もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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ロエリュー。

「ロエリュー、カルナロ伯の三男。早速だけど。姫様、綺麗な髪だね……け、結婚しよう」

 

はい?

 

「な、なんて。今、何て?」

 

あーん?何か今、心にぶっすり刺さるような事言われたような、言われてないような。

 

「姫様、あのね。ロエ、馬鹿はキライだよ?結婚、してよって言ったんだ。ロエ、本気だから」

 

このどーしてそーなった感のあるちびっこ、ロエリューを連れてきた背の高い、足の長い先輩は後で聞いた話だと名はブリーク。

騎士の出というからエグバートと似たようなもんなのかな。

 

そのせいかがっちりしている。騎士と言われても、なるほどと頷いてしまうくらいには外見が全てを語っている。そのまま、騎士の役で演劇でられるくらい鼻筋も通っていてマイナス点の付けようがないのだ。

 

そんなブリークが止めるのも構わずに、ロエリューはしたり顔でまっ黒い笑顔を浮かべる。口から出てくる言葉が、一人称が自分の名前ってゆー、このちびっこの電波ぶりを教えてくれているようなもん。

 

あんねー、馬鹿はどっち?

 

「……あたぁ……。わたし、人妻。ひ・と・づ・ま。おーけい?」

思わず、空いている手で瞳を覆う。うわぁ、細い雲が蒼い空にいっぱい。天を見上げ、ため息ひとつ。

 

「あんな奴、姫様にはふさわしくない……ロエが姫様を大切にする。約束する」

 

見てきたように言うなぁ?

実際、どっかで会ったことあるのかも。オーウェンと、ロエリューは。

 

「ち、……違うんだよなぁー。大切とか、幸せとか。

今のわたしには、そんなのは、全然っ、いちぱーせんとだって、枷になってなんて無いの。わたしが、どう思うと思うまいと。それはディボタルタの公爵がどう思うか。って、ことが大事なのよ?解る?」

 

ふさわしいからお嫁においでよって、それは貴族としてはどうなんだろーね。ジルリットに調教……もとい、脳ミソに詰め込まれた貴族としての心構えと照らせば、ロエリューはダメ貴族のレッテルを張られるような行いを今、してんだが。どーしたもんかな。

 

大事なのは、家と家との繋がり。縁戚があるのとないのとで発言力がうんたらかんたら。上位の爵位がある家とのパイプであることが大切。また、逆もしかり。そういうことなんだってさ。婚姻にひつようなのは高貴な血と、権力と。

甘酸っぱい気持ちなんかは、婚姻の手前でストップさせるもんだから必要ないものだから、うんたらかんたら。秘めた想いなんかは姫や、上位貴族に生まれた時点で欠陥品のバグでしかない、ってことなんだろーね。

 

よく、理解してないことだけどさ。

だって、もうオーウェンのもの。そう、でしょ?

 

「お、おい」

 

「セロ、黙ってて」

 

こんな時に横やりを入れる能無しがいる。公国のお花畑小公子、セロ。

 

アルドとか、リロメーゼとか、その他の子達も見守るに徹してるのに、面倒をかけてくれるったら!ったく!

 

「ちっ!可愛げねーよ、ティルフローズ。そこは嘘でも嬉しい。が先だろう?このチビが渾身の勇気で告白してんだぜ。ふるにしたって綺麗じゃねえんじゃねえか」

 

「……黙れ」

 

セロはそういうけど、だけど。

叶わない恋に期待を持たせるような、嬉しい。なんて言葉は今、口にしちゃダメなんじゃないの?

 

渾身の勇気が何よ?そのせいで大変なことになるって、セロには言葉で教えたはずなんだけどなぁ……のれんに腕押しって、こんなでごたえの無い空気を感じて思うんだろうねーあーあ!

 

口に出して反論しても、さらにカオスな空気になりそ……。

 

「姫様?ご無理してるんじゃない?ロエなら姫様に無理なことなんてさせない。させたりしない」

 

「は……婚約を……」

 

ああ、ロエリュー。違う、違うよ。

ちびっこが無理してシリアスな顔しないでよ。可愛くなんて無いぞ。

 

「ん?」

 

「お、王家と……貴族の婚姻は正統な政治策なのよ?当人が不幸?ねえ、セロ」

 

落ち着いて場を収拾しよう、アタシに取り持てるか心配だけど。

まずはぱーちくりんなセロから。

じろっとセロの瞳を睨んで。まっすぐ射抜くように。見詰める。

 

「ふさわしくない……?えっと、ロエリューって言ったんだっけ」

 

次はロエリューに向き直る。ポジティブもここまでになると歩く迷惑なんですけどね。

 

単にポジティブなのを責めるつもりはなくて、悪くは無いレベルで済んでるならって言葉が後につくんだけども。

 

「そう、ロエリューは守って見せる」

 

