もし1㍉も乙女ゲーを知らないアタシが悪堕ち転生をしちゃったら?   作:ぴんぽんだっしゅ

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魔法が使えたら凄くね?って思った時もありました。

突然、街中で立ち止まった困ったゴミ、変態ハゲ、無能デブはにんまりとアタシの視線を追ってきた。

 

アタシの顔を面白そうに、いやー楽しそうにが正解かも知んない。

一言でいうとキショい。

 

このゴミでも、街中ではふんべつがつくみたいで肌色が見えるようなふざけた格好じゃなくて、制服みたいな茶色のスーツの上下の、上に真っ白なローブ……。

 

この世界の貴族のあるべき姿だったりすれのかも知れないけど、アタシもそうだし、リズの持ってる記憶的にも周囲からまるっきり浮いて見える。

 

その内こんな姿を見慣れる日がアタシにも来るんだろうな、だってなんたってここは───異世界なんだもの!

 

ハゲを隠すためなんだろ?

似合ってないぞ、その宗教の勧誘みたいななんてーかRPGで魔法使いがよく着てる、これ着れば誰でも魔法使いさ!

みたいな?

 

アタシが、いや日本の街中でそんなやつ見たら皆がみんなソッコーで逃げるんだけど!

 

気味の悪い笑みを浮かべてアタシをじぃっと見詰める。

これは、アレだ。

 

鑑賞、とかいってネットリ視線を這わしてくる、例のアレ……じゃない?

 

こう───何か、起こる!

 

……そんな予感がした。

 

どうして、予感なんてしたのかって言うと……空気がいつもと、なんてゆーか……ざわめいているとゆーか……肌がぴりぴりするとゆーんかなちょっと説明の仕方が判らない、だけど確実にふつーじゃないってゆーのだけは解る。

 

───アタシが知らない感覚。

何を、……何かするつもりだ!

オーウェンは。

 

「幼年舎に通うなら、何れ出来る様になる……が、どうだ?」

 

「──魔法?」

 

流れるように指を空に踊らせる。

その、踊るように舞うように見える不恰好なオーウェンの太い指が、輝る。白く。そして青く。

 

宙に筆記体の羅列が白い閃光を後に走らせて浮かぶ。

なんだコレ。

 

宙に?

どうして文字が書ける?

それをどうして見えちゃうの?

息をするのを忘れて見いってしまう。

そして、次の瞬間───

 

オーウェンの人差し指が、ゆらめく様に炎を纏って。

 

「そうだ。ふっ!だからと言っても、適性があるからな魔法には。ティルフローズにも適性があるといいなっ。ク、ハハハハっ!」

 

パチン!

指を弾くとオーウェンの指先の炎が消えてしまった。

燃えていた。

 

錯覚、いや違う。

 

ある、あるんだ!

 

このやり直しの人生の先には、魔法が使えるようになるかも知んない!

 

 

え、ええ?

アタシ、が───魔法使い?

 

それって……魔法少女!

 

うっそ、リキュアかドカかセーームーンみたいに!

 

アタシが、魔法少女になれちゃうってそれマジ?!

マジでーマジで言ってんの?

 

感動もある、だけど、“ある”、“使える”と解るとなぜか虚しくなった。

 

次の瞬間には照れ隠しも混ざってオーウェンの腹目掛けて振り抜いていた。

 

ショートストレート気味に。

例の、グローブ付きのアタシの必殺の右をお見舞いしてやるためにだ、当然───手加減は無い!

 

「いちいちウゼえーーー」

 

 

───・・・

 

時間は少し戻って……何がどうしてアタシはオーウェンのハゲなんかと街中でそんな事をやる羽目になったかってゆーのを話そうと思う。

 

それは───学校の制服だよ。

通うことになるなら無いと困るでしょ、絶対に。

 

吊るしでもいいんだけど、と一度は断ったよ?

こんな、歩く最終兵器みたいな汚物と二人きりで街中歩くなんて、アタシにとってそれはそんなのは、汚点。黒歴史。記憶から消滅させたい事───になるはずだからだよ、デート……と思わなくてもデートと記憶されてしまうだろ?

異性と街中二人きり、しかも、事実夫婦なんだぜ?びっくりだろ、こんな視界に映るのもおぞましいたるみきった肉塊をだよ?

