とゆうか、この御方がいなきゃアトリエに不可欠な『アレ』とか『アレ』とかが……ね?
ガタンゴトンと揺られる振動に眠りから目覚めた私は、微睡みながら身体を起こした。
私が寝ていたのは、パナ(仮称)に引かせている荷車の荷台だった。
「あっ、起きたのかい?良く寝てたね、もうすぐ街に到着だよ」
「つか寝過ぎだろ、牛になんじゃねぇか?そのうち」
未だ眠気を引き摺る重い瞼を擦っていると、二人から話し掛けられる。
アデルは兎も角ジャック少年の台詞には一々デリカシーが無い。私は身体を伸ばしジャック少年の頭をペシリと叩いて、荷台から飛び降りた。
「所で何でジャック少年がいるのさ?新技の練習は?」
ふと疑問に思い、ジャック少年に聞いてみる。
何だか掌をグリグリ回してたあれはもう良いのか?いや、別にジャック少年に着いてこられると迷惑とかじゃなくてさ、単純に気になったんだよね。
「一応は完成の目処は立ったし、何よりノミコのお陰で身元買い取り金が手に入ったからよ、取り敢えず良いだろって事で引き揚げる事にしたんだよ」
ふむ?、そういやジャック少年の買い取り金は残り凡そ50万ドラクマだったらしいし、私が届けた150万ドラクマから払っても、100万ドラクマは残るのか。
………日本円で1億かぁ。
10年は豪遊出来るね。慎ましやかに生きれば一生食いっぱぐれる事はなさそうだ。
「んでよ、その、何だ、一応ノミコには感謝してるんだぜ?俺の話を聞いて、危ない橋を渡ってくれてよ」
ジャック少年が決まり悪そうに頬をかきながら、視線を反らし言葉を口にする。
その後も何かの言葉を続けようとしているのか「あー」だの「えー」だのとまったくもって要領を得ない。
ふっふっふー。無自覚タラシな転生者や鈍感系ラノベ主人公、はたまた乙女ゲー天然女子とは違い、そこら辺の機微に聡い私は直ぐ様ジャック少年の用件に思い当たった。
ずばり!!感謝の印のプレゼントだ!!
しかも初の女性へのプレゼントとあって緊張しているのだろう。ここはお姉さんたる私が広い心で見守ってあげねばなるまい。
「あー、だからって訳じゃないが、一応恩人と言えなくもない訳だしな、何もしないのは礼を失するとも思わないでもないし………ノミコにピッタリの武器を選んでやるよ!!」
うんうん。そうだね。わかるよー。礼儀大事だよねー。と、ジャック少年の言葉にニマニマ笑いながら相槌を打っていたのだが、最後の台詞で思わずずっこけてしまった。
何でそこで武器をチョイスしたの!?
自慢じゃないけど私戦闘能力はセンスや才能含めて皆無だよ!?
最弱系錬金術師(予定)だよ!?
本気を出せばチワワにだって負けるよ!?
とゆうか、女子に対する感謝の印が武器とか、ないわー、マジないわー、引くわー。
デリカシーゼロ男だとは解ってはいたが、まさかこのレベルとは、私はまだジャック少年を侮っていたらしい。
まぁ、貰う立場でもんくを重ねても失礼だしー、内心はおくびにも出さずに喜んであげますかー。ほら、私はお姉さんな訳だしね!
「わーい、うれしいなー、さすがおんなごころ、わかってるー」
「………露骨にガッカリしたなこの野郎」
「解りやすいのがノミコの良い所だよ。顔に掲示板が付いてそうなレベルだしね」
だまらっしゃい。
とゆうか、アデルから遠慮がどんどん消えていくのは気のせい?
最初は女の子との二人旅とあってやや距離があったのに、今ではほぼゼロ距離だよ。むしろめり込んでるよ。ぼでーぶろーだよ。
「チッ……いらないんなら別に良いぜ?ただ今回みたいな採取とやらで自衛出来ずに死ぬかもしれないがな」
私の反応が余程お気に召さなかったのか、不貞腐れたように舌打ちをし、そっぽを向くジャック少年。
うぁ、ゴメンて、流石に今回は私が悪かったよー。謝るよー。だからそんな冷たくしないでよー。
「…………冗談だ冗談。流石に恩人に対する感謝の印を取り下げる程落ちぶれちゃいねーよ」
ほっ、何だ冗談だったのか、安心したよ。
いや、でも今回は冗談で済ましてくれたけど、これはちゃんと気を付けなきゃ、どうやら私は私が思っているより解りやすいらしいし、不用意な反応が不興を買うこともあるのだ。
そう考えたらジャック少年は本当に懐が深いな、有難い話である。
良く良く考えたら、私こそジャック少年のおかげで無一文から一気に大金持ちになれたんだし(まぁ住居の修理で大分吹き飛びそうではあるが)しっかり感謝しなければ。
「となるとー、うーん……よしっジャック少年には感謝の印に友達価格&恩人価格で依頼を受けて上げる事にするよ!!」
名案である。冴え渡る私の脳細胞が恐ろしい、これならお互いに損をしないのでは無かろうか。やはり私、天才じゃなかろうか。戦慄。
「………なぁ、アデルさん、何で感謝の印を渡す流れから貰う流れに変わったんだ?」
おーいジャック少年ー。何で本人がいるのにアデルに聞いたのー?
