元々好きな事なら当然。その好きな事の派生もまた当然。
でも関係性があまり無いものの場合はなぜだろう?
僕の場合は単純に雑談してたらでしたけど。
それではお楽しみください。
8月17日
「朝霧、試合の件については決まったかしら?」
「まだに決まってんだろ。」
朝、珍しくレミリアがオレの部屋を訪ねてきた。いつもなら咲夜も付き添ってるのだが今回は一人でだ。
「ん~、なるべく早く見たいのよね。」
理由は美鈴との試合が待ちきれないから早くやらせるためらしい。
「じゃあ聞くが早くやってやる代わりに単調な試合と少し時間をかけてギリギリの勝負になる試合、どっちのほうが楽しいと思うんだ?」
「可能性は低いだろうけどギリギリの勝負ってやつが見たいわ。」
「なら、少し大人しくして待ってろ。オレとしても時間をかけるつもりは無いしな。」
自分でも言ってしまった以上、早めに済ましておきたいのは本当だしな。
「そういう事なら待ってあげる、少しだけね。」
「はいはい。」
「それはそうと昨日のフランには驚かされたわ。」
そういうレミリアは少し俯きながら言う。
「指相撲で負けたことか?」
「……手加減してあげただけよ。」
「いや、あれはどう見ても完膚なきまでに負けてただろ。」
開始の合図から数秒での決着だった。そりゃ余裕こいて10秒動かないなんてことしたら誰だって負けるだろう。
「次やったら私の圧勝なんだから……ってそうじゃなくて力の込め方についてよ。魔理沙ともやったんでしょ?」
「そりゃ勝ち抜き戦だったから当然。」
勝ち抜きということで挑ませた順番はオレ、魔理沙、妖精メイド、レミリアだった。
「前までのフランなら間違いなく手を握りつぶしてたところなんだけど。」
「だろうな。次の妖精メイドは指が曲がってたし、順番が違かったら大惨事だっだだろう。」
「どうやったのか聞かせて頂戴。」
「ただほんの少し経験させただけさ。オレの手を使ってな。」
右手を前に出しながら答える。
「随分と危険な手段をとったのね、一歩間違えればグチャグチャになってたわよ。」
「頑丈さが取り柄なんでな。」
それを聞いたレミリアは少し何かを考えるような素振りをしてから気付いたように視線をオレに移す。
「で、いつ行くの?」
「どこにだよ。」
「今日は霊夢のところに行くって言って無かった?」
「あれは魔理沙が勝手に言ってただけだ。」
フランが指相撲した後にしつこく魔理沙が言うもんだから近いうちにと言ったんだがまさかそれを真に受けたとは。
「え? 行かないの?」
「え? 行きたいの?」
「い、行きたいわけじゃ無いわ。」
レミリアは向けていた視線を逸らす。
「なんだ、てっきり自分を訪ねてくる奴が居ないから寂しくなってわざわざ構ってもらいに行きたいのかと思ったぜ。」
「そんなわけないでしょ!!」
威厳を保つように腕組みをして言う。
「……そこまで否定するなら仕方がない、オレだけで行くとしよう。」
「ちょ、ちょっと、行かないって言ってたじゃない!」
オレがスーツの上着を羽織ると腕組みを解き、慌てる。
「気が変わった。」
「そんな急に!」
「で、どうすんだ?」
「あ、朝霧がどうしてもついてきて欲しいって言うなら――」
「んじゃ一人で行くわ。」
そのままドアノブに手をかけて扉を開ける。
「ま、待って! 私も一緒に行くから!!」
どうやら一人でオレの部屋を訪ねてきたのは博麗神社に行くつもりだったかららしく、咲夜には内緒だったようだ。でも朝なわけで館から出れば美鈴と咲夜と遭遇するのは当然。時間をかけ、渋々了承を得てオレとレミリアは本当に博麗神社へ向かうことになった。
………。
……。
「お前って霊夢と会ったりしてんの?」
「もちろん、ただ異変が起こって向こうからくることばかりね。」
「それって疑われてるだけだよな。」
「…………。」
本人も気にしているようで少し落ち込む。自分で言っておきながら落ち込むってどんだけ構ってちゃんなんだよ。
「はぁ。霊夢も宴会するみたいだしたまには紅魔館でもやってみたらどうだ。」
「前みたいにって事?」
「ああ。仮に断られたとしても魔理沙に言っておけば引っ張ってくるだろ。」
「そうね、今度試してみるわ。ところで何しに霊夢のところへ行くの?」
「魔理沙が一回くらい顔見せとけって言ってたからだ。」
「他にもこう、なんか理由あるでしょ。」
レミリアに言われて何かないか考えてみる。
「無いな。強いて言えば会いたくないってほうが強い。」
「……本当みたいね。」
