もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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うへへ、アタシは怪しい本ですよー、触っちゃやーよーってね。

単なる?小説家ですらいないんだったこの世界。

それは仕方無いかなー、用は平和じゃない。からだもん。

一人が一冊、一家に一冊みたいな売り方は成立出来てないんだよなー、当然だけど。

 

本は一般市民なら図書院か図書館に行って読むもの、身分がちゃんとしてれば借りて持ち帰ることも出来るのは、ちゃんと地球的だと感心しちゃった。

じゃあ、貴族は?

書店で買う。帝都には書店あるんだよね、ものすごくアレだったんだけど。

書店てゆーより、宝飾店……ブランドショップの類いに入ってていいんじゃないかってくらい敷居が高いんだわ、帝都の書店って。違うな、書店てものが。かな?

 

桐の箱から出てくるじゃないけど、一冊一冊、布にくるまれて店主が大事そうに抱えて持ってくるのが書店でのセオリー。

一冊で借金の担保になっちゃうくらいだってゆー代物なのよ。

 

書店が取扱うのは大抵、人気な英雄譚とかー、オペラとかやっちゃうよーな名の通った吟遊詩人の詩集……ポエムってやつ。印刷技術が爆発的に発展して少しずつ安価になってて小金持ち相手にも商売できるかな、ってレベルみたいなんだよね。

本の需要、もっとあっていいと思うっちゃ思う、うん。だけど、そんな商売形態してる書店のブランド気質がそれを結構邪魔してるのも事実っていうね。

 

読み物を書くというか、創るのはバード、吟遊詩人たち。

 

で、彼ら彼女たちは読み物を書くのは歌うための詩のために書くんだから、小説家なんて思い付かないのかも知れない。

むしろ、道に落ちた枯れ木、雄大に流れる川、風の音や流れる雲の形、木々のざわめきに、月の満ち欠けまで見たもの全てからインスピレーションを受けて歌を創るんだから、謳われる歌の世界がそのまま小説って言えるのかも?

 

なにより、森の中でモンスターが棲んでるの確定しちゃってて、ドラゴンが飛んでたり、魔王っていう絶対必要な存在が居たりする、ゲームみたいな毎日がすぐそばに、手が届く範囲にあって。

小説より面白い世界が日々広がってるんだから、体験談を文にするだけでベストセラーのはい、出来上がり。

 

なんて、そんなに簡単なことだったりするんだから、TVや映画でも作らないかぎりは、ホールやオペラに吟遊詩人の歌う詩や世界叙節を見たり、聞きに行ったりする方がメジャーなのかな、なんて。

 

そして、そんなオペラに足しげく通うのは大人な紳士淑女。

つまり、学園に通うような年代にはすっぽり空いているというわけだ。

 

その、夢中になる娯楽てきなのが。

 

日々、意中のキャラに恋焦がれて悶々したりするってことは、彼ら彼女らには想像することもなかったりするってわけ。今のままだと。

 

かと行って、リア充ってわけでも無かったりするからそこそこに、フラストレーションをたぁっぷり!抱えている誰も彼もあっちもこっちも。

そんなだから、この世代向けに娯楽になる確固としたものが必要なんだね?

 

そんな結論に行き着いちゃったんだ。クラスの男子女子を一通り眺めてると、ね。

 

だから、アタシはこう思った。

思い付いた妄想や、好きだったアニメなんかを思い出したら書き留めることにしようっと。

 

アタシの中には膨大な物語りが棲んでいる。あれもこれもアニメにもドラマにもなってて知ってる。

人はそれをパクリというけど、アタシはそこに見返りを求めてない……は、違うか。ちやほやしてくれるのが嬉しいからやってる感あるな、うん。

 

この地球を遠く離れた、どんなに手を伸ばしても届かない異世界でそのベストセラー群を知っているのはこのアタシ、ティルフローズだけのはずだもん。

パクリって気づく?ないない、誰もそれに気づくわけないよー。もー、勝ったながはは!

しばらくは、ちやほやが向こうからやってきてくれるって訳じゃん。やったね、いぇい!

