珍しく二人でティータイムを楽しむシャルティアとソリュシャン。ひとしきり趣味について語り合い会話が途切れた後、ふと呟いたシャルティアの言葉に、ソリュシャンがある提案をするが……。

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自分は一体何を書い……いやいや、書きたいと思ったものを素直に書いただけだ。
後悔は無いぞお! うん。

NPC同士は完全プライベートではタメ口疑惑が無きにしもあらずですが、
やはり普段通りの立ち位置の方が違和感無く書きやすいのでそちらでやりました。
ご了承頂ければありがたいです。

よろしければお読み頂けたら幸いです


シャルティアのおっぱい いいおっぱい

「ソリュシャンは良いでありんすね。」

 

 ナザリック地下大墳墓第二階層にある死蝋玄室。

 その部屋の(ぬし)であるシャルティアは、ティールームの華奢な椅子に座って少し冷めた紅茶を一啜りすると、丸く小さなテーブルを挟んだ向かいに座る戦闘メイドのソリュシャンに愚痴るともなく語りかけた。

 

 人間への嗜虐性(趣味)を同じくし気が合うとはいえ、二人きりでティータイムを楽しむというのは珍しい。というか、初めての事だった。

 ゲートを使った物資搬入の仕事が一段落しシャルティアが手持ち無沙汰でウロウロしていた所に、同じく仕事を終えたソリュシャンとたまたま鉢合わせし、せっかくなので空いた時間、たまには同好の士として親睦を深めようと自室に誘ったのだ。

 ナザリックの絶対支配者(アインズ)が、NPC同士のコミュニケーションを推奨しているのも大きな動機だった。

 これも仕事……と言う訳では無いが、NPCにとって至高の御方の言葉に沿った行動をする事は、自分は正しい行いをしているのだという安心感に繋がる。

 そういう訳で紅茶を飲みながらひとしきり()()()の話に花を咲かせ、会話が途切れた所で真祖吸血鬼(トウルーヴァンパイア)はポツリとそう呟いたのだ。

 

「何が……でしょうか?」

 

 ソリュシャンは小首をかしげて尋ねる。シャルティアは返事をせず、ただうらやましそうな視線を彼女の胸元に送る。

 

「ああ……。」

 

 それだけで、言いたい事は理解出来た。

 シャルティアは両刀使いであり、胸の大きい女が好みだ。で、あるので、普段は羨ましがるより情欲に満ちた目で見てくる。シャルティアのドストライクキャラであるユリはその視線を嫌がっているが、ソリュシャンは平気だ。背の低い美少女(シャルティア)のために、さりげなく見やすい角度にしてあげる事さえある。

 という事で、欲情より嫉妬の目で見られる事は珍しい。もちろんシャルティアの公然の秘密は承知しているので、そういった目で見られるのも別に不思議では無いのだが。

 

「私はスライムですから……サイズは思いのままですわ。私の創造主であられるヘロヘロ様の設定がありますから、例えば任務で変装する際に必要などということでも無い限り、今のスタイルを変える気はありませんが。」

「ふう、でもスタイルの柔軟性があるというのはうらやましいでありんす。」

 

 軽く嫉妬を込めてため息をつくと、シャルティアはいずこにおわすとも知れない創造主に恨み言を呟く。

 

 ──うう、ペロロンチーノ様、私もせめて希望が欲しかったでありんす。例えば1000年後にはボッキュッボンッになる設定だったなら、夢を持つことも出来たでありんすに。いえ、と言うか、私は鉄血にして熱血にして冷血の真祖吸血鬼(トウルーヴァンパイア)でありんすから、体型を自在に変えられるとかでも良かったと思うでありんす。エロ設定としてもそっちの方がより多くの需要に答えられたんではありんせんか……? 私の体型がとてもまにあっくな需要がある、っというのは分かりんしが、あまりにご無体な設定ではありんせんでしょうか……?──

 

 至高の御方の設定に対して不満を言う、というのはおかしな事に思えるかもしれないが、もちろんそれ自体がペロロンチーノの設定の一つだ。

 そもそも自分の体型に不満が無ければ、必死に胸に詰め物をする事も無い。

 胸に強いコンプレックスを持つ美少女吸血鬼が、涙ぐましい努力をしながら創造主(自分)に恨み言を言うのもゾクゾクする。

 ペロロンチーノの業は、どこまでも深い。リアル姉の存在のため、そっち方向だけはポッカリと空白であるが。

 

