不真面目なボディーガード訓練生が幻想入り   作:橘恵一

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この世の中には嘘や真実が常に飛び交っている。

それは世界の偉い部署だって、大手企業だって、コンビニだって。
…家族ですらも当てはまる。

その無数に飛び交う嘘と真実を選ぶのは自分自身。
どれを捨てても、どれを信じても。

その選んだ事実に関わるのは自分だけ。

僕はシリアスなシナリオを考えるときはこんな考え方になります。
正直普段の僕自身が考えたらどうでもいいで済むことをあえて難しく考える。

そうすることでシリアスモードに移行完了です。

それと注意です!!
アンケートの回答は活動報告かメッセージにください。

感想欄に書くのはNGらしいので。

それではお楽しみください。

●2014年10月8日 文字数が少なかったので27、28、29、30話の4話分を合わせて修正投稿致しました。第3章までで本文の文字数が少ない話は引き続き修正していきます。


第9話 「残念……それでも足りないわね。」

7月12日

 

「で、出来ましたっ。」

 

 幻想郷がねずみ色の雲に覆われ雨が降り始めた頃。日付は変わってしまったがどうやら無事に新聞が完成したようだ。

 

「よかったわね。じゃあ次は配達に行かなきゃ。」

 

 私はニヤリと笑みを作り、文を急かす。どしゃ降りとまでは行かないけど雨は今も降っている。配達に行こうものなら身体が濡れるには十分の雨量。

 

「ふふふ、そうニヤリ顔をしていられるのも今のうちですよ。」

 

 文の顔は見る見るうちにドヤ顔へと変わる。

 

「今回の新聞に関しては紫さんの全面バックアップが約束されているんです。きっとそろそろ――」

「出来たみたいね、文。」

 

 言葉を遮りスキマから現れる。まるで会話を聞いていたかのように都合良く。

 

「紫が来たならスキマで送れば簡単って事ね。」

「あ~、その事なんだけど。」

 

 どうやら簡単に配達を終わらせる気が無いようだ。

 

「魔理沙たちを呼んであるから皆で新聞を配ってきてくれないかしら?」

「は?」

 

 私が呆れていると何かを察知したのか文がいそいそと動く。

 

「それじゃあ私は用事があるのでしつれ――」

「もちろん、文も配達お願いね。」

 

 そんな事を笑顔で言いながら足を掴む。

 

「……全面的にバックアップしてくれるんじゃないんですかぁ?」

 

 さすがに逃げれない雰囲気を悟ったのか。ゆっくりと元居た場所に戻る。

 

「してるわよ。だから人手を呼んだの。」

 

 すると再びスキマが現れる。

 

「よっ! 新聞配達に来てやったぜ。」

「まったく、上海とおしゃべりしたかったのに。」

「おはようございます、新聞配達の手伝いをすれば良いんですよね?」

 

 魔法使いに人形使い、それに九尾の式神まで姿を現した。

 

「早速だけど魔理沙は紅魔館、アリスは永遠亭、文は地霊殿、藍は人里に行って頂戴。」

 

 頼む速度からして誰にどこへ配達に行って欲しいか決まっていたようね……凄く怪しい。

 

「たまには異変関係じゃない依頼を私がしても問題ないわよね。」

「私は魔理沙と違って依頼を受けたりしないんだけど。」

 

 確かに魔理沙は何でも屋をしてるがアリスはしていない。藍は紫の式神だから関係ないのだろう。

 

「人形作りに欲しい材料を言ってくれれば持ってくるからそれで良い?」

「……断る理由が無くなったじゃない。」

 

 どうやら全員納得したみたい。私を除いて。

 

「配達と言っても目的地まではスキマで送るから帰りは普通に、ね。」

「久しぶりにパチュリーから本でも借りるとするか。」

「もう、他人のを勝手に盗るのはやめときなさいよ。」

「勝手じゃない、ちゃんと断りを入れて借りてるって。」

「何を言っても聞かないんだから。」

 

