私のアトリエ〜ネギま世界の錬金術師〜   作:只野飯陣

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16〜初めての調合成功の小娘/中和剤(緑)〜

炊き出し用の巨大な鍋の前に立ち腕捲りをする。頭の中に有るのは前回の失敗と、アホ程やり込み、憧れたアトリエシリーズのシステムに関してだ。

前回の反省を生かすなら、行動する前に考えるべきだろうと考えたのだ。

無計画に挑むべきじゃない、考察と検証を繰り返して、初めて結果が伴うんだ。自分で言った言葉じゃないか『錬金術は学問』だと。

それも、この世界では未だ産まれてもいない分野なんだし、無闇な行動は控えるべきだ。

さて、自己暗示的にクールダウンした所で考察に入ろうか。

先ずは前回行わず、アトリエシリーズでは必ず行われている、もしくは起こっている現象についてだ。

 

1、鍋の中身をかき混ぜる

2、魔力を消費する

3、素材を入れる順番(正しシリーズによっては同時に入れる)

 

3はおそらく関係無い。というのも、前回も今回も私が行うのは馴染み深いソフィー式の中和剤(緑)のレシピだからだ。

ソフィーのアトリエでは素材の投下の順番は好きに決める事が出来る。

よって、3はおそらく今回の調合に関して考えるなら関係無い。

となると可能性が高いのは1と2、だろう。

2の魔力の消費はシリーズを通しての共通項だし、1に関しては共通項どころかロロナのアトリエ及びトトリ、メルル、黄昏シリーズでは釜のかき混ぜかたこそが重要だとハッキリ言っている。

よって、今回の注意点を。

1、鍋の中身をかき混ぜる。正し初めての行いなので、鍋からの光等の情報を頼りに速度を調節する事。

2、順次魔力を注ぐ、ただし此方も初の試みなので、慎重にゆっくりと注ぐ事とする。

もしかしたら、錬金術lvが低い時に時間がかかるのは、私みたいに手探りで魔力を注ぐからなんじゃなかろうか。

そう考えたら、何だかアトリエシリーズの錬金術師になれたみたいで凄く嬉しい。

マリーもエリーもリリーもイングリドもヘルミーナもドルニエもハゲルもみんな最初は手探りでだったんだなぁ、そう考えたら感慨深いものである。あっハゲルは違うか。

それはそうと、かき混ぜる何かが必要だ。木の棒だったり、舟のオールだったり、何でも良いのだが何か無いだろうか。

 

「かき混ぜるものなぁ……こんな物しか無いぜ?」

 

ジャック少年に聞いてみたら、訓練用の木製の大剣を見せてくれた。

刃幅は目算250ミリ、長さは1500ミリって所だろうか。

私の身長とほぼ同じ長さで、若干やりにくそうである。

 

「贅沢は言えないしそれでも………重た!?」

 

ちょっ!?

なにこれ、ピクリとも動かないじゃないか!?いくら何でもこんなの使えないって。

 

「あー、やっぱ無理か、見るからに貧弱そうだもんなぁ」

 

じゃかぁしぃ、こちとら平均的な日本の女子高生だぞ、そんな重い物持てる筈無いでしょ。

もう良いや、いくら底の深いお鍋でも全高1000ミリ位だし、食べ物作る訳でも無いし、そこらの太めの枝でも使うとしよう。

私は持ち上がらない木剣をジャックに返し、それなりに長さのある枯れ木の枝を広い湖の水で洗った。

隙間などに土が入っていないか入念に確認し、鍋の所に戻る。

昨日と同じように取っ手を掴み、魔力を循環させる。

一回経験したお陰か、今度は弾かれるような事も無く順調に魔力が渦を描き鍋を満たしていく。

それを興味深く観察するジャック少年を尻目に、やはり大きいからか中々たまらない事に先に魔力が枯渇してしまうのではないかとビクビクしながら焦りを押し殺し魔力を込めていく。

体感的に魔力を半分程消費したが、何とか鍋に満たす事が出来た。

オレンジ色の淡い光を放つ魔力に、ひよこ豆を二つと、樽から桶に二杯の湖の水を掬い入れる。

少しすると光が強くなってくる。前回は慌てていて気付かなかったが、増えた光にも水色と緑の色がついている。おそらく素材の属性の色だろう。

丹念に洗った杖を魔力渦の中に突っ込み、ゆっくりとかき混ぜていく。

すると二色の光が揺めき、解け合っていく。

だが光の強さはドンドン強くなっていっている。木の枝を通して魔力を込めると少しだが光が弱くなった。更に込めるとまた少しだが弱くなり、元の光の量になるまでゆっくりと慎重に込めていく。

辺りが夕焼けに赤く染まるまでじっくり丹念にかき回し続ける。

いつ終わるのか、何を基準に終わりだとすれば良いのか、まったく検討がつかない。

そういえば前回の調合はソフィーのアトリエのレシピだったのに、出来上がったのは『失敗作の灰』ではなく『産業廃棄物』だった。

とゆう事は、やはりこの世界の錬金術にはザールブルグ方式の法則も適用されるのだろうか。

そうなると調合の終了時間が一気に解らなくなるぞ、ザールブルグ式の中和剤の作成時間は1日だし、もしレシピに対してそういった方式がザールブルグ方式だった場合、私も丸1日かかると言う事だ。

現に作業開始から三時間はたっているが、未だに光は二色のまま混ざり会わずに揺らめいているし、少し気を抜くと直ぐに光量が安定しなくなる。

込める魔力の量は対して多くないのに、常に一定量流さなきゃいけないから、以外と神経を使う。

ハハッ、LPを消費してるって感じかな?

