陳留をオリ主と視察する曹操。そこであるカップルの結婚式をみかける。
どことなくうらやましそうな曹操を見て、夫の珊酔は……

比翼連理if設定で、かなり甘々です。



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恋姫英雄譚の予約特典の色紙華琳さまが美しすぎて、衝動的に書きました。

オリ主×華琳の恋愛もの。読み終わったあとの苦情は受け付けません。

比翼連理ifです。≪ifなので、本編の未来ではありません≫←※重要

甘々なので、コーヒーを片手にどうぞ。





比翼連理if ~ 覇王の結婚式~

「……俺たちもやるか。今風の結婚式とかいうやつを」

 

それは珍しくも、珊酔(さんすい)の一言から始まった。

 

 

 

 戦乱の世が去り、三国同盟が結ばれて久しくなったある日のこと。珊酔と曹操は、二人きりで陳留の視察に出ていた。

 平和になったおかげで、街では急に結婚し家庭をもつ人々が増えていた。結婚式の方法も昔とは変わり、結婚情報誌などが大量に出回りちょっとした流行になっていた。

曹操と珊酔が結婚した時は、身内だけでひっそりと行うのが一般的だったが、今は友人や、近所の人まで呼んで祝ってもらうのが主流らしい。

 二人だけで歩いている今も、あちこちで祝福する人の声が聞こえてきている。

 

「なんというか……時間の流れを感じるわね」

 

「年寄くさいぞ。……見に行ってみるか?俺も興味がある」

 

「そうね。今風の結婚式を見るのも、視察の一種といえるものね」

 

「ああ」

 

自分に言い訳するように言う曹操の手を取り、珊酔は賑やかな声がする方に足を向けた。

 

 大通りから一つわき道にそれたそこには、市民が式を挙げるには立派すぎるような結婚式場があった。最近建てられたのだろう、白く真新しい塗装が目を引いた。

新郎の隣に立っている、真っ白な衣装に身を包んだ花嫁が、花束を持ったまま観客に背を向けたところだった。

 

「あれは何をしてるんだ」

 

「『ぶーけとす』よ。あの花を取った人が、次の花嫁になれるらしいわ。ま、一種の願掛けね」

 

「詳しいな」

 

「民の間の流行を知るのも、君主の仕事。沙和が色々と教えてくれるから、知識だけはあるわ。今花嫁が着ているのが『うえでぃんぐどれす』で、花婿が着ているのが『たきしぃど』ね。天の衣装だとかいう触れ込みで急激に広まったらしいけど、信憑性は薄いわね」

 

「天、なあ……」

 

 そういえば、戦乱の時に『天の御使い』とかいう男がいた気がするが、アレはどこに行ったのだろうか。

今では全く話を聞かないが、天に帰ったのか。

 意外とこの大陸に残っていて、どこかの国で仕立て屋にでもなっていたら面白い。

 

「それはともかく。あの『うえでぃんぐどれす』は本当に綺麗ね。」

 

「やっぱり、女としては着てみたいもんか?」

 

「そうね。綺麗な衣装に惹かれる事は、女の性。でも、もう一度着る機会はいらないわ。私には貴方がいるから、ね」

 

 曹操は微笑んだ。珊酔はうろたえて視線を外し、ごまかすように頬をかく。

 

「照れてるの?」

 

「……うるさい」

 

 こんな会話ができるのも、お互い理解しあえているからこそだった。形式だけの結婚をしていた頃だったらありえない。

 

 

 花嫁が、後ろむきのまま花束を投げる。

何人もの女性がふわりと宙に舞う花束に殺到し、結局は、華やかな服を着た女性が花束を掴んだ。

花束を取った女性は本当に嬉しそうだった。

 取り損ねた女性たちは、悔しそうにしながらも、花束を抱える女性を祝福している。

かなりの勢いで花に手を伸ばしていたから、無理やり強奪する女もいるかと思ったが、そうはならないらしい。

 

「ああやって、にぎやかで、皆に祝福されるの結婚式というのはいいわね。決めた。皆が結婚する時は、この形式でやらせるわ。そうしたら既婚者の私も楽しめるもの。早く良い相手を見つけてあげないとね」

 

「……華琳」

 

「なに?」

 

 珊酔は考えていた。花嫁を見つめる曹操の視線は、羨望。

何の後ろ盾のない自分を、ある意味ごり押しで婿にしたのだ。式は身内のみ、結婚しても、ああやって、心から祝福されるようなものではなかった。

どうしても、比較してしまうのだろう。

 与えられるなら、与えてやりたい。そう思った。

 

「俺たちもやるか。結婚した時と、顔ぶれが変わってる。夫婦っていうのを、皆に披露するのもいいんじゃないか?」

 

 曹操は目を大きく開いて、珊酔を見上げた。

珍しく、本気で驚いているようだった。

 

「本気なの?」

 

「それに俺も、お前があの衣装……『うえでぃんぐどれす』を着ているところを見てみたい。毎日国に身を捧げてるんだ。そのくらいの贅沢は、許されないか」

 

「栄華が良い顔しないと思うのだけれど」

 

「そうか?お前の綺麗な格好が見れるんだから、喜んで財布のひもを緩めるような気がするがな。駄目だったら、俺の貯金でなんとかする」

 

「魏の王の結婚式だもの、式をやるならかなりかかるわよ?足りる?」

 

「……足りなかったら、給料前借だな。一生働いて返せる額にはおさまるだろう」

 

