不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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最近は凄い雪でしたね。

自分は深夜に外で雪と戯れていましたが皆さんはどうでしたか?

それではお楽しみください。


第29話 「言ったろ、監視の目を掻い潜るのには定評があると。」

 小屋の近くまで寄ると咲夜は玄関にある柱を叩く。呼び鈴が無い場合は扉をノックするのが当たり前だが扉は古く、見るからに修繕を怠っていることがわかる。そのため頑丈な柱の方を叩いたのだろう。

 

「道案内を頼みたいのだけど、いいかしら?」

 

 用件を踏まえながら、中に居るであろう目的の人物に問い掛ける。すると何もしていなかったようで、ガラガラと音を立てながらその女は現れた。

 

「おやおや、誰かと思えば紅魔館のメイドじゃないか。それに男連れだなんて珍しい事もあるもんだね。」

 

 長い白髪が膝辺りまで伸びていて、上には白いシャツを着ている。下は赤い袴のような物でサスペンダーが付いている、そしてなぜか所々に札が貼られていた。

 

「こんばんわ。怪我の治療をするために永遠亭へ案内してほしいの。」

 

 オレが勝手に観察している横で咲夜は再度、用件を伝えている。恐らくこの女が竹林の案内を仕事にしていると見ていい。

 

「う~ん、だったら早いほうが良いか。さっそく案内するよ。」

 

 少し空を見上げ、考えてから女は答えた。どうやら時間が遅いこともあってか、今すぐに案内してくれるようだ。

 なんだかんだ言っても、痛みを堪えるにも限度があるしオレとしちゃありがたい。

 

「そうしてもらえると助かるわ。」

 

 女は玄関の戸を閉めると、ポケットに手を入れながら竹林の奥へと進み始めるがこれといった会話は無い。オレも咲夜も自分からは喋るほうじゃないが、女は喋りたそうに見える。それでも会話が無いってことは喋るのが好きだが、苦手でもあるといったとこだろうか。

 推測しているとさっきの小屋がどこにあったのかも分からないほどになってから、女は口を開く。

 

「ねぇ、どこかで見覚えがあるんだけどどこかで会ったことあるかい?」

「オレは知らないぞ。」

 

 もちろんそんな心当たりなんてない。

 

「あっそうだ、新聞に載ってた外来人かお前。精神異常者なんだろう?」

 

 聞きたがっていた内容はこれか。

 

「んなわけねぇだろ。」

「そんでもって年下好みなんだろ?」

「そいつも違う。」

 

 コイツが言ってるのは新聞の事らしいが、射命丸に見せてもらった内容にそんな内容は書いてなかったはずだ。この中で記事を読んだはずの咲夜に目で訪ねてみる。

 

「ええ、私も一通り目を通したけど文々。新聞でそういう内容の特集が組まれてたわ。」

 

 ということはあらかじめオレが確認をする事を見越してダミーの新聞を作ってたことになる。

 

「あの鴉天狗め、やっぱり記事の内容を変えてやがったか。」

「なんだやっぱり作り話だったのか。」

 

 女はつまらなそうに呟き、正面に向き直る。

 

「私も読んだけど書いてある事全部が嘘ってわけでもなかったわ。」

「精神異常者ってところか!?」

 

 咲夜の発言を聞いて再び面白がっているような声色に戻り、オレのほうに顔を向ける。

 

「しつけぇな、ちげぇって言ってんだろ。」

「それはちょっと言いすぎだけど朝霧くんは一般の常識は無いかもね、お嬢様の売った喧嘩を買ったりするし。」

「フォローをしているようで実にしていないな。」

 

 少なくとも馬鹿にされているのは確実だろう。

 

「怪我の理由はそれか……そんで骨にヒビでも入ったってところ?」

 

 女は固定されている腕を見ながら具合を聞いてくる。

 

「ま、似たようなもんだ。」

 

 特に否定するほど的外れではないため、適当に流す。

 

「……骨折とヒビじゃあ似てないと思うけど。」

 

 すると流したはずの会話は咲夜によって返されてしまう。

 

「骨折なの? 顔は痛がって無い様だけど。」

 

 返された事で女に疑問が出来てしまい、再びオレに聞いてくる。

 

「顔に出してないだけで、相当痛いんじゃないかしら?」

「言っとくが痛くないなんて一言も言ってねぇからな。」

 

