もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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昔の映画でこんなのあったな、そーいえば。

……いいの?

 

──いいのね?

 

出でよ!──サタン!

 

 

 

 

……───こ、来ない。だと?

 

 

 

 

後から聞いた話、この時のティルフローズ、つまりアタシの行動はしっかりとばっちりと、突然始まった奇妙な一人言が注目を集めていたこともあったらしいのもあって、そこそこの数のクラスメートに見られていた。

見られていて、何がどうなっていたかって?

 

それはアタシの一人言で注目を集めるにとどまらず、することもなく手持ちぶさたになっていたクラスメート達は、どうやらこんな風に見ていた、どーん。

 

何かと会話している風で居て、一人言で芝居をしているような時は何やら熱が入ってるっぽく、頭から煙をあげる風に見えてもおかしくないくらいに盛り上がっていて話しかけても聞こえてないようだった。からのー!

急に叫んでどうしたのかと思ってドン引きしつつに更に見詰め続けてると、残念で意外そうな顔に変わる。からのからのー!

ぷるぷる震えだして、何もないはずのティルフローズの目線の先をガン見。しかし、キョロキョロ周りを確認して気づくと、恥ずかしかったみたいで耳までまっかにしてぷしゅう、と音が聞こえてくるでもおかしく無いような茹であがった顔は、ゆでタコかゆで上がったエビも苦笑い。

そこから沸き上がる耐えられないプレッシャーを感じて顔を被い、思わずその場にしゃがみ込んだ。

 

「あぅぅぅ……」

 

までが、ティルフローズの姿をしたアタシの、あまりの結果……に、いたたまれなくなってとっさにとってしまった行動だったりする。

 

この一連のコンボを、ふわふわなピンクの髪した小学生くらいのティルフローズがやってるんだから、中々にかわいらしい奇妙珍妙に映ったっぽいのね。

 

ぬぐぐ、これを聞かされた瞬間、思わずぽん!ぷしゅうぅ……とこの時と変わらないコンボでやってのけて、そうそれ!今の!って言われてしまったってゆー。

 

……はー!ほんと、娯楽に飢えてんのねー!

この世界のガキ共と来たら。

一人言じゃないのに、どーしても一人で夢中になって喋ってる風にしか見えないってゆー、その時のアタシをずっと好奇の目で追い回してたんだって!

 

恥ずかしい、むかつく、呆れる、おまけで暇人なんだこいつらって込み上げてる暗い感情と高ぶりもそのまままに心の底から理解したんだ。

 

 

しかし、しかし。よく考えてみて?急に一人言を始めて、急に叫ぶ。

こんなやつ、現実に居たら、居たら……お巡りさん、こっちです!この人です!が仕事し始めるターンじゃないか。

それを、アタシは、クラスメートの前で、1セット丸々やってのけてしまったんだって、……さ。

そりゃ、そんなの聞かされて我に還ったら、恥ずかしくて茹でタコにもなりますっての。

 

 

 

『ここには外から入ろうとしても無駄だよ。存在してもないのに、存在しているものが入り込めないと思わないかな?

中は、中では確かに存在している世界、でも外では存在してない世界。ここはね、そんな世界かな』

 

クラスメートの、白い好奇の視線に沈んだアタシの頭の中に響く声。

 

しゃがみこんだままの状態で両足をがしっと降り立たんで体育座りに移行。もー!自分の殻に!籠ってやるんだからっ!

 

小学生の頃を思い出して、落ち込む。

背が低くて浮いてたあの頃。

むー、今もたいして変わらない気がする!

こっちは平均が低いよーな気もするけど……えへへ。

それはまあいいや。

 

声の念話かサイコなテレパシーに返す言葉を選ぶ。いまさらと言ってくれるな、そこはよく解ってるんだよ?

この姿も声もなき声、頭の中に響く声は、ほらあれ初めてサタンが実体を現して、竜になったサタンと空を飛んだあの時の応用問題みたいなもの。

脳と脳とが……思考と思考がリンクしているってことがどうゆーことかってゆーと、思ったこと全部がつつぬけになっちゃう。意識の共有みたいな?

 

だから、考えれば考える全てが念話でリンクして、話しかけてきた相手に念話で伝わってだだ漏れになる、って気付いてても余計にあーでもないこーでもないって考えてしまって、悪解のるつぼに突入しそうになっちゃう。

 

いかんいかん。気を取り直して──いい?

ここまでの思考リンクは忘れて!お願い!

 

アタシの思考と繋がる先の思考に向けてお願いしてみた。

そしたら、なんか薄ら笑いが。うふふふふって螺旋を巻くように聞こえてくるような。何がおかしいんだか?…………じゃぁ、リセット!

 

 

──何っ、この世界は存在しているけど存在しない世界?

