その一部始終を勝手に書くシリーズ
の予定でしたが諸事情により続きはたぶん書きません
ですので一応短編で投稿します
pixivからの転載です
URL【www.pixiv.net/novel/show.php?id=6458395】
始まりは何でもないことだった――
私は数いるアークスの一人としてアークスに入隊し、多くの仲間たちと出会い、「彼女」ともそんな時に出会った。修了任務で訪れた森の奥深く、横たわる「彼女」を発見した私はすぐにアークスシップに連れ帰った。
そこで驚いたのが、「彼女」は私の名前を知っていたことだった。
当時の私は「彼女」とは初対面だった。だのになぜ「彼女」は私の名前を知っていたのかと――当初は疑問に思ったが、「彼女」はすぐ私に懐き、私も悪い気はしないと「彼女」とは頻繁に話すようになった。
だがある時、問題が起きた。それは「彼女」が生来持つ「ある能力」が原因で引き起こったことだった。その能力というのが、ダーカーやダークファルスの力を「喰らう」というもの。「彼女」が倒したダーカーやダークファルスは文字通り「彼女」に喰われ、養分よろしく全て吸収され、「彼女」の力となる。
それまで「彼女」が喰らったダーカーの数は一〇〇〇や二〇〇〇ではない。極端に言ってしまえば、数千万、数億まで行くかもしれない。「彼女」が生まれてから今までに喰らってきたダーカーはそれほどの量だったのだ。溢れないはずがない。
そうして「彼女」の内から溢れ出した膨大な闇は即座に「彼女」自身を侵食し、諸悪の根源である「深遠なる闇」そのものにまで至った。
「深遠なる闇」と化した「彼女」は、世界をただ破壊し尽くすだけの存在になってしまった。
こんな結末は、嫌だ――!!
闇に飲まれる「彼女」を救いたい――!!
「深遠なる闇」と化す「彼女」を……マトイを……救いたい!!
「――ならば力を貸してやろう」
どこからともなく聞こえてきた声、その主が誰かはわからなかったが、力を貸してくれるのならこちらとしても好都合だ。マトイを救うためなら、どんなことも厭わない。どんなものも利用しよう。
そこから私の長い旅が始まる。たった一人の少女を救うための、果てしない旅が。
しかし私は思い知った。運命の力というものを侮っていた。
命を運ぶと書いて運命とはよく言ったものだ。
私がどれだけ過去に飛び、八方手を尽くそうとも、マトイが「深遠なる闇」になるということだけは避けられなかった。
マトイを救うために何度も何度も、現在と過去と未来を行き来し始めてから、一体どれだけの月日が経っただろう。元いた世界はすでに地獄と化し、戻ろうにも戻れない。マトイが「深遠なる闇」になるという事実をなかったことにしなければ、全てが繰り返しになってしまう。
そしてある時、私はひとつの答えに辿り着いた。
マトイというたった一人の人間を救おうと考えているから、何もかも失敗してしまうのではないかと。ならばマトイを殺せばどうだ。「深遠なる闇」になる前の彼女を殺してしまえば、全てが丸く収まるのではないか。
私は再び過去に飛んだ。今度こそ、この長い旅に終止符を打つために。
A.P.228/8/7――ダークファルスがアークスシップに襲撃してきたこの日、ダークファルスを倒すために出撃していた彼女を、「深遠なる闇」になるはずのマトイを私が、この手で殺す。
「みんなを守る……それって、私の意志なのかな? ……アッシュ」
一人つぶやく少女の前には、四人のアークスと彼らを操るダークファルス「若人」の姿があった。彼女は今、自らが守るべきアークスたちを、敵にけしかけられている。そして彼女はそのアークスを攻撃してしまい、四人のうち一人をすでに手にかけてしまった。
そんな中で彼女は自身の「みんなを守る」という目的に、疑問を抱き始めた。敵に操られているとはいえ、守るべきアークスを手にかけ、守るべきアークスに攻撃され、そこまで傷つきながら守る「みんな」というのは何なのだろうか、と。