 痛みを表情に出さないようにしてるだけで専門家が見れば怪我をしていることなんてすぐにばれる。頭では理解していても身体の反応はそう簡単に治まらないからな。

 

「確かに、注意深く見ればやせ我慢してるってわかるわね。」

「なんでお前にそんな事がわかるんだ?」

 

 見たところ医者かなんかにはまったく見えない。もしそうだったとしてもわざわざ、他の医者に会いに行く必要なんて無いしな。

 

「なに、痛みを堪える練習をしてたからなんとなくだよ。それに少し汗かいてるし。」

「はぁん。」

 

 意外にもこの女はオレと似たような経験があるようだ。

 

「ってことは朝霧くんも似たような事をしてたってこと?」

 

 当然のように咲夜は感づいてくる。

 

「さぁな。」

「お前もなのか? やっぱ精神異常者じゃないか。」

 

 似ている経験があるとわかったからか、女は先程よりも表情が柔らかくなった気がする。

 

「ちげぇ、ってわけでもないか。でもお前に言われたくねぇな。」

 

 それに最初はぎこちない会話だったが今では自然と会話になっているように思える。一区切りつくと今度は咲夜が喋り出す。

 

「ところでさっきから気になってたんだけど、どうしてそこらじゅうにトラップがあるのかしら?」

「食料の確保が目的なんじゃね。」

「さすがに二人とも気付いてたんだ。」

「目立つようにしてあれば気付くだろ。」

「それに、避けた後のトラップもね。」

 

 そのトラップには種類が何個かある。見てもすぐに分かるような物、カモフラージュされているがあからさまに手を抜いている物など、一つ一つを見ればあまり引っ掛かることは無いと思える。それでも設置している箇所をみると何個かのトラップが繋がっているとわかる。

 

「この竹林だと視界も悪くて引っ掛かったりするんだよ。」

「つーと、そいつらも助けたりしてるってわけか。」

「そういうことも少なくないね。」

 

 道案内を引き受けたりする事を考えると当然だろうな。

 

「作ってる本人に言って止めさせないの?」

「それが出来れば苦労しないって。あ~丁度良い、永遠亭に当事者が居ると思うから会って見るといいよ。」

 

 察するに他人の話を聞かない奴が作っているに違いない。

 

「これ以上の面倒ごとにならなきゃいいんだけど。」

 

 そう聞こえるように呟きながら咲夜はオレを見る。

 

「なんでコッチ見んだよっ。」

 

………。

 

……。

 

「さ、着いたよ。」

 

 たどり着いたところは竹林の中にある少し開けた場所。それなりの大きさで作りも比較的まともな和を感じる日本風の家が見える。てっきり竹林を出たところにあるのかと思っていたが違ったみたいだ。

 

「どうもありがとう。」

「帰りは永遠亭の奴が送ってくれるだろうし、私はこれで失礼するわ。」

 

 そう言い、女は来た道を戻るために再び竹林へ向かう。

 

「朝霧くんはお礼も出来ないのかしら?」

「出来ないんじゃない、しないだけだ。」

「いいよ、そういうのが目的じゃないし。じゃあお大事にね。」

 

 女はそのまま進み、ポケットから出した片手を上げ段々と姿が見えなくなっていった。

 

「さて、漸くエンディングを迎える為の最終ステージだな。」

「残念だけど朝霧くんの物語は当分終わらないわ、これからが始まりよ。」

「ちっ、攻略済みだったか。」

 

 咲夜は早々に話を切り上げ玄関の前へ。

 

「すみません、診察をお願いしたいのですが誰か居ますか?」

 

 少し待っても誰かが来る気配が無いため、オレは戸に手を掛ける。そして少し動かすとカギが掛かってないことがわかった。特に返事も無いし、勝手に入っても良いだろう。

 

「ちょっと……勝手に入るのはどうかと思うわよ。」

 

 そのまま戸を開いて中へと入る。

 

「奥から薬品独特の匂いがするし、行ってみるか。」

 

 気にせずに靴を履いたまま廊下に足を上げようとする直前に奥の部屋から見覚えのある女が出て来る。

 

「患者の対応は喜んでさせていただくけど、盗人にはそれなりのお仕置きが必要よね?」

 

 確か、医者だと言っていた気がする。そんなことを思い出してるうちに医者? は玄関まで近付いていた。

 

