もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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アタシの屋上は、べすとぷれいすはこんなじゃない。

「んぐぐ、……これ!おいしいわ」

 

「だねー。でも実は、ソースが美味しいだけだったりして」

 

「俺も味見してやる!よこせよ」

 

「あ。なにすんのよー、じゃあこっちのデザートよこすのよね?貰うから、問答無用で」

 

「おいっ!ふっざけんなよ、ティルフローズ」

 

久しぶり、一週間ぶりくらいにユルヴェルトに誘われて屋上でランチ。でも、視線を巡らせればお邪魔虫がくっついてきてたり。

 

……なんでお前がいるかな?セロ、呼んでないよ?

 

そこ!後ろで見なかったことにしてトレーに目を戻さない!

 

「アルド、それにセロ。……学食で食べればいいじゃない、わざわざ出張かましてくれなくてもね。わたしは平和にランチをすごしてるんだから」

 

「勘違いだよ、ティルフローズ。呼ぶ、呼ばれたとかその前に。屋上でランチを食べるのが自由じゃなくなったのは、……いつから……なのかな?」

 

「いま。ここで。この瞬間から」

 

「これは手厳しいな。アルド、お前さ、邪魔だってよ。ささっと退散しろって。お!」

 

「この俺が邪魔ものじゃなく、お前だ。バカ」

 

アルドがポテトみたいな野菜を投げつけた。

喧しく騒々しい食堂を離れて静かにランチ。屋上からの目の前に広がるパノラマを眼にしながらのランチ。そんな、心安らげる時間が……。

 

食べ物は投げるものじゃないですよ、食べ物は粗末にしちゃいけません。

 

食べ物は大事に。食べ物は大地の恵みに感謝して食べなきゃいけません───て、授業もしただろ。

 

もちろん、アルドの取り巻きもアルドの後ろに陣取ってます。

 

……ふたりっきりでまったりとした、時間を過ごしながらのランチがいいのに。

ユルヴェルトだって、毎日学園にあししげく通ってるわけじゃないから、ゆっくり会えるのも貴重なのにー。

 

え、と。

この学園、毎日通わなくてもいいんです。

え?と思うのは平成の学校生活に馴れていたから。

 

毎日行くのが普通ですよね。

アタシの中でも、そうだったし。

 

だけど、ね?すこーし、異世界のこととして考えてみようか。

 

分刻みで走ってる電車やバス……そんなのがあるわけでなく、空飛ぶドラゴンがあれば某小林さんみたく瞬く間に目的地に飛んで連れていってくれちゃうかもしれないけども、見珍しいわけでドラゴンて存在が……ぶっちゃけ、使用人に送り迎えされる子女たちは出掛けられない場合もあったんだよね。

 

通っている皆の多くは馬車を利用します。

馬車も安くは無いので、そういくつも構えてないだろうし……一家に一台か、多くて二台くらい?

替えはそう効かないというのが解って貰えたと思うのでそれを踏まえて、よく考えて欲しい。

 

貴族なのだから、パンピーの乗るような乗り合い馬車や、タクシーみたいに使える辻馬車を使うか?

 

これの答えとしてはグレーな意見になるけど、特に子供たちしか乗らない状態なら使わない。

使えないの、って言った方がそれの正解になる。

 

誘拐されちゃうかも知れないし、リンチに会うかもしれないし、なにより──嫌がる。

パンピーとの同じ空気というのを、貴族……特に子供というのは。

貴族である生活が当たり前な頭がお花畑、そんなのがほとんどだったりするから、それ貴族との生活圏のことに無関心なんだよ。

 

下手をすると、貴族しか人間は“居ない”と思ってるそんなキチガイな子供も中にはいるな。確実に。

 

そんな貴族の子女たちが民衆を見てなんと思うか、思うだけならまだいいくらいで……言葉に出してしまうとどうなるか。

 

どこまでいっても温室育ち、貴族である家族の真似事しかできないのが殆ど。

思慮が、ことに人を思いやれる心が未装備なままなんだ。

 

装備してない、そう言うのがぴったりだと思う。持っているはずなのに、使っていない、と。

 

