不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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やはり他人に合わせるのは厳しい。
ただ合わすだけなら良いのだが時と場合が悪ければかなりの苦労がかかってしまう。

それをすることで相手は気分がよくなるだろうが、自分自身は体調を崩すこともある。ですので僕は自分自身が一番大切と思うようにしてたりします。

それではお楽しみください。


第36話 「くっ。キミはさぞ問題児と言われてたんだろうな。」

8月14日

 

 少し予定とは違ったこともあったが結局のところ昨日は咲夜とフランで魔理沙を送って、日が昇る前には帰ってきたらしい。その時オレはというと本を一冊読破してから眠り、起きたのは昼前。普段と比べて寝過ぎじゃないかと感じるかもしれないがそれは思い違いだ。誰かが訪ねてくることも無ければ、誰かと一緒に出掛けなきゃいけないって事でもないしで当然誰もオレを起こしに来たりはしない。それにメイドが勝手に部屋に入り込んでくることも無いので起こされないだけ。

 

「とは言っても習慣で起きてたりするんだな、これが。」

 

 読み終わった本を閉じながら呟く。起きる時間が違えどいつもの休日とやることは同じ。ただ違いがあるとすればここにあるのが目新しい本ばかりという点だ。あっちじゃ新しい小説を買ってもらうことなんて滅多に無く、読破してあるものを読み返すんだが図書館のおかげでその心配は無い。

 

「よし。続いて後編を読ませてもらうとしよう。」

 

 続きの本を取るとき、ふと窓を見る。

 

「そういえばまだ外で読んでなかったか……確かに本の数は多いが読む場所は数少ないし、少しばかりバリエーションを増やすことを考えたほうがいいかも知れん。」

 

 椅子から立ち上がって屋根に登れるかを確認するために自室の窓を開け、縁を掴みながら覗きこむ。どうやら屋根だけじゃなく屋上のような場所もあるようだ。

 

「さすがにここからじゃ登るのも一苦労か。」

 

 部屋から登るとなるとどっかのカンフー映画のように窓枠を使って器用に行かなければならないが生憎とそういう立場でもないんだし、素直に登らせてもらおう。目的が出来たオレは読もうと思っていた本を手に取り自室を出る。前にひと通り見た時は上に繋がるような階段は無かったが地下への行き方と同じならどこかの扉を開けば階段がある可能性が高い。オレは一箇所だけ違う扉を見つけ、ドアノブを回す。

 

「誰かを閉じ込めてるわけでも無いんだし開いてるわな。」

 

 ドアを開けると屋外に出れるような階段があり、上に続いているのでそのまま登って行くと突き当りには扉。

 

「……ここは鍵かかってんのかよ。」

 

 すぐさまドアノブを回すが鍵がかかっていて開かない。もしかしたら一応フラン対策をしてるのかもしれない、そう思いながらも相棒を取り出し解錠する。

 

「おー、二階堂じゃお目にかかれない景色だな。」

 

 屋上には青空が広がり、屋敷自体が周りにある森なんかより高く見通しを遮るものがなく清々しい。2、3度深呼吸をして目を閉じて風を感じるように両手を広げる。

 

「こんな良い場所があっても吸血鬼には害だなんてな、少しばかり同情するぜ。」

 

 日差し避けをすればいいのかもしれないがそれでは清々しさが半減するだろう。こういう所の醍醐味は心地よい風と降り注ぐ太陽の光、それに加えて眺めが良ければ言うこと無しっていうのが定番だ。

 

「こうして高いところから見ると嫌でも気になる場所が幾つか出来る。」

 

 暁東市にある山なんかと比べ物にならない山に黄色っぽい花畑みたいな場所、それに川なんかも気になる。前に来た時は薫のことがあって散歩くらいしか出来なかったし時間があったら行ってみてもいいかもしれない。

 

「でも気になった場所全部回るとしたら何十年かかるんだろうな……図書館のことも考えたらまず人間の寿命じゃ足りそうもないな。」

 

 両手を広げ大の字になるように寝転がり、持ってきた本を読み始める。

 

………。

 

……。

 

「んっ。今日も実に良い天気で気を抜いたらうとうとしちゃいそうですね。」

 

 いつもと変わりなく門を守っている美鈴は柱に寄りかかりながら空を眺めている。

 

