もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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もう君たちの策はこれでお仕舞いかな?

へえ、姫にその場にいた全員がむしり殺されたんだ……。

だけど──終わりと言ってまだグリムの声は続いていた。

正確にはやり取りとゆーか。

 

馴れたら苦もなく念話でグリムに返事をしながら、反対にクラスメートの話も耳に捉えられるようになっちゃった。

これは言っちゃうとどっちの言ってることも理解できちゃうっていう、とっても、かなーり便利な事なんだよねー。

 

てれってれーー!ティルフローズの脳は進化したっ!のだ!みたいな?

 

「やっぱり、入って来た時の扉。無くなってるんだって。どうしよう……」

 

『メーネは変わってしまったかな。皆、彼女に殺されてしまった』

 

今のアタシってちょっとした聖徳太子みたいじゃない?

今、スッゴいことしてるかも。

グリムの言いたい事も理解できるし、クラスメートの子が話しかけてる事にも対応出来るようになっちゃった!

 

「あー……他のクラスもこっちに戻ってきたんだ?……それで帰れない、と。帰れないなら帰れるよーに努力をしましょう。確か、聞いた話だと……本に飲まれたけど……帰ってきたっていうじゃない。何か、あるはずだって!落ち込まなくても大丈夫だって!」

 

それ、モンスターじゃん。と、目の前で不安感まるだしのクラスメートを励ますように対応しながらグリムに返答した。

こんな具合に視線はクラスメートに向けつつ、グリムとも双方向でやり取りが出来てるやっぱり!アタシって!実はチート持ちじゃないの!って、自画自賛ににんまり。

小さくガッツポーズ。

 

「うん、ここでこうしてても変わらないんだよね。何か努力、しよう!でも、何をしたらいいんだろう……?ティルフローズはどうしたらいいと思う?」

 

『ふふふ、そうなるかな。メーネの中にはモンスターが居る。死を生を、何とも思わない酷い化け物にメーネはなったかな』

 

酷い、化け物がメーネを?

ぅうー、……えーっと。──そうだ!反魂をした魔術師はその後どうなったの?

それだけの事ができる魔術師ならもしかして、メーネにみすみす殺されちゃった……ってことにはなんないはず。

つまり、その後だって生きていた。

なら、何かメーネを倒すヒントをくれたりして!ゲームとかなら、そーゆー立場なり役割なキャラ。

そーだよ、その魔術師が居れば……。

 

「ちょっと考える。……アーマリア先生の意見も聞かないと」

 

とか言いつつ、魔術師のことに意識は向いちゃった。

クラスメートから視線を外しアーマリア先生の姿を探して振り向きながらも、心の中ではグリムの答えをわくわくどきどきと待つ。

 

「そっかー。うん、そういうことよね。わかった」

 

『……魔術師は今もこの世界で姫様と戦っているかな。自分で作って、姫様を封じたこの物語世界で。そもそも、この空間は国を滅ぼした不死姫を元の、君たちがやって来た世界と切り離すために創られた、かな』

 

姫と今……戦ってる?

この空間、その男が。

創った?

 

うっわー、はた迷惑な……。

 

国が滅ぼされた……って、ミュンテゲンは、国中がメーネ姫にあんな感じでむしり殺されたの?

アンデットって、いう程強いかな?聖なる魔法なら一撃でじゅわって蒸発して浄化でってなんないのかねー?

 

相変わらず抑揚の感じられないグリムの声からなぜか、なんとなく声に乗せてない絶望のような気配を感じてしまう。

 

その時だった。

グリムに見せられたあの記憶の断片が、頭のなかに蘇る。

灰色一色の背景、散らばる死体の真ん中に、薄気味悪い微笑みを湛えた、ミュンテゲンの不死姫・メーネの姿を。

 

つまり──キチガイ染みて強いお姫さまを倒せばここを出られると?

ゲームクリアーってなる?無事生きて帰ることが出来るじゃない?

 

『違うかな。あのメーネはアンデットじゃない。だから浄化は出来ない。悪魔払いは試した後かな。何か別の存在がメーネの容姿をして好き勝手をしてるだけかな』

 

……それも、違う?

 

どうすればいいのよ。つーか、あんたさ。何者?

 

『あはははは。僕はグリム。ご主人様からあのメーネをどうにかしろと言いつかっている、この本に宿る妖精みたいなものかな』

 

………………え?本の妖精?

 

その、妖精さんが何やってくれちゃってんのよ。

 

本の妖精ってゆーくらいなんなら出し入れ程度は悠々出来るでしょ。

 

『出し入れ……だから、出せるよ?ここからは出せなくは無いかな。言ってなかったかな』

 

出してよ。……そう、出せるには出せる。

勿体振る言い方ってとこみると面倒な不具合でもあるの、かな……?