「ならお前はド近眼だな、この腕が目に入らんか。」

「患者の割りには結構元気そうね、この前の怪我は完治したのかしら?」

「ああ。完治した後にまた怪我しただけだ。」

「朝霧くんとは知り合いなんですか?」

 

 咲夜は心なしかキョトンとした表情でオレと医者? を交互に見る。

 

「ええ、少し前に大怪我をしたとき診察にね。」

「確か永琳だったか? 凄腕の医者だったとは思いも寄らなかったぜ。」

「この前より見た目はマシだけど……重傷には違いないわね。」

 

 永琳はため息混じりに呟く。

 

「その時は一体どんな怪我だったんですか?」

「子供を庇いながら滝から落ちて左足骨折に全身打撲、それと背中に裂傷ってところだったかしら。」

「……無茶をするのが生き甲斐みたいね。」

「紫が言いやがったんだな? あんときは問診だけだった筈だ。」

 

 いくら腕が良くても怪我の具合を見て、そのときの状況が分かる事はないだろう。少なくとも経緯をここまで当てる事は難しいため、紫が関わっていると用意に想像できる。

 

「ええ、でも安心して。新聞には載っていなかったから。」

「それを省いて変な事しか載せてねぇってことかよ。」

 

 どうやらここにも新聞は届いているようだ。もっともオレが射命丸に見せてもらった内容とは違うものだろうが。

 

「じゃあ早速だけど時間も遅いしスグに診察しましょうか。付き添いのあなたは居間で待っててちょうだい、優曇華がいるから。」

「うどんげ?」

 

 オレがうどんげと言う言葉に疑問を抱いていると咲夜は居間に向かう。

 

「なら夕飯の支度でも手伝いながら待たせてもらうわね。」

「そうしてもらえると助かるわ。」

 

 居間とは違いオレは永琳と共に奥の部屋へ。

 

「そこに座って頂戴。」

 

 永琳は書類が置いてある机の傍にある椅子に座る。

 

「んで、どうすんだ。」

 

 ベッドの傍にあった椅子に座り、鼻にツーンとくる薬品の匂いを嗅ぎながら指示を仰ぐ。

 

「とりあえず上着を脱いで頂戴。」

 

 昔の傷もあり、あまり医者の前で脱ぎたく無いのが本音だ。素人には分からないだろうがそれなりの知識がある奴には虐待の後がばれてしまうらしい。とは言っても診察するには服を着たままより脱いだ方がやりやすいか。仕方なく腕の固定を解いて、上着を脱いでいく。

 

「じゃあ触るけど少し我慢してね。」

 

 そう言うと永琳は立ち上がり近付いてくる。

 

「ああ、ナイフで肉を抉ったりしなければ全然平気だ。」

「医者であるうちはそんなことしません。」

 

 腕を触りながら笑う。

 

「医者じゃ無くなったらするのかよっ。」

「それよりも良い筋肉の付き方をしてるわね。」

 

 骨折している腕を触ってはいるものの、たまに上腕二頭筋や背筋の辺りを触れてくる。

 

「ちゃんと診察しろよ。」

「それと所々に古い傷跡があるわね……。」

「お前には関係ない、今は腕だけ見てろ。」

「ええ、もちろんよ。それで症状なんだけどこの前の骨折より酷いわ。」

 

 どうやら既に診察は終わっていたようだ。

 

「骨折の具合だけならって事か?」

「ええ、掛かった力が比べ物にならないの。骨折で済んでるのが不思議で仕方ないわ。」

「手術ってやつか?」

「人間だったらそうしたかもね。」

 

 少し考え事をしてる素振りを見せると立ち上がり、薬品が並んでいる棚からビンを取り出す。

 

「十分オレは人間だと思うんだが。」

「丁度、新しい薬品を作ってたからそれを使うわ。」

 

 薬を扱う奴ってのは大抵とんでもない薬を作る場合がある。それが医者だとしても変わらないだろう。

 

「一応聞くがどんな目的で作ったんだ?」

「自然治癒能力の引き上げよ。実際、人間の治癒能力は侮れない。指を少し切ったくらいだったらすぐに傷が塞がるわ。」

「確かに。でも、所詮一時的なものに過ぎないだろ。もっと大きな傷を治すにしても時間が掛かりすぎて死んじまう。」

 

 目標としている事は納得できるが、問題はその目標をどう達成させるのか、だ。

 