 そんなしょんぼりとした階層守護者の様子を観察したソリュシャンは、ふとある事を思いついた。

 こんな事を言って大丈夫だろうか、っとやや危惧する心も持ちながらも、シャルティアに語りかける。

 

「シャルティア様、その……差し出がましいのですが。」

「ん? なに、ソリュシャン?」

「その……お気を悪くなされたらと思うので、ご提案し辛いのですが。」

「随分と奥歯に物が挟まったような言い方でありんすね。心配しないで良いでありんす。ソリュシャンの性格は知ってるでありんすから、アルベドやアウラと違って悪意で私を傷つける真似なんかしないと分かっているでありんす。それに私達は趣味を共にするもの。遠慮無く言って欲しいでありんす。私のためなんでありなんしょ? さあ、なに?」

 

 思いのほか良い食いつきに、ソリュシャンは困ったようにわずかに眉を(ひそ)めて微笑む。

 自分に悪意が無い、というのも妙に信頼されたものである。長女(ユリ)に言わせれば、ルプスレギナと双璧のサディストなのだが。

 でもまあ、その嗜虐性が至高の御方に創造されたナザリックの仲間達(NPC)に向けられる事は無いのは確かだ。

 

 少し迷うが、意を決してテーブルの上に身を乗り出し顔をシャルティアに近づける。

「はい、それでは……。ちょっとお耳を。」

 シャルティアも応じて少し身体を前に傾け左耳をソリュシャンに預ける。

「くふふ、ちょっとくすぐったいでありんす。ああん、離さなくていいでありんすよ。もっと唇を近づけて……。くふっ♪」

 

 ソリュシャンの官能的な唇が、息がかかるほどすぐ側まで近づくのは悪くない。実に悪くない。

 両刀使い(シャルティア)は、いっそこのまま唇を奪ってやろうか、っと考えるが、彼女(ソリュシャン)の提案にも興味があったのでそこは思いとどまる。

 

 周りには誰もいない──いや、正確には吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達が部屋の隅に控えているのだが、召喚モンスターである彼女達の存在は数に入らない──が、ソリュシャンはまるで不可知の監視者を警戒するかように、真祖吸血鬼(トウルーヴァンパイア)の耳元で小声で何事か囁く。

 フンフンとそれに耳を傾けるシャルティアの顔は、話が進むに連れ、興味、驚き、困惑、悩み、喜び、迷い、期待……っと様々な感情を素直に表す百面相を繰り返した。

 

「──いかがでしょう?」

 多分怒りはしないだろう……とは思いつつ、デリケートな話題だけにやはり反応が少し怖い。

 シャルティアはしばし沈黙した。ソリュシャンは、提案したのは失敗だったか……っとやや後悔する。

 

「申し訳ありません、シャルティア様。やはり出過ぎた提案でした。お許しくだ……。」

「待って。待つでありんすソリュシャン。別に怒ってなどいないでありんす。もうちょっと待って……で、ありんす。」

 片手を上げてそう押しとどめると、目を瞑って再び沈思黙考する。結構な時間が過ぎていく。

 心配げなソリュシャンがためらいつつ、また声を掛けようか……と口を開けた丁度そのタイミングで、シャルティアは目を開けた。

 その眼差しには、強い決意と期待が篭っている。

 

 

 

「その案、乗らせてもらうでありんす。」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「あれ? 誰が来たのかと思ったら。」

 

 誰かが転移門(ゲート)を通って第六階層に来た事を察知したアウラが様子を見に来ると、そこには喧嘩友達(シャルティア)がいた。

 

「どうしたのさ、連絡も無しに急に来るなんて。なんか用事でもあるの?」

 アウラは少し訝しげに尋ねる。どうもシャルティアの様子がおかしい。

 なんというか、変に自信ありげというか、言いたくて仕方のない事があってウズウズしているというか……。

 

「せっかく顔が見たくて会いに来たのに、そうそっけなくするもんでもないでありんす、アウラ。私達はペロロンチーノ様とぶくぶく茶釜様、至高のご姉弟から創造された、言わば姉妹。姉が妹を訪ねるのに理由なんかいらないでありんしょ?」

「うっわ、なによ急に、気色悪い! だいたい姉妹っていうんなら、姉のぶくぶく茶釜様に創造された私の方が姉でしょ!」

「ん? お姉ちゃんぶりたいんでありんすか? しょうがないでありんすねえ。ならこう呼んで差し上げんしょうか……アウラお姉ちゃん♪」

「うわっうわっうわわわわわっ! 気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い! な、なんなのよシャルティア! 悪い血でも吸ったの!?」