 そんな会話をしながら二人はスキマを潜って移動する。

 

「じゃあ次は藍ね。」

「いえ、私は歩いて人里に行って来ます。」

 

 紅魔館や永遠亭と違い、博麗神社から人里までは歩いて行ける距離。当然スキマを使う必要性はそこまで高くない。

 

「ついでに夕飯の材料も買いたいので。」

「そう、じゃあお願いね。」

 

 こうしてスキマで現れた三人は何事も無かったかの様に新聞配達に向かった。

 

「……。」

「……。」

「えと……じゃ、じゃあ私は地霊殿に行って来ますね。」

 

 私と紫の沈黙に堪えられなかった文はそそくさと雨の中を飛んでいく。

 

「紫、なに企んでんの? 私が見ている限り最近の行動はあんたらしくない。」

 

 率直に感じているイメージを伝える。

 

「……私らしくない、か。もう少ししたら嫌でも分かるわよ。」

 

 もう少ししたら。その時の為に今行動しているとしたらそれはもう止めようが無いのかもしれない。

 

「そんな真剣になる様な事じゃないんだから。霊夢は早苗たちに配達よろしくねっ。」

 

 紫は微笑む。

 

「はぁ、一人真剣に悩んでたら馬鹿みたいね。ついでに賽銭箱の中身だけ戴いてくるわ。」

 

 何が起ころうと私が解決すればそれでいい。いままでそうしてきたのだから。たとえ紫が幻想郷に優しい異変を起こそうともその異変が長引くようなら解決しなければならない。博麗の巫女として。

 

………。

 

……。

 

「やっぱり勘だけは鋭いわね。」

 

 伊達に才能だけで異変解決してきただけある。その才能だけならごく一部を除く、他者では敵わないだろう。

 

「さて人払いは済んだし依頼人と交渉しましょうか。」

 

 準備が整ったためスキマを開く。

 

「…………。」

「……久しぶりね。」

 

 そのスキマからは背が高く、身体が引き締まっている青髪の男が現れた。

 

「その様子だとどうして幻想郷に呼んだか、探っているみたいね。」

 

 男は表情を崩さない。眼光も鋭く、紫を睨んだまま。

 

「博麗神社は幻想郷と他の世界が繋がりやすい場所なの、だから――」

「……そんな事は関係無い。」

 

 男が口を開く。その声だけでもとてつもない威圧感を感じる。人里に居る村人や、半端な妖怪では会話すら出来ないだろう。

 

「お前は俺が求めている情報を持っているのか、いないのか。」

「もちろん、持ってるわよ。」

「条件はなんだ。」

「朝霧海斗の、命。」

 

 さきほどまでまったく反応を見せなかった男に少しの動揺が見える。いや、正確には感情が少し表に出ただけで動揺はしていないようだ。

 

「まさかその名をお前の口から聞くことになるとは。好きにしろアイツの命はアイツ自身がどうにかするだろう。ただし消すというなら……消えているのはお前の命かもしれないがな。」

 

 最早その言葉に感情は感じられない。スキマ妖怪である私が人間に殺される事はまず無い。それこそ能力を有していても限りなく難しいだろう。普通の人間がそんな発言をしてもお笑い話になる。だけど、この男の言葉からはそんな笑いは起こらない。もしかしたら私が死ぬ可能性もあるんではないかと思わさせられる。

 

「やっぱり私が求めているのは海斗の方みたい。勝手にさせてもらう以上ちゃんとアナタの欲しがっている情報をあげるわ。アナタが追い求めている命の恩人……だった男の事を。」

 

………。

 

……。

 

「お師匠様~。」

 

 ウサギの耳がついている少女は急ぎ足で帰ってくる。

 

「そんなに急いで何かあったの?」

 

 呼ばれた本人は特に急いだ様子も無く、ゆっくりと自室から出てくる。

 