 

「ととっ、危ない危ない」

 

馬鹿な事を考えていたらまた光量がグンッと増してしまい、慌てて魔力量を調整する。

気付けば夜の帳が降り、鍋からの淡い光が唯一の光源となっていた。

隣で渦の動きを真剣に観察していたジャック少年も、今では離れ湖に立ち、水上歩行の訓練と平行して何やら手をグリグリ回している。

アデルは湖から戻って直ぐは木にもたれかかりながら見守ってくれていたが、今では大剣を抱えて寝てしまっている。

二人の様子を確認した私は気合いを入れ直し、鍋に向き直った。

 

 

翌朝、夜通し何かの練習をしていたジャック少年が切り上げ、欠伸をしながら起き上がったアデルが顔を洗いに湖に向かう中、私は未だに鍋の前に陣取りグールグールとかき混ぜていた。

目の下には隈が浮かんでいる事だろう。

集中力が低下したせいで光量にもムラが出来てしまっている。

おそらくまったくのムラ無くかき混ぜ続ける事が出来れば、その分速く完成するのだろう。

眠いのを我慢しながら、かき混ぜ続けていると、二色の内緑色の光の量が最初より増している事に気が付いた。

中和剤(緑)の属性色は言うまでもなく緑色だ。

この二色が鍋の中にあるアイテムの色だと仮定するのならば、緑色の割合が増えたのは完成が近いという事に他ならないのでは無かろうか。

そう考えると途端にやる気が上がってきた。

木の枝を強く握り締め、何度目かの気合いの入れ直しを行う。

 

「まだやってるのかい?錬金術って大変だね」

 

顔を洗ったアデルが乾かしていた鎧を着込みながら話し掛けてきた。

そりゃ大変さ!!だけど他では得られない充実感を感じてるのは間違いないのさ!!眠いけどね!!

 

「あーでーるー!!お腹すいたからアーンして!!アーン!!」

 

手を放せないから朝御飯を食べられないんだよー。

 

「………何だか不自然にテンション高くて気持ち悪いなぁ」

 

等と言いながらもしっかりと調理器具を取りだし、食材をフライパンに入れて火にかける。

程なく香ばしい肉の焼ける匂いが漂ってきた。

グゴゴルルギュウ〜と盛大に主張するお腹に呆れながらも、私の口元に程よく焼けたお肉を運んでくれる。

それを貪るように口に含み、頬を膨らましながら調合に意識を向ける。

モワモワと煙が出てきたが、前回のような黒煙ではなく白い事等からも気にしなくても良さそうだと判断し作業を続行する。

結果的にその判断は正解だったらしく、光の色はほぼ緑となった。

完成が近いという事を感じた時だった。

 

「ぷにぷにだ!!アデルさん!!手伝ってくれ!!」

 

ジャック少年のそんな言葉が背後から聞こえてきた。

 

「なん………だと………?」

 

今私の背後に、アトリエ界のスーパーマスコットがいる。

 

「解った!!」

 

ジャック少年の呼び掛けに、アデルが飛び出すように駆け出した。

くっ、振り向きたい、振り向きたいのに今は絶対に振り向けない、とゆうか集中しなきゃ………。

 

「くそぅ!二人とはぐれた時にこんな………良かろう!!ぷに1の戦士である俺が!!」

 

え?二人以外の声が……ぷにぷにが喋ったの?え?

ちょ!見たい!見たいよ!てゆうか抱き締めたい!!

あー!でもでも、今は調合がぁ……うぅ。

そんなふうに悶々としていたすいか、光量のムラは更に酷くなり、疲労が溜まり、光が緑一色から更に元のオレンジ色になり煙が出なくなったのを確認する頃には辺りが夕焼けに染まる時間帯になっていた。

徹夜どころではないが、今はそれよりぷにぷにを!もしかしたら……もしかしたら……!!

期待と興奮に鍋からの出した枝を杖変わりに振り向いた私の背後に視線に映ったのは。

 

「いやぁ、ぷにぷにのわりには強かったね」

 

「いや、マジかこの人ら……湖割りやがった……」

 

朗らかに笑うアデルとドン引きしているジャック少年、更にはそんな二人から逃げるかのように走り去る一匹のぷにぷにの背中(?)であった。

 

「うぁ…そんな……そんな……」

 

膝をつき項垂れる私に気付き、ふたりが駆け寄ってくる。

 

「終わったのか!?速く完成品見せてくれよ!実はずっと気になってたんだよなー」

 

「大丈夫かいノミコ……へぇ緑色の液体、これがノミコの作りたかった物か」

 

気遣い無く話し掛けてくるジャック少年に、気遣いながらも鍋の魔力渦に手桶を突っ込み中身を掬い上げるアデル。

ジャック少年もアデルの横に並び、興味深そうに中和剤(緑)を見詰めている。

初めての調合成功なのに、最高に嬉しいのに……何で、何でこんな……もぅ!素直に喜びきれないよー!!

 

「なんでこうなるふわらまー……!」

 

精神的にも肉体的にも疲労がピークに達した私は、両手を突き上げ不満を爆発させようとして後ろに倒れ込み、そのまま意識を落としてしまった。

最後に見えたのは、倒れる私に目を見開き硬直するジャック少年と、私に向かい手を伸ばし駆け寄ってくるアデルの姿だった。




活動報告にて、21話に掲載予定の閑話を乗せています
読みたいもの、書いてみて欲しいものごあればそちらにお願いします

欲張って色々伏線はりましたが
はりましたが………
はったのは構わないが、別にそれを回収しなくても構わないのだろう?

最近ペルソナ5にどはまりしています
『二週目明智の独り(ボッチ)でできるもん』というタイトルだけ思い付きました。

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