汚い、臭いよ、乗ってくるな。

思いは息でもするように、何のフィルターも通さずに口を衝く。

 

で、そんなこと言われた搾取されまくって追い立てられた生活を送っている民衆は何を思うか?うん、そうだよ。手をあげた。我慢していた拳を振り下ろしたんだって、我慢するゲージがもう振りきれそうな、いっぱいいっぱいなのに居合わせた貴族がそんなことを口走るんだから。もう、ゲージを使って暴走モード、スイッチオンっ!リンチが起こったんだってさ。

リンチされた子供?助かったかどうかは読んだ本には書いてなかったけど、馬車から投げ捨てられたていどには怒りは消えてなかったみたいだよ。パンピー、やるときゃやるよね。

 

そうなっちゃうと、その結果、行き着く先は。馬車に乗ってた全員が酷い拷問のすえに見せしめの公開処刑。

 

拷問で名前が挙げられた人間はみんな拷問のターゲットになったっていうから、苦痛から逃れるために知ってる人間の名を出してしまったりもあって、処刑されたのは馬車に入りきらない人数になっちゃったってゆー、なんだその冤罪!な、カオス展開を迎えつつ、貴族の怒りがまるっと収まるまで続いたんだとか。

口頭しか証拠がないような世界なら……実にありふれてそうな話だよ、ね?お隣のおっきな大陸とかまさに。

 

そんな歴史を経て、貴族の子供は貴族の馬車にしか乗らない、乗り合いなんかに乗せない、とまあ……臭いものに蓋じゃないんだけど、搾取される側と搾取する側とが同じ空気を吸う場面を強制的に無くしたって意味で、貴族と見て解る格好なら辻馬車は乗せなくなったんだってさ。処刑も怖いけど、リンチも怖い怖い。

 

そして、今帝国に何が起こってるか。そう、戦争の真っ最中なのだ。

 

貴族の家々は王宮との密接なやり取りの為に往復をする。と、馬車が使えない、または後回しにされて遅れる。というとこも出てくるんだって。

 

そんなこともあって、貴族の子女は商人の子たちと違って学園に通うことも難しい日があったりする。

王宮で会議でもしてるんだろうけど、町中の雰囲気からも旗色が悪いのか、それとも大きな問題でも出来たのか。

戦争の始まる前より見かける馬車がぐっと減った。商人の馬車が。これは、商人が帝都まで辿り着けない事態になってるとみた。

 

どこかで、街道封鎖。または、関所が戦争のために砦の役割かなんか重要拠点になってて門が開かれないのか。ま、そんなとこかな?

 

オーウェンがそれだけ帰ってこないってわけでアタシ的に万々歳。

……なんだけど。町の活気が元気無くなるのは寂しいんで、兵隊さんたちには頑張って貰いたいと思ってます。

 

リロメーゼもここ二日来てなくて静かだったのが、ちゃあんとアルドの後ろでぐるぐるドリル頭してる。

 

お茶会に呼ばれておいて、庭ではしゃいだのは悪かったと思ってるから十分反省してるから……あのあと、リロメーゼ本人が肩を怒らせて眼を三角に釣り上げてえらい剣幕だったっけ。

 

彼女の茶会に呼ばれておいて庭で遊んで泥か埃かで汚い姿になってた面々。アタシも含めて。

そこに、リロメーゼと他の知らない女子が騒ぎに気づいて玄関の方から現れたって感じだった。

 

めちゃくちゃ怒られて、最後、泣かれた。

 

泣いちゃったんだよ、リロメーゼったら。

 

『ひどいですわ、ひどいですわ……わたくしの誘いを受けてくれましたと思いましたのに、庭で遊んで……わたくし、このような辱しめ、う、生まれて初めてですわ。せっかく、……せっかくの……。

みんなにいい気分になって、一緒に楽しめたらと思ってのっ!うぅ……ことだったのにですわ。それを、それをっ──うっぅええー……ひぐ、ぐすっ』

 

仲間はずれにしたつもりも無いんだけど、一方的にですわですわ攻勢で押されまくったなー。

 

どーでもいいけど、みんなでいい気分に。ってワードなんかゲスく聞こえちゃうのは、アタシがそーいう風に取れちゃうような精神年齢だからなんだろうけど。際どいと思います!