「ふう、酷い言い草でありんすねえ。そちらの望み通りにしただけでありんすのに……。」

 

 シャルティアは妙に余裕しゃくしゃくだ。普段ならもっとムキになりそうなものなのに、アウラの言葉を軽く受け流している。

 

「……ねえちょっと、ほんとどうしたのさ。シャルティア、ちょっとおかしいよ。……ん?」

 

 ふとアウラは、シャルティアが不自然に反り返っているのに気づく。見ろ、ここを見ろ、っと言ってるように見える。

 

「……偽乳アピールして何がしたいのさ?」

 

 しかし普段ならその呼ばれ方をすれば怒り狂うはずの男胸(シャルティア)は、一向に気にせず一層胸を強調する。

 

「……ねえシャルティアってば。シャルティア。……しゃーるーてぃーあ!」

「ん? なんでありんすか?」

「ありんすか? じゃないよ。だーかーらー! 偽乳強調して何したいのさって聞いてるの!」

「はて……にせちちとは一体なんのことでありんしょうか?」

「あーもう! それだよそれ! その不自然に出っ張ってるそれの事!」

「ふふ、恥ずかしいでありんすねえアウラ。いくら女同士でも他人の胸を指差すなんて、はしたないでありんすよ?」

「……姉妹じゃ無かったの?」

「コホン、まあそれはともかく……そんなに気になるなら、触ってみるでありんすか?」

「はあ?」

「触ってみるでありんすか? と、言ったんでありんすえ。ほれほれ♪ 遠慮せずとも良いでありんすよ?」

「……あたし、あんたと違ってそんな趣味ないんだけど? 大体、詰め物触ったらなんだっての?」

 

 しかしシャルティアは答えず、ただニヤニヤとアウラを見つめているだけだ。

 どこか優越感に満ちたその顔にちょっとムッとしながら、アウラは無造作にシャルティアの胸に両手を当ててみる。

 

 

 ふにょん

 

 

「あんっ♪」

「……え!?」

 

 触った途端シャルティアがビクッと反応し、アウラは思わずウワッとなって手を離した。

 手の平に妙な感触があった。シャルティアはほんのりと顔を赤らめ、アウラを見る。

 

「え? え? え?」 ──何、今の……?──

「どうしたんでありんす、アウラ。もう良いんでありんすか?」

 

 シャルティアは意味深な表情でアウラに問いかける。

 

「…………。」

 

 闇妖精(ダークエルフ)の少女は、今度は用心深く……恐る恐る、もう一度手を伸ばし触ってみる。

 

 

 むにょにょん むにょにょん 

 

 

「あふん♪ んふっ。ちょっと激しいでありんすえ。うふふ。」

『え? え? ええ~!?』

 アウラは胸を掴んだまま驚愕する。そこには確かに柔らかい感触がある。単なる詰め物ではない、(なま)の感触が……。

 

 

 むにゅにゅん むにゅにゅん むにゅにゅん

 

 

「はうっ。ううん。くふっ……。」

「な、何よこれ!?」

「んふふ、アウラ、そろそろ離してくれなんし。それとも、おんしもやっぱり()()()()()があるんでありんしょうか?」

「え? あっ、ああっ、ゴメン……!」

 

 アウラはハッとして慌てて手を離し、そしてちょっと自分にムッとする。思わずシャルティアに謝ってしまったのが屈辱だ。

 そんな動揺しているアウラに、得意げな目線を送るシャルティア。

 

「ちょっと……。一体何したのよあんた? どうしたら、その、こんな……。」

 

 シャルティアはニヤニヤと笑いながら沈黙する。普段なら、このまま焦らすだけ焦らして教えなかったかもしれない。

 しかし今は酷く大らかに、寛大な気分になっていた。胸の大きさは心の大きさなのだろうか。

 この幸せを、アウラに分けてあげても良い心境になっていた。

 

「そうでありんすねえ…………姉妹の(よしみ)で教えて差しあげんしょうか。知りたかったら、ソリュシャンに聞くと良いでありんす。」

 

 

◇◆◇

 

 

「んふ♪」

 

 キョトンしたままのアウラを放って自身の階層に戻ったシャルティアは、自室の姿見で全裸の自分を眺め、悦に入っていた。

 14歳相当の体型にしては充分過ぎる……いや、巨乳と言っても良い見事なバスト。むしろ大きすぎてアンバランスになるギリギリのラインだ。

 その素晴らしい曲線に沿って、指先で軽くツーっと撫でてみる。

 