 

『心を無くすんだよ。この本に影響されて、それまでとは別の性格になるかな。なんてゆーと解るかな。落ち着く、とでも言えばわかるかな。無邪気さや傲慢さや本来あるべき攻撃性衝動を、奪うんだ』

 

嘘、心を無くす?

いや違うのか。奪われる?

『うん、奪うというと乱暴かも知れないかな。本に心を大地に、本体に縛られる。引っ張られてしまうと、あるべき心とは変わってしまうかな』

 

奪われるとも違う?

 

本から今出たら心を大地に、つまり本の本体……めんどくさい、この本に心を引っ張られると?

 

『つまり、そういうことかな』

 

なんでそんなことに?

 

その男がそうした?

 

『考えて欲しい。食事をしない生き物は居ないかな。本の中にある世界には魔力が必要かな』

 

なるほど、グリムは利用されてるってわけか、違う?

 

『違う。作られた時の契約かな』

 

ふーん、その契約って?

 

『入った獲物の魔力をいただくってことだろう。そうだったかな』

 

本を維持するのに必要なくらいかな、ともごもごと口ごもるグリム。

 

じゃあさ、この本を開いたらトラップ発動。

もう、詰みってことじゃない!

ふざけるな、外に出る。

本を壊してでもね。

あ!……そっか、ふふふふ。

この本を破壊すればいいね。

 

『はい?……破壊する、かな?』

 

そうだったんだよ。

うわぁ、簡単なことだったんじゃん。

 

……本の材質は。本は何で出来てる?

 

単純なことよ──紙で出来てるものは熱で燃える。

 

「この世界は、この世界を構成してるのは──紙。だから、こうやって……こうするの!ほらね、燃えるわっ!燃えるのよ、この世界はっ!」

 

 

╋╋╋╋╋╋

 

火さえ点けばこっちのもの。

早速、ごちゃごちゃ言ってるグリムを無視してバグラートの廻りに集まるクラスメートのとこに行って、思い付きを相談した。

 

そこには帰ってきていたアーマリア先生もアルトも勿論リロメーゼも居た。

で、サタンが呼べないってことから一方的に勘違いをしてたんだけど、魔法が使え無い訳でもないことを気付かされる一幕もありつつ、ジュラルタン先生のジュエルがちいさな種火を生み出し壁際にぴったりとそそりたつ本棚に向かって飛んでいった。

 

そこに更に、追い討ちで誰かの唱えた強風が吹く。

 

ん……?

 

風……って……。

 

「──うっわ!」

 

そこまでは求めてない!

 

ちいさな火だったのが、勢いづいてみるみる内に猛る激しい火炎にグレードアップ!

 

「誰が火事起こそうなんて言ったのよ、言ったけど……違うんだって!これじゃない感が半端ないんですって!」

 

思ってたのは、焚き火くらいの火で。

んで、燃え始めたら元凶さんがあっちからきてくれるんじゃないかなー、なんてさ。

そんな思い付きだったのが、もう目の前は焚き火やボヤどこじゃない火事になってる。

 

風は余計だったの、確かに燃やせば出られるかも?

本は紙だから燃えるんじゃないかなーって言ったけど、言いましたけど!

 

「ティルフローズ姫、だったかな?燃やしましょうって言い出したのは!この火どうにかしろー!」

 

そんなこと言われてもねー。

こんな大きな火が点くなんて想像してないからさー。

 

「先生、水魔法は使えないんですか?氷とか?」

 

「さっきからやっている。見ていれば解ると思うんだがなー……火の方が勢いついてどうにもならん」

 

「そうだった、全部燃えやすそうなものばかりだもん……アーマリア先生はどうですかっ?」

 

「水魔法は専門じゃないんですもの。光とか、きらきらした魔法なら出来るんですよ?」

 

両先生は役に立たないつーか、それでも一番アタシが役に立ってない感するなぁ。

まだ、初歩の初歩の魔法しか授業はやってないのはクラスメートも同じなんだけど……中にはあの強風を吹かせた魔法を扱えるくらいの天才も居る。

才能の差とゆーやつはやっぱどこに行ってもあるんで……なんて思っていると頭の中に笑い声が響いた。

 

グリムはこっちの行動に対して、やっぱり抑揚のない声でずっとほう。

とか、それでどうなるのかな?

とか感想をこぼしてたりしたけど、なんか何が面白かったのか解らないけど楽しそうに笑ってんの。

 

『─ふふふふふ、もう君たちの策はこれでお仕舞いかな?』

 

足元にも、火が迫ってくる。この世界全てが燃える。燃え尽くされる……。

 

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