屋の中へ入る。

 

「本も持たずに読書が出来るのね。」

「オレほどになれば文章を覚えるなんて容易いことだからな。」

「それにしても何も使わず、屋根に上れるのね。」

「平均的な体力があれば誰でも上れるだろ?」

 

 恐らく麗華でも可能だろう、それなりの時間は掛かると思うが。

 

「それでなんか用か。」

「ええ、ここ最近の行動について聞きに来たの。」

「オレを束縛でもするつもりか? 外出する時は遅くなる前に帰ってこようとしてるだろ。」

「帰ってこようとしていても実際帰って来てないなら意味無いんだけど。」

「だったら倉屋敷にでも頼んで夜が来ない街にしてもらうか。もちろん地球には夜も必要だし、朝、昼、夜と切り替え可能のシステムをだ。」

 

 仮にそんな事になろうものなら賛成派と反対派で何かしらの暴動が起こるだろうが。

 

「かなりの時間を掛ければ倉屋敷なら出来そうね。膨大な研究資金を海斗が出すなら申請してもいいわよ?」

「そんな世界を見てみたいと思わなくもないがさすがに寿命で死んでるわ。コールドスリープみたいなのが出来ない限り不可能に近い。」

「錦織みたいなアンドロイドが居るんだし、想像出来なくは無いわね。」

「つか、金を出してもあの妙に出来ると思うのか? 誰かを養子にでもしない限り出来そうにないだろ。」

 

 亜希子さんの子供だし、もしかしたら数十年後には化けてるかも知れないけどな、頭脳はもちろん、体型すらも。

 

「言われて見ればそうね……って話しを誤魔化さない。最近一緒に行動してるのは南条の時に知り合った人たち?」

「ああ、出合ったのは南条のところでだ。」

 

 下手に嘘を吐いても金持ちがその気になって調べればボロが出るらしいし、詳しく言う必要は無いだろう。

 

「その人たちがどうして結構距離がある暁東市まで来たのかしら?」

「オレの知るところじゃないな、気がついたらこの辺にいたんだ。」

「アンタを追いかけてきたって事かしら。」

 

 麗華なりに探りを入れて聞いてくる。

 

「どうだろうな、とりあえず悪い奴らじゃないぜ。」

「居なくなる時は一言くらい言いなさいよね。」

「いやいや、外出するときは声かけてるだろうが。」

「……それを続けるようにって事よ。」

「わかってるって。」

「じゃあ私は部屋に戻るから――」

「今日は出かける用事とか無いのか?」

「そう……ね、これと言ってないけど。」

「昨日は彩の事もあって部屋に篭ってたんだし、公園にでも行かないか?」

「へぇ、海斗にしては良く考えた発言ね。」

「まぁな、ただし亮は連れて行くことになるが。」

「わかってるわよ、準備してくるから少ししたら迎えに来なさい。」

「ああ。」

 

 固かった表情がほんの少しだが緩んだように見える。

 

「ったく、強がりも程々にしろっての。」

 

 麗華の準備が終わるのを見計らい、自室を出る。

 

「おや? 奇遇だね。」

 

 部屋を出ると同時に亮も部屋から出てくる。

 

「聞き耳立ててたくせによくもまぁ堂々と現れるな。」

「僕としては外出を進めるなんて事を見逃したくは無いんだけど、関係修復の為に許可してあげるよ。」

「そうかい。」

 

 そのまま二人で麗華の部屋へ向かう。

 

「おい麗華、準備できたか。」

「ええ。」

 

 声を掛けると準備を終えていたため、すぐに扉を空けて出てくる。

 

「おはようございます、麗華お嬢様。お話は海斗くんから聞きました。」

「特に目的も無いから付いてこなくてもいいのよ?」

 

 亮が付いてこないように麗華は試みているようだ。

 

「でしたら僕は僕の目的の為にお供させていただきます。」

 

 そう言ってくることを分かっていたようで、麗華は歩き出して屋敷を出る。

 

「少し気になったんだけど、やっぱりアンタたちって知り合いなんでしょ?」

 

 なにを思ったのか、公園に入ると麗華は亮に尋ねる。

 

「とんでもございません。何しろ僕が日本に来たのはつい最近ですので初対面です。」

「初対面にしては随分と馴染むのが早かったように思えるけど。」

「尊なんかとは違って、大人の対応をしてたからだろう。言い返したりしてこないしな。」

「確かに、宮川とは言い合ってばかりだものね。」

 

 こんな事を言ったところで麗華から疑いが晴れることは無い。想像通りかあるいはそれを上回るほどの話でないと疑う奴は納得なんかしないからな。

 

「身近にいる大人は大体こういう対応をするんだよ……源蔵のオッサンを除いてだが。」

「旦那様は愛娘が心配で注意深く見ているだけでしょう、家族はそういうものだと思いますし。海斗くんにも家族はいるだろう?」

「……まぁな。」

「あら? 麗華さん、どこかにお出掛けですか?」

 

 三人でテキトーに歩いているとなぜか公園にいる、尊姉から声を掛けられる。

 