「えっと、お客様と新聞をお持ちしました。」

 

 帰ってきた弟子の隣には新聞を持っている人形遣いが立っていた。

 

「どうも。」

 

 アリスは一般的な挨拶を交わす。

 

「いらっしゃい。」

 

 こちらも客に対して一般的な対応をする。相手が村人で無ければ丁寧に接する必要性は無い。

 

「あなたが来るなんて珍しいわね、何のようかしら?」

 

 幻想郷の住人で薬品を求めてくる者は少ない。

 

「紫の依頼と消毒液を買いに来たのよ。」

 

 特に怪我をするようなことをしないと思うけど。

 

「へぇ、博麗の巫女でも何でも屋をしてるわけでもないあなたが依頼を受けるなんて意外ね。」

「報酬があれば多少の依頼くらい受けるわよ。」

 

 普段なら間違いなく探りをいれるが今回は理由がはっきりしている。紫、新聞と言う情報があればあの男に関する記事だと判断する事が出来る。

 

「そうなの、じゃあ何かあったら依頼でもしようかしらね。」

「報酬次第で考えてあげるわ。」

 

 アリスの表情は含み笑いに変わる。

 

「それにしても消毒液を切らすなんて何につかったの?」

「何にって、人間を手当てしてあげたから。」

 

 思ったより当たり前な解答だった。

 

「アリスさんが手当てなんて、もしかして外来人の方だったり?」

 

 不思議に思ったのか優曇華が訪ねる。

 

「それはこの新聞を読めば分かるかもしれないわね。」

「なら新聞は私に。薬品に関しては優曇華について行って頂戴。」

 

 一般的な薬品の販売なら弟子である優曇華に任しても問題は無いだろう。そうなると新聞の方が気になる。

 

「分かりました、後で見せてくださいね。お師匠様。」

 

 優曇華は私と違いあの新聞でも暇つぶしにはなるようで良く読んでいる。それはこの前の記事も例外ではなかったようだ。

 

「後でちゃんと渡すわよ。」

 

 私はアリスから新聞を受け取る。

 

「じゃあアリスさんこちらでお渡ししますね。」

「ええ。」

 

 そう言い二人は別室へと移動した。部屋には私一人だが、落ち着いて読むには自室が一番良い。

 

「どうせくだらない内容が殆どだと思うけど。」

 

 自室に戻り読み始めた記事はやはり他愛も無い話ばかり。最初のほうに出会った霊夢、魔理沙、早苗に関してのインタビュー。どうやら見た目が自分より幼いと態度が柔らかくなる事などが書いてある。

 

「内容はこの前と対して変わらないわ。ただ少し引っ掛かるのよね。」

 

 先ほどアリスが言っていた依頼を受けた事。もともと誰かの依頼を聞くことなんて無いアリスに依頼をしたのが紫だという事。紫ほどの能力があればそれぞれの場所に新聞を渡す事など容易なはず。なら、他に考えられる事は……。

 

「人目を避けるため?」

 

 だとしても人を遠ざけてまで会うべき者がいるのか。

 

「でも、わざわざ外の世界に紫が干渉する事はあまり無いはず。」

 

 紫が干渉する可能性は低い。目的の為なら躊躇わないだろうが今回の目的は恐らくあの男では無い。あくまで記事に載っている朝霧海斗という外来人だろう。

 

「朝霧海斗に関連している人物だろうけど……あの男の方から来てるかもしれないわね。」

 

 会話も全然していないし、抱いている感情も伺えなかったから確信はない。でも、あの男から感じたのは強い意志。目的の為には手段を選ばず、何者にも屈しない心を持っていることだけ。

 

「今思い返せば、実に興味深い人間だったわ。」

 

 力の部分に関しても、身体の仕組みも、この幻想郷にいる人間とは比べ物にならなかった。

 

