不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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確か、前に独り言も良いかもって話をしましたが…誰かに聞いてもらうってのも良いですね。

独り言の時とは違う発想が生まれますので。

…あ、ならお人形さんに話しかけるってのも新しい発想が生まれるかもしれません。
今日は帰ったら試してみようかな。

マイペースな僕はそう思ってます。

それではお楽しみください。

●2014年10月6日 文字数が少なかったので23、24、25、26話の4話分を合わせて修正投稿致しました。第3章までで本文の文字数が少ない話は引き続き修正していきます。


第8話 「……オレは今なんて思った?」

 最近身体を動かしてなかったオレは今、森を散歩している。それだけなら良かったのだが森に出た途端、密着インタビューでもしようとしてるのかスキマから射命丸が同行して来た。せっかく静かに自然を堪能できると思ってたんだけどな。

 

「はっ!? 今どこかの世界でオレに惚れた少女が増えた気がする。」

 

 なにかを感じ取ったかのように空を見上げ振り返る。

 

「どこかの世界ってどこですか?」

 

 振り返ったその先にいる鴉天狗が聞いてきた。

 

「それはどこか……遠い世界に決まってんだろ。」

 

 オレが遠いって言ったらそれはそれは遠い世界に違いない。

 

「考えなしのギャグは中々見苦しいですよ、私としてはいいネタになるので構いませんが。」

 

 ニヤつきながら射命丸は手に持ってるメモ帳に書き込む。

 

「オレはひらめき型の芸人なんだよ。」

「では何か一発芸をお願いします。」

 

 すぐさまネタを要求される。丁度いい、最近仕入れたタイムリーな芸を披露することにしよう。もちろんそのまま使うんじゃなくオレ流に昇華させてだ。

 

「よし! なら五十音からはじまる言葉をスグ反対の反対にして元気に言い返すぜ! ほれ何でも来い。」

 

 どんな言葉を言うか迷っているのか、それとも呆れているのか。メモ帳に書き込んでいる手が止まる。

 

「……自分はお頭が弱い人間です。」

「自分はお頭が弱い人間です!!!」

「……自分は性格の捻じ曲がった人間です。」

「自分は性格の捻じ曲がった人間です!!!」

 

 2度目の言葉を言い終えると射命丸は黙る。もしかしたら3回目はとっておきの言葉を言わせるために考えているのかもしれない。

 

「まさか躊躇無く普通の事をやるって悲しくなりません?」

 

 どうやら何かを考えていたのではなく、呆れていたようだ。

 

「きっと鴉天狗アレルギーの影響に違いない。」

「アレルギーってなにを今更言ってるんですか。」

 

 そう言いつつも多少気になるのか距離を取る。

 

「今日のカウンセリングはここまでだな。お前が来たって事は例の物が出来たんだろ?」

「そうでした。海斗さんの狂言で会いに来た目的を忘れていました。」

 

 射命丸は肩からかけている鞄から新聞を取り出す。

 

「へぇ、ちゃんとした新聞だな。見出しも……よし! 決まってんじゃん。」

 

 幻想郷の見た目から雑な新聞だと想像していたが思いの外ちゃんとしていてインタビュー時に言った真の読書家という見出しとオレの写真も使っている。

 

「そりゃあもちろんです!」

 

 素直な感想が嬉しかったようで満面の笑みを見せる。

 

「じゃあもう1部くれ。」

「……はい?」

 

 満面の笑みから一転して真顔に変わった。

 

「だからもう1部よこせっての。オレ用に作ったって可能性もあるからな。」

 

 コイツのことだ、十分に考えられる。

 

「あまり残ってないんですが、仕方ありませんね。」

「ふぅん。」

 

 新たに鞄から取り出した新聞を受け取り、一通り記事を見る。

 

「変わってなくて当然だな、あと何部持ってる?」

「2部ですけど、確認しますか?」

「一応な。」

 

 少なくとも手持ちには無いようだ。さすがに記事が違う新聞をここに持ってくるほど頭が悪いわけでは無いだろうからな……鴉だし。

 