「そういえば海斗さんが来てからこんなまったりしてるのは初めてかも。」

 

 夜遅くに仮眠をしていたところに訪ねてきたのが最初。それからお嬢様に殴られたり、咲夜さんに黙って妹様を部屋から出したり、図書館に篭ったり、それに昨日なんかは珍しく屋敷の人が集まって夕飯を食べた。博麗神社で飲み会をすることはあっても紅魔館では滅多に無い、したとしてもお嬢様の気まぐれ程度。

 

「私としては賑やかでいいんですがお嬢様たちはどうなんでしょう。」

 

 表情を見ただけで判断するならば嫌悪感は無いが、すごく喜んでいるってことでもない。良くも悪くも普段とあまり変わらないといった印象が持てる。わかりやすく例えると霊夢さんたちは弾幕ごっこを通じて喧嘩じみたことをしつつも宴会で楽しく騒いだりするけどそれに比べて海斗さんは騒ぎになったりするものの範囲はそこまで広くない。それは人間ということもあるんだろうが何より海斗さん自身が周りに合わせているからなのかもしれない。

 

「大体妖怪のほうが人間に合わせる必要があるものなんですけど、咲夜さんにはそういうほうが案外合ってるのかも。」

 

 直接言えばふたりともすぐ否定し合う姿が目に浮かびははっ、と自然に苦笑いが出る。

 

「たのもっー!!」

 

 道着を着た一人の男性が門の前で声を張り上げる。もしかしたらレミリアに聞こえてしまうほどの大きさだったので少し慌てながら対応するために美鈴は近寄る。屋敷の中に聞こえるほどであれば当然屋上で寝転がっていたオレの耳にも届く。

 

「うっせぇな、人がせっかく読書してるってのによ。」

 

 良くなっていた気分を害した奴を見るために起きて門を眺める。

 

「ええっと、どういったご用件でしょうか?」

「あなたに試合を申し込みに来たのです。」

「試合ですか……時間も空いているので良いでしょう、お受けいたします。」

 

 どうやら腕試しをするらしい。体つきを見るに多少鍛えているのが伺えるが結果は明らか。美鈴からしてみれば運動にすらなるか危ういような見世物をわざわざ見る必要も無い。オレは先程の気分を思い出しながら再び寝転がる。

 

「ではどちらかの意識が失うまで、ということで。」

「え? そ、それはちょっとやり過ぎなんじゃないでしょうか。せめてどちらかが降参するまでにしません?」

「そんな半端な事はしないほうが良い、つけるなら白か黒です。」

「えっと、それですと少し怪我をしてしまいますけど。」

「それはあなたも同じこと。では行きますよ。」

 

 美鈴は何を言っても聞き入れてもらえないだろうと判断し構え、男もそれを見てから構えた。そして合図と呼べるものは無く、互いの目で試合は始まる。まず動いたのは男の方。右足を思い切り蹴り上げるが美鈴はそれを往なすこと無く受け止めて、男に当て身をして意識を奪い呆気無く試合は終わる。

 

………。

 

……。

 

「もっ、もう一回お願いじまずっ!!」

「やめといたほうがいいですって。」

「お願いじまず!!」

 

 男は挑んできた時と打って変わって震えた声で必死に張り上げる。意識を失ったあと時間を置いてから美鈴が起こして結果を言うと悔しさを滲み出しながら再戦を申し込み続けているのだ。うざったい声が癇に障ったオレは発生源を断つべく、屋上から門に向かう。

 

「おい、人が気持ちよく趣味に浸ってんだ邪魔すんじゃねぇよ。」

「海斗さん外に居たとは知らず、なんかすみません。」

「そうだな。もっとお前が痛めつければ逃げただろうに。」

「それですと印象が悪くなってしまいませんか?」

「怖がってるぐらいがちょうどいいだろう、現にその印象が薄いからこんな馬鹿が来るんだよ。」

 

 そう言いオレは男を指さす。

 

「な、なんなんだ君は! 人を馬鹿にするなんて!!」

 

 気持ちが昂ぶっている男はオレの腕を掴んで関節技を決めようと試みる。

 

「少しは体を鍛えているみたいだが実力差もわからず挑んでくる奴なんて馬鹿以外の何者でもない、どうせ人里の道場かなんかで調子に乗ったってとこだろ。」

 

 力もなかったので掴んでいた男の腕を逆に決める。

 