「会える時が来ればその時は研究対象にしたいわね。記事に載っている方の子でもいいけど。」

 

………。

 

……。

 

「で、なんで博麗の巫女が守矢神社に来てるんだい?」

「飯でも集りに来たんじゃないのかな?」

 

 注連縄が目立つ女性と帽子の目玉が特徴的な少女が訪ねてくる。

 

「集りに来てない、紫に頼まれて新聞配達に来たのよ。」

 

 そう言いながら新聞を少女に手渡す。

 

「おお、あの外来人の記事か!」

「鴉天狗も同じ奴の記事で良くネタが尽きないね。」

 

 二人はどうやら前回の記事を読んでいるようだ。

 

「霊夢さん、よかったらご飯食べていきますか?」

「早苗がそこまで言うなら戴くわ。」

 

 訪ねられたときには既に箸を手に持ち、おかずを選んでいた。

 

「結局集りに来たんじゃないか。早苗こんな奴は退治しちゃいなさい。」

「良いじゃないですか、たまには大勢で食べるのも。」

 

 そんなやり取りを気にせず、ご飯を戴く。

 

「ふむふむ、容姿が幼い子には比較的優しいだってさ。」

「そうなんですか? 私にはあんまり優しくない感じなんですけど。」

「それはコイツと普通の魔法使いが年下だからじゃないか?」

 

 少なくとも外見で見れば私より年上だと分かる。実際の年齢は注連縄の女性と帽子を被った少女のほうが遥かに高いが。

 

「そうみたいだね。インタビューだって霊夢と魔理沙に関しては答えてるけど早苗のは答えてないみたいだし。」

 

 どうやら、今回は早苗の事を悪く言っていないようだ。ただし何も言わず、ノーコメントのようだけど。

 

「ま、公になるのを防ぎたかったのかもしれないわよ?」

 

 もちろん良い意味ではなく、悪い意味でだ。

 

「そうですよね……今度文さんに録音を頼んでおきます。」

「あんまり関わるなよ早苗。あのスキマ妖怪が関わってるとろくな事にならない。」

 

………。

 

……。

 

「で、鴉天狗のあなたが何の用?」

 

 訪ねる少女からは少女らしからぬ雰囲気を感じる。

 

「それはですね、私が書いた新聞をお持ちしたのですよ。」

「あぁ、外来人の事が載っている記事?」

「あやや、読んでいただいているとは嬉しい限りです!」

 

 新聞を読まないと思っていたので正直に嬉しいですね。

 

「と言っても妹の方が興味津々だけど。」

「まさか、妹さんの方が興味を示されるとは意外ですね。」

「只ものめずらしいだけでしょう。私も人間と言う事を除けば会ってみたい気もするし。」

 

 心を読むことが出来るから他人とのコミュニケーションを放棄している彼女が会ってみたいと思うとは。恐るべし海斗さん、ですね。

 

「その理由はやはり、読書家と言う部分が関係しているのでしょうかね?」

 

 幻想郷の方々には見出しでは無く、あくまで簡易プロフィールとして載せたので度合いは関係ないでしょう。

 

「私自身本を読むのも好きだし、書いたりもしてるから外来人がいったいどんな考えを持って、物語を読んでるのかは少し気になるわ。」

 

 単純にそれだけじゃない気もしますが。

 

「もちろん、それだけが理由ってわけじゃないわ。その外来人に関わる事で変化が生まれるなら、試してみようかと思ってるの。」

 

 言葉にはしているがどうもまだ迷っている表情だ。

 

「良い変化か悪い変化か。それこそ変化しないかも知れないしね。」

「そうですね。今はまだ私ですら情報が無いですから。」

 

 今のところ一番情報を持っているのは紫さん。その次は紫さんが言っていた関係者の方でしょう。どうやら、私自身でも関係者の情報を探る必要があるみたいですね。

 

………。

 

……。

 

 コンコンッ。

 

「入っていいわよ。」

 