 

ちょっとリシアスちっくに大袈裟に振る舞ってみる。

 

『うふふふふふふ。……ふふん。思い浮かべてほしいかな。僕の姿を。そしたら、僕の姿はいつでも見えるようになるかな』

 

いや……お前の姿なんて最初から見えてないから!

見えない姿をどうやって想像しろって?

 

あ、あと。空気読んでくれてありがと。そ……それと、あなたのお名前はなんてーの?

良かったら教えてちょ♪

 

すると念話の声は、リセットというアタシの交渉を受け入れてくれたみたいで笑いがピタリと止まって真剣な話合いが始ま……らなかった。

どーも重すぎてシリアスな展開は苦手でね。

 

『それは言ったかな。思い浮かべて、ってね?想像して創造して欲しいかな。イメージしてクリエイターかな。

ふふふ、面白かったお礼かな♪名……前っ?そうだな。僕はグリム、かな』

 

 

取り合えずこんなやり取りがあって、白熱して身ぶり手振りがついつい大きくなってしまうアタシ。

 

でも、それはアタシ以外の皆にはティルフローズがおかしくなった!みたいに見えているよーで、みんながどん引いているような空気が漂ってくる。

 

──というのもアタシは話しかけられた本人なので聞こえてるけどクラスメートの皆は1ミリも聞こえてない声。あれですね、幻聴って思われてんのかな。

 

ヤバい薬やってると聞こえてくるようになるという声なき声。

 

視線に気付けてからは、大袈裟なボディランゲージも封印し、一言も喋らないように口にチャック。体育座りに両手で膝を抱え込みガードもばっちり!おぉ……これは、どっからどーみてもあれだ。何かしらやらかしちゃったいじけモードの小学生にしか思えないし、周りのクラスメートからもそんな風に見えているのかも知んない。

 

このアタシだけが意思疏通出来、話す事ができる声のせいで、輪の中心が二つ出来てしまっていたんだ。ひとつは勿論、バグラート。

 

もうひとつは、はいはい!アタシでーす!

元々大した深い付き合いもなかったよね、じゃあ今さらじゃない?そんな薄っぺらなモブからどんな電波に見られよーと全然問題ないし構わないんじゃね?なティルフローズです!

 

確かに、声の人……グリムの声がみんなに届いていないんだろうし、ということは必死なティルフローズがパニックして一人言を連発してる、幻覚に向かって話しかけてる、なーんてそう言う勘違い受けてても仕方ないんじゃない?

 

そんな分析してる最中にも、ヒソヒソ声がみんなの口から際限なくこぼれてくる。

ざくざくっ、とささってきてる白い目。

ヤバいやつ、みたいに思ってるんでしょうよ?視線を感じたから、目線を追うと目線を外すクラスメート。

 

いや、間違ってないよ?なんにも間違ってないよ……何も無い空間に一人言をいきなり全力で始めるやつが居たら、そんな反応がフツーだもん。聞こえてないんだから。

 

だとしても、何か空気読むくらいして欲しいんだけどな。

そーゆークラスメートには見習って欲しいよ、バグラートを。

切り換えが早いのか、自分の輪の中心にいつの間にか気がついたら帰っていってる。パニックになってもおかしくないクラスメート達を話題そらしで問題から遠ざけるのに成功してるみたいだ。例えそれが、アタシの落書きのことだったとしてもこの場合は感謝して置こうかな、って気になっちゃう。思わず、今がどういうことになっててとか綺麗さっぱり忘れてにまにま笑っても仕方ないんじゃない?

 

『……で、どうするのかな?君とリンクしてると、感情が複雑すぎて頭がどうにかなってしまいそうかな』

 

つーても、どうにかしてほしいからこのリンクに、念話に集中してんですけど。ちょっとイラっとした。

 

『どうにか、……ふむほむ。まぁ、そうなるかな。長い話になるけど早回しで語って聞かせてあげるかな』

……グリムの言った通りだった。次の瞬間、あの感覚がまたやって来たんだ。

 

あれだよ、あれ。アタシがティルフローズになった、あの日の感覚。

フォルダ分けしてない雑多な情報を、一気にドラッグ&ドロップしているようないろいろな場面。

これは、グリムが刻んだ記憶?なシーンが軽くテラ行ってるんじゃないかって容量で脳内に流れ込む。アタシの脳内がCPUにでもなった気分だ。

物凄い情報量。CPUが焼ききれるんじゃないかってくらいに、早回しで網膜にむりやり強制的に流し出される記憶の断片。

 

『はい。これで、おしまいかな』

 

──なによ、それ。

神に背いた男が創った空間?

長い、長い映画を見た気分にもってかれちゃう。でも、きっと時間に直したら数秒経ったかていどしか経ってないかも知んない。

昔の映画でこんなのあったな、そーいえば。あれは脳内を記憶媒体にして情報を他所にバレないように運ぶってカンジのだったな、アタシのはただただ不確かな容量を食わせて、記憶を焼いてるみたいな……へえ……なんだそれ?

 

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