「……幻想郷には何部配った? 正確に答えろ。」

「私が配ったのは11部です。」

 

 私がってことは他にも配るのを手伝った奴がいるってことだが少なくとも今のオレに幻想郷の記事を確認する術は無い。

 

「ちっ、他に配ってんのは紫の奴か?」

「いえ藍さんです。あっ、藍さんはですね――」

「九尾の式神だろ? 紫に聞いた。」

「そうだったんですか。海斗さんって意外に情報を引き出すのが上手ですよね。」

「単にお前らがおしゃべりなだけだ。ほらやる事が終わったならさっさと帰れ。」

「では、今日もインタビューさせていただきますね。」

 

 そう言うと思ってたけどな。

 

「もうする事ねぇだろ。」

「ふふふ、まだ本命が残ってるんですよ。本命が。」

「なんかすごくくだらない本命な気がするが一応聞いてやる。」

「ズバリ! 魔理沙さん、霊夢さん、早苗さんとのご関係は?」

 

 あいつらとの関係ねぇ。

 

「顔見知り。」

「ま、またまた~。」

 

 想像と遥かに違う答えをした為か、射命丸は現実を受け入れられないようだ。

 

「早苗さんはそうかもしれませんが他のお二人は違いますよね!」

「一人だけ省かれるとは哀れだな早苗は。」

 

 早苗の知り合いで早苗の事を思う奴がいないって事はコミュ症なんではなかろうか。

 

「でもでも、すでにお二人の自宅にお泊りしたという情報はあるんですよ!」

「ああ、ほんと良く見ず知らずの他人を泊まらせられるよな。」

 

 その部分に関しては尊敬しても良いくらいだ。

 

「オレだったらカツアゲして追い返すだろう、ってそういえば霊夢には似たような事されたな。」

「ほんとに泊まっただけで何も進展は無かったんですか?」

「ないな。」

 

 余程期待していたのか見て分かるほど落胆している。

 

「どこかの芸能人だったらすぐ進展するのに。」

 

 本命がスキャンダル関係とは記事の質が知れるな。

 

「あいつらだったらまだ上海の方が可愛気がある。なんならお前でも良いんだぜ?」

 

 冗談っぽく微笑み。目を合わせる。

 

「わっ私はダメです! 記者のスキャンダルなんて……。」

「考え方を変えれば自分でいつでも捏造しないで記事を作れるんだ、色々効率イイだろ。」

 

 そのかわり質は保障できないが。

 

「確かに。いや、でもっ……。」

「そんなんで迷うなよ。」

 

7月9日

 

 今日こそは自然を堪能しよう……そんなちっぽけな希望すら朝には音を立てて崩れる事になった。

 

「やっぱり幻想郷と違って暑いですね~。」

 

 パタパタと射命丸は手に持っている団扇を扇ぐ。天狗のくせして持っているのはたまに駅前とかで配ってるような団扇。それに汗はそこまでかいてない。

 

「なんで追いかけて来るんだよ。」

 

 対するオレは汗が止まらない。どうせスーツ着てるからって思ってるんだろうが主な理由は別にある。

 

「海斗さんが隠れて外出しようとしたからですよ。」

 

 そう。今日も来るような気がして一足先に森へ行くことにしたのだが所詮は人間と妖怪。さすがのオレでも身体能力の差を見せ付けられたわけだ。

 

「騒がしい奴は嫌われるんだぜ、気付いてないのか?」

 

 くだらない会話をして呼吸を整える。今後一切、スーツを着て夏の森を走るのはやめておこう。

 

「海斗さんに騒がしいとは言われたくないですね。」

「そーよねぇ。」

 

 そこで第三者の声が響く。

 

「少なくともインタビュー目的で射命丸が居るのは分かるんだが、なんで紫までいるんだよ。」

 

 干渉するなと言ったがすぐ懲りずに来るとは図太い。

 

「なんでって退屈だったから来たのよ。それに海斗に会わせたい子がいたし。」

「オレに会わせたい?」

 

