もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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へんな奴と友達?になりました。

「喜べ。お前を俺の奴隷にすることにしてやった!」

 

 

「……………………は?なんて?」

 

「俺のものになれっていったんだよ。愛人でも側室にでも好きなようにさせてやるぜ。どうだ?」

 

「はい、はい。そーゆーの間に合ってるんで」

 

戻った帝都で魔法学園へ通い始めて百日近くなってきたかなぁ、というこの頃。

皆さんいかがお過ごしですか?帝都は、そろそろ秋を押し退けて、冬の足音が聞こえてくるようです。あーあ、寒いの……嫌だなぁ、嫌だよぅ。

 

はい、そんなコートでもジャケットでもいいからダウンが恋しくて体を縮こめてプルプル。

こんなとこは前世と何も変わんないよなぁ、ったく。

冬が寒い、寒い、寒いってとこはどの世界へ行ったとしても当然なんだろー。だって、寒くなる季節だから冬って言うんだろうし。

少々愚痴が過ぎたかも知んないね、ごめんよー。

アタシ、ティルフローズといいます。

魔法が使えるようになったぽいのに魔法が使えてないとゆー、かなりレアな体験をしてる悪魔契約魔法少女です。体型ならまだ幼女ですかねー、誕生日は復活の月……つまり一月に相当する月なので少し先です。

 

でも、そこまで見えてるくらいな少し先って意味ですから、新年を祝ったらホントにすぐですよ、すぐ。12歳になるんです。前世でいえば年長ですよ、小学校の。

 

なのに、周りはガキばっかりでさー。特に今絡んできてるコイツ。廊下歩いてたらいきなり呼び止められて、奴隷にしてやるって何様?ど、奴隷?わ、わたしが奴隷にーっ?

なんて、過度なリアクションはしてあげないんだけど。

ギャグでもなく、普通に奴隷が身近にいる身としては、何言ってんだコイツ。ってジト目で見つめてやるくらいが丁度いいんじゃないかなって思うんですが。どーでしょーね?

 

いきなりの出来事(フラグ)過ぎて、まぁ、アタシじゃないよな。誰にいってるんだろーってキョロキョロ。

ま、結果アタシしか居なかったって……それ、アタシの事ぉ??なんて、二度ビックリしたんですけどね。

 

だけど、まにあってるんです。旦那の押し売りは。

顔は見たし、返事もしたし。そこには、振り向き加減にこっちを見ているブロンドの短髪少年が。変なのまた湧いたな、教室へ急ごうと一歩踏み出すと。

 

「ちょ、待てよ。光栄だろ?この、ゆくゆくはウィコット大公になるセロ様の寵愛を受けられるってんだぞ」

 

また呼び止める。始業の鐘はまだ鳴ってないけど、そうそう余裕もない。かなりイライラしてきた。

 

「……いきなり、何?───光栄ですわ、大公さま。なんて、アタシが言うとでも?」

 

素性が話の中で解った。解ってきた。ウィコット公国の小公子がコレの正体。

でも、その国って凄く北の方の帝国の国境な辺境地帯じゃなかったっけ?

 

喜んで、受けます!大公様のお誘い嬉しいー!っつー、臭い芝居みたいな承諾する女の子が居たりするの?周辺の帝国の地図を見ても、タルタよりずっと遠いのに。

タルタは十分……ドがつく田舎です!

 

なにより、……アレは殺し文句は殺し文句でも自滅の、って頭につけないとダメなやつ。貴族が貴族を誘うのに、ど、奴隷は無いよね。……無いない。

 

「そうだろ?そうに決まってる、そうじゃないといけないんだ」

 

「……だいたい、……ふつー求愛するなら。

正室の座はキミのものだ───この僕の、限り無い愛を、キミだけに、注ぎ続けるよ、枯れたとしてもずっと……と、こーゆー風にね?

女の子は常に夢見るお姫様。なんて、……言葉はしらないみたいね。未来のウィコット大公でしたっけ……その大公さまの未来が透けて見えるみたいですわっ」

 

「……演劇、か。演じるなんてことなんてするもんかよ、俺は俺だ。───俺の言葉以外、俺の口からは出ない!」

 

──断ってんだよ。誰がそんな田舎いくのって話。ティルフローズには帝都ですべき復讐だってあるのにね。

ドラマっぽく演技っぽくストーリーを持たせた台詞で答えてあげれば、受ける。と、思ったんだけどなぁ?

なんか余計にガソリン注いじゃった?