「そりゃそうだろ。どうせ会ったらなんか言われる事間違いなしで、金を催促してくるかもしれん。」
気持ちだけは貰っておくわ、とか言ってもおかしくないし。
「誰がお金を催促するって?」
「お前だ、お前。」
気がついたらいつの間にか賽銭箱の前まで来ていたらしく、神社の中からのっそりと巫女が現れる。
「私はただ気持ちをもらってるだけに過ぎないわ。」
「じゃあ今出そうとしてた手を引っ込めたのはなんでだろうな?」
「手持ち無沙汰だっただけ。」
「ふーん、じゃあこれはいらないか。少ないが足しになるだろうと持って来たんだが。」
内ポケットから裸のままの万札を取り出しながら言う。
「……仕方ないから貰っておいてあげる。」
パシッと奪い取るような感じで人差し指と中指に挟んである札を抜き取る。
「って言うわりには素早く取ったな。」
「立ち話も何だし、入りなさい。お茶請けくらい用意してあげるから。」
「誰かを持て成す霊夢を初めて気がするわ。」
「ある程度の金さえ渡せばそれなりの対応をするんだよ。今度来た時にでも使ってみるといい。」
関心しているレミリアに近づいて霊夢に聞こえないような声でつぶやく。
「なるほど、やってみる。」
その時の光景を想像しているのだろうか? レミリアは小悪党のような表情になる。
「それにしてもハゲから仕方なく貰っておいた万札がここに来て使うことになるなんてな。」
「なにブツブツ言ってるの?」
「なんでも無い。」
部屋に入って少しすると茶と羊羹が出され、まずは茶を啜る。
「早速、海斗に聞きたいんだけどどうやってまた来たの?」
「前と同じでこっちが聞きたいくらいだ。」
「じゃあ結界に原因があるんじゃない。」
「調整し終わったばかりだからそれは無いわ。」
前回は調整中だったが今回は終わっていて可能性は低いらしい。
「それならあのスキマ妖怪ってこと?」
結界が違うなら次は紫。ここの住人からしたら理由は限られているようだ。
「前に聞かれた目玉模様なんてのはもちろん見てないぜ。」
「だってさ。」
そう言いながら霊夢は羊羹を食べる。二つの要因が違うならオレが来る前と今で違う事が何かヒントになってるかもしれない。
「そういや紫が頻繁にこっちの世界に来てた事は関係したりしないのか?」
「無理矢理やったならそうかもしれないけど単純な移動だけで他の人間に影響が出るとは思えないのよ。」
紫の様子から無理に来ている感じでは無かったし、その線も無いようだ。
「霊夢がわからなくて、スキマ妖怪のせいじゃないならお手上げってこと?」
「現段階ではね。」
霊夢がわからないなら他に知っていそうな人物は紫しか居ないだろう。
「なぁ、ここ最近紫か藍は来てないのか?」
「来てないわ、多分海斗の世界に行ってるんじゃないかしら。」
オレがこっちに来ていることに気がついてないのかもしれないし、仕方ないか。
「そうか。じゃあレミリアがお前に言いたい事あるみたいだからオレはちょっくら立ち読みでもしてくる。」
「え、ちょっと、何言ってんの朝霧?」
立ち上がるとレミリアは突然のことに驚く。
「へぇ、レミリアが私に言いたいことねぇ。」
「……なんで悪い顔してんのよ。」
「どんな罵倒をしてくるのかと思ってね。」
どうやら霊夢と仲良くやりたいレミリアだが想いはすれ違っているみたいだな。
「ま、夕方前には戻ってくるからそれまでゆっくり話してろ。」
オレはそのまま部屋を出て人里へ向かう。
「さて、この辺でいいだろう。」
人里の入り口近くで止まって呟く。
「お久しぶりです、海斗さん。まさか幻想郷に再び来ているとは思いませんでした。」
すると突如スキマがから藍が姿を現れる。発言から察するとやはり紫もオレが幻想郷にいると気づいていなかったようだ。
「らしいな。」
「それで博麗神社周辺の音声を拾っているといつ気付いたんですか?」
「前に紫から聞いただけだ。最悪紫が居なくてもお前はいると思ってな。」
「そうでしたか。」
「で、話してた内容について心当たりは?」
「私も、紫さまにもわかりません。」
「なるほど。その事実を知るためのピースが今回は足りないってところだろうな。」
「今回? ですか。」
「こっちの話だ気にするな。それで紫はどこにいるんだ?」
「紫さまはまだ海斗さんの世界で行動していらっしゃいます。」
「行動、してんのか。」
ただ遊びに来るとは思わなかったがなにかしらの目的があったか。
「はい、理由はわかりませんが。」
「頻繁に来てた本当の理由はそれか。」