 ここで面倒な奴が増えるのは避けたほうがいいだろう。

 

「じゃあ一つ条件を出す。もしオレがソイツを騒がしい奴と判断したら今日は大人しく帰れ。」

 

 紫が紹介するって事は恐らく幻想郷の住人だろう。少なくともオレが感じた限りまともな奴は居ないと思っていい。

 

「ええ~、海斗さんが判断するなんてズルイじゃないですか。」

 

 射命丸は文句を言ってくる。

 

「なんとでも言え。これ以外の条件は飲まん。」

「……分かったわ。」

 

 特に何も反論しないで答える。それほど紹介する奴に自信があるようだ。

 

「来なさい、藍。」

 

 スキマから出てきたのは狐のような尻尾が九本ある女。恐らく九尾の式神だろう。短い金髪にお手伝いさんのような服装、昔の主婦が着てそうな服だ。

 

「どう? 騒がしい子に見えるかしら。」

「……まだなんとも言えないな」

 

 まさか、まともそうな奴が出てくるとは思わなかった。だが、あの芸人メイドみたいに上っ面だけで内面はきっと酷いに違いない。

 

「はじめまして。紫様の式神で八雲藍と申します。」

 

 九尾の藍は頭を下げる。

 

「……。」

「朝霧さんで宜しいでしょうか?」

「好きに呼んでくれ。」

「朝霧さん、最近は紫様がお世話になっているようなんですがなにかご迷惑をかけていませんか?」

 

 言葉遣いは丁寧な方だな。ま、上司がこの場に居るんだ。それなりの対応をするだろう。

 

「見られるだけですげー迷惑だ。早く連れて帰れ。」

「それほどまでとは……紫様が迷惑をかけてしまい、すみませんでした。」

 

 今度は深々と頭を下げて謝る。

 

「っもう。藍ったら海斗の冗談もわからないの?」

「え、冗談だったんですか? 朝霧さん。」

「いや、冗談を言ったつもりはないぞ。」

 

 どちらの言うことが真実か分からず頭を傾げる。馬鹿なのか、それとも馬鹿に真面目なだけなのか……どちらにしろ馬鹿って事になるな。

 

「それで、どう判断したんですか?」

「……変に真面目な奴だなと。」

「じゃあこのまま四人でおしゃべりできますね!」

 

 二日後には婿選びの最終審査が始まるし昼までの間はのんびりさせてもらうか。四人もいりゃオレが喋る事も少ないだろうし。

 

「そういやいなり寿司作ったのお前なんだよな?」

 

 藍はオレの方にわざわざ向きを合わせる。

 

「ええ、そうですよ。」

「他にもなんか作れるのか?」

「はい。主に紫様の食事を作っているので多少の料理なら作れます。」

 

 普段から作っていれば料理の腕と味も保障されているようなものか。

 

「なら、ルーミアに飯作ってやってくれないか?」

「……ルーミアですか?」

 

 藍は難しい顔をする。恐らくオレが何を考えているか分からないのだろう。いや、外来人が妖怪の事を気にかけている理由が分からないのかもしれない。

 

「ああ、今アイツは人間より美味いと感じる食い物を探してる最中でな。気が向いたらなにか作ってやってくれないか。」

「そういうことならわかりました、さすがに毎日とはいきませんが。」

「ああ。その辺はテキトーで構わない。」

「海斗さんは自分より容姿が幼い子には若干甘い、っと。」

 

 スラスラとメモ帳に書き込む。

 

「なにが甘いだ、オレはどんな奴に対しても大人のチョコレートのようにビターだ。」

 

 両手を広げ、舞台俳優のように訴える。

 

「海斗をチョコレートに例えたら甘酸っぱいアーモンド臭がしそうよね。」

「紫様、そのような匂いですと青酸カリですので違うかと。」

「オレは毒かよ。」

「海斗さんの吐く息は青酸カリ、っと。」

 

 見ている限り声に出している以上の事をメモ帳に書き込んでいる。

 

「もう人間じゃねぇな。」

「もはや歩く大量殺人兵器ね。」

 

