もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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それは著作権の微妙な壁があるんで……やめてもらえませんか。

この世界一般でもっとも標準?な写実的な絵と、それほどね、書き方が違う訳じゃないけど……ポイントは大きく違うんだよ。

 

見たままを紙の上に書くんじゃなくて、よりインパクトある絵にしたのが、アニメや漫画の画風だと思うから。

 

後はそうだなー……線が細いとか、髪の毛は細部まで拘らずにそれっぽく書けばいいとか。

 

「顔から、こうして、こうやって。ほら、こうすれば描きやすいと思わない?」

丸を書いて下書き。そこから頬に見えるように線をとって、顔のパーツ、目や鼻や口を配置していく。バランス良く。んー!

 

髪は全部線を引いて、一本一本書くんじゃなくて適度に髪の束に見えるように、そう。基本に忠実に。

 

「やってみる」

 

……そう、教えたのになー。

 

って、……ゆーかさ。

違和感あるなー、これ。違和感あるなー、これ。

 

 

隣に人がいて、で熱い視線が送られてる、そんな落書きって……なんなの?

 

そもそも、アタシ、プロでもアマですら無いもの。

 

人に教えていいレベルだとは思わないし、うーん、贔屓目に見ても……やっぱ落書きで終わってるレベル。

他人に見せて、

 

『見てみてー面白くないー?え、ダメかなー、やだーもー!』

 

……なんて、茶番を披露するようなレベルでもぜんっぜんないんだよ?

 

「……どうだろう」

 

少しして、キャタリンの力無い声と供にスッと差し出されたそれを見てみると、ノートの上に書き込まれた丸の羅列。出来上がったキャタリンの絵は、

 

「……はぁ、」

 

子供の落書きか棒人間だった。

 

「んー、まあ最初はみんなこんなもんかー。でもなー、もにょもにょ……。それに。……全身書いてみよう。とかは、言ってないよー?それはまだキャタリンにはレベル高い。と、思うんだけどな」

 

もにょったとこははっきり悪口になりそうだったんで、『教えたのにその通り出来ないかー』とは口に出すのを躊躇ったわけ。

 

「パーツは難しいよー。こうやって書くのがキャタリンは慣れてる……これじゃダメ……?」

 

キャタリンが、アタシの言ったままそれで全部こなしちゃったらそれは、天才ってゆーことになっちゃうか。

失敗の積み重ねが人間には大切。つーことは、字面的にはわかってんだけどさー。理解してるつもり。でも、棒人間はないじゃんね?

せめて、この丸の羅列から先に、一歩、踏み出してくんないと!……教え甲斐が無くない?

今のキャタリンのノートには無いもの、そこにはあると思うの。努力の証明ってゆーのが、さ。

 

つーか、顔だけ書いてみようと言ったのに棒人間は全身だよね?それって間違ってない?

 

「ダメってゆーか……。ダメかなー、やっぱ。

ほら、アタシの見て?ちゃんと人間っぽく書けてるでしょ?……じゃ、こっち。キャタリンのは丸と線で、ぽく無いよーに見えない?」

 

「……うん」

 

「あー……モデルが無いからダメだったりしちゃう、かな?

それじゃあ、アタシ。どうかな……描いてみよっか。キャタリン、出来る?」

 

もっと、見たままを書いてみようか。例えば……アタシはどうかな?そういって顎の下に右手を添えて、そのまま机にしなだれかかるポーズを取ってみた。

 

何を血迷ってんだか、って後から思い出すと顔がボンっ!と噴き出して真っ赤になる、そんな行動も。熱が回って熱くなってると悠々と出来ちゃうもん。

何?名付けて、ランナーズハイじゃないとこの、モデルハイ?みたいな?

 

彼女、キャタリンはそんなアタシに視線が釘付けのまま、ノートの上にモデルになったアタシを描きあげていく。ガリガリと。そして、少しして出来たと軽く息を吐いてノートを手に取りアタシの目の前に差し出した。

ノートに描かれたアタシは見事なまでにガリガリの棒人間だったのは言うまでも無いけど。

 

その早すぎる書き上げと、ノートを見てないんだからまともな絵は期待出来ないのは当然だったんだけど。

 

彼女のノートの上に書きなぐられて表れた棒人間は妙にリアルで、今にも動き出しそうなえも言われない怖さの中に美を持っていた。

 

某小林画伯の書きなぐったあの絵に似た狂気が、そこにはどこか近いものがあったかな。

 

──そんなアタシとキャタリンを見てたんだよ、バグラートが。

 

で、取り上げるよね、間違いなく。そして、広まってくんだ……アタシの大傑作になるはずのオーウェン桃太郎verが。キャタリンの描いた棒人間にもフォロワーがちゃんとついて。

 

「なあ、ティルフローズ。これ続き読ませてくれよ、いいだろ?吟遊詩人の英雄譚は字ばっかで小難しくて。最初から俺らに読ませるつもりないんだよ。その分、ティルフローズの絵付きなら先が気になる、読みたくなるんだよな」

 

「……善処するよ」

 

次回作をすぐにねだられるようになる。

 

いや、まあアタシとしてもやっぱり?誉められて伸びる子ですからアタシ!