 

目の前のいいとこのボンボンかって、自分に自信しか無い少年がますます熱量をあげていく。

解せぬ。

 

黙って去ってほしい──けど、小公子をぎったんぎたんに口撃したりしちゃうとジルリットの耳に入った時が怖い。まじ、恐怖!

だから、真面目にそれとなく断ってんのに。

気付け、気付いて!タイプとか、そーゆーのまだこんな少年のどこを見ても当てはまらない、し……実際さ、上から目線の勘違いオラオラ系なんて、消えてなくなってくれないかな?と思うほどこの学園には溢れてんだよね。

それじゃなくても、好きになるはずないじゃん。ファーストインプレッション最悪……漏れ出てないかなってていどにはうげぇって雰囲気かもしてるはずで、そのつもりなんだけど?

 

「ワガママぼんぼんなのね、よーくわかった。で?正室の座も空いてないのに“人妻”を口説くその口は俺様の、俺様による、俺様のためだけの口なのよね?」

 

はやく消えて欲しい。

わりと、本気だよ?

嫌みプラスしてひとづまって強調してあげたのに……まだくいさがってくるのかー、もう!

めんどくさい、ウザいったら!

 

「正室、か。まぁな、未来が大公ともなると親同士の許嫁なんてのも居るからな、当然」

 

「寄ってくんな、お子様」

 

ええ?へっ?いきなり愛人のお誘いじゃん。

ティルフローズに妾、側室になれっていってんの?違った、奴隷と言ってたってことは、××しか目がないんだ……どーゆー教育うけてんだよ大公さまのご子息はっ!

そこそこ離れてたのに、距離を詰めてくる。トんだボール球の求愛なんて迷惑だし、気味が悪い。

今あったばかりで、もち!知らない人なんだよ?

 

「許嫁なんて、口約束だ。こうやって、会って、触れて、確かめ合って交わした契約じゃぁない。断る事は俺はしてもいいんだぜ?」

 

「や、やめろよっ……顔に触れるなっ!」

 

こ、こいつ……気安く顔を触ってきた。頬に触れやがった。

アタシも気が長い方と思ってたけど……ダメだ。小公子さま、性格的に無理、生理的に絶対ムリ!

 

頬に触った指先が唇を撫でた。その瞬間。ぞわっとした。

うぞぞって背中がわなないた。

 

さっき何て言った?会って、触れて……確かめて?って何て、何をっ?

 

許嫁を断る、それってつまり争いの種にしかならないんですけど……婚約、は親同士が決めたとか当人には拒否権が無いとかって常識も知らな……そうね。バカっぽいもん、コイツ。

それって、王子、姫を婚姻させるから親戚同士になりましたね?仲良くやりましょうって暗に言ってるんだよ。

国同士で、国全体で、そーゆー、水に流して親密になりましょーて空気なの。それを『断る』なんて、軽々しく言うなんて……救いようがないバカ殿じゃない。

こんなのが仮にも大公の跡取りなの?

ある意味、末恐ろしいわ……火種をばら蒔いて歩いてるみたい。

アタシも大概だと思うけど、婚約は蹴れないってていどは常識として自覚してるってのに。コイツは……。

 

「こっちの慎ましやかな丘なら触れてもいいのか?」

 

「女は男のオモチャじゃないぞ?……気持ちが、……はぁぅ。あ、……あのな、断ってんだ、……ろ……っあ!や、やめろぅーっぅ!」

 

───パンっ!

 

きっ、と睨みつけて嫌気がするコイツの顔をはたいていた。

 

もう、そこまでされると。されちゃうと、なぁ……マジ切れ何秒前とかじゃなく即、切れちゃうんだ。覚えとけっ!

気持ちいいとかじゃなく、気持ち悪い。吐きそう……嫌悪感、まっくす!

 

「オモチャじゃぁないんだ、お互いの心が通じ合ってからじゃないとそんなのに応じるわけないだろうがっ!

ばーか、ばーか!

だいたいなぁっ!大公だろ、婚約者いんならそっちに行ってその許嫁を可愛がってやればいいだろ?

その許嫁がお前のオモチャになってくれるならばん万歳じゃないのかっ!アタシはっ!お前に触られるのも気持ち悪いんだからっ」

 

「解ってない……。わかってないなぁっ」

 

小公子さま、まじでナルシスト。前髪をふぁさってかきあげながらアタシを見るその瞳が泥みたい。頬は朱に染まった手形が浮いていた。

この子幸せな生き方してないんだろうな、ある意味幸せなのかな?