「んっ……。」

 

 背中にザワッと来るような快感がある。本当に自分のものであるかのような感覚。凄い。これは凄い。感動的ですらある。

 

「まさかこんな素晴らしいスライムがいたなんて……。もう、ソリュシャンってば、もっと早く教えて欲しかったでありんす。」

 

 軽く唇を尖らせ文句を言うが、その響きには深い満足感が込められている。口角が上がるのを止められない。

 まさに夢に見たような見事なバスト。角度を変えたりポーズを取ったりと、男胸改め巨乳少女はすっかりご満悦だ。

 

 そう、その正体はソリュシャンの眷属、《豊満な娘の乳房》という……実にまんまな名前がついた、プチスライム亜種である。

 スライムなので形は自在に変える事が出来るが、そのデフォルトの形は『おっぱい』だ。丸いお餅の上に小さな突起がついているその形は、まさしくそうとしか呼べないものだった。

 そして彼女(?)達は、二匹が並んで人型生物の胸に張り付くという習性がある。

 張り付いた後は緩やかに魔法的な神経接続をし、母体となった者にとっては自身の胸そのもののような感覚が生まれる。LV1キャラにも全く無害であり、習性が攻撃とみなされないためLV100キャラにも問題なく効果がある。そしてシャルティアのように、皮膚感覚を持っているアンデッドにも。

 ちなみに色は張り付いた生物に合わせて変化し、突起だけ別な色に変わる。例えば、ピンクに。安心安全かつ完璧な、生きるパッドそのものだ。

 

 それは『スライムだから問題ないもん!』っという、ユグドラシルの禁止事項ギリギリをついたモンスターである。現実の生き物に例えるなら《ユムシ》みたいなものだ。とはいえやはりアレなので、LV1固定の弱小でありながらも伝説レベルの超々レアモンスターだ。

 開発者の一人が、首をかけて密かにデーターにすべりこましたという逸話があるとか無いとか。いつの時代にも、名も知れない命を惜しまぬ勇者はいるのだ。

 ──まあプレイヤーの外装に《ヌラヌラ光るピンクの肉棒》があるぐらいなのだから、キチンと合法的に問題なく、チェックを通ったのかもしれないが。

 

「ふふっ、どう? お前達。」

「見事なお姿です。さすがシャルティア様、思わず見惚れてしまいます。」

「まさに天上の美。これほど完璧なプロポーションは全ナザリック、いえ全世界を見渡しても決して他に見つからぬかと。」

「ああ、これほどお美しい(あるじ)にお仕え出来る私達はなんという果報者なのでしょう。」

 

 グラビアアイドルのようなポーズを取り得意満面の(あるじ)の問いかけに、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達は口々に褒め称える……が、次の瞬間彼女達はハッと青ざめる。

 この賛辞は正しかったのか。いかに本物そっくりであれ、結局は張り付いたスライム……生きるパッドなのだ。それを至上の美のように称えるという事は、素のシャルティアを貶める事にならないか。自分達にそういう気が無いとしても、(あるじ)(とが)め立てするのではないか。もしそう取られたなら、どんな陰惨な罰が我が身に降りかかるか。

 

「そう? ありがと。おんし達も私の眷属だけあってなかなか美しいでありんすよ。」

「……!? な、なんともったいなきお言葉……。」

「いいのいいの。まあそもそも美しくない眷属を、私が側に(はべ)らすはずは無いでありんすよ。」 

 

 その言葉に吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達は驚き、動揺する。冷酷無慈悲な主人が自分達に御礼の言葉を述べ、なおかつお世辞を言うなど、かえって不気味である。内心はやはり怒っており、この後それに倍する罰が待ち構えているのでは無いか……っと身を震わせる。

 しかし今のシャルティアに他意は無い。単に至極機嫌が良いだけだ。普段なら吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達の言葉尻を捕らえてネチネチと虐める事もある……っというかそれが通常だが、今夜はありえないほど寛大な気分になっているのだ。

 

