僕の場合はその日の寝つきの善し悪しだったり、仕事量の多さ、天候、ご飯などなど。
要因になりうる事を上げるとキリがないし、調整なんてできない。
気分が違うだけで想像力が変わる。
この話の最後はどうしようか、昨日は分からなかった。
納得いかなかったのである。
でもウィザードを見た後は不思議と浮かんでくる。
だから気分は凄い。
それではお楽しみくださいませ。
●2014年7月31日 文字数が少なかったので7、8、9話の3話分を合わせて修正投稿致しました。第3章までで本文の文字数が少ない話は引き続き修正していきます。
急に声をかけて来た女はなぜかわからないが霊夢に似た服装で肩と腋を露出している。これは神が俺に与えたチャンスに違いない! 腋の露出にツッコミをしろと!
「やっぱり。少しお話がしたいんですがよろしいですか?」
恐る恐ると言った様子で訪ねてくる。まさかオレの覚悟を知ってか向こうから来るとは。
「立ち話でいいならな。」
「ありがとうございますっ、それであなたが元いた場所って日本ですか?」
「なんでわかった?」
「勘ですよ~、スーツなんて懐かしくて。」
この言葉に嘘は無さそうだ。勘が鋭いってのは少々厄介だ、覚えておこう。
「私、前までは中学校に通ってたんですよ。」
「はぁん、お前も外来人ってことか。」
「はい、高校に入学する直前に来たんです。」
となると年齢は近いのか。もっともオレは自分の年齢がわからない。年の数え方なんて気にした事も無かったからな。
「そういえば自己紹介がまだでしたね、私は守矢神社の東風谷早苗です。」
神社ってことは巫女か? それなら服装が似ているのも納得できる。
「朝霧海斗だ。」
「朝霧さんですね。」
「別に呼び捨てで構わない。」
年齢の概念が無かったから、年の差なんて気にしない。ただ初対面のガキが名前を連呼してきたら歯を全部抜いてやるけどな。
「呼び捨てはちょっと……。」
緑の巫女早苗は顔を伏せ、しきりに人差し指をいじっている。
「じゃあ……海斗さんで。」
名前呼ぶだけでどんだけ時間掛かってるんだ、コイツ。
「聞きたいことがあるんだが良いか?」
……今なら第三者はいない、したがって会話はオレとしか成立しないはずだ。
「はい、なんでしょう?」
よし! 食いついた!
「なぁ、なんで腋を部分的に露出してるんだ? 誘ってるのか?」
「…………。」
訪れる沈黙。ダメなのか? オレはあと何回このネタを振れば――。
「さっ、誘ってなんかいませんよっ!!」
肩と腋を隠すように手で覆い、そして顔は徐々に赤くなる……心なしか目が潤んできている。どうやら笑いの耐性が無かったようだ。
「あー、悪い。冗談だって。真に受けるなよ。」
これ以上事態が悪化しないようにフォローしとくか。
「そんな誘いじゃあ、誰も来ないから安心しろ。」
我ながら完璧すぎだな、これで事態は良い方向に行くだろう。
「……ぐすん、そんなに魅力無いですかぁ? 私。」
行かなかったみたいだ。まいったぜ、こうゆうタイプの扱いは苦手らしい。
「いやいや、実に魅力的だ! ただ最近は草食系男子が多いから恥ずかしがって声かけずらいんだよ。」
ここまで露骨だとさすがにお世辞ってバレちまうか?