「それと紫さまからの伝言です。お嬢様方が心配していると。」
「…………。」
お嬢様方って事は麗華たちか。言われてみれば誰にも言わずに来ちまったし、ここからじゃ通常の手段での連絡方法なんて無かったしな。
「お戻りになられたいのならすぐに紫さまをお呼びいたしますが。」
「……いや、いい。それよりもお前は紫と連絡を取れるんだよな。」
「もちろんです。」
「だったら明日の早朝、紅魔館に来いって伝えてくれ。」
「紅魔館ですか?」
「ああ、今は訳あって居候させてもらってるからな。」
「わかりました。」
「それじゃあオレは立ち読みすっから伝言任せた。」
「……立ち読みするってのは霊夢さんたちを欺くためじゃなかったんですね。」
「嘘は吐いたらバレやすいんだ。」
………。
……。
「おう、帰ったぞ……ってレミリアが見当たらないんだが。」
一冊ほど読み終えてから博麗神社に戻るとそこにレミリアの姿が無い。
「あいつなら少し前に一人で帰ってたわよ。」
「別にいいけどな。で、話は何だったんだ?」
「どうせ知ってたんでしょ。」
少し目を細めて言ってくる。
「何を。」
「紅魔館で宴会したいって事。」
「いや、全然。初耳だぜ。」
「自分から会話を振っておきながらよく言うわ。」
「お前が話を聞いたってことはレミリアの奴は満足してそのまま浮かれた気分で帰ったってことか。」
「ええ。」
あれで何百年も生きてるってんだから不思議だ。
「年甲斐もないな。」
「海斗も何かしに来たの?」
「あー、お前の顔を見に。」
「…………。」
嘘を吐いているか見抜こうと鋭い視線になる。
「魔理沙に言われたから仕方なくな。」
「はぁ、そんなことだろうと思ったわ。」
特に長居する理由も無いので立ち上がる。
「レミリアが帰ったんならオレも戻るとするわ。」
「もしかして紅魔館に住み込むつもり?」
予想もしていないことを霊夢は聞いてくる。それもよりにもよって色々考え始めてる、このタイミングにだ。
「幻想郷では外来人が住んじゃいけないのかよ。」
「害になるなら対処するわ。そうじゃないなら住んでる人だっているし。」
「そういや早苗がそうだったな。」
オレは空を見上げる。
「それで前は目的があったみたいだけど今の海斗はどう思ってるの?」
「さぁな。」
「そう……それじゃ帰り道は気をつけてね。」
「ああ、それじゃあな。」
右手を軽く上げてそのまま博麗神社を後にした。
8月18日
「おし、変則的かつ簡易的なこのルールならなんとか勝負って言えるようなもんになりそうだな。」
図書館に少しだけあった格闘技の本を広げながら一人でうんうんと頷く。既存の試合でのルールだけじゃ結果はほぼ決まりだ、だが多種多様なルールを組み合わせれば話しは別。
「我ながら地味だがえげつないルールを考えてしまった。今後はこれを対妖怪用ルールとしよう。」
「勝負ってどういうことかしら?」
紅魔館に来てからはあまり聞いてなかった声が聞こえる。ちなみに姿は無く、声だけだ。
「ちょっとした理由で美鈴と試合することになったんだ。」
「へぇ、私が幻想郷を離れてる間にそんな楽しいことしようとしてたんだ。」
「別に楽しくも無いし、お前が勝手に離れてたのが悪い。それよりも急に独り言から会話に成立させんなよ。」
声が聞こえてた方向からスキマを通して紫が現れる。
「だって海斗が藍に伝言頼んだんでしょ。」
「だとしても関係無いだろ。」
「それはそうと私から話たい事があるんだけど先にいいかしら?」
そう言うと何時にもなく真面目な声色で紫は言う。
「ああ、聞いてやる。」
オレは椅子に腰をかけて、紫もそれを見てベッドに腰を掛ける。
「まず一つは麗華ちゃんたちの事。海斗が居なくなって連絡も取れなくて心配してるわよ。」
「藍から聞いた。わざわざ麗華と話したのか?」
「いいえ、スキマから覗いただけ。私自身やることがあったから藍に頼んだの。」
「そういうことか。次は?」
「二つ目は学校の強化合宿の事。」
「そういやそんなのがあったな、確か今日からだっけか。」
23日まで訓練校では無く、合宿所で一日中全学年の男子生徒は筋トレをさせられる行事だ。例年どおりなら時期が違うみたいだが何かの理由で早めたらしい。
「ええ。今すぐ参加するならすぐ送るけど?」
「……いや、やめておく。次だ。」
「感づいてるかもしれないけど禁止区域強制退去法案の執行日。」
「23日だったな、それがどうした。」
