私のアトリエ〜ネギま世界の錬金術師〜   作:只野飯陣

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9〜不幸と出会う小娘〜

ゲヴォル氏と青山さんの後をついて歩き一時間程たった頃、現代日本での日常生活では先ず通らないような、整備されいない林道を通った先にその屋敷は有った。

所々壁が崩れ、蔦が絡まり、風雨により内装も傷んだ廃墟だ。

不気味な雰囲気を感じるその廃墟からは、確かに何かの気配を感じる。

 

「邪悪な気配は有りませんね、隠密性の高い霊か、やはりただの噂か」

 

「噂なら噂で構いません、問題は私の物件に悪霊が住み着き放置されていると街中に広まっている事何です」

 

そのせいで土地の借り手が激減したんだね。

また興奮しだしたゲヴォル氏を眺めながらそんな事を推測する。

噂なら噂で証明し、悪霊が居るなら追い出すなりなんなりして、対処したという体裁が欲しいのだろう。

こういった商売事は解らないが、信用は得難く離れやすいとサラリーマン金太郎でも言っていたしね。

 

「落ち着いてくださいゲヴォル殿、私が先ずは中に入り真偽を確かめて来ますので、御二人はここで土地の取引の話でも………」

 

それだけ言って、青山さんは廃墟の中に躊躇無く入っていった。

 

「アハハ、来た意味無さそうですね、私」

 

「いぇいぇそんな、ここらの土地の視察も有りますし、それに除霊が完了次第引き渡せるように書類も持参しましたので」

 

さっさと手放したいだけなんじゃ………鞄から様々な書類を取り出すゲヴォル氏を見詰めながら、そんな事を思う。

まぁでも、この屋敷が直ぐに手に入るのなら、そんな思惑も受け入れられる。

 

「さて、先ずは裏庭から参りましょうか」

 

そう言いながら立ち上がるゲヴォル氏から土地の詳細な情報の書かれた書類を受け取り、内容を確認する。

裏庭は10坪とそれなりに広く、ローズガーデンの跡地である。

実際に目にすると、まぁ荒れてはいるが、飾り柱もひび割れているが倒れてる物は無いし、修復するのにもそれほど時間はかからないだろう。

 

「あちゃー、井戸は枯れてるかー」

 

薔薇の水やりに使われていたであろう井戸は、底が見える程に枯れていた。

それなりに高台にある屋敷なので、差し水が無くなれば井戸も枯れる。この井戸を復活させるには人夫を雇い中を更に掘り周辺の水が差すようにしなければならない。

日当一人70ドラクマだとしても、中で掘る人が一人、上で土を上げる人が一人、井戸を組み立て下げる人が二人、土を運ぶ人が一人、つまり5人雇うとして350ドラクマ、一週間雇うとしたら6日間で2100ドラクマか。

一週間で水が吹くとも限らないし、こればかりは運次第だなぁ。

地下に残り水が有れば、そこが最低ラインだと解るのだが。

 

「何分古い屋敷ですので、大工の他にも土が得意な業者の魔法使いを雇いましょう………全体の費用は全て回ってからとして、次は馬舎跡に向かいましょう!!さぁ!!さぁ早く!!」

 

ちょっまっ!?

またゲヴォル氏のテンションが上がった。

この人手綱握る人が居ないと躁鬱が激しい、かなり面倒な人だ。

青山さん早く!!さぁ早く!!幽霊調査終わらしてー!?