「……ほっ、本当ですか?」
何とかなったみたいだ。
「初めて魅力的って言われました……えへへ。」
あいたたたたたぁ。悪くは無いが面倒な方向に行かせてしまったらしい。コイツと会話する時はオレの全神経と経験をフルに活用する事を誓おう。
「あっ、海斗さんは何のお仕事してるんですか?」
さっきまでが嘘だったかのようにケロっと聞いてきた。蛙の髪飾りなだけに。
「仕事はしてない、まだオレも学生の身分だ。」
「学生さんでしたか、でもなんでスーツを?」
「オレの通ってる学園はちょっと特別でな、外出時は大体スーツを着せられるのさ。」
どんなヤツを護衛するにしてもスーツを着とけば目立たないからだったっけな。
「海斗、買い物終わったから荷物持ちなさいよね。」
早苗と会話してると食材等を買い終えた霊夢が来た。こうしてみるとやっぱり服装だけが似ている。服装だけが。
「って早苗じゃない、なにしてんのアンタたち。」
「こんにちは~、霊夢さん。」
どうやら二人は知り合いのようだ。
「ま、外来人同士話が盛り上がってな。」
「ふ~ん、そういうこと。」
「あ! 晩御飯の準備しないと。」
何かを思い出したのか、早苗は急いでる様子。
「それじゃ失礼しますね、霊夢さん。海斗さん、またお話聞かせてくださいね。今度は守矢神社でじっくりと。」
「そうだな、機会があれば行ってやらんこともない。」
「楽しみにしてますから。」
そう言い残して早苗は飛んでいった。同じ学生とは思いたくないものだ。さすがのオレも空を飛ぶことは出来ない。つか、普通は物理的に出来ないだろう……浮遊ではなく落下するくらいならできるが。ビルとか、高い所から飛び降りればだけどな。
「買い物終わったんなら帰るか、腹減ったし。」
「そうね、帰りましょうか。」
食料を買い込んだ荷物は少女が持つには重そうだ。
「あら? 荷物持ってくれるの?」
しれっとした顔で言う。
「どうせ持たせる気だったんだろ? 筋トレには丁度いい。」
オレは荷物を奪い取る。紙袋には買い込んだ食糧がぎっしり詰まっている……また随分と重いことで。目的である買い物も終わり、オレたちは博麗神社に向かった。
………。
……。
「やっぱり幻想郷って空飛べるのがデフォなのか。」
「そうね、村人とかは飛べないけど。」
「あと弾幕勝負ってのもあるわよ。」
弾幕って、シューティングゲームかよ。
「挨拶みたいなもんか?」
「ま、そんなもんかしらね。」
オレは食後のお茶を飲む。博麗神社での食事は一般家庭程度だった。白米に味噌汁。焼き魚に梅干と漬物。
それでも昔オレが食ってたのよりまともだ……あそこは人間以外の生き物はあまりいなかった。カビの生えたパンですら何人もの死人を出す。雀なんてご馳走だ、肉だしな。それに比べたらどんな世界での食事もご馳走か。思い出してたら雀が無性に食いたくなったし、二階堂に戻ったらシェフに作らせるとしよう。
「それにしても、良くあの荷物もって息切れなかったわね、何かやってるの?」
普段なら説明台詞にするが、読者にはこの前話したし簡単な説明で良いだろう。
「ボディーガードの学園に行ってるからな、ある程度の訓練はしてる。」
「へぇ、そうなんだ……小さい頃の夢だったとか?」
「いいや成り行きだ。ボディーガードなんてやりたくないしな。」
オレは通常なら学園に通えない身分だ。生まれてからオレには戸籍が無い。じゃあなぜ通えているのか? その理由は朝霧雅樹……親父にある。
ある日親父の友人だと言う佐竹が訪ねて来た。最初は親父に会いに来たみたいだったが死んだ事を伝えたら落胆した様子で帰った。なぜ会いに来たのか目的は今でも分からない。
その後からはオレを学園に、と毎日来た。しつこくて殺しかけた事もあったがそれでも話を聞いてるうちに気になった。ボディーガードのことじゃない、親父が見ていた景色。親父がいた世界はどんな世界なのだろう。禁止区域に居ては一生かかっても見ることは出来ないであろう景色。それが気になっただけ。
「なぁ、明日はなにか用事あるのか?」
場所までは特定出来ないが、さっきから視線を感じる。観察する視線……うんざりだな。
「別に無いわよ。」
立ち上がる。別に見るのは勝手だがバレないようにしろよ。
「なら寝させてもらうぜ、幻想郷に来てまだ寝てねぇからな。」
先ほど案内された空き部屋に向かう。視線の主? は霊夢に用があるみたいだし、一人にさせるか。
「寝てないって、不安でとかじゃないわよね?」
「溢れんばかりの好奇心が止まらなくてな。」
「ほどほどにしなさいよ、それじゃおやすみ。」
「おう。」
海斗が部屋に行ってから数分が過ぎて私は口を開く。
「……そこにいるんでしょ? 紫。」
私は誰も居ない場所へと声をかける。
「あら、いつから気付いてたのかしら?」
何も無い場所から目玉模様のスキマを使って現れる。姿を表したのは金髪で謎めいた雰囲気を持つ女。そして常に表情は余裕があると思わせる。