 

で、肝心の事件はなにかって?それは、えーと。あのね、本に吸い込まれたってことなだけだよ。

 

 

 

 

そう、本に。本の中に。

 

 

╋╋╋╋╋╋╋╋

 

 

 

それは図書授業という、聞き慣れない移動教室中の出来事。

 

じゃじゃーん!最近、見えない流れに乗せられてる感バリバリのアタシこと、ティルフローズです。

今日は隣のクラスも連れて移動教室です。アルトの姿もありますね、リロメーゼもやっぱりぴったりくっついてます。

 

ここで、何をするかって言うとですね。貴族の子女にだけ見せる特別な書物があるっていうんですよ。

 

商人の子や、血が入ってない貴族の子女──成り上がりには見せていない貴重品を選ばれた子女にだけって……単なるえこひいきってやつじゃない?

 

──何を言ったとこで伝統がそうそう曲げられることは無いからね、仕方ないね。

商人の子や成り上がり貴族にあるのは、これ。お金、てことは伝統を無視するって事になっちゃうと極論に例えるけど、制服厳守、髪型厳守の学校に私服でばっちりパーマ当てても……お金払えば登校してもいいですよ!ってことになるのと同じことになる。極論だけどね、アタシ的にこの二つは全く同じ、そう思うなー。

 

て、ことでクラスの多くの子がお留守番なことに。

 

場面は急速に進んで図書室の奥、螺旋階段で降りた先──深層。

ダンジョン突入ですか?

 

いわざるをえない。特に用事がないと使ってない雰囲気びんびんしてる。カビ臭いし、壁はところどころ青い苔が生えてたりする。

 

うえぇ、潔癖じゃないけど地球を生きたアタシには辛いものがある。ゲームじゃ知ってるけど、カビや苔を触ったこともなかったんだよ……それがこの、図書室の奥、地下室深層の螺旋階段で嫌ということで避けられない状況をいきなり突き着けられたんだから、たまったもんじゃないよ。

そう、ティルフローズはぺったん靴を持ってないんだよ、パンプスともゆーね。

 

だから、こんな状況でも履いてる靴には踵にヒール高がある。……今、アタシ、切実に欲しいものがあるんだ。解る?わかるよねー、そう、スニーカーが欲しい。ジョギングシューズでもいい。欲しくて堪らない。……だけど!その欲求はぐぐっと飲み込まないとダメだったんだよ、多分、……俺様何様のサタンを呼んじゃうから──当然、スニーカーは手に入らないじゃん?じゃあ、呼んだら呼んだでサタンは邪魔なだけでしょー?

 

壁にどうしても手をつかないと、バランスをとれない場面はけっこうあってね?

苔も、カビもよくわかんない染みなんかも全部触ることになって、さ。

 

みんな想像してみて?真ん中、吹き抜け。おまけに底は見えなくて暗い。さらに壁沿いを螺旋階段だけが通っててもちろん?手摺は無い。

 

ま、ね。落ちても、最悪レスキューは入るだろーけどね。

そこが地球とは違って、魔法があるから安心だって、思うしかない。落ちたら?と考えないようにして、こんな恐怖体験だってなんとかついてけるとこだったりする。

 

つーか、静かなの。とっても。……静か過ぎる。安心な魔法がとか言っても落ちたくは無いからね、皆必死に足許を気にしながら歩いてるんだもん。

 

某イギリスの魔法少年みたいに空を飛べたら、って思うけど、その授業はまだして貰ってなくてね。望みは打ち砕かれた……と、そんな手探りの行進。

 

誰も軽口なんての叩けなくて当然だよねー。

靴の裏が石を叩くカツカツって音だけがBGMみたいに。

 

「…………」

 

誰も喋んないのにアタシだけが喋るってないから、ますます暗い底が気になっちゃうんだ。

歩く以外にすることが無いのに、まるで地の底に引きずり込まれてるみたいな螺旋階段でしょ、これで気にならないわけない!そうじゃない?

 

覗き込んでもそこはやっぱり真っ暗な空間って感じ。

 

ぐるぐると終わりの来ない階段を進む。途中途中で隣のクラスの担当、ジュラルタン先生やアーマリア先生が使うライトの魔法が照らしてくれる。

結構、大人数な行列がぞろぞろなんでジュエルの中にライトの魔法が仕込んである。

ちょっと高級な懐中電灯みたいな?