 私が目覚めて数分いつものように招き入れる。

 

「お嬢様、おはようございます。」

 

 彼女はこの屋敷のメイド長。人間ではあるがこの私によく尽くしてくれている。

 

「ええ、おはよう。それにしても朝から雨とはね。」

 

 吸血鬼にとって流れている水は弱点で。雨が降っていれば外に出ることが出来なくなる。

 

「とは言っても、昨日の夕方から降ってましたよ。」

 

 どうやら私が寝た後に降り始めたようだ。

 

「そう、只でさえ雨は苦手だから目覚めが良くないはずね。」

 

 苦手な流れる水の音で起きるのは当たり前か。今更だが、いつもと違い客人が一人居るようだ。

 

「で、その盗人はどうしたの?」

 

 普通の魔法使いである彼女はたまに大図書館から書物を奪っていくようだ。

 

「おっす! レミリアって起きるの遅くないか?」

 

 朝から元気な声で聞いてくる。

 

「私は夜行性なの。」

 

 日光が苦手ともなれば夜行性になっても仕方が無いことだろう。

 

「アレか、お前も寝る子はよく育つっての信じてるのか。」

「……別に信じてないわよ。」

 

 まぁ、たまにだけど気にしなくは無い。何百年と生きているくせに目の前に居る魔理沙よりも全体的に幼いのだ。気にするなと言うほうが厳しいだろう。

 

「そうです、お嬢様はこの大きさが丁度良いんです。」

「………。」

 

 私に仕えるわけだから私の身体的特徴を肯定するのは嬉しいけど……なんか、少し惨めだわ。

 

「ま、まあそれは置いといて。ほら新聞だ。」

 

 そう言うと私の目の前に差し出す。

 

「新聞?」

「はい、あの人間の事がまた載っています。」

 

 まさかこんなにも早く新聞が配達されるとは思わなかった。それだけ鴉天狗やスキマ妖怪が尽力しているのだと感じられる。

 

「見せてもらうわ。」

「よし、新聞も渡したし。本でも借りて帰るか。」

 

 どうやら新聞を渡しに来たのは本を奪うついでだったようだ。

 

「……極力、被害を出さないようにお願いしますよ。」

 

 メイド長は呆れた顔で言う。

 

「アイツ次第だけどな。」

 

 相変らず我を貫く子ね。スタスタと何事も無かったかの様に魔理沙は部屋を後にする。

 

「やっぱりこの記事から面白い情報は得られそうにないわね。」

「そうでしょうか? 幼い容姿の方には優しいと書いてありますよ。」

 

 ここぞとばかりにネタを付いてくる。

 

「残念だけど、私からは幼さを感じないと思うわよ。きっと溢れ出すこのカリスマ性しか感じることは出来ないのだからね。」

「……それにしてもいつものスキマ妖怪とは思えない行動ですよね。」

「それに関してはね、この男と関わった者は何かしらの変化が生まれるみたいよ。」

 

 これまでの記事を読んで一番感じる部分はそこだった。いつもとは違う行動をして、今は居なくなってしまった人物がいれば関係性があることはすぐ分かる。

 

「変化ですか……では妹様にも会わせるのですか?」

 

 メイド長は申し訳無さそうな表情で聞いてくる。

 

「今はまだ知らせないでいいわ……その、朝霧海斗って男に会ってから私自身が判断するから。」

 

………。

 

……。

 

「う~ん、本でも借りようと思ったけどまだ用事があったの忘れてたぜ。」

 

 新聞を紅魔館の主に手渡しした帰り道に思い出す。

 

「どうせ新聞見せてもらってないだろうから別に渡せって事だったな。」

 

 博麗神社に新聞を受け取る前に紫が来たことを思い出す。

 

「でも、なんでアイツに渡すんだろうな? 必要性ないだろ。」

 

 そんな事を一人で呟きながら門に向かう。

 