一層真剣な表情に変わる。それこそ余計な感情を省いたような表情で人間味を感じないほど。
「私としては幻想郷に関係の無い人間がどうなろうと構わない。」
「それは当然だな。」
仮にオレが関与出来るほどの力を持っていても同意見だろう。
「でも私はある男と関わってそして依頼を受けた、さらには海斗とも関わってしまった。」
オレの世界で紫が行動していて、その理由が男の依頼。なんて言われれば嫌でも答えは出てくる。あの時を何度も思い出して考えてもそんな事はありえない……と思っていても、あいつなら繋がってしまう。
「…………。」
「さすがに計画を頓挫させるほどあなたの世界に関わるわけにはいかない。だから海斗に聞くわ……あなたは友人たちが傷つくのをどう思う?」
親父の事を考えていたはずが気付けば紫の言葉を聞いてあいつらの事を思い浮かべて考えている。
「オレは……。」
紫と目を合わせていたがその問いかけにすぐ答えられずオレは目を逸らす。禁止区域にいたオレから言わせて見ればあんな無茶な法案を執行すれば何かが起こるなんてのはわかっていたこと。だからといって簡単には変わらない。
「自分以外どうなったってオレの知ったことじゃないし傷つこうが死のうが関係無い、そういう理の中で育ったんだ。」
そう、そういう場所で育って染み込んだ……はずだった。あいつらとは1年くらいしか接していないがいつの間にかオレは変わっていたらしい。
「でも今の考え方は違う、近くにいる奴らくらいは助けたい。」
逸らしていた視線を再び紫に合わせる。
「海斗が助けたいと思っているのなら助けることは確かに出来る。でも、何かしらの被害が出てしまうこともまた確か。」
「ああ、オレ一人……いや、人間一人ならたかが知れている。」
「たとえ人間が何百人増えてもね。」
オレがどうにかなったりは別に構わないがあんな場所とは無縁の麗華たちがそうなるのを黙って見てることなんて出来ない。そう思った途端、気づけば立ち上がり紫に対して頭を下げていた。
「二階堂だけじゃない、倉屋敷、神崎も守るために紫の手を少し借りたいんだ。頼む。」
「私自身、海斗のおかげで楽しませてもらってるしそれくらいなら喜んで手を貸すわ。だから顔を上げなさい。」
顔を上げると紫はさっきまでの表情から微笑みに変わっていた。
「そう言ってくれて助かる。早速だが退去法案執行日にどうなるのか教えてくれ。」
オレは椅子に座り直す。
「全部とまでは教えられないけど少なくとも高等区に禁止区域の人間が入り込んで資産家の子を誘拐する。」
「オレが聞いた事ないってことは特区の奴らは関係してないか。」
どんな方法かは知らないが高等区に入り込めるなんて結構な準備期間が必要なはずだ。なのにオレが噂すら聞いていないとすると特区より奥にいた奴らのことかも知れない。
「その後どうするかはわからないわ。何かの交渉材料に使うのか、見せしめとして殺すのか。」
「つーとアキラの奴はそれに関係してるってことか?」
「関係はあるけど目的までは……。」
「そうか。ま、何にせよやることは決めた。早速行動させてもらうが紫は21日にまた来てくれ、その時に詳しく話す。」
「私もまだ準備しなくちゃいけないし、その方がいいわ。でも私を呼んだって事は言いたいことがあるんじゃないの?」
紫は立ち上がりスキマを出して移動しようとする。
「なに、似たようなことを聞くつもりだったからいいさ。それより近いうちに射命丸の奴も呼んどいてくれ。」
「それなら良いの、それじゃ。」
スキマを通り、紫は移動した。準備があると言っていたのでおそらくオレの世界に行ったのだろう。
「さてと言いに行くか。」
紫がしようとしていることに関わる必要は無いし、知っておく必要もないだろう。まずはここで出来る準備をするだけだ。
いかがでしたでしょうか?
巫女回予告をしておきながらガッツリ紫シリアスでした……こんなはずじゃなかったのに。因みにみなさん大体お気づきかと思いますが次回以降は基本的に真面目な内容になってしまうと思います。なぜなら紅魔館編は残すところあと数話だったりするかもしれませんので。
そんなわけで次回はパチュリーと小悪魔回の予定ですが変わる可能性が大いにありますので読者の方々も妄想を膨らませながら御待ちくださいませ。
読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
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