 

リズ、ティルフローズとしてのアタシ……両者の初デート、その相手がだよ!オーウェンとか、さ……生涯消えない事実になっちまうんだと思うと、むなくそ悪いじゃないかよー、嫌だよ…ちゃんとした生き物とデートなら嬉しいよ?

 

この際、ぼっちで浮いてて空気扱いされてた……ほらあの子、クラスで人数分けするといつも余ってて誰とも話さないから先生にいつも怒られてて結局───先生と組んでストレッチとか。

 

あの子でもいいから、ふつーのなんて贅沢は言わないから……同年代の男の子とデート、初デートくらいはね、させて欲しかった……初デートってね、一生忘れないもんなんだよ?そーゆー生き物なんだよ、女の子はね。

恨むよ、神様。呪ってやる、呪ってやるからねーっ!

 

「久しぶりに歩く都はどうだ?」

 

「いや、離宮以外は歩いた記憶無いので」

 

嘘は言っていない。

街に服を作りに出たり、他のこまごました用事で歩くなんて記憶は無いんだよね?

さすが、リズ。お姫様なら、絶対って感じでさ。

 

馬車か何かで店の裏に止めてそこから入店てな、記憶しか無い。

それもちょっとおかしい、リズ……だからなのかも、これって。

 

そう思わないか?

お姫様が入店って店の宣伝とかになんないのかな、なりそうなのに……入口を避けて裏からだよ?

 

───これ、絶対なんか、……あるだろ?

他の貴族からも疎まれて……邪魔って裏では陰口叩かれてて、店だって……って、そうか……そこにも側室の手が回ってて入口を使わせるな、みたいのがあったりしないか?

 

なんつーか、見えないとこからグジグジ粘着力のある苛め方してくれてんな、……まるで、学校裏サイトとかみたいじゃんかよー、どこにだってあんだねー……結託して見えないとこでコソコソ……ああ、やだっ!

 

リズの思考とリンクしてた、嫌なもんみた感じ、クソっ!

 

 

「ふっ、そうか。腐っても王族、腐ってるから王族、か」

 

気持ちの良く無い記憶を見た次の瞬間は、気持ちの悪いぶよぶよの顔だった。

 

「何?お父様に言いつけちゃうよ?」

 

オーウェンのその言葉に強く、反応してしまう。

とんでもない八つ当たり。

そんなのは解ってる!

陰湿な苛めを受けてる記憶が甦ってきてフラッシュバックしやがったのよ、当たりたい気持ちになっても当然!

そうでしょうよ?

 

「ふっ、……くく、ゼリエがお前の首筋をかっ切る方が簡単に出来る、とか思わないか?……おい──」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

だけど、オーウェンにはゼリエみたいなとんでもない化け物がついてて……今は、それだけは勘弁してって感じだった。

あーあ、情けない。

みっともない。

即、ゴメンしちゃうなんてねー。

ただの八つ当たりもアタシには許されない、それが今のアタシ………………惨めだ。

 

「ウ〜ム、ゼリエに対しては素直だな?魔石のグローブで抵抗したりはせんのか」

 

「……動く隙も無いもの」

 

「クハハハハ。たっ、確かにそうだ。すまんな、ウハハハハ!」

 

アタシはバカにするような笑い声を上げるオーウェンに我慢はもう出来そうも無かったんだ、八つ当たりすら出来なかったのに。

 

それでも、立ち止まってから俯いて足元の石畳に視線を落としてから、自然と掌をぎゅっと力いっぱい握り込んでた。

精一杯の抵抗。

 

「お前には負けねーかんな!」

 

ぷるぷると無意識に震えてる。

余分な力が全身にかかってる。

びしぃと指を指す。

同時に叫ぶことを抑える理性は残ってなかったみたい。

 

言ってみれば、それは格闘ゲームの必殺技のゲージで、あれがゆっくり溜まっていって今のアタシの行動を揺り動かした。

それはもう、無意識にとしか言いようがなかったよねー。

 

一つ目の店でぴかぴかの革靴を買い、今は制服を買うために歩いているってとこ。

 

オーウェンは黙って歩かない。

どこに居たって滑らかにその口は舌は次々と煽るような言葉をペラペラ、ペラペラと吐き出す。

黙って歩けよ、豚が!