「そう、だからこの薬品で治癒能力を上昇させるの。ただし効き目が強すぎるから短期間の連続使用は毒だけど。」

「それを使えばどれくらいで治るんだ?」

「あくまで本人の治癒能力によるところが大きいから、海斗くんなら1週間くらいかしらね。」

「本人次第って事はもっと早く治るかもしれないのか?」

「そうね、ただ細胞の活性化をさせるだけだから気の持ちようでも治る速度は変化するはずよ。」

 

 もし、手術じゃないにしろ今回の骨折はほったらかしにして数週間掛かってしまうだろう。綺麗に折れただけなら良いが、痛みから察するに折れた箇所はヒビだらけかもしれない。

 

「……飲めば良いだけなんだよな。」

「ええ。」

 

 永琳は薬品をコップに移し、差し出してくる。オレはそれを受け取り一気に飲み干す。

 

「……っぷは。」

 

 思っていたより変な味はしない、というか味が無いようだ。

 

「効き目が現れるのは数時間後だから、今日は大人しくしててね。」

 

 飲み終えたコップを受け取り、机に置きながら永琳は言う。

 

「おい、そんなこと聞いてねぇぞ。」

「言ってないもの、それに聞かれてもないわ。」

「はぁ、つーことはここに泊まれって事か。」

「正解。」

 

 やらなきゃいけない事も無いし、飯が食えればそれでいいか。

 

「じゃあ夕飯までの間、データを取らせてもらってもいいかしら?」

「あ?」

「この幻想郷ではあなた見たいな身体をしている人が居ないのよ。」

「いや、その必要が無いからだろ。すなわち、データも必要無い。」

 

 言われてみれば人里でそんな奴は見かけなかったな、当然なんだろうが。

 

「医者としてはどんなデータでもあったほうが良いの、それに人間に関してのデータを更新したいし。」

 

 そう喋っている永琳の顔は笑っているが、それでもその表情からは相当な威圧感を感じることが出来る。

 

「ま、飯が出来るまででオレがやって良いと判断したやつなら構わないぜ。」

「そう、なら早速血を採取させてもらうわね。」

 

………。

 

……。

 

 薬を飲んでから少し経つと誰かが急ぎ足で扉を開ける。

 

「お師匠様~、お夕飯出来ま――」

「わかったわ、優曇華。」

 

 先程のうどんげとはコイツの事だったらしい。見た目だけなら普通のブレザーでオレの世界で歩いていても不思議ではない。それでも幻想郷に住んでいるだけあって明らかに目立つような部分が存在した。頭の上にはウサギの耳があり、付け根にはボタンらしきものがついていて外見だけでは本物か判断するのは難しい。

 

「とか言いつつも手を動かすなよ、こっちはあんまり飯食って無いから腹減ってんだ。」

 

 それよりも変わらず動いている永琳の手を止める。

 

「お、おおおお師匠様! どうして人間が居るんですか!?」

 

 扉を開けてから動きが止まっていたウサギ耳の女は扉に隠れ頭を少し出して訪ねている。

 

「どうしてって患者だけど。」

 

 妖怪で医者の世話になる奴は少ないだろうし、当然か。

 

「つか咲夜が居ただろ。」

「それはそうですけど……わ、私は先に行ってますから。」

 

 いそいそと居間の方へ戻っていく。

 

「あれは付け耳、でいいのか?」

「さぁ、本人に聞いてみれば分かるんじゃない。」

「明らかに避けてただろ。」

「幻想郷では珍しく、優曇華は人間が苦手なの。」

「患者や村人の類で無ければってところか。」

「これでも随分マシになったのよ。度々人里に行かせてからね。」

「あっそう。」

 

 さっそく飯を食うために居間に行くとすでに準備は済んでいてオレや永琳を待っていたようだ。

 

「今日は咲夜さんが手伝ってくれたのでハンバーグにしました。」

 

 机にはハンバーグに野菜が添えられていて、スープまで用意されている。

 

「優曇華、姫様とてゐはどうしたの?」

「姫様は部屋で食べるとのことでお渡ししてきました、てゐは出かけてるみたいです。」

 

 どうやら今いる二人に加え、ここに住んでいる人間は他にいるようだ。明日には紅魔館に戻るんだし、全然関係ないか。それよりも今は他に確認しなければならない事がある。

 

「なぁ、咲夜。」

「どうかしたの朝霧くん。」

「一つ訪ねたいんだが、普通男が食うのだけは大きめに作るもんじゃないのか?」

 