 

しばらく辛気臭いその場の空気に耐えながら降りていくと、遂に違う景色が見えてきた。

 

「あの扉の先は貴重な魔書を仕舞ってある場所になる。どれだけ貴重かと言うと……今代の皇帝もその目にする事はそう無いってものだ。ま、まず皇帝は魔書なんてのを気にはしないだろうと思うがな」

 

そう言いながらジュラルタン先生が指差す先には確かに重々しい、とてもそれっぽい扉が存在していたんだ。

そのものから威圧感漂う扉が。

 

扉の先へ行かなきゃなんないって思うだけでごくりっと思わず唾を飲み込んじゃったくらいに、只者じゃない雰囲気!を発してて近寄っちゃダメ!な空気が漂ってくる。これ自体、魔物って線も無くはないって頭を過った。

 

──なんの事はない、ただの年期の入った扉だったんだけどね。一般的じゃないなって思うのは石で作られてる扉ってこと。ますます、何かの遺跡突入ですか?

 

魔書が出てくる前にモンスター出てきそう。

 

扉を潜ったアタシが真っ先に頭に思い浮かんだ言葉がそれだったのね。

なんつーか、岩肌に書物が刺さる空間が空いている、掘られているって感じの空間だった。

広さは体育館か講堂くらい?

ま、そこそこの広さのある空間が中には広がってたってわけ。どうみても、ダンジョンだよこれー!

 

不思議なのは、別にライトを発動させてるわけでもないのに、うっすら明るい部屋だったってこと。扉の向こうに広がってた空間を奥に進むと、その部屋はあった。

「やっと、着いたな」

 

ジュラルタン先生が一息ついて吐き出した、その言葉で周囲に張り詰めていた緊張の糸がぷつっと千切れる。

「うっわ。すっげぇー!俺こんなとこ初めて!これってダンジョンってゆーの?なぁなぁ?」

 

「つっかれたー!なんで誰も一言も喋らないんですの!息がつまるってこういう事ですのね!」

 

「何あの階段。また帰りあれ上るの?うちの魔術師を派遣してくれないかな。僕にはどうも耐えられなくてね、いや怖くはないんだよ。決して怖くはない」

 

聞こえてくるクラスの子たちの声は様々で、口々にほんと勝手なこと言ってる。

キャシャリン、居残りで来てないから仲良いってゆーか話したことある、聞き慣れてる声ってのはリロメーゼと、あとアルト、それにバグラートくらい、かな?

 

まあ、好奇心すら恐怖に押し潰されてたってことなんじゃね?

 

「わー……すごい──!」

 

アタシなんかジュラルタン先生──あ、説明まだだったけどアルトのクラスの担当、受け持ち。魔術師のヒョロさがイメージとしてあるけど、この先生からは傭兵的な雰囲気すら醸し出されてる。

 

片手でアタシとか、リロメーゼくらいの少女ならひょいと持ち上げられちゃいそうよ、でもマッチョて次元じゃなくてー必要な筋肉が必要なだけついてる姿って感じの。

 

イケメン?その部分は好みだよねー、アタシは守られてるー!ってだけの女子じゃ終わらないから!こーゆー手合いはちょっち違うかなー、て思うけど。え?違う?何の話してんのって?

あー、あー!顔。ね?

顔ね、顔かぁー……あるね、凄みが。ああ、夢に見そーう!きゃー!ってくらいに。頬にばってん傷あるし。イケメン……スゴメンかな?うん、そーゆーことにしとこ?

 

ジュラルタン先生の顔は、スゴメン!

 

「なんだ?顔になんかついてるのか?」

 

「いーえー!そんなことないですー」

 

そんなやり取りがあってジュラルタン先生と初絡みをしてたとこ。

もうこの頃には手遅れだったんだよね、多分。

気づかない内に巻き込まれてた。気付いた時にはもう、事件は起こっていたんだ。

 

うん、アタシを含めてクラスの何人かとアルトの取り巻きと、アーマリア先生にアルトのクラスの先生だっけ?

スゴメン先生ってゆーの。

そう、本に。

 

ふるーい魔書を開いたみたいなんだ。

 

バグラートなんかが、悪ふざけをした、とそういうことだったんだと思うよ、やりかねないもんあいつ。

 

お前は小学生か、そうだ小学生か……じゃあ、小学生は小学生でも低学年かってね。

 

見てた子の話じゃお札がびらびら張り付いた、でも不思議と埃の一欠片も着いてない、そんな怪しい雰囲気バリバリな感じのする本だったんだってゆー話。

 

アタシに言わせて貰うと、それって本自体が語ってるじゃん。

 

ネタバレしてくれてんじゃん。

 

うへへ、アタシは怪しい本ですよー、触っちゃやーよーってね。

 

それをあんたは……バグラートっ!

……って、今さら怒ってもしょうがないか。

 

そうです。ティルフローズ11才、ここで異世界での一生を過ごすことに。なるかも知れません……

 

 

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