私のアトリエ〜ネギま世界の錬金術師〜   作:只野飯陣

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3〜酒場の依頼と小娘1〜

ジャック少年との作戦会議が終わり同盟を結んだ私は、折角だからと酒場まで案内してもらう事にした。

途中予想通り素材を取り扱ってる店もあったのだが、それも魔法薬の素材やら鍛冶用の鉱石やらばかりで、錬金術のれの字もなかった。

まさかとは思いつつも先導するジャック少年に引き離されないよう、小走りに付いていく。

しばらく歩くとジョッキを掲げた看板が目に入ってきた。

立地はコロッセオの正門の右向かい。そりゃ、こんな冒険者が集まりそうな施設があればその近くに建てるよね、盲点でした。

 

「じゃあ俺はエントリー済ませて旦那さんの所に戻るからよ、トトカルチョは午後一時だからな、忘れんなよ」

 

ジャック少年はそう言い残し手をヒラヒラと振りながらコロッセオに入っていった。

道中聞いた話だが、どうやらジャック少年は奴隷……正しくは拳闘奴隷と言う存在らしい。

戦災孤児だった彼を今の旦那さんが買い取り、自分の身を買い戻すまでの間面倒を見てくれているんだそうだ。

故にジャック少年は旦那さんに多大な恩義を感じ、早く潔白な身の上になって彼の元で恩を返したいのだとか。

もうさー、そんなん聞いたら賭けとか関係無く応援しちゃうでしょ。

頑張れジャック少年、私も安定した生活って目的の為に頑張るから。

ジャック少年と比べて俗っぽくて小さな目的?

そりゃ私、雑魚ですから、身の程を越えた願いは持ちませんとも。

それはそーと、待望の酒場である。

材料の採取とか、そんな依頼でチマチマ稼ぎ、今は衣食住の確保に努めよう。

 

 

 

カランコロンと、乾いた木製のベルが鳴り、店内に若干の緊張感が走る。

店内にいた見るからに荒くれって風貌の男達は、私の姿に小さく安堵の表情を浮かべた。

何だ?今の?

少しピリピリとした空気に気にはなるが、私は私の用事の為に、カウンターの向こうでパイプを吹かす男性に話し掛けた。

 

「あの。何か私にも出来そうな依頼とかありますか?」

 

多分酒場のマスターであろう男性は、Tシャツに麻のズボンという服装で、渋いというよりは老練とした雰囲気を感じる人物だった。

威圧感のある鋭い瞳が此方を向き、低く嗄れた声が放たれる。

 

「依頼……ってーと?」

 

その顔には困惑が浮かび、声には隠しきれない面倒臭さが滲んでいた。

大方私みたいな小娘が来たことに困惑し、酒を飲まない客だと面倒臭く感じているってところだろう。

そんなマスターの考えはどーでも良くって、まるでこの人依頼とかやってないみたいな反応何だけど。

えーとさ。

 

「ですから、民間や国から冒険者とか錬金術師に向けて出された依頼です」

 

「それを求めてたんなら何故ここに来たんだ」

 

え?いや、だって、酒場で依頼は御約束………あれー?

 

「無いですか?」

 

「無いな」

 

んぁっ、マジですか。一気に収入源が拳闘での賭けのみになってしまった。

 

「だいたいそれって俺にメリットあるのかよ」

 

メリット?無いんじゃないかな…………いや、本当に無いか?

 

「えーと、例えばこの酒場で依頼を仲介したら仲介両が貰えるし、依頼を求めて来た人で店が賑わいますよね、そうなると様々な情報がマスターに入るし、今度は情報の売り買いも可能になります」

 

「ほう?………続けてみろ」

 

「あっ、はいっ………更にこの店はコロッセオの近くという立地から拳闘見たさの御客さんもいますよね、そーゆー御客さんからも依頼を受け付けると、今度は一般の御客さんも来るようになります。一般の御客さんからの依頼を冒険者さんが受けると言うのは単純に冒険者さんの収入源が増えると言うことで、これまた冒険者さんがこの酒場に集まります」

 

ここまで話し一息、マスターの顔色を伺えば最初の面倒臭そうな顔は消え、愉しげな笑みを浮かべながら私の前にミルクを置いてくれた。

 

「ふんっ………穴は有るが悪か無いな、試しにやってみるか」

 

お?おぉ?!

アトリエ名物依頼酒場の設立の瞬間に立ち会えるなんて、アトリエシリーズのファン冥利に尽きるよ!!

 

「んで、嬢ちゃんはその依頼を受けたいらしいが、悪いが見ての通り準備もしてない」

 

そりゃ、まぁ、そうでしょうね。

 

「つうわけで、俺から依頼を出してやる。まぁ御試しの更に御試しだがな」

 

そう言ってマスターが紙にサラサラと何かを書き込む。

 

 

依頼

街を綺麗に(1)

 

依頼者

クオルク

 

内容

綺麗な街は気持ちが良い、俺も定期的に掃除してるが一人だと限界がある。

だから今後は依頼として出す事にした。

今回は御試しの御試しだから、酒場の周りで雑草でも抜いてくれ。

取り敢えず小さなバケツ一つ渡すからそれが埋まる程度に頼む。

 

報酬

10ドラクマ

いらない雑貨

 

 

あんたかい!!

路地裏までピカピカにしてるとか、威圧感のある怖いおじさんから綺麗好きな主夫おじさんに私の中でジョブが変わったよ。

しかも報酬、ざっくりし過ぎだよー。

まぁアトリエ世界(おそらく)で出る初めての依頼だし、当然受けるけどね。

ヤバい、これはちょっと歴史的な瞬間かも。かんどー!!

柱時計に目を向けると、丁度9時を回った所。

残り四時間、酒場の建物はかなり広いから、急いでもギリギリ間に合わないかもなぁ。

………待てよ、あの依頼書には期限が書いてなかったな。

多分その発想が無かっただけだろうけど、これは無期限扱いでも良いのでは?

うん、うん、一時までやって、また明日続きやれば良いんだよね。

んふー、やっぱり私天才だなー。

まぁジャック少年の試合が終わったら教えてあげよう、何でも無期限にしたらまずいしね。

さてさて、先ずは店の周りの草むしりー。おー。

 

 

 

「お、おー?」

 

ヤバい、草が全く無い、酒場のマスター改めクオルクさんの綺麗好きを舐めていた。

こんなんバケツ満たすのにどんだけかかるのかと。

嫌々、諦めるな、酒場の敷地なら裏の倉庫周りも含まれるべき。

そこまで全部抜けばかなり集まる筈。

それにほら、縁の近くならこんな魔法の草みたいな………え?

うぇ!?トーン!?マジで!?

いやいや、良く見てみなよ、こんな所にトーンが生えてる訳………いや、やっぱりこれトーンだよー!!

あっちにも!あっちにも!!あっちにまでも!!!

いやはや、お金も貰えて素材が集まる、最高ですな。

確かトーンは根っ子を残したら来年また生えるらしいし、全部茎からむしっておこう。

両手が汚れるのも構わず一心不乱にトーンを回収。

 

「ミッドりの調合ー♪ミッドりの調合ー♪中和剤に回復アイテム、色々便利な素敵なざっそー♪」

 

ご機嫌である。もはや他の雑草何て目に入らない、ただでさえ少ない雑草からトーンだけでバケツが半分埋まってしまった。

探せば有るものだ。

時間も押してるし、クオルクさんに途中経過を報告したらジャック少年の試合に行こう。




new魔法の草×14
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