その隙をついて、ダークファルス「若人」に操られたアークスの一人が大剣を振るい、彼女を斬りつけようとする。
私はそこに割って入り、彼女を襲うアークスを死なない程度に攻撃し、気絶させた。
「なっ……!」
「え……!?」
かつてアークスだった時の姿で、彼女を援護する形で割って入った。当然ダークファルスや彼女にも怪しまれないように。そして彼女を、油断させるために。
一瞬の隙ができたダークファルスに対して、彼女は付近に落ちている武器を拾い、距離を詰める、そして即座にテクニックを放ち、敵を吹っ飛ばす。更に間髪を入れず怒涛のテクニックラッシュでダークファルスにトドメを刺した。
「若人」の消滅を確認した彼女は振り返り、私の目に前に立って口を開いた。
「アッシュ……ありがとう」
「…………」
目の前に、かつて救ってあげたかった彼女がいる。「深遠なる闇」としての彼女ではなく、かつて純粋で無垢だったマトイが。
だが迷いはない。今ここで彼女を殺すために、私はここまで来たのだ。
私は右手に持った漆黒の大剣で、躊躇することなく彼女の腹を貫いた。
「……え?」
その場に一人の男がやってきた。今の私と全く同じ姿をした男、彼の名は「アッシュ」だ。本人に確認するまでもなくわかる。あれはかつての私だからだ。まだ「深遠なる闇」の復活で、全てが崩壊する未来に絶望していない過去の私自身だ。
彼女が私をアッシュと呼んだのも、私が過去の私の姿をして彼女に近付いたからだ。
「なっ……お、俺が……もう一人!?」
驚くのも無理はないだろう。自分と全く同じ姿をした人間が目の前に現れれば、驚かない人間はいない。
かつての私自身がこの場にいるのなら、なおさらマトイはここで殺さなければならない。
私が大剣を引き抜くと、腹からは大量の血が噴き出し、口からも大量の血反吐を吐き、彼女はその場に横たわる。大量の血が流れ出る腹を抑えながら、倒れる彼女の側にアッシュが駆け寄り、その場にしゃがみ込む。
「マトイ!」
「アッシュ……? どうして私の名前を……それに、クラリッサも……? それじゃあ、こっちは……?」
立ち上がったアッシュと、彼女が横たわりながらこちらに目を向ける。
もうこの姿でいる意味はないだろう。私は今の姿に切り替えた。漆黒の分厚いスーツ、そして顔を隠すための漆黒の仮面。これが今の姿だ。
これこそが私、ダークファルス「仮面」という存在だ。
「はは……なあんだ……私、馬鹿だなあ。こんな手に、騙されちゃうなんて……」
彼女は苦痛に顔を歪めながら、小さく笑う。口ぶりからして彼女は今、私のことをアッシュに変装していた別者だと思っているのだろう。
事実は違うが、構うことはないだろう。勘違いしていてくれた方が何かと都合がいい。
そこで私は、彼女を見下ろしながらこう言った。
「ここで死ねば安らかなる終焉を迎えられる。ゆっくりと、眠れ」
そう、これで終わる。彼女が「深遠なる闇」として世界を壊すことも、アッシュがその未来に絶望することもなくなる。これで私の長く苦しい旅が終焉する。
しかし、運命というものはどこまでも私の邪魔をしたいらしい。
いや……私は意図せずに手加減していたのかも知れない。どこかで彼女を殺すことに躊躇していたのかも知れない。
彼女の腹に突き刺した大剣のダーカー因子がトリガーとなって、彼女の内側から膨大な闇が噴き出した。その闇は瞬時に彼女を包み込み、瞬く間に侵食、変化が始まった。
このままでは不味い。完全に変化が終わる前に彼女にトドメを刺そうと大剣を振るう。
躊躇するな……これで彼女の胸を貫けば終わることじゃないか。
だが、またしても邪魔が入った。アッシュが彼女の創世器「白錫クラリッサ」で私の大剣を弾いた。
「おい、どういうつもりだ? 前にも会ったよな? お前は何者なんだ?」
前にも会った……どういうことだ?