「神社に戻ってきたときにね。まったく、海斗が寝たがってなかったらどうしたのよ。出て来れなかったんじゃない?」
紫は他人を気にしない、気にするときはそれ相応の理由があるときだけ。おそらくまだ海斗に会う必要は無いとの事だろう。
「ふふ。そうでもないわよ? 彼、気付いてたみたいだし。」
「嘘……ただの人間よね? 海斗って。」
「分かったって言うより視線を感じてくれたみたいね、わざわざ二人にしてくれたし。」
じゃあ何も考えていない様で実は色々考えてるかもしれないってことなのかな。
「それに色々な面で優秀そうよ、彼。あくまで人間の枠内だけど。」
見た目は不真面目な不良ってイメージだったけど違ったみたい。紫はあんまり他人を褒めない。ましてや、何も能力を持たない人間なんか。
「優秀? そんな風には見えないけど。」
「ふふ。まだ人の素質を見抜くのは苦手みたいね。」
「別にいいじゃない……それよりもその反応を見ると紫が海斗を連れてきた訳じゃなさそうね。」
「ええ、私も今日始めて見たわ。」
紫が関与してないなら異変じゃないって事だろう。
「急で悪いけど、今結界の調整してるから私の変わりに海斗を元の世界に返してくれない?」
「霊夢が私に真面目に頼みごとなんて、明日は面倒な事にならないといいわね。」
アンタには言われたくないわ。
「博麗の巫女であれば外来人の面倒は見ないとね。」
「なら明後日に戻すわよ、そこまで急いでないみたいだしね。それじゃあ、失礼するわ。」
話を急に切り上げ、帰ろうとする。
「ちょっと待ちなさいよ。何か隠してるんじゃ――」
「何も隠してないわよ。そうそう、私のことは隠さないでいいからね。それじゃ~。」
紫は出てきた時と同じようにスキマを使っていなくなった。
「はぁ、勝手なんだから。起きてても仕方ないし私もそろそろ寝ようかな。」
寝ているオレを見下ろして金髪の女は言う。
「ただの人間にここまで影響力があるなんて……前々から幻想郷にいる住人には思ってたことがあるけど、彼ならできるかも知れない。今はまだ三人にしか会ってないけれど。」
服装は紫が基調、頭には何かを被ってる。今まで出逢ってきた少女たちとは違い、ミステリアスなイメージで大人びた様子だ。
「当分の間、幻想郷に居させれば……。」
どうやらオレを束縛する気らしい。イケメンは辛いな。
「まさか何も能力を持たない人間に頼る事になるなんて、いや能力を持たない人間だからこそなのかもしれない。それにこの顔どこかで見覚えがあるような……。」
「おいおい、さすがに世界が違うのにそのナンパの仕方は無ぇな。」
オレは耐え切れず、言葉を発した。
「あら起こしちゃった?」
気付いてたくせによく言う。
「目を開けたまま寝てるわけ無いだろ。」
「てっきり癖かと、なら良かったわ。」
女は真面目な表情になった。
「お話したい事があるので後日改めて来させていただきますわ。」
「……勝手にすればいいだろ。」
その言葉を聞いて紫と呼ばれていた女はその場からいなくなる。まるで手品のように。
7月3日
「もう朝なのね。」
私は日の光で目を覚ました。異変が無いと特にする事は無いけど一応、神社の掃除をしなくてはいけない。ただでさえ参拝客が来ないから多少は綺麗にしとかなきゃね。
「海斗は起こさなくていっか。寝てないって言ってたし。」
普通は幻想入りしたばかりでも疲れきって寝るのが当たり前なのに寝てないのは驚いた。それに紫の視線に気付くってのも、妖怪でも気付くのはそういないのに。改めて昨日あった事を思い出す。
「そういえば紫らしからぬ発言があったわね、私もだけど……とりあえず注意しておこうかしら。」
ぶつぶつと昨日の事を思い出しながら着替えて外に出る。そして外に置いてある箒を手にする。たまにおじいさん、おばあさんを見かける事があるくらいで早朝だと人は居ない。
「あやや~。霊夢さんじゃないですか?」
もう一度言うけど人は居ない。居るのは害鳥である鴉天狗だけだ。
「なんでアンタがここにいるのよ? 異変も起きてないのに。」
「異変起こらずとも、面白そうな話題あるところに射命丸です♪」
彼女は射命丸文。新聞記者でどんな些細なネタでも捏造して大袈裟に取り上げることで有名だ。それでも一応幻想郷でも中々の古株で自称幻想郷最速。と、私がわざわざ説明をしてるのも露知らず文ははしゃいでいる。
「ところで霊夢さん……何かありましたよね?」
表情は変わらない、それでも雰囲気が変わっている事に気付く。
「特に何も。」
「それはおかしいですね~。」
私の周りを歩き始める。
「早苗さんによると、殿方が一人幻想郷に迷い込んだと。」
早苗のヤツ、口が軽いんだから。
「その殿方の事を是非とも記事に――」
「疲れて今寝てるからそっとしといてくれる?」