 

歩く速度はバラバラで、前を歩いてたのにすぐ横にいたり、遅れたかと思うと抜かして前を歩いてたりする───アタシが、歩幅が小さいってことも大いにあるとは思うけど、合わせて歩くでもないし適当。

ホント、ずっと前歩いてて。

寄ってこないで!

それが理想……なんだけど。

 

で、冒頭のシーンに戻る。

 

 

 

「幼年舎に通うなら、何れ出来る様になる…………が、どうだ?」

 

「──魔法?」

 

「そうだ。ふっ!だからと言っても、適性があるからな。ティルフローズにも適性があるといいなっ。クハハハハ」

 

「いちいちウゼえーーー!」

 

「ぐぽっ───」

 

確実に仕留めた。

 

仕留めたはずなんだ、なのに。

 

ゴミはあの時みたいに、盛大に腹の中をぶちまけて石畳に倒れ込む───そう、そんな映像までうかんでたのに。アタシの脳裏には!

なのに、アタシの視界に映ったのは。

 

「──なあんてな?部分魔力集合《レゾタント》すれば狙いがピンポイントならばっ。こうして、防ぐ事が出来る」

いや、アタシは手加減してなかったよ。

 

ゴミに止められた?

オーウェンの周りをあの閃光が煌めく。白いのや、青いの。

 

魔法!

 

どーも、殺気を感じて先に張っていたみたいでさ、レゾタントって魔法らしい。

ニヤリと悪役めいた不気味な笑みを浮かべるハゲでゴミでクズ。

 

「殺されてやる訳にいかんと、言っただろ?心地好くいたぶってくれる分には目溢しもしよう。……だがな、次にさっきのような殺意を見せた瞬間。……こうだ。残念な事になるぞ?」

 

そう言うハゲは、自分の首筋の前で二本の指を使ってかっ切る真似をしてうげ!と舌を出して見せる。

 

「今出来ないのは、解った……覚えておいて欲しい」

 

「何だ?聞こう」

 

「一生暮らすなんて、絶対無いの」

 

アタシは真剣な瞳をして、陽気に笑い気味悪く歪んだ顔をまっすぐに睨み付けたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺してやる、殺してやる!」

 

その夜のこと。

あと、あの瞬間からはオーウェンの事はスルーすることにした全スルー。

ムカムカさせられるだけで、取り合っても何の得も無いし。

 

最初からそうすれば良かった……だけど、今日のオーウェンとの会話の中に唯一、ほんの少しの価値はあった……そんな気がする。

オーウェンは少しばかり使える、それが解ったからだ。

 

───魔法、異世界を知って使おうとしてアタシには使えなかった魔法。

 

その魔法がオーウェンは使えた、アタシの目の前で使って見せたんだ。

 

「ふっ、……クハハハハ!良いぞ、ゼリエを殺せる様になってからだな。まずは」

 

城のような例の屋敷の、オーウェンの家の四階、その一室に連れ込まれてオーウェンの相手をしている、させられている。

 

ゼリエを殺せない内はオーウェンを殺してやることは叶わない。

できない。

そんなことは理解している、そう、理解しようとしたんだ!

アタシの本能が、でもっ!

 

この異質の肉塊をどーしても、どーしても……どーしてもっ!

受け入れない、だからっ!アタシにはどうすることも出来ないじゃんかぁ?

 

「子供扱いしやがっ……」

 

息が出来なかった。

アタシが腕をふりぬくモーションを取った瞬間に。

 

「呼んでないぞ、ゼリエ?」

 

「少々、目溢しが過ぎると判断したので」

 

絞まってる、絞まってるじゃん……かぁ!

背後に居るのは、ゼリエ。

冷たい、生気の通ってないようなそんな声が聞こえた。

 

「そう、か。ではグローブだけ脱がせてこっちに投げろ」

 

左腕が首に巻き付いて絞まってくる。

オーウェンのその命令にゼリエは右手で力無くぷらんと垂れていたアタシの右腕をまさぐるとすいーっとグローブを引き下ろして脱がすように外した。

 

「うん、中々いい魔石だ。誰が持たしたか知らないが、高価だよコレ」

 

「返せぇ!」

 

ゼリエから受け取ったらしい、アタシが着けていたグローブを、その掌の内側に仕込まれている魔石を眺めているオーウェン。

 

力をこめた、一瞬、むんっと。

首に痛み感じながら叫んだ。

あれは、あのグローブは命綱みたいなものなんだから!