何をアタシに見てるのか解んないけど小学生くらいの恋愛観じゃないのは確かだわ、なんか闇が見えそう。左手で髪をかきあげてからアタシを刺す尖った視線。

小公子は言葉を続ける。

 

「───嫌がる女の方が俺にとっちゃ何倍も魅力的で。傀儡みたいに大公様なんて言い続けてるような面白みの無い女になんの価値がある?───泣いて拒絶してたお前が照れ顔見せて俺の胸に収まってくれる、俺の後ろじゃなく、俺のそばで家のことなんか微塵も気にせずに何でも出来るパートナーを手に入れられたら。

どれだけ、俺の心は満たされると思うよ?言ってみろよ、透けて見えてんだろうがよ。え?帝国の姫様よ!」

 

歪んだ、歪みまくった吐露。

誰か心の清い人ー、救ってあげてよこの自滅してそうな生き物。

このバカにつける薬にはならないし、アタシじゃねー?とてもとても……。

 

これを言っているのが中学生ていどの少年。マセガキなんてレベルじゃない!

酸いも甘いも知り尽くした経験者が悟って吐きだす、そんな言葉だと思うんですが……。

誰かの入れ知恵?差し金?

 

「う、……わ。引くわ、……歪んでるよ、歪んでるね、でも……。言いたい事はなんとなーく解る。対等な男女の付き合いがしたいってわけ?

それで、虚勢はってんの……ダッサ。悪いわね?その胸予約席にアタシは着くこと無いって言い切れるんだわ」

 

「───ざっ、けんな!ふざっけんなよっ!」

 

声に怒気がこもる。熱くなる小公子さまと段々とより冷めていくアタシ。

学園の廊下に響き渡る、声変わりもまだな少年としての叫び。

心の中はぐちゃっとねじ曲がってるけど可愛い声。け、決してショタの血なんて流れてないしそんな属性がタイプとかではない……はず。

逞しくて、守ってくれて、よわっちくない人がタイプなんだ。妥協すればショタも、……いや、やっぱムリ。

友達以上には見れないな。中身が年食ってるのがわかんだね。少年は可愛い、それ以上の関心は持てなかった。

なにしろ、小公子さまはよわっちい。精神的におこちゃま。

 

これはフェミニズム。子供として『微笑ましい』戯れくらいにしか見れない。

 

「あんたの心の中は、虚勢と怯えで一杯。そこに、傀儡か奴隷じゃなきゃ入る余地ないみたいよ?くすっ」

 

笑いが我慢できない。手で口を隠しても声が漏れちゃう。聞こえたんだろうな。

 

「───ティルぅフロぉーズっ!」

 

ナルシストな小公子さまは張り付けたような嫌気を誘う笑みの姿を消して、怒りを隠せない。顔が歪む。

本音と建前、それがない。素直、と言うと良いの?これ。

 

「アタシは、そんながんじがらめは要らないのよ。間に合ってるんで、ホント……もう、勘弁してほしいくらいに」

 

いつの間にか野次馬の垣根が出来てる。って、まあ当然ていえば当然か。娯楽も乏しい世界、日常と違う、繰り返しの毎日とは違った出来事が起こるだけで興味ひくんだって話だったっけ。帝都を飛ぶドラゴンにまだ噂が尾ひれつけて漂ってるくらいだ。

 

普段静かすぎるくらいの学園の廊下でこれだけ騒いでたらね?

 

言葉に出して、気付いて俯いた。アタシ、がんじがらめだよ。

オーウェンという旦那さまは化けカエルみたいで、その長い舌で絡めとられて身動きできない。なにかもう滑ってて、抜け出られない。

 

自由恋愛を求めます!

そこは小公子さまと意見は同じだと思うんだけど、つっても歪んでて治療出来そーに思えないのだ。

 

「俺のどこが子供なんだっ?」

 

「そうやってしつこいところとかじゃぁ、ないのかな?」

 

小公子さまとは違う別の声がした。人垣の方から横やりを入れた声の主は、俯いたアタシが顔をあげて声のした方に首の上を動かして、その顔を見るとなんかいつものキラキラが影も無いアルドだった。

 

なんか、こんな真面目な空気をかもせる奴だったんだなー、アルドって。

いつもはコメディかってくらいキラっキラしてたのに、今はどこか尖って刃物みたいで。

それでもこの時、あのアルドがどこか頼もしく思えたのは……少しだけど知った仲だったからなのかな。

 

「誰だぁ……?てめぇ……」

 

大公さまの目の前でもそんな口が聞けるのかなぁ。跡取りが偉いんじゃない、それまでを積み上げてきた人たちが偉いんだ。

アルドをガンつけるようにきつく睨み付けながら、小公子さまはザコっぽい台詞を吐いた。なんか御決まりのってくらい、良く聞くフレーズで。ドスも無理矢理きかせてるけど、少年らしいソプラノの高い声じゃね?