 そう言うと紫はオレから少し離れる。

 

「朝霧さんってそんな凶悪な身体だったのですか?」

 

 紫と同様に藍も離れる。

 

「どこからどう見ても外見は人間だろーが。」

 

7月10日

 

「夕方からですがインタビューさせて貰います!!」

 

 急に射命丸が声を掛けてくる。

 

「おいっ! 餌に食いついてた魚が逃げちまったじゃねぇか!!」

「さっきから見てましたけど魚は食いついて無かったですよね。」

 

 オレとした事が餌を取られているのに気付かなかったようだ。

 

「うっせーな……そろそろ屋敷に戻るとこなんだよ。」

「そうでしたか、ですがお時間は取らせません。」

 

 新聞記者が言いそうな言葉だがって一応記者なんだっけか?

 

「どの口で言ってんだよ。少しだけだぞ。」

「あや? 今日は随分と丸いですね。」

「まーな。」

「それにキレも悪いようで……なにかありました?」

 

 どうやらインタビューよりも気に掛かることがあるらしい。

 

「てめぇが気にする事なんか、なんもねーよ。」

 

 早朝オレは薫の母である雪江と雑談をした。相変らず見た目や雰囲気で感じるより勘が鋭い。しかも子供の事になるとかなり鋭くなる。親なら当然、子供が心配なんだろう。女であれば娘に近しい事もあり、娘により親身に。それは父親だって変わらない。

 

 先ほど川に来たとき武志に痣が出来ていた。話を聞けば父親に反抗したようだ。恐らく父親は子の未来を思っての行動だったのだろう。男であれば息子に、より親身になることが出来る。親にとっては何歳になろうと子供は子供のまま。父と母ではちょっとした違いはあれど子供のことを思う根本は変わらない。第三者から見ても南条家の親にはそれが見受けられる。だが、当事者である子供はそれを理解するのに時間が掛かる。最悪、理解出来ないまま永遠の別れを告げる事もあるだろう。親と子の確執を解かないまま。

 

 一般的な家庭では時間を掛ければ解決できるがオレにはそれが無かった。

分かり合う事も無いまま、永遠に別れ。分かり合う事もしないまま、葬った。だからなのか、南条家には分かり合えないまま別れないで貰いたいそれがオレの素直な思いだ。ま、何事もなければ気にする事もないんだが。

 

「なぁ、妖怪に親って居たりするのか?」

 

 そんな事を考えていたら思わず問いかけてしまっていた。

 

「親ですか。生みの親なら全部の妖怪にいるわけでは無いと思います。」

「育ての親なら、居るってことか。」

 

 少なくとも人間と同じ方法で生む奴は多くないだろう。

 

「はい、さすがに妖怪といえどその部分は人間と変わりません。ごく一部の妖怪以外は生まれてスグに一人前ってわけじゃありませんから他に成長している妖怪が居れば、殺されてしまう事もあります。」

 

 そこらへんは禁止区域と似てるな。

 

「じゃあ弱肉強食ってのは共通言語って事だな。」

「そうなりますね。」

 

 一般的な世界でも使うだろうが含んでる意味が違う。オレたちが使うときその言葉に含まれるのは命だからな。

 

「で、そう言う海斗さんの親はどうですか?」

 

 どうもオレの親に関する情報を欲しがってるスキマ妖怪がいるようだな。もうちょっと頼む相手を考えて欲しいぜ。あからさまに仕込まれてたら言う気も無くなる。

 

「……二人とも、もういねぇよ。」

「親についてはタブーでしたか?」

「禁忌中の禁忌だ。」

「うぅ、すみませんでした。」

 

 見るからにわざとっぽいな。

 

「妖怪の中でも。育ての、生みの親を殺す妖怪っているのか?」

「まったく居ないとは言いきれませんが居るんではないでしょうか。私は会ったことありませんけど。」

 

 妖怪なら何があっても可笑しくない。小さいからといって力が弱いとは限らないのだから。

 