「あれ、魔理沙さんじゃないですか?」

「あれ、なんで門番が屋敷に入ってるんだ?」

 

 どうやら用事は早いうちに終わりそうだ。

 

「雨降ってるので屋根があるところにと思いまして……って魔理沙さんこそどこから屋敷の中に!?」

「あ~、スキマでちょちょいっとな。」

「……スキマなら仕方ありませんね。手出し出来ませんし。」

 

 ここの門番は地上戦特化だからな。空でも飛んで入ろうとすれば意外にすんなり入れるのさ。

 

「はい、新聞。どうせ見せてもらえてないんだろう。」

「わぁ、最近お嬢様が夢中になってる新聞ですね。」

 

 門番は目を輝かしながら受け取る。

 

「因みに前の分もあるからな。」

「わざわざ、ありがとうございます!」

「……じゃあ、今日は帰るとするぜ。」

 

 どうやら門番は新聞に見入っているようだ。ま、今日くらい普通に帰るか。

 

「……似ていますね、あの方に。血縁関係があるならあの時は叶わなかったお手合わせをしてみたいですねぇ。」

 

………。

 

……。

 

「いつものお揚げをください。」

 

 私は今、行きつけの店で好物のお揚げを買っている。

 

「はい。いつも買ってくれてありがとうね藍さん。」

 

 店主はいつものように笑顔を振りまく。

 

「いえいえ、この店のお揚げが美味しいからですよ。」

 

 このやりとりもいつもと変わらない。

 

「藍殿は本当にお揚げが好きなんだな。」

 

 私の隣に居る女性が呟く。彼女は寺子屋で子供に勉学を教えている先生だ。人里に来た際に出会いお互い目的も同じで買い物を共にしている。

 

「狐なんだし、当たり前なんじゃないの?」

 

 先生の隣にもまた一人。長い白髪の女性が居る。彼女は先生の同居人らしく荷物持ちの為に着いてきたようだ。

 

「それよりもわざわざ私たちに新聞を渡しに来るなんて何か裏がありそうね。」

 

 出逢ってすぐさま、紫様に頼まれていた新聞を渡した。先生は良く新聞を読んでいるようで真っ先に読まれていた。

 

「そうでしょうか? 紫殿は私が定期的に新聞を購読している事を知って届けてくれたのではないでしょうか。」

「すみません。紫様から詳しく言われていないのでその辺りの事は分かりかねます。」

 

 紫様からは寺子屋の先生に新聞を渡すようにと言われただけなので、理由までは分からない。

 

「ですが、そこまで気にするほどではないかと。」

「……そうだといいわね、私はあまり気にしないけど。」

 

 どうやら同居人の方は先生が心配のようだ。

 

「いやいや、記事はあの外来人のことで幼い子には手当たり次第らしいから気をつけなければ。」

「幼い子って、多分意味が違ってると思うわよ。」

 

 先生は新聞の内容を信じてしまうタイプのお方のようです。

 

「私も意味が違ってると思います。実際会ってみましたが危険な方とは思えませんでした。」

 

 二人が私を驚いた表情で見つめる。

 

「……なにか変な事言いました?」

「藍殿はその外来人と会ったのですか?」

 

 先生が私に聞いてくる。

 

「はい、先日お会いする機会がありましたので。」

「で、この記事の真意はどうだったの?」

 

 気にしないとは言っておきながらも多少は気になっているのか、同居人の方も聞いてくる。

 

「少なくともその記事にあるように手当たり次第ということは無さそうでした。」

 

 私は実際に会話して感じたことを素直に伝える。

 

「ただ、少し冗談が過ぎる時が多いようですね。」

「精神異常者ってのはあながち間違いじゃないって事ね。」

「なら、注意しておいて損は無いですね。」

 

 二人は納得したのか、深く頷く。でも、確かに紫様自身がどんな考えを持って行動しているのか気になる。さすがに式だからと言って術者の考えている事が分かるわけでもない。それが目的の式なら分かるかもしれないが、生憎と私はそのような目的では無い。いつかは紫様だけではなく、いろんな方がどう思っているか感じられるようになるのだろうか?