「イタイ、イタイ、イタイ!!」

「つーかよ、そういう所に通ってたなら嫌でもこいつのこと聞いたんじゃねぇの。」

 

 悲鳴を簡単に上げたので関節技を解くと男は膝をついて再び目に涙を浮かべる。

 

「っぐず。よ、世の中おぉ……ガエダイッ! そう、思ってぇ。」

「世の中って、そんなスケールのでかい話じゃないだろ!」

「自分の世界観ってことなんじゃないですか?」

 

 そりゃあ自分で測れない領域の強さを持った奴に挑めば視野が広がるってのはわからなくない。が、その差もありすぎれば測ることは愚か、感じ取ることすら出来ないだろうに。

 

「それに強いとは言っても……ダレガ、ダレニ挑んでもおんなじや、おんなじやおもてー。」

「誰が誰にじゃ同じかもわかんねーだろうが!」

「何回もやれば一回位はチャンスがあるかもしれないってことなんじゃないですか?」

「訳なんか頼んでねぇんだからすんな、つかよく解釈出来るな。」

「一度拳を交えたからでしょう。」

「交わったようには思えないんだが。」

 

 確か手刀の一撃で終わったから足にしか触れていないはずだ。

 

「あなだにはわがらんでしょうねっ!!!」

「お前も言いたいことは全部言えただろう。これでひと通りやり終わったんだし帰れ、帰れ。」

「いいえ、私は試合を挑みます。」

「ですから私は――」

「門番である美鈴さんではなく、お前に試合を挑みます。」

 

 真面目な表情に戻った男は迷わずにオレを指さす。

 

「今日は動きたくないから美鈴で。」

 

 どっかのスポ根なら戦っていたかもしれないが生憎とインドア派のオレにはそういった選択肢は無い。

 

「ええ!? また私ですか?」

「言っとくが美鈴に勝てないようじゃオレとは戦えないぜ。さぁ美鈴やっておしまい!!」

「……じゃあこれが最後ですよ。」

 

 美鈴は少し考えてからため息を吐いて構える。

 

「そうそう、一日くらい目が覚めない程度でな。」

 

 さっきみたいに手加減すればまた目を覚ましてうるさくなるかもしれないし、数日起きない程度ならやっても構わないだろう。これが身籠ってる女とかだったら多少言い訳を考える……わけでもないな。

 

「評判が悪くなるじゃないですか。」

「どうせこんな奴が人里でなんかで言いふらしても信憑性がないから大丈夫だろう。」

「じゃあこの件でなにかあったら全部海斗さんの責任にしますからねっ。」

「なんでそう――」

 

 オレが否定するための言葉を言い切る前に美鈴は男の腹部に拳をめり込ませる。明らかに先ほどよりやる気になっていたため、実力不足の男は何をされたか理解出来ないまま意識を絶たれた……ダメージを除けばさっきとあまり変わらなかったりする。

 

「じゃ、後は海斗さんにお任せします。」

「責任取るなんて言ってねぇぞ。」

「じゃあ私が命令するわ。朝霧はその男を人里まで送ってやりなさい。」

 

 ベランダから見ていたレミリアが口を挟む。

 

「それくらいだったら美鈴でも出来るだろ。」

「門番には屋敷の守りをしてもらってるから出来ないわ。」

「よし、だったらオレが今日は変わってやる。」

「いいんですか? 特に食事も運ばれたりしませんけど。」

「何を言ってるんだ? 屋敷を守ればいいだけなら屋敷の中でも出来るだろう。」

 

 どうせ屋敷全体に攻撃してきてもパチュリーが何かしらの対策でもしてるだろうし、そうなると中に入ってきた時に対処すれば良い話だ。

 

「侵入者を排除しなくてはいけないのでそれはちょっと。」

「お前排除しきれてないだろっ。それにオレは守ることに関しては訓練生クラスだぜ?」

 

 親指を自分に向け、得意気にドヤ顔を披露する。

 

「全然威張れてないでしょ。」

 

 ドヤ顔を直視した美鈴は呆れていたものの、ベランダにいるレミリアには見えなかったので効果が無かったようだ。

 