 

それでも、好意をなんか汚してしまったみたいな空気。リロメーゼよりも周りの視線が痛い、痛い。

 

謝り倒すしか出来なかったので、アタシもめんどくさくなっちゃうから、平伏土下座でこれ以上ない謝罪を見せてやったら、なぜか、引かれた。

 

『ごめん。ごめんなさい!どうしても、止まらなくなって、それで。何のために。ここに来たのか。どうして。木なんかに登ろうとしてるのか。……なんか、全部、まとめて!ごめん、許して!悪気はなかった、忘れた、ら……目の前で起こってることが。全部楽しくて。ま、とにかく。これで腹の中全部言葉にしたから、隠してるもの無くしたから。許してくれるか、わからないけど。今アタシの出来る全て、出しきったからっ』

 

引くくらいなら、ですわですわ攻勢をやめれ。

 

なんかもう、支離滅裂で。思い出したら何言ってんだ?って、気がしないでもない……ま、ホントにあの時の全てをそこに出しきってやったんだけども!

 

アタシも悪いけど、遅れてきた男子連中もあれは悪かったんだ──と、その庭での顛末がまだ続いている。リロメーゼと、知らない女子とかまとめてアタシとの冷戦真っ最中。

 

いや、そんなに仲直りを別にしたいわけじゃなくてね。

 

きゃっきゃうふふな日々。は、それはいいものだけど、側室をどうにかしないとティルフローズの姉たちとの約束が果たせない。って、ゆーのがだ。あってだね……。

 

いつか、勝てると言う。

絶対、勝てると言う。

でも、根拠がわからない!

 

革命でも起きちゃうってゆーのか。

 

道が繋がってない辺境や、帝国が縁のない国なんかに嫁いでるから攻め込むって線も無くはないか?

 

セロの話でウィコット公国聞いたことあるなあるなと思ったけど、姉の一人がそこの騎士団長の息子に嫁いでたのだったり。そりゃ聞いたことも記憶にあって当然のな。

 

他にも、ライクルゾールて遠い辺境にある侯爵の家臣関係に嫁いだりとか、エストっていう地名も聞いたんだっけ?まあ、側室連中に飛ばされちゃっても、只では起きない状況を作れるとこ。を取り込んだ婚姻関係みたいなんだわ。

 

姉たちが泣くのは無駄じゃない、そう思いたいよね?ティルフローズ。

本を読んだり、人から聞いたりしてみて、感じたのはどの家もふたくせもひとくせもある感じ。今の帝国を変える力はもってなくても、それを融合させたら……連合でも出来れば革命にも成功の兆しがなくはない。

 

帝国が、もう全盛期を過ぎて腐ってるのはバグラートみたいな騎士的位置取りの家柄だと肌で感じるらしい。バグラートの父情報くらいしか明るいものがないけど、さ。

帝国の兵として、辺境から帰ったらいつも父や兄なんかがぼやいてるのを聞くっぽいんだ、地方じゃ帝国は嫌われ者とかなんとか。

それ以上の感情でもって行動を起こされることもあるって。

なんてことなんかを纏めると、今がこの国の岐路かもだよね。

 

「なーに怖い顔してんの?そんなのダメダメ。美味しいものを食べたら、美味しいって顔をしなくちゃなんだよ?

ホラ、こうやって。んまーい!ねっ?」

 

「うん、ごめん。ちょっと、家のこととか、……考え事。ははっ……」

 

ユルヴェルトに気を使わせてしまったか?

声が聞こえた方へ顔をあげる。と、さわさわと風に舞う金髪が眼に飛び込んできて、だけど───いつもの裏表ない天使スマイルがどこかで冷や汗かいてる。見ててなんか、可愛い。

 

瞳と瞳が合って思わず、舌の根にもないようーな、口からの出任せの言い訳をしゃあしゃあと吐くアタシ。

善意からのユルヴェルトの気遣いに対して、出てくる言葉がこんなのなの悪いなぁー……。

 

「旦那さん、戦争だっけ?だーいじょうぶ、鎮圧軍は大軍をいっぱい連れて出ていったんだから。きっと、勝っていつも通り。さ、そんなことは忘れて食べよ?」

 

「ん。コレ、おいしー!」

 

いやいや、旦那さん?あ、オーウェン。違うよ、なんか勘違いさせちゃったかぁ……。

 

あんなの、どーでもいいな。くたばって……は、くんないだろうけども、何か間違いが起こってくたばってくれたらそれはそれで、清々すると思うんですよ?