「じゃあ人間の連中で殺した奴はいるか?」

「最近は居ないようですが、昔は居たかもしれません。実のところ妖怪よりも人間の方が冷酷で残忍な方が多いので。」

 

 確かに。今だからこそ殺し合いをしなくなっただけで昔は多くの戦いをしていた。

 

「はっ、そうだよな。事実人間は昔から戦や戦争をして同じ人間を殺してきた。」

「そうですね。ですがそれでも殺すのは敵国の方です、親を殺すのは人間でも容易では無いと思いますよ。」

「容易じゃない……か。」

 

 水面に映る顔は笑っている。オレの本質である、悪人の微笑みだ。

 

「海斗さん、もしかしてあなたは自分の――」

「悪い、そろそろ屋敷に戻るわ。また別の日にインタビュー受けてやるからよ。」

 

 明日は審査内容の発表だし切り上げるとしよう。

 

「自分で言っておきながら忘れないでくださいよ。」

「ただし、明日から数日はやらなきゃいけない事があるから邪魔しに来るなよ。もちろん紫にも伝えておけ。」

「わかりました、言っておきます。」

 

………。

 

……。

 

 海斗さんが屋敷に戻ってから数分後。私はスキマを通り紫さんのところへ報告に。

 

「はぁ、紫さんが今日は海斗さんの親御さんについて聞けって言うから変な空気になったじゃないですか。」

 

 本当なら好きな女性のタイプとか聞こうと思ってたんですけどさすがにあんなピリピリした空気じゃ厳しいですし。

 

「だって私は一度警告もらっちゃったから、聞けないのよ。」

 

 気にした様子も無くそんな事を言う。

 

「せめて気にしてるフリして言ってくださいよ。」

「っていうか、私も警告されたような感じなんですけど……。」

 

 海斗さん本人からはもう聞くなと言われてないけどそういう雰囲気でしたよね。

 

「そうよね~、次は誰で聞こうかしら?」

 

 どうやら懲りずに再度チャレンジするみたいです。

 

「あのお三方ではダメなんですか?」

 

 少なくとも一番関係が濃いと思われるか方たちを提案する。

 

「ダメよ。若い子たちには若い子たちなりのポジションがあるんだから。」

 

 私もまぁまぁ、若い方だと思うんですが。

 

「ポジションってなら藍さんなんて――」

「それはダメ!」

 

 いつもと違いすばやく返答する。

 

「えぇ、なんでですか?」

「藍には成長してもらいたいからよ。」

 

 成長ってどうやら親馬鹿みたいですね。今日のネタにさせてもらいましょうか。

 

7月11日

 

 今朝ロビーで最終審査の発表が行われた。今までは知性、教養、実戦と比較的結果が分かりやすいものだった。ボディーガードの家系となれば審査する内容にも納得がいく。知性は全てにおいて、教養は立場の偉い奴らを護衛する際には必要となる。実戦は言葉通り襲ってくるのであればソイツを対処するためには欠かせない。別にボディーガードの勉強をしてたから分かるわけではない。コレぐらいならどこぞの学生でも少し考えれば分かる程だ。だが、最終審査はそんなもんじゃなかった。

 

 婿候補13人の中に偽者が紛れているらしくその偽者を当てること。この一週間はその為に用意されていたってわけだ。そして解答出来るのは紙を持っている者だけ、一枚につき一回の解答が出来る。開始時に一人一枚紙を渡され、その紙は些細なことで破れそうなほど薄い。ついでに言うと紙が破れたり、汚れた場合は解答権利がなくなってしまう。なら部屋に隠しておけば良いんだが肌身離さず持つことがルールに設定されているのでそれは叶わない。紙に関するルールだけでも多いが解答する際にもルールがある。

 

 解答を受け付けるのは3日後の朝9時から9時5分の5分間にのみ。薫の親父から言われたのはこれだけ。もちろん奪い合うことに関しては何も発言していない。黙認、と言うことだろう。やろうとすれば全員から紙を奪うことは簡単だ……だけど、この審査はそこまで単純じゃない気がする。色々引っ掛かることも多いからな。