「うん、それはいいんだ。利用される政治の道具なの、貴族の婚姻なんて全部そう。だから、そこで重きを措かれるのは好意や意思なんかじゃない。そんなの部屋の棚にでも飾って埃かぶってるわ」

 

「公爵が倒れたら……?」

 

「そんなの、解消されるに決まってる。次の嫁ぎ先のために帰されるんじゃない?」

 

「ロエが、ロエなら出来る。公爵から……」

 

 

セロは黙って、言葉が出てこないみたいだった。

ロエリューは……自己中なんだ、きっと。解ってくれないんじゃなくて解ろうとしないとゆーか。困ったちゃんだ、これ。

 

オーウェンは魔法がうんたらかんたらで無意識レベルに防御魔法が発動させてて何も感じない、的なそれは全く理解できない存在だ。そのせいで大変な目に合ってるのがアタシなんだし!

 

殺しても、死にそうにないんだけど。やるだけムダな気がしないでもない。このちびっこにチート能力でもあるなら別な話。

 

「はいはーい。それくらいにしとこうよ?ランチ、冷めちゃったら作ってくれた料理人に悪いでしょ。美味しくいただこうよ♪」

 

熱くなったアタシを止めてくれたのは、場をクールダウンさせてくれたのは、空気を緩めてくれたのは天使の100%スマイル。

 

「……ユルヴェルト──」

 

 

 

 

「……み、見直しましたわ。あなたのこと……。貴族の生きざまを見せられた気がしましたわ」

 

ランチは、ロエリューという乱入者に空気をザクザク切り裂かれて、美味しいはずのせっかくの料理がただ腹を満たすだけの食糧になっちゃうってゆー場面もありつつ。今は、授業課程を終えて玄関に向かう途上の廊下。

 

あれー……おっかしいな?冷戦状態で、ランチ前の食堂では視線すらスルーしたリロメーゼの口からそんな言葉を聞くなんてさ。

 

雪、は降るかも知れないけど雪どころか槍なんて、それに雷も落ちてきちゃったりしないか?

 

見直されちゃったらしい。……ロエリューを論破したあれのことなんだろうけどさ。

ぶっちゃけ、あんなのジルリットの押し付け、突き上げ、スパルタ教育なんですって!

 

「リロメーゼ。……もしか、惚れたとか?」

 

「それはないですわ!冗談でも口にしないで下さいまし」

 

茶化してみたら、ヒステリーが顔を出してきました。眉がぎゅんってつり上がっちゃったよ、リロメーゼったら。

 

マジボケなリアクションいただきましたー!

 

でもさ、頬赤らめて潤んだ瞳で見詰めるって……それって何のラブコメ展開、って……思うじゃんね?

 

「解ってる解ってる。拗ねないでよ、話し掛けてくれてありがとね」

 

場面も変わって……って言っても廊下のすぐ下、中庭の、なんだろなここ。

屋根付き休憩所な建物っていうとわかり易いかな。公園の東やというか。テーブルにベンチにと、ランチをここで過ごす生徒もいそうな雰囲気は仕様です。ありがちだよね。

 

外見の造りは白塗りのチャペルのちっこいのみたいなので、備え付けのテーブルもベンチもさ、やっぱり白塗りで。

 

あのまま、廊下で話し込むのはマズイていどには周囲の耳を目を気にする話らしくって、ここに言われるままリロメーゼに付いて来て、ベンチに二人並ぶように座って。

テーブルに身を乗り出しアタシ。って、とこで。今ココ。

 

話あるんじゃないの、なーに拗ねてんだか?

 

「その……仲直り、……してもいいですわよ?ティルフローズ、あなたのこと、もっとよくしりたいのですわ!

うすうすは……。わたくしの想いなど無視をして見識のない殿方に嫁ぐこと。承知はしているのですわ、でも。……それはまるで色の無い世界を歩いているようなことではなくて?」

 

「詩人になったのかな?リロメーゼは。色の無い世界、ねー。どうかな、目的や道しるべがわたしにはあるからなー。世界が色を失ってしまったっつー童話ていどの体験は無いんだけど。生きている意味とか、生きざまとか人それぞれにあるもんだからさ。……ふさわしくない、不幸だ、リア充爆発しろ〜なんて、考えない。わたしはわたしでしかなくて、リロメーゼだって、そう。リロメーゼだということが全て。でしょう?」

 

ぐっは。恋ばなかよー。なんか、そんなのが珍しいくらいにアタシって冷めてるからなー。ジルリットの教育の賜物ですね、解ります。

 

貴族としての生きざまを見た!とか言っといて、持ってくる相談はその貴族的恋愛を否定したいのに、否定できないってことか、そーか、解った。

 

そんなのが幻想だって……調教、もとい教育したげますからねー。覚悟しいや、リロメーゼ!