「いえ、気分転換に散歩です。最近はあまり歩く機会が無かったので。」

「そうでしたか。たとえ外出していても経験豊富なボディーガードが居れば心配する事はありませんものね。」

「私からしたらその逆です、態度の悪いボディーガードだけの方がスッキリするんですけど。」

 

 それを聞いたところで亮の表情は崩れない。オレ以外の人間が一人でも居ればその表情が変わる事は無いだろう。

 

「ところで、清美さんはどうして公園なんかに?」

 

 疑問に思って当然のことを麗華は訪ねる。交番勤務のような奴ならパトロールくらいするだろうが、尊姉はスーツを着ているところからすると事件を捜査する役職だろう。

 

「亮がなんかの事件で主犯格だったりしてな。」

「そんな事を言い始めるってことは海斗くんが事件に絡んでたりするのかな? 仮に僕が主犯格なら海斗くんみたいな優秀な部下は願い下げするけど。」

「オレも同感だ。頭の回る奴ほど面倒くさい奴はいねぇ。ま、どうせ証拠集めとかなんかだろ、警察がただウロウロするだけってのは考えにくい。」

 

 少なくともオレや亮の様子を見に来たって事も考えられるかもしれない。

 

「まぁ、そんなところね。考える事も大事だけど事件を未然に防ぐためには足を使わないと。」

「なるほど。清美さんのような警察官が居るからこそ僕たちは安全に暮らしていられるんですね。」

 

 清々しいほどの笑みで亮が答える。麗華はと言うとこの前の誘拐があってか、複雑な表情を少し見せていた。

 

「もし不審な人物を見かけたりしたらすぐに通報をお願いするわ。」

「ええ、わかりました。」

「僕もたまに外出するので、見かければ連絡します。」

「面倒ごとは嫌なので、見かけても連絡しません。」

 

 真面目な話しをしていたようで尊姉は持ち前の威圧感をオレに向ける。麗華や亮も呆れた表情だ。

 

「軽いジョークじゃん……もちろん、速攻で通報するぜ!」

「まったく、冗談を言う雰囲気じゃないでしょうに。」

 

 オレとしては全ての市民が協力的じゃないって事を教えたかっただけなんだが。

 

「それでは用事がありますのでこれで。尊徳のこと、よろしくおねがいします。」

「気には留めておきます。それではお仕事頑張ってください。」

 

 尊姉は軽く頭を下げてから公園を出て行く。

 

「尊が尊姉を苦手なのが分かる会話だったぜ、やっぱり、堅苦しいのはご免だな。」

「警官だし、仕方ないんじゃない。」

「堅苦しいと言うより凛々しいと言うほうが合ってると思いますけど。」

「そう捉えるのも一つの手ね。」

「人それぞれ感じ方が違うってことだな。」

「そういえば海斗くん、昨日の夜にどこかへ出掛けたみたいだけど?」

「なんだお前、起きてたのかよ。」

 

 麗華に今朝、出掛けすぎと注意を受けた後でこの話題を話してくるとは。わざわざ紫に頼んで部屋までスキマを使ったってのに台無しだ。

 

「それホント?」

「はい、それに急いでいたようで音から察するに窓からかと。」

「おいおい、オレがいる部屋は2階だぜ?」

「1階から登って来るんじゃないし、飛び降りるだけなら出来ても可笑しくないわよね。」

「実は物凄く恐ろしい悪夢を見て、寝ぼけながらに落ちたんだ。」

「聞き取れなかったんですがなにやら会話をしているようでした。」

「そういえば、夜中にカップ麺がどうしても食いたくなってカップ麺の精霊とだな―」

「すぐ分かる嘘はもういいわ、過ぎたことだし不問にしてあげる。」

 

 事前に好感度を上げといたお陰で何とかなりそうだ。

 

「ほっ……。」

「そんなわけないでしょっ!」

 

 許すというフェイントを織り交ぜて思いっきり殴ってくる。

 

「さすが麗華お嬢様、お見事ですね。」

 

 なるほど関係修復のためってこの事か。

 

「ふえないやほーふぁな……。」

「スッキリしたし、そろそろ帰るわよ。」

 

 柄にもなく、麗華のことを考えたらこれか……慣れないことはするもんじゃないな。




いかがでしたでしょうか?

活動報告で述べたとおり、文章を急ですが変えてみました。
出来れば今回のような形式かそれ以前の形式、どちらが見やすかった、読みやすかった等をメッセか活動報告にて読者の方々に教えていただきたいのでよければお願いします。

さて、今回は6割くらいオリジナルでした。
お気づきになる方もいらっしゃると思いますが、麗華との会話でチラっと気になる部分があったかと思います。

かなり後にはなりますが、そういった展開もしたいなと考えていたりしてます。
……とりあえず、完結するのに1年以上掛かることが予想されますね。
紅魔館ルートくらいは4月に終わると良いですね。

読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想、ご指摘がありましたらお気軽にメッセージ等にお願いします。
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