最近で言えばその限りじゃないけど少なくともそういう人が存在する。
進むに連れてやっぱり東方キャラとの掛け合いがしたかったんだなぁ、と日々実感したりしています。
それではお楽しみください。
8月13日
「ふぅ……異世界で読む小説も悪くないな。」
本を読み終え元あった棚へと戻しながら呟く。読んでいるものは日本のものでそれ自体はいつもどおりだが周りの雰囲気ってのも重要になったりするものだ。簡単に言えば祭りで食う食い物は美味いのってのに似ている。
「内容に集中してしまえばあまり関係なかったりするけどな。」
読み始める前の予定では1冊読み終えてシャワーでも浴びようかと考えていたのだが、小説とはやはり末恐ろしいもので気がつけば2冊目が終わっていた。 今の時間は恐らく深夜。周りには誰かがいる気配は無い。妖怪なのにも関わらず妖怪らしからぬ行動をする奴らだし、生活スタイルも人間なんかと同じで今は寝ているのかもしれない。
オレは物音を立てないよう咲夜が持ってきた食器を持ち、図書館を出る。
「どうもここの連中は合理性が欠けている気がしてならん、オレが会ったやつらだけなのかも知れないが。」
周りが敵だらけであれば気を抜く事は無いんだろうが、そうさせない雰囲気がこの世界にはあった。それとも単純に力の差があるからなのかもしれない。案内された道を進みそのまま1階に出る。地下に入る扉には鍵を掛けなくてはいけないらしいがすぐに戻るし、しなくてもいいだろう。
「たしかキッチンみたいのは1階だったっけな?」
まずは食器を置くため、部屋の場所を思い出す。案内されたわけではないが咲夜が食器を置いてたしそこに置いておけば誰かがやるだろう。そう考えながら思い出した場所へ歩き始める。どうやら図書館同様、1階も誰かが起きている気配は無い。
「もともと活気があったわけじゃないが、ここまで無いと不気味だよな。」
それに加えて屋敷の色は赤一色というのがさらに不気味さを演出しているのは言うまでも無い。本来、デカイ屋敷には多くの従業員が必要なはずだがここにはメイドが数人しか居ないことも理由の一つだろう。
「それで清掃が行き届いてるってのがすげぇところでもあるが。」
もし機会があったら咲夜にツキを会わせてみたら面白いかもしれない。……ただしその矛先がオレに向かなければの話だ。そんなこんなで探していた部屋を見つけて台所らしき場所に食器を置く。
「さて、部屋に行くとするか。」
そこから2階へ移動し、部屋に入るとベッドの上には新しいスーツが置かれているのに気づく。
「着替えってわけか。」
この話がミステリーものだったら間違いなく始末されていただろう。手際の良すぎるメイドってのは敵にすると厄介だからな。
………。
……。
「そいじゃ地下に戻るとするか。」
着てたスーツはベッドの上に置き、出されていた新しいスーツを着て図書館へ向かう。
「しかし、幻想郷に関する書物が無いとは思わなかった。」
来てすぐに探したのは幻想郷に関する書物。この世界を知るのに歴史や地図、もしくは昔話のような絵本でも良かったが結果はなにも見当たらず小説に手を出してしまうに至った。無いということは隠しているのかあるいは興味が無いのどちらか。
「本の虫と呼ばれている以上、興味が無い本だから置いていないというのは考えにくいが、この屋敷の連中はたまにおかしな言い回しをするから判断に困る。」
少なくとも咲夜とパチュリーに関してはそういう言い方が多かったりするから嫌でも気づく。レミリアと美鈴はあんまり喋ってないし気にしなくてもいいだろう。昨日のことを整理して考えているといつの間にか地下の入り口にたどり着いていたので扉を開け、階段を降りる。
「そういや本に夢中で周りを見てなかったし、少しばかり見て回っておくか。」
地下に降りるとそこは1階や2階と同じような作りのフロアとなっていて幾つか扉がある。扉の柄を見る限り客室だろうと思えるがお宝が眠っているような秘蔵部屋があったりするかもしれない。そう思いながら図書館とは逆の方向へ進む。
「あるとしたら倉庫か、それとも罪人がいる牢屋だったりしてな。」
試しに扉に手を掛けて開けてみる。
「ただ少し埃っぽいだけで同じか。」
オレの部屋と家具の位置は全く一緒、違いがあるとすれば窓が無いことと掃除をあまりしていないのか埃っぽいことだけだ。その後も何箇所か調べるも結果は変わらず、ついには通路の突き当りまで来てしまった。
「おっ、柄が違う扉じゃん。」