 

「ここが馬舎です!!最大二頭の馬を繋げておけます!!裏には20坪の平地が広がり、馬の他にも山羊や羊の放牧も可能ですが!!」

 

馬舎跡には何もなかった。

建物も無ければ柵もない、あるのは荒れてる地面とへどろで埋まった土側溝のみである。

 

「見るまでも無く改良区域です!!」

 

いや、はい、解ります。

でも、馬を買う予定は無いし、買うなら牛でしょ。それでパナって名付けるのだ。きっと可愛い。

 

「後は屋敷だけですか」

 

「そうなりますね……青山様は無事でしょうか」

 

振り替えり屋敷を視界に入れた瞬間、屋敷の屋根が雷を纏う極光に吹き飛ばされ、数瞬後、壁を巨大な斬撃が切り裂いた。

 

「わひゃあぁあ!?」

 

爆風に転がりながら悲鳴をあげる。

アトリエのキャラはつくづく人間止めてるが、現実にするとこんな事になるのか。これなら確かにジャックのあの動きが弱いと言われるのも納得できる。

だってたった二回の個人技でそれなりに大きな建物が半壊したんだよ?重機を使ってもまだ時間がかかるよ。

 

「ノミコ殿!!ゲヴォル殿!!お下がりください!!」

 

建物からもうもうと立ち込める煙から尾を引きながら、青山さんが飛び出してきた。

美しい青色の着物は煤け、手に握る刀の鞘が半ばから折れている。

振り返らずに叫んだ青山さんは、刀を握る手に力を込めながら煙の奥を見るように睨み付けている。

 

「あいたた……は、話を……」

 

そして煙の中から更に人影が。

ボロボロの外套を纏い、片手には身の丈程もある大剣を握っている。

聞こえた声は男性のもので、どこか困っているような雰囲気を纏っている。

 

「くっ……しぶとい悪鬼め……!!」

 

青山さんは唇を噛みながら刀を腰だめに構えた。瞳を閉じ呼気を一つ。

トッ……と軽い音を鳴らし、気付いた時には外套のお化けの前にいた。

 

「神鳴流奥義」

 

閉じていた瞳を開いた瞬間、風が青山さんに向かい流れるのを感じる。

 

「百烈桜花斬!!斬魔剣二乃太刀!!」

 

瞬間、今度は風が青山さんから解き放たれ暴風となり辺りに飛び散る。

シャリンと音が響いたと思ったら、辺りには桜の花弁が荒れ狂うように舞飛び、地面に落ちた瞬間に崩れるように消え去る。

それを綺麗だとか思う余裕は無かった。

その一撃でお化けの外套が吹き飛び、ついでと言わんばかりに半壊に留まっていた屋敷も吹き飛んだからだ。

 

「ほぁぁーーーー!?!?」

 

あまりにもあまりな出来事に悲鳴だか奇声だか解らない叫びをあげる。

お化けの中の人が渦を巻くように上空に吹き飛び、屋敷の残骸も後を追うように吹き飛ぶ。

ゴシャッと惨い音を鳴らして落ちてきた人と次々と降り注ぐ残骸もに目をやり、その場に座り込む。

リフォームとか改修とかじゃない、完全な建て直しである。

家なんて建てた事無いからどれだけかかるか解らないが、もしかしたら折角の賭けのお金が全部無くなるかもしれない。

そう考えると何だか悲しみよりも、一週回ってどんな新築にしようか考えてしまう。これが現実逃避何だなー。

 

「あっぶ!?あぶない!?」

 

ワタワタとお化けの中の人が此方に逃げてくる。

そもそも、こいつさえ居なければ………

そう思って睨み付けた瞬間に私の動きは固まった。

頭の中では歓喜と不安と疑問と納得が乱れ飛び、目の前の対処に困り過ぎる人物に視線は釘付けになった。

 

「あー、ついてないけど、今回も生き残れたぁ」

 

額の汗を拭いながら幸薄く笑う姿に正気に戻り、慌てて視線を反らす。

 

「はぁ……まさかお化けと間違えられて戦う事になるなんて」

 

呑気にそんな事を言う鎧の男や、その背後から忍び寄る青山さんも気にならない程の驚愕、だってそこにいたのが。

 

「あぶない!?……だから僕は幽霊じゃないってば!?あぁ!!もう!!なんてついてないんだ!?」

 

ユーディーのアトリエに出て来た不幸な男、アデルベルト・ホッカーだったのだから。




神鳴流の技は大味過ぎるのが多いと思う
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