 その上機嫌そのものの(あるじ)の気が変わりませんようにと、腫れ物に触るように接する彼女(ヴァンパイア・ブライド)達──そう振る舞うのはいつもの事であるが──の気持ちなど一顧だにせず、シャルティアは湯浴みをしながら、もはや元からそうであったとしか思えないその巨乳を(まさぐ)り楽しむ。もしや水を吸って風船のように膨らんでしまうというオチ……にはならないとあらかじめソリュシャンに確認してあるので、たっぷりと時間を掛け、眷属(ヴァンパイア・ブライド)任せにせず自分で優しく洗ってやる。シャルティアが、NPCで無いシモベに対しこれほど愛情を込めるなどあり得ない現象だ。だが吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達はプチスライムに嫉妬などしない。ただただ、この穏やかな時間が続いてくれますようにとだけ願う。

 

 湯浴みをすませ吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達に身体を拭かせるシャルティアは、彼女達が手にするタオルが胸の上を通り過ぎる度に感じる()()()()()にまた満足の気持ちを新たにし、浮き立った様子を隠しもしない。館中の眷属達……知性の無い存在ですらが彼女の機嫌を感じ取り、どうかこの幸せが長引きますようにと至高の御方(ペロロンチーノ)に祈る。

 

 身体を拭き終えたシャルティアは再び全裸で姿見の前に立った。そして軽くトントンとジャンプする。

 

 ぷるるん ぷるるん

 

「んふ♪」

 

 ぷるるん ぷるるん ぷるるん

 

「んふ♪ んふ♪」

 

 ぷるるん ぷるるん ぷるるん ぷるるん……

 

「んふ♪ んふ♪ んふ♪」

 

 どんなに揺らしても、ずれる事が無いし形も変わらない。ソリュシャンが言った通りだ。

 これを見て、偽乳だと看破出来る者はいないだろう。完璧だ。あの守護者統括にだって対抗出来る。

 ならば、トウの立ったおばさんより外見年齢が若い自分の方が圧倒的に有利!

 シャルティアは両胸を鷲掴むと、この上なく邪悪で淫靡な笑みを浮かべた。

 

「さ、お前達、今宵は寝かさないでありんすえ。」

 

 完璧なバストによりさらに女王然とした威厳を増した真祖吸血鬼(トウルーヴァンパイア)は欲情に濡れそぼった目で、かしずく吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達を()めつけ、そう高らかに宣言した。

 

 

◇◆◇

 

 

 寝かさない……っとは言ったものの、普段よりずっと激しい行為をした後は、満ち足りていつもよりよほど早く寝付いたシャルティア。

 アンデッドであるシャルティアはもちろんその気になれば不眠不休で平気だが、普段は設定された生活スタイルとして睡眠をとる。

 古色蒼然たる棺桶ではなく、真紅を基調に飾られた天蓋付きのベッドに吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達を(はべ)らせながらだが。

 

 しばらく惰眠を貪った後、シャルティアは夢うつつのまま再び自分の胸をまさぐり、満足感を再確認しようとした。

 

 スカッ

 

「……ん?」

 

 スカッ スカッ

 

「ん? ん? ん? ん?」

 

 手応えが無い。

 

 スカッ スカッ ……ペタン

 

「………………!?」

 

 シャルティアはガバッと飛び起きた。そして自分の胸を凝視する。

 そこには……

 

 ──無い! 無い! どこに、どこにいった!? 私の胸! 胸!

 いやあるけど! でも無い! あるけど無い! 無い! 無い!?

 

 自分の足元が見られなくなるほどの巨乳は姿を消し、今までどおりの絶壁、まな板、ぺたん胸に戻っていた。

 

『ど、どういう事なの……!?』

 

 逃げてしまったのか? いや、ソリュシャンの話だと一度母体に落ち着けば、離れる事は無いはずなのに……!

 

「シャ、シャルティア様……。」

「あ゛あ゛んっ!?」

「い、いえ、その……。あの……。」

 

 伽を務めた3人の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)の内の一人が、これを伝える事によって激昂した(あるじ)から凄惨な死を賜る可能性を覚悟をしながらも、眷属としての務めを果さんと、震える手で手鏡を持っていた。他の二人は抱き合い怯えながら、仲間の勇気に感嘆している。

 そして彼女に懇願され異常な不機嫌を隠さないまま全裸で姿見の前に立ったシャルティアは、そこに映る小刻みに震える手鏡の中を見た。

 

「え?」

 

 意味が分からない。……見ているのものが、分からない。認識出来ない。

 ──しかし、次第に《それ》が何であるかが、脳に染み渡ってくる。シャルティアの眼が真円に見開かれ、瞳孔も最大に広がる。そして完全に理解した時、驚愕が真祖吸血鬼(トウルーヴァンパイア)を襲う。