 

………。

 

……。

 

7月13日

 

「やっぱり誰も居ないのに外の世界で暇を潰すのは退屈ね。」

 

 海斗に会いに来るなと言われたが暇なので朝から外を眺めている。

 

「まさか、幻想郷と海斗の世界の天候が同じだなんてね。」

 

 そんな事を考えているといつの間にか昼になっていた。時々雷も落ちて先ほど屋敷の近くに落ちたようだ。

 

「あら?」

 

 すると屋敷から二人の男性が出てくる。一人は紅魔館の門番が着ているような中国風の服を着用している。もう一人は見知った顔でいつものようにスーツを着ている。ただ、いつもとは様子が違う。ボケたり、ツッコミをしている普段と違い、たまに見せる真面目な表情。真面目と言うよりは楽しさを感じている表情だ。

 

「待ってて正解だったわね。」

 

 二人は何かを喋ったあと中国風の男が構える。あらゆる攻撃を流れるような動きで交わし、流れるように撃つ。そんな動きをするように感じられる構えだ。

 

 対する海斗は突っ立ったまま、特に構える事もしない。だが、その姿にスキは無い。時間にして、数秒。互いに実力者であれば読み合いだけでも戦闘になってしまう。と、中国風の男から動く。少なくとも離れている私から見ても手を抜いているのが分かる。

 

「海斗相手に手を抜くなんて、自殺行為にも程があるわね。」

 

 恐らく海斗自身も手を抜かれている事に気付いているだろう。次々と来る攻撃を難なく捌いている。捌く事自体、多少腕が立つなら可能だが、海斗はその場を動かず全ての攻撃を捌く。すると漸く感づいたのか、中国風の男は距離を置く。

 

「これで本気にならないと痛い目見るわね、彼は。」

 

 また二人は会話をする。会話を終え、動いたのはまたしても中国風の男から。ただし、その動きは先ほどの非ではない速さだ。

 

「残念……それでも足りないわね。」

 

 海斗は中国風の男より更に早く足を払う。すると、対応出来なかった中国風の男は地面に倒れる。すかさず、海斗はみぞおちに拳を容赦無く振り下ろす。が、少しのた打ち回ったあと中国風の男が立ち上がり戦える事をアピールする。

 

「どうやら、最後の最後でも少し手を抜いちゃったみたいね。彼の本気なら今の攻撃は避けられたはずだもの。」

 

 雨の降りしきる中、海斗はあるものを見せる。すると納得したのか、中国風の男は殺気を抑え、二人とも屋敷の中へと戻っていった。

 

「まさか、紫が見てるなんてな……射命丸にはきついオシオキが必要みたいだ。」

 

 外に出て最初に感じたのは視線。オレ自身を見ずに龍を見てたから、多少感じにくかったがアイツの気配は目立ちすぎる。

 

「もしかしたら龍の奴も誰かに見られてて、身体が勝手に力をセーブしたのか?」

 

 あそこまで腕の立つ者なら絶対的な力の差を感じて身体が勝手に動くこともあるだろう。事実、オレも親父に殺されかけた時にそれを感じている。もちろんオレがガキの頃だが。




いかがでしたでしょうか?

初めて「暁の護衛」から海斗以外のキャラが喋り、関わりました。

一応人間じゃないよね?
…人間だけど。

酒を飲む前は居なかったのに酒を飲んで書いてたらいつの間にか出てきてた。
ちょっとしたホラーですよね?

なお引き続き活動報告にて「ルート分布」のアンケートを実施しています!!!
回答は活動報告に書き込みあるいは僕自身にメッセージをお送りください。

ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想がありましたらいや…、鎖骨……じゃないかな?とお願いします!
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