過去の私と直接顔を合わせたのはこれが初めてのはずだ。今まで何度も時間遡行を繰り返してきたが、過去の私自身と鉢合わせることだけは避けてきていたが……
まあ、いい。そのことは今はどうでもいい。
しかし、よもや自分自身に妨害されるとは思わなかった。自分自身に何者だと問われるのも初めてだな。しかし、ここで私が何者なのか、こいつに教えたところで意味はない。
私が怯んでいる隙に、アッシュはクラリッサで彼女のダーカー因子を浄化しようと試みる。だが無意味だろう。いくら創世器であるクラリッサの浄化能力を以ってしても、彼女の抱えた闇を祓うことは叶わない。
多少の侵食であれば浄化できるだろうが、彼女の今まで喰らってきたダーカーの量は尋常ではない。かえってダーカー因子を刺激してしまい、より侵食が進む可能性がある。
このままでは彼女は「深遠なる闇」に変化してしまう。このままではまた繰り返しになってしまう――何としてでもここで彼女を殺さなければ。
私は再び大剣を振るい、まずは邪魔な私自身を退ける。だがすんでのところで回避され、アッシュは側に落ちていた銃剣を拾って射撃、私の大剣を弾き飛ばされてしまう。
「何なんだ、お前は! なぜマトイを殺そうとする!?」
「……邪魔をするな。彼女は、ここで死ぬべきだ。死ぬべきなんだ……!」
やはりこの男も殺すべきか。私が彼女を殺すとあっては、貴様は黙っていないだろう。
何が何でも抵抗するはずだ。だが彼女だけは殺さなくてはならない。全てが闇に包まれる未来を避けるために、「深遠なる闇」になり得る可能性がある彼女だけは、ここで必ず殺す。
立ち塞がるというのなら、それが過去の私自身であろうとも、手加減はしない。私は弾き飛ばされた大剣の代わりに、似たデザインの漆黒の両剣を取り出してアッシュに斬りかかる。
その傍らで彼女は今も自身の闇を抑え込もうとしている。だがその行為も無駄だろう。クラリッサによる浄化もすでに追い付いていないほどの闇が彼女を覆い尽くしている。
早くアッシュを排除しなければ、間に合わなくなってしまう。
「ちっ、以前にも思ったが……お前、あらゆる点で俺に似ていやがるな……実力もほぼ同等……気味悪いぜ」
「……フン」
似ているのではない。全く同一の存在――私は貴様で、貴様は私なのだからな。しかしこいつの言う通り実力が拮抗しているためか、このままでは決着がつかないかも知れない。
彼女の方は今も自身の内から溢れ出るダーカー因子を抑えようとしている。が、やはりそれを上回る速度で闇が溢れ、更に彼女を侵食していく。もうどうしようもないと悟ったのか、彼女はその場にぐったり倒れ込み、小さくつぶやく。ュを排除しなければ、間に合わなくなってしまう。
「……ああ、これはもう、ダメだね。どうしようもないや……」
そして彼女はクラリッサに語りかける。「手伝って」と。クラリッサにより浄化も、自身で抑え込むこともできない。ならば、手はひとつしかないのだろう。
クラリッサも、彼女自身ももうわかっているのだ。彼女がもう、彼女でなくなってしまうことが。彼女はダーカーを滅ぼすために、皆を守るために生まれてきた存在だ。そのためにここにいる。だから彼女は……
「だから……私がダーカーになっちゃうのなら、私は……私を……」
「お、おい! マトイ! ま、まさか……!」
「……消去、する」
彼女がこの選択を出してくれるのは、こちらとしては願ったりだ。創世器「白錫クラリッサ」の力を限界まで引き出し、それを自分自身にぶつけて消滅させる。
クラリッサからすれば、膨大な闇に包まれた彼女は格好の獲物だ。かの創世器は他の創世器とは全く別物と言っていいほど、対ダーカーに優れている。その力を限界まで引き出せば、「深遠なる闇」に至る寸前の彼女すら容易に葬れるだろう。
ずっとこの日を待っていた――彼女を救える時が、ようやくやってきたのだ。
「でも……ああ、でも、残念だな。ほんっと、残念だなあ」
「マ、マトイ……!」
「もっと、あなたにいろいろ教えてもらいたかった。いろんな話、聞いてみたかった。おしとやかに、かわいらしく……そういうのも、やってみたかった」
似たようなセリフを、あの時の彼女も言っていたのを思い出した。
「深遠なる闇」と化す寸前、彼女は私に「あなたといろんな話を、もっとしたかった」と。その時の彼女は途轍もない痛みを堪えながら、それでも笑顔で、私にそう言ってきた。
今と同じような、おしとやかで、かわいらしい笑顔を浮かべながら。そうして彼女は完全な「深遠なる闇」として、「世界を壊す流転の徒花」と化してしまった。
「ああ、ああ……やっぱりだ。知らないこと、やりたいこと、いっぱいあったんだなあ、私」
「ああ……たくさん教えてやるよ……マトイが知らないこと、やりたいこと、俺が全部教えてやるよ! だからっ……!」
「ねえ、アッシュ……私、「みんな」なんでよくわからないもの、守れなくていいから……あなたの隣で、あの場所で……普通の女の子になってみたかったなあ……」
その言葉を最後に、強烈な光に包まれたクラリッサは彼女の胸を貫いた。
そこまでは辛うじて視認できたが、それからはあまりにも眩い光に、顔を伏せてしまったから彼女が死んだかどうかは確認できなかった。
そしてその衝撃の影響だったのか、私は意識を失ってしまった……
ここまで書いて、心が折れました。
ウノリッシュを自己流に直すなんて無理です。
素晴らしく腕がないなぁ、私は…