本来であればもっと早く完結してたのですが色々あり時間がかかってしまいすみませんでした。
少しエピローグ気味なので文章量が少ないですが最終話をお楽しみください!
真っ暗で何も見えない状態から解き放たれたアキラは撃たれた足を庇いながら状況を確認する。
「くそっ、ここは……禁止区域か?」
かなり離れた場所でサイレンが鳴り響く。瓦礫や壁がボロボロの建物を一目見るだけで理解し、警戒をより一層強めた。長く居たところならすぐに分かって当然だろう。
「それもオレたちがよく知ってるところだ。」
アキラから少し離れた場所でスキマから出る。
「……海斗、何をした。」
オレを睨みながらつぶやく。そう。ここはオレとアキラが初めて会った場所。特に重要な拠点では無いため今は人の気配は無く、非常に好都合。
「警察もバカじゃないだろうから時間が無い。じゃあなアキラ。」
普通の関係なら昔話の1つや2つするんだろうがオレたちは違う。アキラは足を撃たれ、移動を制限されていても最大限生きるために背後を取られないような場所に移動している。ほんの少しでもスキが出来れば反撃する意志を瞳に留めながら口を開く。
「全く、とんだ誤算だったよ。二階堂でキミに会うな――」
言葉を遮るように引き金を引くとアキラは前のめりに崩れ落ちた。地面にいは血が滴り、白いスーツが赤く染まっていく。
「ガキの時にここでオレを殺さなかったのがそもそも失敗だったんだよ。」
一度、アキラが完全に優位だった瞬間があった。行動を間違えていれば当時のオレはいとも簡単に殺されていた程の。そこが1つの分岐点だったんだろう。それから色々変わったからな。
「終わったみたいね。」
「ああ。」
何食わぬ顔で手に持っていた銃をその場に投げ捨て、スキマに入る。
「わわっ!?」
スキマを通して倉屋敷を覗くと最初に目が合った妙は驚きながら後ずさる。
「お、紫さんたちが来たってことは全部落ち着いたってことか?」
実力があるとはいえ多勢に無勢。数が多く苦労したんだろう。額の汗を拭いながら龍は床に腰を下ろし、一息ついて警戒を解く。
「そういうことになるかしらね。」
部屋は入り口付近に争った跡があるものの、妙たちに怪我は無い。
「怪我は無さそうだな。」
急に龍が右手の人差指だけを頭くらいの高さまで上げる。
「これで貸し一つだ。」
「別に良いがオレに借りを作ったところで得なんてありゃしないぞ。」
内容が内容だけに断る気は無いが仕事のコネがあるわけでも無いし、どんな要求をされるか想像がつかない。ま、楽しみにしておけばいいだろう。
「そいつを判断するのは俺だからな、せいぜい期待しておけ。」
「もちろん私にも貸し一つですよね?」
射命丸はしれっと笑みを浮かべながら前に出てくる。龍と同様断る気は無い。無いのだが、なぜか無性に断りたくなる仕草だ。
「は?」
「こう言ってはなんだが文ちゃんがいなかったら全員無傷とはいかなかったかもしれない。」
オレが嫌そうな顔をしていると龍は真面目なトーンだがその表情はどこかしら悔しそうに見えた。仕事上守ることが多いのに守られるってのは結構くるものがあるのかもしれない。
「そうね。ビル内に侵入してくるはずの人間が来なかったものね。」
「お前みたいな奴に借りは作りたくないが今回ばかりはしゃあなしか。」
紫に言われなくてもそれくらいは想像出来る。龍一人では厳しいと判断し、そのために協力してもらった他ない。
「じゃあ文はさきに戻っててね、私たち次に行くから。」
「え、ちょっ、紫さ――」
まだ喋り足りなさそうな射命丸をスキマに入れてから、オレは別のスキマに入る。
「あ、海斗さん。」
道場に出ると美鈴と萌の姿。ところどころ木が剥がれているが目立った萌たちに外傷は見当たらない。ただ1つ、爺さんの姿が見えないことを除けば。
「どうやら犠牲は爺さんだけで済んだようだな。」
目をつむり、道場の天井を見上げる。
「こら、勝手にワシを殺すな。」
視線を下に移すと仰向けになったまま体を動かせない様子の爺さんがいた。声色は変わりないが、姿はボロボロ。連戦による怪我もあるだろうがそれだけの傷じゃない。
「悪い、悪い。でもまさか爺さんがここまでやられるとは思ってなかったからよ。」
禁止区域の奴らが来ても普段暴れない雑魚なら萌が。多少手応えのある奴らは爺さんでそれなりに対処出来ると思ったが、念の為美鈴にまかせて正解だったってとこだろう。オレが知らないだけで爺さんより強いやつがいてもおかしくないからな。そう考えてるとどんな顔かちょっと興味出てきたぜ。
