突然始まり突然終わります。
「~!」
水の中、ずっとずっと深く。突然上から聞こえた声。
誰かはわかっている、名前も。彼がニコニコ話していたから。
何を叫んでいるかの特定はできないけれど、私を呼んでいるだけで、何か重要な言葉を発しているわけではないだろう。いつもそう。
私はゆっくりその場から動き、水面に向かって泳ぎ始めた。
「お~い!」
普通に考えれば、誰を呼んでいるのかわからない。
しかしここではこれで問題はない。
森の奥にある広くもなければ狭くもない湖。
こんなところに好んで入る輩は滅多にいない。
それどころか、禁止区域にまで指定されている。
が、彼が見つかっても処罰されることはない。それこそ物好きだ。
叫ぶのをやめ、水に入らない位置に座って水面を眺める。
水面には、上の木から降ってきたであろう葉が漂っているだけ。
何が楽しいのか、何もない状態でニコニコしている彼は完全に変質者。
少しした後、水面に浮かんできたモノ。
それにまた彼は「こっちだよ~」と叫び手を振った。
思った通り彼がいた。
いつもの岩の上に座って、いつも通りの笑顔でこちらに手を振る。
少し周りを窺いつつゆっくりと近づけば、一層笑みが濃くなった気がした。
「オレ1人だから大丈夫だよ♪」
たしかに彼はいつも1人でここに来る。
キンシクイキ?とかなんとか言っていた。
水の上に体を出す気はないので、鎖骨辺りまで水面にだしつつ手を彼の横に置いて見上げた。
最早定位置となってしまっている。
「ココは変わらず涼しいね~♪」
ニコニコ笑いながら私の頭に手を置く。
この森の中は、外に比べて涼しいらしい。多くの木々であまり日の光は入ってこない。
とくに抵抗もせず、大人しく撫でられているとくすくすと笑う声。
何がそんなに楽しいのか、私にはわからない。
「今日は鬼ごっこしててさ♪その後ここに来たんだ~」
余程そのオニゴッコが楽しかったらしい。「コナツの顔が・・・!」と思いだしたように笑っている。
後で怒られるというのも、よく聞く。
それでも同じことをしているようだから、反省する気はないのだろう。
いつもより着ている服が肌蹴ているのは、暑い外でオニゴッコをして汗をかいたからかな?
彼の方に手を伸ばすと、少しきょとんとした表情をした後、笑いながら顔を近づけてくれた。
指を彼の頬に当てて撫でると、以前触れた時よりも熱い。
色は変わっていないのに熱を持っている。
「手、冷たくて気持ちいいね♪」
やはり楽しげに話しつつ、触れている指に彼の手が重なる。頬と同じくその手も熱い。
なんとなく手を引っ込め、彼から離れて手を振る。
「もう帰っちゃうの?」
声を出す代わりに数回頷くと、「そっか~」と先程より低くなった声が聞こえた。
「オレもう少しココで涼んでるから、いつでも上がっておいで♪」
にっこり笑いながら軽く手を振っている彼に、少し悩んだ後もう一度頷いて水の中に潜った。
読んで下さり、ありがとうございます。
登録後初投稿で、お試し小説のようなもの。とりあえず書いてみたかった。
短くしようと思ったら文字制限有り、とりあえず1000文字になるよう書いたので、引っかかるところが多々あったかと思います。