今までの扉と違いそれなりの装飾がされているのがわかる。海外の偉い奴らなんかはなんにでも装飾するのが習わしらしく、ここもそういった理由があるのかも知れない。オレはドアノブに手を掛けて開けようと試みる。
「鍵が掛かってるな。」
屋敷の中で鍵が掛かっていたのは地下に来るための扉のみ。それほど重要な何かが部屋にあると簡単に推測出来る。
「……咲夜?」
唐突に中から少女の声が発せられた。
「あんな奴と一緒にすんな。」
「じゃあ、あなたはだれ?」
「ただの居候だ、期間限定だけどな。それよりなんで鍵閉めてるんだ?」
「私は外に出ちゃいけないからって。」
幼い声からは何かを諦めかけているような印象を少し受けた。一応、無いとは思うが確認がてら聞いてみる。
「いやいや、出たいなら中から開ければいいだろうが。」
「外にしか無いんだよ。」
そこは当然か。鍵が中には無くて外にあるってことは単純に閉じ込めているってことだ。それも昔の戦争なんかで捕虜を捕まえていたような悪質な方。
「まさか倉庫じゃなくて牢屋の予想が当たるなんて思いもしなかったぜ。」
「牢屋か、きっとそうなんだよね。」
「そこにいるってことはお前が何かしらしたって事なんじゃないか。」
「ただ遊ぼうと思っただけなんだけどな……壊しちゃうくらい。」
扉越しにだがこいつからは異常さを感じた。レミリアや紫も充分異常なのだがこいつらが見せていない鋭さをコイツは隠さずに出している感覚。例えるなら禁止区域の特区にいるような奴らに似ているのかもしれない、もちろん格が違いすぎるのは言うまでも無いだろう。
「中から開けられないのか?」
「無茶をすれば開けられるわ。」
「どんぐらいだ?」
「うーんとね、屋敷が壊れちゃうくらい!」
「やりすぎやね。」
この発言から間違いなく妖怪だと判断していいだろう。
「だから我慢してるの、いつかお姉様が出してくれる日を。」
自分でそれを理解し、変わろうと思っているようなら禁止区域の奴らよりかはマシだな。
「そんなに外出たいか?」
「うん、出たいっ! 私を出してくれるの?」
閉じ込められている理由は分からない。それでもオレはこの扉の先にいるであろう妖怪に興味が湧いたし、その妖怪は外に出たいと言っている。
だったらやるべきことは一つだよな?
「ちょっと試してみるから扉から離れてろ。」
たしかパチュリーの発言によると特殊な攻撃に対する準備は万端らしい。それは中の妖怪が言ってたことでさらに確信へと変わった。恐らく試したからこそどれぐらいの力で開けられるか分かっていたんだろう。
「残念ながらオレには屋敷を壊すなんてほどの力は無い。」
もしそれを人間がやるのであれば戦車や戦闘機などを使うしかないがそんなものはここには無い。そんな物が無くても扉を開けるだけなら相棒さえあれば充分。ポケットからピッキングツールを取り出し、鍵穴を覗きこむ。さすがに地下の入口ほど簡単な作りでは無いが、そこまで複雑では無いようだ。
「これなら訓練校の方が面倒だぜ……うし、開いた。」
ガチャリと音が鳴って、閉まっていた鍵が開く。使い終わった相棒をポケットに戻し、ドアノブに手を掛けて扉を開く。すると部屋にあるベッドのそばに一人の少女が立っている。
見た目は小柄で幼い少女。金髪は片方にだけ纏められいる。頭にはレミリアと似たようなものを被っていて衣服は全体的に赤色が多く、白色でさらに赤を強調しているように思える。そして背中からは何かが生えている。それは羽とは言い難く、まるで木の枝にひし形の宝石がぶら下がっているような感じだ。
「すっごーい! どうやって開けたの?」
少女は驚いた表情をして駆け寄ってきた。
「オレの相棒とは相性が悪かったみたいでな。」
とりあえず気づかれないよう部屋に入り、ドアを閉める。ふと周りを見るとガラクタが散乱しているのがわかる、それもほとんどが壊れているおもちゃだ。
「あなたは人間?」
「当たり前だ。」
「でも霊夢や魔理沙みたいな身体じゃないんだね。」
「性別が違うんだから当然だろ、同じだったら怖いわっ。」
「じゃあ男なんだ、初めて見たなぁ。」
そう言うと少女は手を後ろに組んでオレの周囲をグルグル回る。
「初めてって、お前いつからここにいるんだ?」
「ずーっと。あ、でもこの前少しだけ外に出たわ。」
そういえば霊夢に聞いた異変の中に吸血鬼がどうのって言ってたな。
「ねぇ、あなたも一緒に行く?」
異変のことを思い出していると少女はいつの間にかドアノブに手を掛け、聞いてくる。
「ちょいまち、今は深夜だし行っても微妙じゃないか?」
扉を左手で押さえ、テキトーな事を言って引き止める。