 

 因みに読者ならお気づきだろう、偽者はオレなのだと。だが、安心してくれ。どうやら薫の親父や他の婿候補には知られていないようだ。と、なるとオレの他に偽者が居ることになる。あるいは偽者なんて存在しないかだ。

 

「まったく昨日射命丸に来ないよう言っておいて正解だった、あいつらが居たんじゃ考えたくても騒がしくてそれどころじゃなくなる。」

 

 こうして一人の時間が出来ると自然に考える。なぜ、オレは幻想郷に行ったのか。今考えられる中で一番可能性があるのはスキマ妖怪である紫だ。移動させるだけなら霊夢でも可能かもしれないが結界の調整をしていたはずで何より霊夢はオレを知らなかった。が、紫は親父を知っていた。オレとの関係性は知らなかったみたいだけどな。でもその場合、目玉模様を見かけるらしいが見ることは無かった。幻想郷に移った瞬間、目を閉じていたから見えるわけないんだが。

 

「……オレは今なんて思った?」

 

 幻想郷に行った瞬間じゃなくて、移った瞬間だと。

 

「移った、瞬間か。」

 

 そういえば目を閉じているとき空間全体に違和感を感じた。幻想郷は妖怪がいるほど不思議な場所だ。人間でも空を飛べたり、魔法使いがいれば、地底人、吸血鬼が居る。しかも見たことは無いが弾幕ってのも出せるらしい。なにがあっても不思議じゃない世界。それこそ、幻想郷という世界に意志があっても不思議ではないのかもしれない。そんな事を考えていたら空は今にも雨が降り出しそうなねずみ色に変わっていた。

 

………。

 

……。

 

「まったく紫さんもスパルタですね、明日の早朝までにまた新聞作れだなんて……取材に行けないから良いんですけど。」

 

 朝から紫さんに一日で新しい記事を仕上げろと言われてから数十時間。私は未だに記事を考えていた。

 

「ねぇ、なにさっきから独り言言ってんの?」

 

 目の前にはお茶を飲みながら私を見続ける霊夢さんが座っている。

 

「はて? なんででしょうかね?」

 

 単に話し相手が居ないからってのが主な理由ですけど。

 

「そんなこと言ってると退治しちゃいそうなんだけど。」

「あやや、それはやめていただきたいですね。なんせ海斗さんの記事を書いてるんですから。」

 

 霊夢さんならやりかねないので、必殺ワード「海斗」を使いましょうか。

 

「また海斗の記事書くの? もう居ないんだからやめておきなさいよ。」

 

 どうやら効果はまだ適用なようですね。

 

「え~、紫さんにお願いされたんで断れませんよ。」

「なに考えてるのかしら、紫は。」

「それは私より霊夢さんの方がわかるんじゃないんですか?」

 

 お二人は付き合いが長いわけではないけどお互いを信頼してるように感じられる。

 

「そうかしらね……でも、今回の件はわからないのよ。」

 

 言葉ではわからないと言っているものの、何かしらの検討がついているようですね。私でも心当たりがあるくらいですし。

 

「そうなんですか、それにしても今日はこれから雨なんですかね?」

 

 外は少し暗い。時間的に夕方過ぎだからと言うこともあるが、雲も出てきている。そんな事を考えているとぽつぽつと雨が降ってきた。

 

「……どうやら明後日くらいまでは雨になりそうね。」

 

 先ほどまで座っていた博麗の巫女は外に出て空を見上げる。その姿は不思議な事に誰かと見つめ合っているように見えた。




いかがでしたでしょうか?

23話は「笑い」に挑戦しました。
もちろん、暁の護衛原作メンバーがいないので違う「笑い」を目指しました!

ま、今回は文可愛いと思っていただけたら幸いです。

…前も同じ文を書いた気がしますが気にしないでください。

なお引き続き活動報告にて「ルート分布」のアンケートを実施しています!!!
是非とも皆さんの清き一票をお気軽に投票くださいませ。

ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想がありましたらひっぐ、うっぐ、とお願いします!
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