 食事は城から出るし、公務で使うものは別の予算から支給されるから生きていくには困らない。曹操の幸せそうな笑顔が見られるなら、そのくらい安い物だと珊酔は思った。

 

「一生分、ね。ふふっ……」

 

「……俺は変なこと言ったか?」

 

「いいえ。悪くない、と思っただけよ」

 

曹操は珊酔の手を握って、そっと寄り添った。

 

「あなたがそこまで言うのなら、やりましょうか。結婚式」

そう言って、いたずらっぽく笑ったのだった。

 

 

 突然の思いつきだったが、主だった部下たちからは賛成の声が相次いだ。荀彧すらも、袖を噛んで珊酔をにらみつけたものの、曹操の『うぇでぃんぐどれす』姿が見たいという誘惑に勝てなかったようで、賛成してくれた。

こうなればもう、怖い物はない。曹洪は即決で臨時予算を下したし、流行に詳しい沙和が責任者になって結婚式の準備を進めることになった。

 

 

 曹操と珊酔の衣装の決定、招待者に送る招待状の用意と送付、会場準備と装飾等々、面倒くさいことは部下たちが嬉々として引き受けてくれた。

珊酔がしたことと言えば、選ばれた衣装合わせをすることと、結婚式で渡すという指輪の選定くらいだった。

珊酔としては、衣装合わせの途中で、曹操の『うぇでぃんぐどれす』姿が見れると期待していたのだが、曹操に駄目と言われてしまった。

結婚式の衣装というのは、当日まで相手に見せないのが一般的らしい。

 

「別に、二回目の式なんだからいいじゃないか」

 

「駄目。お楽しみがなくなるでしょ。女は、夫の驚く姿が見たいものなのよ」

 

椅子に座って待っていた珊酔に、普段着に着替え終わった曹操が言った。

 

「……」

 

「子供ではないのだから、拗ねないの。ね?」

 

 曹操は珊酔の傍まで来ると背伸びをし、そっと口づけてくる。可愛い。

妻にそんなことをされては、拗ねていることもできない。

珊酔は溜息をつき、赤くなった頬をかくすようにしながら立ち上がったのだった。

 

 

 結婚式当日の朝。会場にはたくさんの賓客が詰めかけていた。

呼ばれていなくても、曹操の艶姿を一目見ようというという人たちが、式場の周りに大挙してきたのだから、警備部隊は大忙しだった。

 警備部隊の長である珊酔だが、今は別の役割がある。警備部の事など知ったことではなかった。

 慣れない黒の『たきしぃど』を着て『ねくたい』を締めた珊酔は、曹操の控室前までやってきていた。三軍師の段取りでは、夫が妻を迎えに行って、共に式場に入場するということだった。できるだけ早く曹操の『うえでぃんぐどれす』姿を見たいという珊酔に、配慮した形である。

 深呼吸をしてから、木の扉を叩いた。

 

「来たぞ、華琳」

 

「犬野?……今行くわ」

 

 いつもより弾んだ曹操の声がした。気配を察知できる珊酔をじらすように、ゆっくりと扉の前に歩いてきている。珊酔は、今すぐ扉をあけ放ってしまいたい衝動を抑えるのに、とても苦労した。

 

 扉が開く。部屋の窓から差し込む光に、白い『うえでぃんぐどれす』を着た曹操が映えて、本当に綺麗だった。

 両肩は堂々と露出しており、首から胸までを覆う刺繍付きの薄布がとても色っぽかった。胴体から下は、派手になりすぎないように、しかし丁寧な刺繍と飾りで覆われている。

 

 曹操は犬野の前に出ると、衣装を見せびらかすように軽やかに回った。蒼の瞳が、いたずらが成功したような色をたたえて揺れている。

 

「どうかしら?」

 

「……似合ってる。綺麗だ」

 心臓の音がうるさい。なんとか絞り出した声は、震えていた。

珊酔のひねりのない感想を聞いた曹操は、腰に両手を当て、少し怒った様子を演じてみせた。

 

「それだけ?もっと気の利いた感想は言えないの?」

 

「勘弁してくれ。限界だ」

 

「もう。……まあ、あなたの態度で、よしとしましょうか。顔、真っ赤よ?」

 

「……今のお前を目の前にしたら、誰だってこうなるさ」

 

「あなた以外に迫られても、困るのだけれどね」

 

 曹操はいたずらっぽく笑ってから、珊酔に向かって両手を広げた。

 

「さあ、会場までつれていってくれる?旦那様」

 

「……おう」

 

 壊れ物を扱うように、曹操を抱きかかえる。

上品な化粧の臭いに紛れて、曹操本人の香りが鼻腔をくすぐってきた。珊酔がもう少し若かったなら、このまま式場ではなく寝所に連行していたかもしれない。

 

「しっかりつかまっていろよ」

 

「はいはい。もう慣れてるもの、大丈夫よ」

 

 曹操の腕がしっかりと首に回されてから、珊酔は客がいっぱい入っている式場に向かったのだった。

 

 

 式場に入る直前。曹操が突然珊酔の首を引き寄せ、ささやいた。

 

「えへへ……これからも、幸せにしてくれるのよね。旦那様」

 

「……馬鹿野郎」

 

 可愛すぎる妻に、珊酔はとうとう我慢しきれずに、口づけた。

 




すっきりと一話完結です。
最近出番が少なかった華琳さまをかけたので、作者としてはかなり満足です。
彼女の魅力が少しでも読者の皆さんに伝わると良いなあ。



PS
本編は鋭意制作中です。今しばらくお待ちください。

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