「そうですか。なら、仕方ありませんね。殿方の取材は午後にしましょう。」
「午後もダメ。少なくとも明後日にしなさい。」
明後日なら海斗も居ないし丁度いいでしょ。
「ほら、さっさと山に帰んなさい。」
これ以上害鳥がいても面倒にしかならない。
「ですが霊夢さんが他人を気遣うなんて……一体どんな心境の変化が!?」
害鳥の表情は含み笑いだ。
「どうでもいいでしょう。」
「他人に無関心だった霊夢さんが気遣うなんて異変と言っても過言ではありませんよ!」
「まさかその殿方にこ――」
「お、お賽銭もらったからよ、それだけなんだから。」
柄にも無く焦る。
「お賽銭からはじまる恋もあるんじゃないですか? 早苗さんの証言によると能力を持たない人間のようですが珍しいですよね。」
確かに今までは能力を持たない人間から恐れられてたけど海斗は違った。逆に歯向かってきて怖がる様子は見受けられない。何か思うことはあるけれど初めてのことで正直良くわからないでいる。
「それより、幻想郷最速を目の前にしておきながら隙を作るなんて殿方の取材を許可してるのと同じですよっ。」
そう言うと鴉天狗は海斗が居る部屋に向かう。さすがに自称幻想郷最速なだけあって油断した今では私じゃあ止める事は出来ない。普通ならその速さで既に部屋にいるだろう。でも、今は私一人じゃない。先ほどから一人の存在を感じている。そしてその妖怪はスキマから出てくる。
「もう、文ったらせっかちなんだから。」
鴉天狗は止まる。幻想郷で紫に恐れをなす妖怪は多い。鴉天狗でさえその例外にはならないほどに。
「ゆ、紫さんではありませんか。どうしたんですか急に。」
「とりあえず個人的に話があるから来てもらうわよ。」
そう言ったあと紫は私を見る。
「私がなんで海斗をすぐに返さなかったか分かるわよね?」
私は表情を変えずに考える。
「彼は能力が無いんだから……時間はあまり残されていないのよ。急ぎなさいね。」
そう言うと紫は鴉天狗ごと消えた。
「なんだやっぱり居たのね。それにしても……。」
私は嬉しかったのかもしれない。
年が近くて能力をなにも持たず、そして私を恐れない存在ができた事を。どこかで諦めかけていたような存在がいた事を。魔理沙だって人間でありながら能力を持っているし。早苗だってそう。共通するのは強力な能力を持った人間。そう考えれば納得がいく。
そして幻想郷は誰でも受け入れる。ただ、束縛はしない……だったら最後は顔見知りを集めて笑いながら送り出そう。もう二度と幻想郷には来れないであろう朝霧海斗を。
気付けば箒を地面に置き、私は飛んでいた。生まれてから初めてかもしれない。他人の為に自分から率先して動いてみようと思ったのは。
………。
……。
周りは目玉模様しかない。
「酷いですよ紫さん、取材のチャンスを潰すなんて。」
射命丸はスキマ空間の中にいた。
「いいの、いいの。数日経てば好きなだけ取材させてあげるから。」
今、文々。新聞に載って幻想郷全体に知れ渡ると計画が台無しになるしね。
「本当ですか~?」
「ま、可能性は半分ってとこだけどね。」
まだ図りきれてない。海斗の器を。
「微妙ですね。その時は霊夢さんでも取材します。」
「遭遇者として魔理沙と早苗も許可するわよ。」
「そうなると幻想郷初の色恋トークを記事に出来そうですね。」
「あ、そうそう。二日間くらいはここから出ないでね。」
「えぇ、なんでですか! 宴会で噂の殿方を写真に収めるチャンスなのに。」
「都合が悪いからよ、変わりに私が取材交渉しておくから。」
「仕方ないんで不本意ですが期待しておきます、交渉の件よろしくお願いしますね。」
「ええ。任せて頂戴。それじゃ。」
紫はスキマを使い姿を消した。
「……それにしても霊夢さんだけでなく、あの紫さんまで動かすとは。」
早苗さんの勘によると能力は無いらしいですが、紫さんも能力が無いと。その部分はどうやら確定のようですね。
「まだ幻想入りして3日目、記者魂が疼きますね~。」
私は微笑む。
たった3日ほどで幻想郷主要メンバーの心境を多少でも変化させた殿方。その殿方が数ヶ月居続けたら全体が変わってしまうのでは?想像するだけで心が躍る……会うことで私も変われるのかと思うと。
いかがでしたでしょうか?
この作品での早苗は年的に女子高生ですが高校生活は経験なしといった設定です。
海斗と同い年も微妙かなと思いまして。
それと遅くなりましたがお気に入りにこの作品を入れてくださった方々、ありがとうございます!!
かなり励みになっておりますです。
嬉しくてバイトの帰り道、独り言を喋りながら笑顔にさせてもらってます。
今後も引き続きよろしくお願いします。
では、8話書いて来ますので。
ご観覧ありがとうございました。
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