 

 

「ひ・ひ・ひえええええええええええええええええええええええっ!!?」

 

 

 第二階層全体にシャルティアの絶叫が響き渡り、翼を持つ眷属たちが一斉に羽ばたいた。

 

 

◇◆◇

 

 

 極秘に死蝋玄室に呼ばれたソリュシャンの前に現れたのは、頭からすっぽりとシーツを被って眼がどんよりと曇ったシャルティアだった。まるで死人のような……死人(アンデッド)だが……雰囲気だ。上目遣いにソリュシャンを見る赤い瞳が、縋るような光を放っている。

 そして震える声で、ポツリポツリと語り出す。

 

「ど、どうして良いのか分からないのでありんす。昨夜までは確かに……。で、でも起きてみたら……じ、自分で勝手に外していいのか……で、でもそれで余計に酷い事になったらと思うと……だ、だからソリュシャンに相談してからと……。」

 シャルティアの様子に、ソリュシャンも顔が曇る。何の事でしょうか、とは聞かない。当然あれの事だ。

 自分が勧めた事によって、NPCの中でも気が合うシャルティアが混乱している。責任感の強い彼女にとっても辛い事だ。

 

 怯えきった吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)達──勇敢なる彼女も殺されなかったようだ──を人払いし、しばらく躊躇った後、シーツを取る。

「……!?」

 ソリュシャンは絶句する。

 最初は、単にプチスライム達が取れているだけなのかと思った。──だが……。

 恐る恐る、ゆっくりとソリュシャンに背中を見せるシャルティア。

 

 プチスライム達は、背中に張り付いていた。

 

「こ、これは一体……?」

「グスン。私が聞きたいでありんす、ソリュシャン。これはどういう事でありんすか……? グスッ。」

 

 シャルティアの口調は、ソリュシャンを責め立てるようなものではなかった。ただただ、助けて欲しいという戸惑いと怯えに満ちた泣き声だ。

 

「これはまさか……。ハッ!? そういう事……なの? で、でも……ありえるのかしら……?」

「げ、原因が分かるんでありんすか? な、なら教えてほしいでありんす! な、なんでプチスライム達は背中に移動したのでありんすか!?」

 聞きたくない。聞きたくはないが、聞かなければならない。

 

 ソリュシャンは言い澱んだ。憶測はつく。恐らく当たっているだろうが、それは……。

 

「どんな理由でも、ソリュシャンを怒ったりはしないでありんす。ペロロンチーノ様に誓うでありんす!」

「シャルティア様……。」

 NPCにとってもっとも大切な誓いである自身の創造主を持ちだされては、それがどんな残酷な宣告であったとしても答えなければいけない。

 ソリュシャンは覚悟を決め、出来るだけ淡々と、事実のみを述べる。

 

「……プチスライム達は、体の凹凸で前と後ろを判断します。意志はないので完全に本能なのですが。最初に取り付けた場所が胸と判断されれば、当然そのまま動きません。」

「ヒッ……!?」

「つ、つまり、その……。シャルティア様の背中が……前よりも、その、肩甲骨のでっぱりの方が胸と判断されて……その……。」

 

 そう、胸があまりにもまっ平らだったため母体(シャルティア)が寝付いて静かになった後プチスライム達は落ち着かなくなり、本能的に出っ張りを求めて背中に回ったのだ。

 シャルティアは……吸血鬼なのに、血の巡りは関係無いのに、クラっと目眩がして、眼の前が真っ暗になった。

 

「い、いえ、でも! プチスライム達もずっと背中にくっついているとは思われません! やはり胸と背中は感覚が全く違いますから! いくらシャルティア様のお胸がペタン……いえ、柔らかさ……あの、いくらなんでも……いえ、ですから……。最終的にはやはり前に戻るかと……!」

 

 気休めではなく、ソリュシャンの予測としてはこの後はまず間違いなくまた前に戻ってくるはずだ。一旦確認すれば、プチスライム達もさすがに移動したのは誤りだったと判断するはずだ。もう丸一日も経てば再び身体を半周するだろう。

 だがどう取り繕うと、一度体の前後を間違われたのは事実だ。ソリュシャンとしてもさすがにそれは予測のつかない、あり得ない事態だった。

 しかもシャルティアには黙っていたが、プチスライム達の判断の一つには乳首の存在もある。いくらまっ平らであれ、やはりこの移動は考えられない確率で起きた事だ。

 