「うーん、多分思考があっちに行ったりそっちに行ったりを繰り返した結果だと思うよ」
アデルも何気に失礼だし、まぁ正解なんだけどさ。
何だか釈然としない気持ちに首を傾げながら歩いていると。街門が見えてきた。
今日の門番さんはガチムチさんかー。
「通行証の提示をお願いします」
門番さんに言われ、私達はそれぞれ通行証を取り出す。
それに判子を押していき、あくまで事務的にニコリとも笑わずに通してくれる。
街を出るときと負けず劣らずのドヤ顔だったのに、渋目門番さんみたいに反応を返してくれたりはしなかった。何だか微妙な恥ずかしさが………。
「うっわスルーされてやんの、はずっ」
ううう、うるせーやい!!
間髪いれずに煽ってきたジャック少年に羞恥と怒りで顔を真っ赤にして殴りかかる。
だがジャック少年はそれを『しゅんどー』だか言う歩行術で、まるで瞬間移動のように背後に回り込み避けやがった。
「避けるなよ!?甘んじて受け入れろ!!」
「いやいや、ノミコみたいなペタん子にじゃれつかれてもなぁ」
んなぁ!?
………ふふふ。
ふははっ。
あーっはっはっはっ!!
「殺す」
私がペタん子だとぉ!?
ちゃーわい!欧米人が育ちすぎなだけだ。日本人は民族的にスレンダーなんだよ!私はむしろ平均的だ!
折角感謝したのに!有り難みを再確認したのに!台無しだよ!
私の反応をヘラヘラと受け流していたジャック少年が、踵を返し走り出す。
私も本能的にそれを追いかけようと足を踏み出した。
「アデルは先にゲヴォル氏の所行ってて!私はあの馬鹿に世の慎ましやかな胸の女性に変わって天誅をくだすから!」
そう!あくまで世の慎ましやかな胸の女性の為だ。私は平均的だし。私は平均的だし!!
その後、脚がフラフラになりながらも、何とかジャック少年を見失う事も無く追いかけ続けている。
「まてこらアホー!」
「待てと言われて待つような停滞した人生は、歩みたくないのさ」
何を決め顔で語ってんだ。やってるのは立派なセクハラだろうが。
最近気付いたぞ、やる時はやるのに、それ以外だとふざけ出す。それも全力で。
何度も死にかけても試合に出続けてきた精神力が変な方向に成長してしまった。なげかわし。
「良い加減に止まれこのアホ!」
真面目にもう限界だから、脚が分離しそうな位だから、本気で止まってくださいお願いします。
「あいよ」
すると今までどんだけ叫んでも止まる事の無かったジャック少年が急停止し、どこかのドアを開いて横に避けた。
急な停止に疲労の溜まった私の足は対応出来ず縺れさせてしまい、どこかの建物に転がるように入ってしまった。
ゴロゴロガシャンと、けたたましい音を鳴らして侵入してきた私達に、建物の奥から何事かと人が飛び出してくる。
「なんだなんだぁ!?何が起きやがった!?」
盛大に頭をぶつけクラクラとしながらも謝ろうと顔を上げた私の視界に飛び込んできたのは、逆光により後光が射しているかのような、なんと言うか……不毛な頭の男性だった。
革製のエプロンを首から下げ、腰には多種多様な道具をぶら下げている。
片手には作業中立ったのだろうか、セットハンマを握っている。
どこからどう見ても鍛冶屋の親父、そんな風貌の男性だった。
「んだよラカン、まぁたお前か、聞いたぜ?珍しく勝ったらしいな、今日はなんだ?武器の新調か?」
「いや、今日はこいつの武器を見繕って欲しくてな」
ザッツ鍛冶屋の親父が何事かジャック少年と話しているが、私の耳はその内容を受け止めてはくれなかった。
「師匠〜何スか、何かあったんスかい?」
更に店の奥から、赤い髪の男が出てきたようだが、正直そちらに意識を割いている余裕はわたしには無い。
神々しいまでに煌めく頭、いかつい顔立ち、それと何故か胸元に装着された猫のピンバッジ。
ここまで条件が揃えば間違いなかろうが、最後の……最後のだめ押しを……。
「ジャック少年……ここ、此方の御方は……?」
震える声で何とか問いかける。
まさか……まさかまさか!頼れる鍛冶屋のあの御方だとしたら!!
「あー?……ったく、おやっさんが血相変えて出てくるから脅えちまったじゃねぇかよ」
やれやれと言わんばかりに首をふるジャック少年に誰のせいだと思ってやがると怒鳴る。そんな漫才良いから質問に答えてよジャック少年!
「あーあ、また師匠が子供泣かせたよ」
「よぉし甚兵衛テメェも喧嘩売ってんだな?」
だからそーゆーの良いから御名前教えてくれってば!
「悪いな嬢ちゃん、どうせラカンの奴にからかわれたんだろ?ほら、怪我ないか?」
うっわ。優しい。
見た目に似合わぬこの性格、やっぱり間違いないでしょこれは。
「俺はこの店で鍛冶屋を営んでるハゲルってんだ、よろしくな」
やっぱり禿げるの親父でしたー!!やったー!!これで、これで『アレ』が調達出来る……。
少し悩みましたがハゲルの親父はここで登場です。
ロジーと悩んだ。本気で悩んだ。
でも。ロジーはどうせなら原作時間軸に出したかった。
あと三話でいよいよノミコのアトリエが始まります
はい、カウントダウンです
ただノミコのアトリエ始まる前に閑話を入れます
現在票が多いのは40年後の教科書です。
活動報告にてアンケート的に行っておりますので、皆様奮って票を入れてください