「そうなの? でも太陽が出ると痛いからそれは嫌。」
「……やっぱ吸血鬼か?」
「うん、そうだよ。」
どうやら本当に異変の話に出てた吸血鬼らしい。そんでもってその話に出ててたのは姉妹の吸血鬼。
「つーことはお前の姉って――」
「レミリア、レミリア・スカーレットよ!」
ドアノブから手を離して両腕を広げ、胸を張って答える。
「だろうな。」
「それじゃあ気を取り直して行きましょう!」
言い終えるとスッキリした様子で再びドアノブに手を掛ける。
「だからちょっとまてって。」
空いている右手で少女の手を抑える。
「なんで?」
「外に出たいのは今日だけなのか?」
「ううん。」
少女は首を大げさなほど横に振る。
「だったらその原因を何とかして外に出してもらえるようにしたほうが良いだろう。さっきの話を聞く限り今出て行けば次は無いと思うが。」
1回外に出た結果が地下に閉じ込められたのを考えるともっと酷な事をされる可能性もある。だがこいつは外の世界を怖がっていたオレとは違い、外の世界に興味を持っている。知らないことを知っていく快感は計り知れない、少なくともオレはそう思う。
「手伝ってくれるの?」
そして今コイツは自分でそのことに知らずと感づいて外に出たがっているのでは無いのだろうか? だからこそ我慢して、いつか訪れるであろう日を待っていたんじゃないのか?
「関わっちまったし、少しはしてやる。」
そんな思いを抱いてるコイツを閉じ込めておくなんてことは今のオレには出来そうになかった。
「まずは原因だが――」
「私はみんなを壊しちゃうの。」
一言でわかりやすいようだが、全くわからんな。
「もうちょっとわかりやすく説明してくれないか?」
オレがそう言うと少女はベッドのそばに行き、落ちている割れた積み木を拾い上げ人差し指と親指で持つ。
「お姉様みたいに力のコントロールがうまく出来ないから少し力を込めただけで、ほら?」
喋ってる通りに力を込めると積み木は粉々に砕け散った。
「わかりやす過ぎるな。ま、原因がわかっているならいくらでも対処のしようはある。」
「だから最近は我慢するようにしてるの、でも気がついたら力を込めちゃって……。」
半ば諦めかけているようで少女は俯き、徐々に声が小さくなる。
「それでこの惨劇を生み出しているわけか、確かに我慢ってのもアリだがお前に合ってないだけだろ。誰にだって得意、不得意ってのがある。」
「私は我慢が不得意ってこと?」
「どっちかって言うと頭でどうこう考えるより、身体で覚えたほうがいいのかも知れないってだけだ。」
「身体で覚える……。」
「そう身体でだ。手始めにオレの手をお前が握ってみろ。」
「っでも人間にそんなことしたら――」
「大丈夫だ、お前自身どういう理由でこういうことになっているのかがわかっているなら自分に自信を持てよ。」
「…………。」
少女は思い詰めたような表情に変わり、両手は力強く握りしめているのが見てわかる。もし壊したくて力を込めているのならこの方法は恐らく無駄だ。でもコイツは壊したくないと感じている、だからこそ一人で耐え忍ぶという辛い道を行こうとしたんだろう。
「そこいらの人間よりかは幾分か頑丈だから安心しろって、それにもし砕くほどの力を込めたら全力で止めてやる。」
そう言いながら右手を差し出すと意を決したのか、少女もまた右手を差し出してきた。少女の手は震えている。人間に対しての情報はあまり無いと思うが、妖怪と違って脆い生き物としては知っているようだ。お互いの手が触れ合い、徐々に少女は力を込めていく。
「ど、どう?」
不安そうな顔をして訪ねてくる。
「見てわからないのかよ。」
「表情が全然変わらないからわかんないよ!」
少しばかり声を張ったせいで更に力が篭ってしまったようだ。
「ま、なんだ……多分か弱い爺、婆ならボキボキに砕けてるくらいには痛いな。」
こうして力を直に感じるとレミリアは結構手加減してたんだなと今になってわかる。これでもコイツからしたらかなり弱めているはずなんだろうが。
「とりあえず段々弱めてみろ。」
さすがにこれ以上はまずいか、また粉砕骨折なんてことになったら笑えないぜ。
「うん。」
「だから弱めてみろって言ってんだろ。」
少女は頷いてはいるものの一向に力は弱まらない。
「え? もっと?」
そういう少女の顔は心なしか微笑んできているように見える。……もしかしたら壊すことに楽しさを感じているのかも知れないな。自分の判断に少しばかり諦めかけた時、徐々に力が弱まっていくのがわかる。