誉められたら、麻薬みたいに感覚が麻痺してって。

 

嬉しいって感情、しか無くなっちゃうよねー。

 

キャタリンの方も、あの絵がマッチしたんだろーね。

パトロンじゃないけど熱烈なファンがついてて、授業の合間に猛然と狂気を書きつけてる。お昼にデザートを食堂で手に入れた、男女問わずのファンから食べきれないデザートを貰ってたりね。

 

そんなのがあって、ますます嬉々として、狂気を書いてるよね。

銀色した前髪の隙間から瞳が爛々と輝いてて恐怖。作品制作で熱中してる最中は、ときどき真っ赤に見える気もする不思議な瞳してる。

それはともかく、アタシのアドバイスが良かったはずで、絵は少しずつ成長は見えるけど。……ぴったりくるのは狂気だ、やっぱり。

 

絶望的な個性的な画風だからどの作品も魂の入ったグロ……おっと、素敵な絵ばかりだよ、……う、うん!

 

今、クラスを見回して改めて思う。アタシのフォロワー増殖の様を。

しっかし、お前ら、ほんとに娯楽に飢えてんのな。

 

娯楽になるものってゆーと、大人ならオペラとか、吟遊詩人の読み語りとかあるってのはなんとなく知ってる。

このクラスの内、何人がオペラを娯楽と感じれるか?あー、そーかそーだねー。

吟遊詩人の読み語りは、あの余計な部分もあって子供受けはしない、と。

あれは酒場で酔っぱらいがBGMに聞きながら一杯やってる絵がマッチしてる、なんと無く。

 

つーても、紙芝居みたいのは存在してないんだろーか。ここ、帝都だよ?帝国はあちこちの文化を吸収成長中なんじゃないの?

帝国に無くたって周りにあったり、しないの?

 

 

 

こんなことにも娯楽を感じられるなんて……絵本レベルだからな、桃太郎なんて。

 

そう考えたアタシは、某少年週刊誌のアレ、をインスパイアしちゃった、なんちゃってオマージュな作品、をガリガリと書き上げることになる。桃太郎オーウェンはそこそこウケた、ので悪乗りってね。

こんなのもあるよ、もろ、こっちのが好みなんじゃないのー?てな、風に。

もちろん、……無印の方だよ。色々なアルファベットが後に続く方は単純な読み物じゃなくてあのアクション描写あってのものだしね、アタシにアクション丸投げはまず無理よ。落書きをする程度の読み専に膨大な書きこみは出来ません!

 

だから、せいぜい大魔王とバトルまでくらいが丁度いい。娯楽になる読み物としては、さ。

 

そんな慎ましく、忙しない学園生活を送っていたある日。事件は起こったんだよ。

 

切っ掛けはバグラート。またお前か。

ほんとマイウェイを地で突き進む奴だよ。

 

「ティルフローズさ、……いえお姫様、あの……しっぽはどうなってますか?続きが気になる、あのその……終わり方をしてましたから」

 

ほんとにね。アタシの書いた痛快娯楽読み物……大魔王とバトルするしっぽ少年みたいなの、は学年、クラスを問わずに広まった。

アタシが話したこともない、関わりのない、隣のクラスの誰かにもこんな感じで催促をされたりするまでになってるのは正気を疑うレベル。

 

「……姫様、姫様って。姫様がこんなに燃え尽きてるとこ見たことがある。そういうのなら、アタシは姫様なんでしょーね……」

 

ただ一人のアニメ絵の伝導者はツラいわー。授業を当社比2倍のアーマリア先生の監視の目の中、書けるものじゃないし、合間に書いてるわけなの。えーと、屋敷ではちょっと書けない訳もあってアタシは一杯一杯なんですって。

 

異世界のマンガ熱は急速に跳ね上がって行ってて。

 

なんなら、写しまであちこちでされているとか。

印刷所に持ち込まれるのも時間の問題か?なんて。

でもそれは、ちょっと待って貰えませんか?著作権の微妙な壁があるんで、やめて貰えませんか。

アタシが書き上げたストーリーでも無いんです。巨匠の書いた人気作品のオマージュなんで、一応。

だから、学園内で止めといてくれないかなぁ……。

 

「てゆーか、日常がファンタジーだしー」

 

そもそも……この世界、宇宙から降ってくる隕石なんて一部では当たり前なふつーな事で珍しくもないでしょ。どこかの城が魔法の隕石でこっぱ微塵みたいなのがチラホラあるって、そう聞いたけど?

さすが、ファンタジー!

 

──なら、星の外にも世界があるくらいに創造力働いてもいいものなんだけど?

だったら、さー。宇宙から宇宙船が降ってくるくらいのエピソードもぴんとくるじゃない?それくらい思い付くよね。

 

 

 

 

 

──って、そー言えばそんなお話を思いついて本にする、小説家ですらいないんだったこの世界。

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