 雷太から借りた小説に良くある話で女が男に料理を作るときは多めに作っているパターンが王道のはずだ。

 

「そうなの? 生憎と女性しか居なかったから分からなかったわ。」

「分からなかったのなら仕方ない……なんて言うと思ったかっ! っち。」

 

 隣に座っている咲夜のハンバーグを狙うものの、フォークは机に当たる。

 

「思ってないわよ。」

 

 ハンバーグには届かなくても野菜くらいは取れる速度だったと思うが空を切るとすれば何をしたかは明白。

 

「おかずを取られない為だけに能力使うのは反則だろ。」

「何事にも手を抜きたくないの。」

 

 警戒されてしまえば打つ手は無い、奪えるチャンスがあるとすればそれは警戒を解いたときだが恐らくそんな事にはならないんだろうな。

 

「……。」

「どうしたの優曇華?」

「い、いえ。咲夜さんが遊んでるのが意外だなぁって。」

「見ているのはいいけどあなたでも注意しておかないと危ないわよ。」

 

 そう言うと永琳はおかずに手をつけ始める。

 

「え? 何を注意するんですか?」

 

 うさ耳女は話の内容が気になるのか、永琳に問いただす。狩人を目の前にして隙を見せればやることは一つだ。オレは躊躇せずにソイツのおかず目掛けてフォークを突き刺しに掛かる。

 

「あっ! 私のハンバーグ!」

 

 防ごうと試みる時既に遅し。気付いたところで咲夜のような反則級の能力が無ければ防ぐ事は出来ない、ハンバーグはオレの胃袋へと放りこまれていた。

 

「もぐもぐ……ごっくん。食卓は戦場だ、敵を目の前にして視線を逸らすお前が悪い。」

「親しくもないのにおかずを取ったりしませんよっ! 少しならまだしも全部だなんてっ。」

 

 立ち上がり持っている箸をぷるぷるさせながらオレに向ける。

 

「手が止まってたし、てっきり食い終わったのかと。」

「手を見てたなら、お師匠様と喋ってたのも見えましたよねっ!?」

 

 目をうるうるさせながらオレを見る。

 

「人間ってのは都合よく出来てるんだ、自分に不利益な事は忘れてしまったり、見えにくくなったりする。」

「だから注意しときなさいって言ったの。」

 

 永琳は気にしながらも箸を動かし、食べ進めている。

 

「だったらちゃんと教えてくださいよ~。」

 

 どうやら諦めたようでうさ耳女はへなへなと座り込む。

 

「まさか朝霧くんが知り合って間もない人のおかずを取るのは想定外だったわ。」

 

 軽蔑するような視線を感じるがそんな事を気にしていては生きてはいけない。

 

「言ったろ、監視の目を掻い潜るのには定評があると。」

「はい、鈴仙さん。」

 

 どこからとも無く、無傷のハンバーグが姿を現す。

 

「あ、ありがとうございます咲夜さん。でも、どうして余ってたんですか?」

「実は朝霧くんがこうする事は分かってたの。ただ誰かのおかずを奪うだろうけどその人物を特定するのが難しくてね。」

 

 おかずを受け取り、うさ耳女は眩しいほどの笑みで食べ始める。

 

「…………。」

「あら? どうかしたの朝霧くん、手が止まってるようだけど食べ終わったの?」

 

 咲夜はわざとらしく聞いてくる。実に腹立たしい。まさか幻想郷に来て、ここまで面倒なメイドと出会うとは思ってもいなかったぜ。

 

「いや、ちょっとばかしお前に対する対応を考えてたところだ。」

「なら私も少しだけ監視の目を修正することにするわね。」

 

 お互いに手を動かしながら、その夜は更けていった。




いかがでしたでしょうか?

前回から凄く時間が掛かってしまいましたが漸く投稿できました。
次回からは前までのペースに戻せていけたらなぁと思っていますです。

さて今回は永遠亭での治療でした。
永琳先生の力であればとんでもない薬品も作れちゃうかなっと思いながら読んでいただければ幸いです。
あっそれと優曇華可愛いと思ってくれれば良いな。

次回は紅魔館に帰ってからの図書館イベントの予定ですが変わる可能性が大いにありますので読者の方々も妄想を膨らませながら御待ちくださいませ。

読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想、ご指摘がありましたらお気軽にメッセージ等にお願いします。
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