剣闘大会が終わり、ジャック少年は何事かを喚きながら、スタッフに引き摺られるように会場から出ていった。
あっけない幕切れに客席からはブーイングの嵐が飛び交い、トトカルチョの券が宙を舞う。
かく言う私も、予想だにしない展開に呆けていた。
(えっと………初期ベルが居たって事は此処は黄昏世界?でも砂漠化とかしてないし、それに黄昏シリーズにマンドラゴラは居なかったし)
そもそも、黄昏世界なら錬金術はもっと普及している筈だ。
いやいや、自分でアトリエシリーズはキャラを使い回してるって言ったじゃないのよ。でもコスチュームもおんなじなんて有り得るの?
………あーーー!!わからーーーん!!
もう難しい事は考えたくない、この世界はアトリエ、ウィルベル可愛い、これだけ解ってるなら十分だろう。
「くっまさか君はこの結果を予想していたなのですか?だとしたらなかなかの」
「うっさい邪魔!!」
って呑気に考え込んでる場合じゃない!!ジャックのあの荒れようなら最悪スタッフさん殴るかも!?てゆーか殴るねあいつなら!!
あーもー!!仕方無い、たったの一日の付き合いで此処まで情が移るとは、謎のカリスマ………いや、ほっとけないオーラを出してるジャックが全部悪い。
折角優勝したんだから、無駄に逸らないでよ?
選手控え室前に着いた。
辺りは静寂に包まれ、嫌な予感が膨らんでいく。
最早既に全員殴って追い出された後とか?
いやいや、そんなまさかねー?等と考えながら扉を開く。
扉の隙間からひょっこり顔を入れ中を覗くと、治療を受けたのか無傷なジャックが椅子に座っていた。
最悪の展開には到っていないようで、私は安堵の溜め息を吐き出した。
となれば、取り敢えず大会優勝の御祝いを言おうと口を開き掛け、直ぐ様閉じた。
泣いていたのだ。ジャックが。
一日にも満たない付き合いではあるが、あのジャックが泣きながら「ちくしょう………」と呟く姿は、私に衝撃を与えた。
子供扱いしているつもりは無かった。特別扱いしているつもりも。
だが、私はジャックに甘えてはいたのかもしれない。
敗ける筈がない?たった半日の付き合いで何がわかる。
頼りたくなる?こんな少年に頼りきりで恥ずかしくないのか。
私に損は無いだと?当たり前だ、私には初めから何も無いだろう!!
失う物が無い奴が上から目線に立ちやがって、気持ち悪い!!
………駄目だ、今の私は、今のジャックに話し掛けるべきではない。
この世界に、しっかりと足を付けよう。話はそれからだ。それまではジャックとは会わない!!
私はソッと部屋を後にした。
「よしっ!どうせ帰る家は無いんだ。今日は寝ずに草むしりだ」
魔法の草を集めて、錬金術を試そう。
失敗しても失敗しても、何度も何度も、いつか錬金術が使えるようになるって信じて。
それから私は酒場に戻りバケツを受け取り、草を探す作業を続けた。
一心に集め続け、明け方にやっとバケツを満杯に出来た。
フフっジャック、私も一つの死闘をやり遂げたよ、もう寝ても………良いよね?
「やっ、やっと見付けた………」
感慨に耽っていたら、クタクタな癖にやたらと覇気を纏ったピエロが現れた。
「あー?ピエロじゃーん!どったの?自信満々で負けに負けたピエロ君はどーしたの?んー?」
「くっ何て品の無い女だ!!二人に増えやがって!!」
二人にとか、視界定まってないじゃないか、マジにどーしたの?大丈夫?
さすがに心配するわ。
「だいたいどーしたの?だと?………お前が受け取らないから僕が渡しに来たんだろ!?ズボラ女!!アホ!!アホー!!」
「あぁー賭けの金かー、あんがと………つーか誰がアホだゴラぁ!?」
ピエロの癖に人をアホ呼ばわりとは!!ゆるせん!!
「テンション高いな!?落ち着け!!フラフラだぞ君!!」
るせー!!徹夜明け舐めんなコラ!!こちとら現代では平均九時間睡眠だバカ野郎!!
まぁ良いや、正直限界だし、自分の分受け取ったらクオルクさんに部屋借りて休もう。
「ほら!!350万飛んで187ドラクマ!!ったく………これで勝ったと思うなよ?次は僕が勝つ」
あーはいはい、どーぞ御勝手にー。
つーかはよ帰れ、あたしゃさっさと寝たいんじゃ。
「じゃあな、ちゃんと寝ろよ!?飯も食えよ!?」
解ってるよおかーさん。じゃあね。わざわざすまんね。御休みね。
フリフリと手を振ってフラフラと歩くピエロを見送る。そーいや名前聞いてない……まぁ良いや。
グッと身体を伸ばし、酒場に戻る。
って、閉まっとるやないか、まぁ明け方だしね。仕方無いね。
はぁ………結局野宿………いや、あそこ行こう。
魔法の草を詰め込んだバケツ片手にフラフラと歩き出す。
途中街の人に心配されたけど、「へーきでーす」と返しておいた。
それでもしばらく離してくれなかったけど。
いやー皆優しいなー、日本だったらスルー安定だよ、私もスルーするね、うん。
そうこうしているウチに目的地が見えてきた。
「泊まりに来ましたぁ………」
ニヘラと笑いながら城壁の門を潜り抜け門番さん(渋目)を探す。
「何で戻ってくんだよ………」
私の襟首を掴み青筋浮かべた門番さん(筋肉)が話しかけてきた。違う。貴方じゃない。
「チェンジで」
「舐めてんのか」
ガっ!!と音が響く頭突き貰いました。
乙女相手に容赦ないですね、痛いです。とても。
でも、纏まったお金も手に入ったし………明日は部屋を探して、調合道具買って………あぁ、忙しくなるなぁ。
そんな事を考えながら、私の意識は暗闇に薄れていった。