 

「半分も、いっている意味がわかりませんわ。でも、それではわたくしの運命は変えられないのではなくて?」

 

「うん。つまりはそーなるね。親とかそのずっと上、政をやって帝国を回してく人達の駒なんだもん。姫や、令嬢なんてのは」

「駒に、されるしかないんですのね……」

 

姫や、令嬢。貴族に生まれた女子の行き着く先は子を宿すのを否定しない限りはただの政治の駒なんだってさ。

 

否定して女騎士として生きるのもいい、だけど、恋愛をしていざ結婚となったら家名が邪魔をする。帝国を離れるか、家族一門をすっぱり捨てるか、それとも駒に戻るか。

 

貴族という家名をもって、自由恋愛は無いんだゾ。どうする?

 

例外として、子爵同士とか男爵とかその辺はパンピーとも結婚したりすることもあるっぽいんだけど。軍人同士の結婚もあるにはあるらしいし、戦爵と戦爵で。

 

それと、リロメーゼが抱える問題は別なのであえてリロメーゼには伝えないでおこうか。

 

彼女って確か伯爵だから、ワンチャンないよね。上位の爵位の繋がりを深める道具ケテーイだもん。そんなの……。

 

「政治をうまーく動かしてく潤滑油みたいなもんだから。そこは諦めよ?」

 

「あ、……やだぁ。わ、わたくし……ひぐ、アルド以外のものになるなんて……ぐすっ」

 

泣きやがった。あと、何となくそうかーな。そうっぽいよなー。いやいや、どうみても100%そうとしか見てなかったけどさー。

 

やっぱりだ。アルドのことホの字なんじゃないか、リロメーゼってば。

 

それと、ものになるって、……リロメーゼの倫理観の教育係は何を教えてるんだか?

 

「泣いてどうにかなるの。なら、泣けばいいし。そうじゃないと思うなら、行動あるのみ。じゃない?」

 

「うぅぅぅ……。そんなの、ぐすっ。無理なのでしょう?……ぅくっ」

 

泣き顔をわざわざ見る、そんな趣味はないつもりなんだが。隣でさめざめ泣いているリロメーゼをほっては置けないのも事実。

 

仕方無く、リロメーゼを向き直らせて見詰め合う。ときたま、肩を揺すった。熱っぽく語って刷り込むように教えてあげる。

 

当初の目的とは道筋が曲がったってもんじゃないけど。仕方無いんだ。

女の子の涙には弱いんだよ。なんか母性を擽られる気がしなくはない。若くないなぁ……。

頬を伝い落ちていく熱の粒を見たら、ほっとけないなぁって思っちゃうじゃないかぁ!

 

「アルドのお父さん、じゃなかったら……。そう、後見人とか。そんなのに気に入られたら、ぐちゃぐちゃ言わなくてもくっつけられるんじゃないのー?」

 

「はぁっ!……そうですわ。……それなら、……うん!間違いない……きっと。……むふふふふ」

 

なんでリロメーゼの恋ばななんかに付き合ってやってるんだろうか。

終わった後、物凄くムダな時間を過ごしたような気がしてきた。

 

でも、妙に必死で、普段は尖っている棘がすっかり萎れきってて刺さってこないリロメーゼに悪意は感じられなくて長々と語り合ってしまった。

 

まだ、気が早いとは思うんだけど。応援したげてもいいかな。なんて、思ったり。

 

「聞いてたよ。ティルフローズ、つまり。ロエが、皇帝に破談申し込みをすれば受けてくれる。そうなるよね?」

 

そんな感傷にひたる暇も与えてくれない、空気を読めない、読まないどーしてそーなった感びしばしなちびっこが。

 

リロメーゼが気合い充填完了!な満足度満点の引き締まった微笑みを湛えてこの場を離れていった中庭に、じゃじゃーんと現れた。

 

盗み聞きはよくないゾ!

 

「……はぁ、またか。ちびっこ、破談ねー?そんなのが起こるならやってみたらいい。オーウェンはしつこいから。泣くなよ、ちびっこ」

 

それが叶うなら、アタシもリズも。胸に刺さった杭みたいな邪魔ななにかが、綺麗さっぱりきえてくれるんだけどねー。

 

「ちびっこじゃない。名はロエリュー、覚えてよ!」

 

覚えてないわけないんだけども、ロエリュー。君のその態度が。ちびっこと思わせるんだゾ。

 

どうみてもちびっこです!男が頬をぷくっと膨らませて抗議してくるって。それはどうなの?

 

「はいはい。あがくだけ足掻けばー?構わないよ、ロエリュー」

 

 

「やくそくっ」

 

このちびっこしつこい。やくそくって言うから頷いたけども……何を仕掛ける?あ、……つーか……どーしてアタシなんだろ?

アタシ、あのロエリューって子に何かしたんだっけ。してない、うん。してない。

 

 

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