 

それは、魂の安らぎ。アタシも手を汚さずに居なくなってくれたら……ティルフローズ再臨ってことにもなって、アタシ自体要らなくなって入れ換わりにゆっくり眠りにつけるかも知れないっちゃ、そうなる可能性もゼロじゃない。

 

突き付けられた運命を受け止められずに、ティルフローズは存在を消したんだし、ね。

 

けど。あの、化けガエルはそんなタマじゃない。それはアタシだけが知っている。あれの、本性は誰も知らない。

 

そんなことを、腹に含みながらユルヴェルトの出してくれたフォークの先の果物を口にしての、掛け値なしの“おいしー!”の一言。

はい、あーん。的なアレですよ!

お礼の一つも自然と口から出ますよ!ユルヴェルトを見てるだけでそれは眼福、眼福なんですけども。

 

美味しいとか別にしておいしー!って出ちゃいますよ。実際、美味しいんですけどねー。

 

「や。僕らも混ぜてって言ったらここで食べさせて貰って構わないか?」

 

あれ、知らないの来た。上級生。いくつ上かな?

高校生くらいに見える、その後ろのは弟くんか、後輩かな?

アタシもこの中じゃ小さいけど、そんなアタシより小さく見える。

 

二人がいつの間にかアタシの傍まで来てたんだ。返事も待たずに。なんだ、こいつ?いや、二人だからこいつらか。

 

 

「構う。先にこっちが居るんだから別にいったら?」

 

「そう言うなよ、アルドが言ってたろ。屋上でランチを食べるのはお前が何を言ったとこで禁止は出来ないってさぁ」

 

何を言うんだ、セロ。お前は真っ先にここから回れ右してくれていいんだよ?

さっきからお前に何か話しかけられてもそれはスルーしてるの気付けって。

雑音くらいにしか思ってないしー、これが。ああ、そうなんだ、解った。

 

好意を寄せてない、外からの好意を押し付けられても気持ち悪いだけ、っていうあのなんかヒロイン的な立ち位置の人たちがフッちゃうシーンのひとこまみたいな感覚なんだって。

えーと、親愛度のパラメータがマイナス状態からのスタートなんだよねー、あんたの場合。どんまーい!

 

「ん、じゃあ。勝手にしたらいい」

 

「了承は得たよ。ここ、いいかな?」

 

「おい。なんでアタシの隣に来る?」

 

うわうわ。近い、一メートルも無い。てゆーか、人一人挟めるかどうかな距離。もう一度言っておく、はじめましてなんだ、この人たちは。知らない人がどーしてこの、“友人の座る”距離。に入り込んでくるかなぁ?

親愛度はゼロ。知らない人だからゼロね、その今あったばかりの先輩さんが何の因果なんでしょーか?

 

「いや、ロエリューが姫を一目みたいと言うんだ。だから、ここに居ると聞いてきた。ロエリュー、隠れずに挨拶したら?したかったんだろ?」

 

「……」

 

ロエリュー。知らない名前。後ろのひとまわり小さい男の子の名前なんだ、たぶん。

そのロエリューくんは人見知りなのかな?

もじもじ、うじうじしながら、リードしてくれている先輩の影からじー!という音が聞こえてきそうな視線をくれる。痛い、痛いような気がする。

 

「したくないんだったら、迷惑そうだし他に行こう」

 

「する!ロエリュー、カルナロ伯の三男。早速だけど。姫様、綺麗な髪だね……け、結婚してよ」

 

はい?

 

なんていいやがりましたか。この、ちんちくりんの、なんかこう胸がモヤモヤっとしてくる態度のちびっこはぁ?

 

 

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