「そうそう、いい感じだ。大体そんくらいの強さなら大丈夫だろ。後はそれを覚えるだけだ。」
かなり危険な賭けだったがオレの目は間違ってなかったようだ。
「で、どう身体に覚えさせるの?」
「当分の間オレとオマエで手を握り合う、それだけだ。無論お前が力を込めすぎた場合は容赦ないツッコミをさせてもらう。」
「つっこみってなぁに?」
まさかツッコミを知らずして振ってくるとは、もしかしたらこいつはボケの天才なのかもしれない。この問には芸人としてちゃんと答えなければならない。オレは空いている左手で少女の頭を叩く。無論、手加減はしないがそれなりの強さでだ。
「痛い~。」
「こうやって頭をおもいっきり叩く。」
「え~、叩かれるのは嫌! お姉様にだって殴られたことくらいしか無いのに。」
「殴られる方が痛てぇだろうが。それに叩かれるのが嫌なら尚更良い、あとは身体が勝手に覚えるだろう。」
そしてオレは部屋を出るためドアノブに手を掛ける。
「ちょっとどこいくの?」
「急に外ってのもあれだし、図書館ぐらいまで行ってリハビリだ。」
「言い難いんだけど私が入るとパチュリーが怒るのよね。」
「今は寝てるだろうから大丈夫だろ、それに起きて来てもオレには関係無い。ほら、いくぞ。」
再度少女を引っ張って部屋を出て図書館へ向かう。
………。
……。
「ねぇ、いつまで本読んでるの?」
立ち読みではなく座りながら読んでいるオレの隣に少女は座っている。
「ずっとだ、ずっと。」
「リハビリ何じゃないの? 私、つーまーんーなーいー。」
右手をブンブン回して駄々をこねる。当然繋がってる手を振るってことは多少力を込めるわけで。
「いたっ!」
容赦無くツッコミをする、もちろん手が開いていないので本の角を使った。
「だったらお前も本を読め、部屋に閉じ篭ってたんなら知らないことも多いだろう。」
「そうれはそうだけど。」
「おはよう朝霧。随分騒がしいと思って覗きに来たんだけどこれはどういうこと?」
時間が経ち、うるさかったこともあって図書館の主がご起床してしまったようだ。ぷかぷかと浮いている隣にはすでに目が覚めている小悪魔がついている。多分、小悪魔が報告したってところだろうな。
「よぉ。地下を探検してたら拾ったんだ。」
「フランの素行を知っていてやっているの?」
昨日までと違い本に視線を留めるのではなくオレへとその視線を向ける。睨んでいる……いや、探りを入れている目に近いな。
「こいつはフランって言うのか。素行については本人から少し聞いた。」
「で?」
「なぁに、コイツには本を読ませたいと思っただけだ。」
「本当にそれだけ?」
「強いていえばコイツを自由にさせるのも協力してる。」
「……そう、私は構わないけどレミィには気をつけなさいよ。それにその右手はどうしたの?」
「人間を壊さない程度の力加減ってやつを覚えさせようとしてる。」
「意外と不器用なのね、小悪魔朝霧の右手を治療してあげて。」
結構な時間握っていたこともあり、手が腫れていることは一目瞭然なほどだ。
「はい、分かりました。」
「朝霧その右手、すごく痛いの?」
今まで気付かなかったフランだがパチュリーが言っていることは理解しているようで、いつの間にか表情に陰りが出始める。確か痛いって言ったとは思うんだが聞き忘れていたんだろう。
「あいつらが大げさなだけだ、気にすんな。」
「でも――」
「寧ろこれで済んで良かったと思え、オレは壊れちゃいないんだからよ。」
読みかけの本を床に置き、俯きかけたフランの頭を左手ぽんぽんっと軽く叩く。
ここには禁止区域なんて存在していないし、人間と妖怪が争っているわけでもない。そんな世界なら自由に生きれるのでは無いか。いいや、こんな世界でなきゃ誰しもが自由に生きることは出来ないだろう。それがここの住人が持っている特権ではないだろうか。いくら考えても、それをフランだけが持っていないとオレには納得出来なかった。
いかがでしたでしょうか?
今回は妹様回でしたが予定よりもちょいシリアスになってしまったのは言うまでも無いでしょう。それにあえて妹様との戦闘はしませんでした。したとしても瀕死必死だし、妹様は何かしら戦闘をすることが多いので違うパターンにしたいなってのが目的です。
そんなわけで次回は妹様回part2の予定ですが変わる可能性が大いにありますので読者の方々も妄想を膨らませながら御待ちくださいませ。
読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想、ご指摘がありましたらお気軽にメッセージ等にお願いします。