 

「ゼリエ、下がれ」

 

そう言ってオーウェンは近くの大きめなソファーにぽいっとアタシのグローブを放り捨てた。

大人でもごろんと寝れそうなソファーにグローブはぺたっと落ちた。

 

「……満足させろ。ティルフローズ、解るな?」

 

ゼリエからの拘束は解けていて、けほっけほっと咳き込む。

 

確実に息の根を止めに来てた。

 

く、アタシはこんなに弱いのか……チートが欲しい、オーウェンにもゼリエにも側室にも誰にもアタシを止めることが出来ないような、そんな最強のアタシになりたい!

 

「魔法が使えるのに、何か強いのに、公爵なのにっ、ヘンタイっ!」

 

蹴った、蹴った、蹴った。

 

ここに、窓の無い無機質な部屋に連れ込まれた意味なら知ってる、この……廃棄物を満足させる……そう、勉強を始める前は毎夜毎夜させられてたことだから、そんなことは解ってる。

 

蹴飛ばしてやれば悦ぶってことを。

 

「そうだ、解ればいいんだ。さあ、続けよう」

 

「くそっくそっ、殺せる様になったら殺す!殺してやる!」

 

でも、やり過ぎない。

危機を感じればオーウェンはゼリエを呼んで中断する。

 

アタシは、恐怖におびえなくてはいけなくなる……嫌だ、怖い、本能が危険危険です、ってアラートを壊れたみたいに鳴らしっぱなしになるんだよー、謁見があるんだ……死なない、殺されないって思ってても、恐怖は消えてくれない!

 

「そんなに好意をあてられると擽ったいな」

 

「何がっ!」

 

蹴るくらいしか出来ない、喜ばせる行為に手助けしてるだけって思って、その思いをかき消す。

 

満足させるための道具だと、認識したなら……それはとても惨め。

 

「レゾタントすれば何やったって、アタシが何しても!痛みなんて無い癖にっ」

 

オーウェンには魔法があるんだ。

痛みなんて、切り離せなくたってゼロには出来る癖に!

 

痛めつけられることに何があるっ言うのよ?

どうしてそんなにだらしなく嗤ってんのよ。

 

「ぐッ、そ、そうだ、な。魔法は始終使うものじゃないと、思っているのだよ。魔法に慣れると、何も怖くなくなるだろう?まだ、解るわけないか」

 

蹴る、踏みつけて、蹴った。

 

「解んない。ゴミのくせにっ、説教噛ますな!ゴミのくせに!」

 

何も怖くなくなる?

 

「うぐぅッ!俺はそれが、……そうなった時が、こ、怖い」

 

それって悪いこと……いいことじゃないの────アタシは欲しい!

 

「解る言葉で喋れよおっ、アタシが!アタシの!」

 

解らない、解らない、解らないっ!

 

「うぅ、…………はぁはぁー、えぐッ!」

 

嫌、嫌でたまらないのに……血ヘドを吐いてる肉塊を蹴り続ける。

 

「も、もう少し大きくなったらだな」

 

それが───アタシに今、課せられた指命!

死なない程度に痛め付ける、肉塊は痛め付けるほどに嗤ってる。

 

嗤うんだ……。

 

「う、う、うるせえっ!」

 

「さ、最後に顔を踏んでくれ。足を舐めたい」

 

理性が熱に焼かれる。

ジリジリ、とそんな感覚。

何も考えずに、真っ白に染まっていく。

その先に見えるのは───

 

「ゾッとするわ、どうだ?こうか。ヘンタイが!ゴミ、クズ、ハゲ!」

 

 

 

 

 

魔法、ある程度使い慣れると足元のコイツみたいに……………………痛みを求め始めちゃったり、するのかな?いやいやいやコイツがゴミでクズなんだよ。

 

でも、何も感じなくなるって状況は怖いと、アタシだって思ったんだ。

実際にこうなってる肉塊の姿を見ていると。

 

それは、反面教師というヤツ、か?

こんな豚でもアタシの役に立ってるじゃないか。

 

 

 

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