「仕方ねぇな、だったら金くれ。人里の本屋でなんか見繕ってくる。」

「あんなところより図書館の方がいいでしょ。」

「良さはそれぞれなんだよ。図書館では無い庶民的な物が人里にはあるかもしれない。」

「ならいいわ。お金は美鈴からもらって行ってちょうだい。」

「わ、私のポケットマネーですか?」

「どうせ後で咲夜に言えばもらえるわよ。」

「だったら構いませんけど。」

「んじゃ行ってくる。」

 

 美鈴から金を受け取って起きそうに無い男を担ぎ、いざ人里へ。

 

「そういやこいつの家はどこだ?」

 

 森を抜け、人里に到着し男をすぐに送って本を見ようとする直前に漸く気付く。そこまで広く無いので顔見知りがいれば声を掛けてくるだろうが気のせいかヒソヒソ話をしながら住民は怯えている。

 

「……これはひょっとするとあのパターンなのか?」

 

 甘かった。射命丸の新聞により、オレを知っている奴が多く。それなりの好感度を保っていると考えていたが予想は違ったようだ。

 

「どこの世界でも思い込みってのはあるんだな。」

 

 警察のような存在が動く前に男を届けるべく、屋敷前で話した会話からヒントを探す。

 

「……そう言えば道場に通っている的なことだったはず。」

 

 ピンポイントに自宅を探すのは時間がかかりすぎる。それに住民に聞き込みをするにしてもこう怯えられてちゃ、逃げ出してしまう可能性が高い。そうと決まれば善は急げ、道場らしき場所を探したほうが手っ取り早いと判断し動く。

 

「ちょっとそこのキミ、待ってくれ。」

「…………。」

 

 どう考えてもオレに対して声を掛けてるが怯えていないって事は住民の安全を守る類の人物だろうと想像出来る。だとしても答えれば面倒になるだろうし、ここは聞こえない振りをしよう。

 

「む。無視をするのは良くないぞっ!」

「うおっ!!」

 

 咄嗟に敵意を感じたので男を気にせず自分だけ避ける。

 

「ぐえっ!!」

 

 声を掛けてきた女は何故か頭突きを仕掛けてきたがオレだけ避けたことで男に当たるのは明白。男は意識も無いまま呻き声を上げて地面に倒れこんだ。

 

「ま、まさか狙ってない者に当たるとは……大丈夫か!!」

「いやいやいやいや、わざとだろ。」

「人聞きの悪い事を言わないでくれ。」

「だったら前から来いよ、背中から来たら避けなくても当たるのはこいつだろ。」

「……言われてみればそうかも知れない。」

 

 長く、青みがかった銀髪に変な帽子。それに加え服装も青く、長いスカートにはひらひらした部分もある。見た目だけで言えば面倒見の良さそうな優等生みたいなイメージだがどうやら頭に血が登ると一直線ってタイプらしい。あの男もそうだったし、人里の連中は空気が読めない熱血感が多いのかもしれない。それはそうと女が男を看病してるようだし、ここは任せて本来の目的である本屋に行くとしよう。

 

「待て待て。キミの知り合いを置いてどこ行くんだ。」

 

 男を置き去りにして立ち去ろうとすると女はオレを引き止める。

 

「知り合いじゃないし。」

「だとしても背負っていたなら何かしらの理由があるんだろう?」

「いや、無い。」

 

 そのまま止まらず進むとまた敵意を向けてくる。しかもさっきより少し鋭くなってる気がしないでもない。

 

「嘘は良くないぞ!」

「うぉ、また頭突きかよ。」

 

 さっきより少し敵意が強かったので少し大げさに横っ飛びして避ける。どうやら威力を上げたらしい。

 

「話を聞いてあげるからキミも来なさい。」

 

 次も駄々をこねるようならまた頭突きをすると女は目で訴えてくる。こういったタイプがそう考えてるってことは本当にやってくるだろうし、ここは理由を説明するしかないか。面倒になるだろうと腹をくくったオレはため息混じりに答える。

 

「……分かったから睨むなよ。」

「よし。なら話は寺子屋で聞きます。」

 

 女は倒れた男を担いで寺子屋へと向かい、その後ろを付いていく。

 

………。

 

……。

 

「そうか、それはすまないことをした。」

「おかげで時間が無くなった。」

 

 寺子屋に着くと意識のない男を寝かして今に至るまでの経緯を説明する。無論、紅魔館に挑んできてしつこかった事と本を買う事だけ。咲夜のような第三者が居ない場合は自分に不利な内容は隠して伝えたほうが丸く収まるだろうしな。