 ひとつ慰み……っと言えるかだが……シャルティアがアンデッドであった事も災いした。心臓が動いていれば、さすがに位置関係は(あやま)たない。本来は、そういう願望がある男にでも取り付ける事が出来るのだから。知能が無いとはいえプチスライム達も相当混乱した上での、とりあえず移動してみるか、っという判断だったのだろう。

 だがその気まぐれは、文字通りシャルティアの胸を深くえぐった。元からえぐれてるのに。

 

 シャルティアはヨヨヨとへたりこんだ。

 

「これは……罰でありんしょうか。ペロロンチーノ様の……創造主たる至高の御方が設定した姿をNPCたる私が勝手に変えてしまったがゆえの、罪人(つみびと)の姿なんでありんしょうか……。」

「……! 申し訳ありません、シャルティア様。私が余計な提案などしてしまったために……。」

 

 創造主に対する罪と罰、っと言う思いはさすがにキツい。深々と頭を下げて謝るソリュシャン。しかしシャルティアは寂しげな顔で微笑み、静かに首を横に振った。

 

「ソリュシャンのせいでは無いでありんす。すべては私の浅はかな欲が招いた結果。お許し下さいペロロンチーノ様。私が愚かでありんした……。私の胸は、ぱっどで誤魔化してこそペロロンチーノ様のご意向に沿うのでありんすね……。きっとプチスライム達を通して私にそう伝えたかったのでありんしょう……。」

 

 ──もしペロロンチーノが聞いたなら、『あ、いや、うん、なんかゴメン。』っと手を合わせて謝りそうな、被創造者(シャルティア)の悔恨。

 

『まだアインズ様やアルベドに見せていなかったのが、せめてもの救いでありんしょうか……。』

 傷心の美少女吸血鬼は、わずかながらの幸運に慰みを求める。

 ほぼ姉妹であり、今のところ同じぺたん胸仲間でもあるアウラにはつい速攻で自慢してしまったが、念のため一日充分身体に馴染ませて……そしてちょっと一晩()()()()から披露しよう、っと思ったのが幸いだった。

 

 ──良かった── そう、自分に言い聞かせる。

 

 そして己が運命(さだめ)を受け入れた薄胸の美少女(シャルティア)は目をそっと閉じ、俯いたまま囁くように懇願する。

 

「外して……おくんなまし。」

 

 ソリュシャンは、ただ黙って頷いた……。

 

 

◇◆◇

 

 

『ふう……まさかこんな結果になるなんて。シャルティア様には申し訳ない事をしたわね……。』

 

 ナザリック地下第九階層、スパリゾートナザリック。

 ソリュシャンは9種17浴槽ある内の一つ、炭酸風呂に入り、肌にピリピリとした刺激を感じながら独りごちる。

 

 プレアデス達は……いや、NPC達は娯楽施設をほぼ使用しない。比較的頻繁に使用されるのは、エクレア他数人の常連がいる茸人間(マイコニド)の副料理長、ピッキーがマスターを務めるバーぐらいなものだろう。NPC達にとっての最大の娯楽……と言って差し支えあるならば生きがいであり喜び……は、至高の御方のために働く事である。ソリュシャンにとってもそれに近い喜びは、知的生物を自身の体内でジックリ溶かしながら、その藻掻き苦しむ様を味わう事ぐらいである。

 であるので、そもそも娯楽にあまり興味が無いのだ。一般メイドのインクリメントの読書のように、至高の御方に設定されている事ならば別であるが。

 ひょっとしたらその設定に従い大いに娯楽を楽しんでいるNPCもいるのかもしれないが、ソリュシャンは知らない。

 

 けれど、ナザリックの支配者(アインズ)はNPC達がそういった設定によらない、自由な振る舞いをする事を推奨している向きがある。

 比較的思考に柔軟性を持つ(それがスライムの身体性とリンクしているのかは不明だが)ソリュシャンは、その(あるじ)の意向を汲んでたまにスパを利用している。入ってしまえば、やはり気持ちも良い。時には人型を溶いて不定形なままお湯に揺蕩う事もある。

 ──今は完璧なプロポーションの豊かなバストをプカプカとお湯に浮かばせているが。

 

 そして天井を仰ぎながらぼんやりと今回の件に思いを馳せる。

 プチスライム達は、今ソリュシャンの体内にいる。本能だけのモンスターだが、それでも直接の(あるじ)であるソリュシャンの気分が伝わったのだろうか、なんとなく居心地悪そうにモゾモゾと動く。 