「雅紀が来たってところかしら?」
「何言ってんだそんなわけないだろ。」
「いえ、紫さんが仰る通りです。」
美鈴がなぜ親父を知っているか気にしつつ、オレが最後に見た事実を伝えようとする。
「待てよ、あいつはオレが――」
「殺した?」
「……少なくとも致命傷は与えたはずだ。」
これまで頭の隅にあった。死んだかどうか確認する前に連れて行かれたこと。
「確かに致命傷だったわ、一般人なら死んでもおかしくないくらいのね。」
この紫の一言でたまにあった不安感の正体がわかった。
「あー、そういうことか。」
どういうわけかは知らないが親父も幻想郷に行き、治療してもらい生きながらえた。そして今ここにいる。ただそれが幻想入りする原因とは違うんだろう、あくまでこれは縁。そんな気がする。
「どうする? 会いにでも連れていきましょうか?」
「いや、いい。会わなかったってことはそういうことだ。次会うことがあったら……。」
「また殺すのかしら。」
「さぁ、どうなるかな?」
「一段落ついたからお願いがあるんだけど良いかしら?」
紫はわかりきっている返事を待つ。
「ここまでしてもらった手前断れねぇんだろ。」
「大丈夫、海斗には少し手伝ってほしいだけだから。それに気になってることの解決にもなるかもしれないしね。」
そのまま広がってくるスキマに入らされる。
「で、お前たちが俺を外に出してくれるのか?」
スキマから覗くとそこは見覚えのない場所。手錠をされて折に入れられている男が一人。周りにある物を見て推測するに警察署だとわかる。
「ええ、暴動は失敗に終わったもののまだ事態は沈静化してない。今なら簡単にあなたを禁止区域に戻せるわ。」
警官が全員出払ってるわけではないが殆どが外の対応に追われている。仮に居てもスキマなら簡単だが今の状況なら理由のある脱走になるんだろう。だとしても男の口ぶりから初対面とわかる紫がここまで手を貸す理由がわからない。明らかに得が無い取引だ。
「おいおい、なんでお前が警察署の地下にいる奴を連れ出そうとするんだ。」
「最後まで手伝えばわかるわよ。」
警戒している男はオレたちを観察しながら考え込む仕草をする。
「話が美味すぎるな。」
普通じゃ考えられない出来事だが普通じゃないからこそ容易に確実に不可能なことを実行出来るとわかっているんだろう。それだけに考えることは多く時間もかかる。が、時間が掛かればそれだけ人が来る確率は上がるしそうなればオレに面倒が降りかかるので男を急かす。
「んなことどうでも良いだろ、出してやるんだからさっさとしろよ。」
「……あいつに似てるガキがいるのも気にかかるんだよ。」
「あ?」
どうやらオレのことも原因の1つだったらしい。こんなやつ見たこと無いんだけどな。
「ちっ。癪に障るが仕方ねぇか。」
「じゃあこれに入ってもらえるかしら?」
「不気味だな。まぁこれで逃げれるなら安いもんだ。」
そう言うと男は躊躇せずスキマに入る。それぐらい切羽詰った状況なのだろう。
「ここらへんでいいかしらね。」
雰囲気や匂いで禁止区域だとわかるが見覚えない場所に出た。いや、ガキの頃薬をもらいに来た場所に似た雰囲気だ。
「どんなカラクリしてんだか。」
男は驚きつつも、オレたちを警戒しながら早足で離れる。
「警察も入り込んでくるだろうから私たちは戻るわね……あなたも急いだほうが身のためよ。」
「ああ、一応感謝しとくぜ。」
紫の含みある言い方を気にせず男は奥に行こうとして、ドンっとなにかにぶつかった。
「…………。」
「な、なんでお前がここに!?」
男の顔は青ざめていき、身体は微かに震えている。離れていてもわかるほどにフードの男からは凄まじい殺気を感じる。
「お前を殺すためだ。」
「はぶっ!?」
男はフードの男……親父に頭を捕まれコンクリートの柱にメキメキと音を立てて押し付けられている。片手は動いて逃れようとするが力が入れられないほどの握力で抑えられていて、意識を保つのも難しいだろう。オレは紫と向き合う。
「お前が動いてた理由はこれかよ……。」
「ええ。」
紫から親父へと視線を移すと男は動かなくなり地面へ倒れている。何度か殴られ殺されたんだろう。それがわかるくらい、オレが一度も見たことが無いほどの威圧感だった。
「おい!」
少し親父に近づく。
「…………。」
こちらに背を向けたまま、歩みを止める。その背中からは覚えのある威圧感だけ。
「生きてたんだな。」
「今度こそ俺を殺すか?」
視線は感じるだろうに親父は顔向けないままだ。
「向かってくるなら容赦はしないが今はそうする理由がねぇ。」