 

「さっき顔を良く見たら顔見知りだったから私が家にも送るし、家族への説明もしておこう。」

「当然だ。」

「たまに里の人間が紅魔館の門番に挑むという噂は聞いていたがまさかこんな事になるとは思わなかった。」

「美鈴の奴も多少驚いてたみたいだし、そうあることじゃないだろう。」

「それにしても外来人が紅魔館に住んでいるというのは驚きだな。」

「外来人じゃなくてただの人間が、だろ。」

「む。そういうつもりで言ったんじゃないがそう受け取ってしまったのならすまない。」

「いやただの人間を除いた外来人だったら結構な確率で住み込んでる気がしただけだ。」

 

 頭にクエスチョンマークを受けべながら、とりあえず頷いている。ま、これはわからくて当然なんだけどな。

 

「それはそうとキミはもしかして朝霧海斗という名か?」

「ああ。」

 

 女はがっくりとうなだれる。

 

「あれほど注意していたのに寺子屋に招いてしまうとは……何はともあれ生徒が帰ったあとで良かった。」

「なにか盛大な勘違いをしてるようだが。」

「新聞に書いてあったぞ、小さい子に目がないと。」

「言っとくがそれは射命丸が勝手に書いただけだ、事実じゃない。」

「それは本当か!?」

 

 オレの両肩を勢いよく掴む。話によると記事の内容を信じる奴はあまりいないってことだったはずだがこいつはその少数だったようだ。

 

「当たり前だ。」

「それなら良かった。」

 

 肩から手が離れ、安心したのか安堵の表情を浮かべる。

 

「そういえばまだ自己紹介をしていなかったな、私は上白沢慧音。見てわかると思うが寺子屋をしている。」

「なるほど、通りで教科書が並んでるわけか。」

 

 部屋には黒板や机もあるし想像するのは容易かった。話も一段落したところでオレは来てから気になっていた教科書を手に取りページを捲る。

 

「朝霧は勉学に興味があるのか!」

 

 慧音は嬉しそうに聞いてくる。

 

「無い。」

「そ、そうか。」

 

 興味が無いと言うやいなや、あからさまに落ち込むのがわかる。

 

「基本的にはな。ただ知らないものを知るのは好きだ。」

「そうか! だったらたまに授業を受けてみないか?」

 

 授業なんて面倒な事この上ないが少しでも気分を良くさせておくか。

 

「一回くらいはいいかもしれないな。それより慧音、この教科書貸してくれ。」

「朝霧くん、貸すのは良いが私はキミより年上なんだ。言葉遣いは直しなさい。」

「この教科書を貸してください……慧音。」

「敬語になってない!!」

「ちゃんと敬語にしただろ。」

 

 まさか妖怪やらがいる世界で敬語を使えと言われるなんて……レミリアにも言われたし不思議じゃないか。

 

「何を言ってるんだ、呼び捨てじゃないか。」

「オレはここの生徒じゃないし別にいいだろ。それに外来人なら世界が違う以上、時間の感覚も違うだろうし歳の差は些細な問題だろう。」

「くっ。キミはさぞ問題児と言われてたんだろうな。」

「さすが教育者、よくわかってるな。それじゃこれは借りてくぜ。」

 

 迷惑をかけたと少し負い目を感じているようで慧音はオレを引きとめようとしない。

 

「次返しに来る時までには言葉遣いを直してくるように!」

 

 それでも諦めず、言葉で伝えてくる。最近は度を超えた体罰をする奴か全くの無関心な教育者がいる中、珍しいと言えるだろう。

 

「……同じ職業でもどっかの殺気を飛ばす奴とは大違いだな。」

 

 日が暮れて夕暮れ時ということもあってか少しばかり憐桜学園の事を思い出しながらオレは寺子屋を後にした。




いかがでしたでしょうか?

今回は人里での慧音回でした。いや、むしろ男回だったかも知れませんが。これでひと通りの主要人物には会ったかと思います。あとは2回めの遭遇ですね。

そんなわけで次回は紅魔館でまったり編ですが変わる可能性が大いにありますので読者の方々も妄想を膨らませながら御待ちくださいませ。

読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想、ご指摘がありましたらお気軽にメッセージ等にお願いします。
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