 

「俺の友達のリズに何してるの?」

 

「あ、……?このセロ様に喧嘩売ってるってわかってその先を声にしろよ?それとも、綺麗な顔がくちゃくちゃになっちまう方がいいのかよ」

 

セロ……初耳だ。この小公子で、ソプラノ声の少年の名が解った。まあ、ウィコット公国が酷く遠いこともあるし、跡取りの名なんて地元くらいでしか有名じゃないだろ。どうして自分から『有名人だから、俺。』的なオーラを出してるんだろう。それ、ハッキリと負け犬オーラだから。負けフラグだから。

 

「セロ、……セロねぇ?下級生にいたかな。うーんと、いいかい?僕の名はアルドミッド。この顔を、この僕を、一方的にただで殴れると思ってるなら!

そこより、一歩踏み出すといい。喧嘩、買ったよ?ここは、もう……戦場だ……これ以上付きまとうならこの僕が黙ってない。

女の子を、怯えさせるなんて紳士のすることじゃぁ無いよ」

 

で、アルド。君は、何か本の読みすぎだ。ヒーロー感を作り上げようとしてスベッてるよ。もっと、言葉を選ぼうよ。それじゃ良くてB級映画の主人公じゃないか。

なにより、ここは戦場なんかにしなくていいから!

すぐ、喧嘩しようとするのはどの世界でも男の子の思慮の無さを物語ってるよ!

 

「戦場だ……?アルドミッドか。ふん……、いいや。シラケた、俺様はパス!

アルドミッド……その名、覚えたからな?次に顔見たら、……そん時が楽しみだ」

 

今にもアルドに掴み掛かろうとしていたセロからは『ドドド』か『ゴゴゴ』とでも聞こえてきそうなオラオラ系オーラがにじみ出てる。

なんか、視界にそれとなく、錯覚のように映った気がしたくらいには。一触即発っぽかった。……のに会話のキャッチボールを子供らしく交わすと少し柔らかくなった。

あれ?声から棘を感じないな?

さっきまでは殺気がビンビン感じてたのに。

 

「顔を、触るなよ。汚ないな!」

 

「へへっ……!俺のことを解ってて挑発してんの?」

 

なんか、変な空気に。え?そっちの気があ……ええっ?そっちもいけてしまうんですかぁ……!?

アルドの頬に手を触れるセロ。それをじゃれるように嫌がるアルド。

 

───うん、……単にアタシの心が真っ黒な泥で出来てるってとこが原因かも、これは仲良くしてるんであって仲直り。それ以外に他意は無い、よね?

カップリングとか受けとかそんなのに見えていたのは清らかなまなこを失っているから……重症です、病院を持ってきてください……むう。

 

「ああ、ウィコット大公だろ?少し立ち聞きしてたんだよ。悪いな」

 

「大公様にビビって無いのは褒めてやるよ。お前らが初めてだ、ティルフローズとアルドミッドか……大公と知っても俺にそんな瞳で、見てられる奴」

 

「親が、大公だろ?お前が大公様じゃぁないんだろ」

 

いや、今にも抱きつきそうなくらいに近付いてお互い見つめ合いながら口論やらかしてくれちゃってるような、たまりません!もっとやれ、もっとだ!……なんてことは不謹慎なので声には出さないんですが、正直、美少年同士が絡むとソレと結び付けてしまう悪い子です。アタシは。

───だが、後悔は無いっ!いいものを見たぞおっ!きっとこれからもたびたび思い出して妄想のタネにすると思う。それは許してくれ!

 

「アハ、アハハハハハハハっ───気に入ったよ、アルドミッド。ツレになろうぜ。ああ、もちろんティルフローズ、お前とも……その、友達になりたいんだが」

 

と、お?おおっと。

完全に不意打ちを食らいましたよ?

その流れから、こっちに飛び火してくるルートは想定外なんだ。

一瞬、時が止まった。

 

「なんだ……?ツンデレ、か?お前っ」

 

なんか変な友達?できたみたい。ソイツはオラオラ系のツンデレソプラノ少年でした。ん、おおっ?展開に付いていけてないんだが?

アタシ一人を止めて、周りの時間は止まっていなかった。そして聞こえてくる、始業の鐘の音。これが、……話に聞くザ・ワールド(自分で理解が追い付かない内にすさまじい勢いで周りのさまざまが動いていく。ぽかん、と突っ立っている状態か)

 

この、……魔法はMPを激しく削られるんだ……。

 

※注意・ぜんぜん魔法ではありません。

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