「そうか。」
そのまま何事もなかったかのように奥の暗闇へと進んでいく。
「オレはアンタが通り過ぎた道を戻って、アンタが通れなかった道を通る事にした。だからもう会うことはねぇ。」
言い終わるころには気配も消え、辺りは静寂に包まれた。こうして暴動は徐々に沈静化し、大量の逮捕者と被害者を出した。それでも致命的な被害は最小限に収まったはずだ。暁東市が元通りになるにはかなりの時間が要するほど大きい行動だったが、おそらく禁止区域の連中を動かしていたヤツの目的は結果ではなく過程の部分に重きを置いたのだろう。この程度で法案が却下されることは無い。あったとしても先延ばしにして世間がこの事件を忘れた頃に再度提案されるのがオチだ。仮に内部から時間をかけて崩すことができたら、それこそ暴動は止められたのかもしれない……そんなもしものことはどうでもいいか。これでオレが出来ることはすべてやったし、やらなきゃいけなかった事も終わらせた。
「さぁ、帰るか。」
朝霧くんが姿を消してから数日、紅魔館は妹様を除いていつもどおりの日々に戻った。と言っても妹様が悲しんでいる様子は全くない。変わったのは図書館で本を読むようになったところだ。そのことに驚いたお嬢様も最近は図書館で妹様を眺めるため入り浸っている。同様にその光景を見物するように魔理沙と文も紅魔館に来る回数が増えた。それとなぜか知らないけど妖精メイドの一人が最近妙に仕事を覚えようと頑張っている。私の仕事が減る程ではないので気にすることでもないかもしれないけど。
そして私は今門の前で立っている。前に美鈴と試合をした人里の人間がちょくちょく来るようになっていて、意識を断っては美鈴が人里に送り返している。私より家を知っている美鈴のほうが速いからその間少しだけ私が変わるようになった。
「改めて考えるといつもどおりじゃなくて少し騒がしくなってるかもしれないわね。」
私は門から屋敷を見つめる。昼間ではそのことはわからない。夜ならたまに集まって宴を催すことでわかるだろう。
「ならそのついでに人間一人匿うのは余裕だよな。」
後ろから喋っている男は気配を感じさせない。能力、なんてものが無くてこれだから結構異常な気もする。私は振り返り男と顔を合わせた。
「ただの人間ならね。」
「じゃあ好都合だ。」
男はそのまま近づいてくる。声色は変わらないものの、心なしか表情は明るく見えた。
「ただの人間が3回も幻想郷に来るとは思えないんだけど?」
私は腕を組み、首をかしげる。
「そいつは幻想郷に聞いてくれ。とりあえず今は面倒ごとを避けたくてな。」
「今度は何したの? 朝霧くん。」
「ここに来る途中青と緑の妖精に会って、持ち前の話術でどうにか巻いてきたんだ。」
「なるほど、あの子には気に入ってもらえ無さそうだもの。」
いつもみたいによくわからない持論やでまかせで言いくるめたのだろう。その光景を想像するのは簡単だ。
「つーわけでまた世話になりに来た。」
「今回はお嬢様から聞いて無いから引き止める気は無いわよ。」
「じゃあ使用人の件でどうだ?」
「どうせ少しの間でしょ。」
「もちろん。」
「はぁ。一応お伺いしてみます、どうぞ朝霧様。」
門を開き、招き入れる。
「それやめろって言っただろーが。」
並んで屋敷の中へ。朝霧くんはそれから数ヶ月幻想郷に滞在した。詳しい理由は聞かなかったけど文々。新聞によると暴動沈静化に伴い、警備強化のせいだとかでほとぼりが冷めるのを待つためだとか。何はともあれこれで朝霧くんの世界は当分動きもなく、そのかわり幻想郷が騒がしくなるのは言わなくてもわかるわよね。
いかがでしたでしょうか?
これにて「不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り」は完結です。とはいえ色々後日談を想像出来るようなズルい終わり方にしたので忘れた頃に短編や経由のIF短編などの可能性はあるかもですが各々で色々妄想してみてくださいな。一応初期の頃にやったアンケート内容も覚えていますので短編といった形になるかもしれませんがご了承ください。
読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
そしてこの作品に対して評価、感想、お気に入り登録してくれた方々、誠にありがとうございました。完結できたのも皆様のおかげです。
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