「あなた達のせいでは無いわ。」

 少し微笑んで、お腹……人で言う子宮あたりを、優しく撫でる。サディストの名に恥じない性格のソリュシャンだが、従属するモンスターに対する態度はシャルティアよりもアウラに近い。これは単に運が、あるいは巡り合わせが悪かっただけだ。そう割り切ろう。それに……。

 

「あら?」

 

 ソリュシャンはふと気配を感じ振り向いた。そこには、体の前面を手ぬぐいで隠した階層守護者が立っていた。

 

「アウラ様……。」

「や、やあソリュシャン、ご一緒してもいいかな?」

「ええ、もちろん。光栄ですわ。」

 

 アウラは軽く体を洗い手ぬぐいを頭に乗せると、ソリュシャンの横に浸かった。

 

「ふー気持いいね。炭酸風呂って初めてだけど、肌がシャワシャワしてちょっとくすぐったいけど、良い感触。」

「ええ。」

「意外だったんだけど、ソリュシャンって結構ここに来るの?」

「ええ、時たまですが。」

「…………。」

「…………。」

 

 少し沈黙が流れる。雰囲気からして、どうやらソリュシャンがここにいる事をプレアデスの誰かに聞いて、二人きりで話すには丁度良いと思い、わざわざ入りに来たのだろう。何か言いたげなのは分かるが、ソリュシャンは促さず少し待つ。

 アウラは上を向いてもう一度フーっと息を吐くと、さり気なさを装って話しかけてきた。

 

「ね、ねえソリュシャン?」

「なんでしょう、アウラ様?」

「あ、あのさあ……えっと……い、いや、あたしはさあ、未来が……あるの。まだ76歳だし。」

「ええ……もちろん。」

 確かに闇妖精(ダークエルフ)の長い寿命からすると、アウラは肉体的にも精神的にも、まだ幼い少女だ。

 それはわざわざ説明されるまでもない。当然、話題の前ふりだろう。

 

「だからさ、別にその……焦んなくってもいいんだ。」

「はい……?」

「うん、だけどさ、えっと……。いや、大人になるのは随分先だなあって思ってさ。結構……待つよなあ。」

「……ああ。」

 そういう事か。

 

 勘の鋭いソリュシャンはそれだけで察しがついた。恐らくシャルティアが自慢しに来たのだろう。

 そしてアウラも、それに対抗したくなったのだ。あんな事態になる前の真祖吸血鬼(トウルーヴァンパイア)がどれほど得意げだったか、目に浮かぶようだ。自分(ソリュシャン)の事も教えるなんて。

 そしてシャルティアの失敗を思い軽く逡巡するも、歪んだ性癖を持つ美しい不定形の粘液(ショゴス)は、悪魔の囁き……囁かれるのであり、囁くこと……を、止める事が出来なかった。

 

「アウラ様。」

「ん? ん? な、なに?」

「アインズ様は常に先を予測して行動せよと仰られています。ですから遠い未来に向けて研鑽を積むというのは、きっと良い事だと思うんです。」

「う、うん、そうだね。さすがはアインズ様だよね! 私達シモベは、そのお言葉に従うべきだよね!」

「ええ。アウラ様は将来、周囲の羨望を一心に集める見目麗しい淑女になられると思います。ですから、今からその姿をイメージして立ち居振る舞いを練習しておく事は決して無駄にはならないと思います。そして……学びとはまず形から入るのが良いと聞き及んでいます。これもアインズ様の受け売りですが。」

「うん、うん! アインズ様の言うことなら間違いないよね! 絶対だよね!」

「はい、もちろんですとも。」

 

 敬愛する(あるじ)のお墨付きとあれば、シモベ達にとってそれ以上の保証などありえない。すべての黒は、白になるのだ。

 

「……大きくしてみますか?」

「えっ、えっー!? な、何をかな~?」

 

 わざとらしく聞き返すアウラに優しく微笑みながら、ソリュシャンは思う。

 

 シャルティア様の事は残念だった。だけれども、あんな事はさすがに二度と起きまい。闇妖精(ダークエルフ)の心臓は動いているのだし。

 けれど……また他の何かが起きそうな気もする。予測不能な事態が。あの方を気の毒に思ったのは嘘偽りの無い感情だけれども、同時にあの麗しい真祖吸血鬼(トウルーヴァンパイア)にして最強の階層守護者が、身も世もなくしょんぼりと嘆く姿に、全く興奮しなかったと言えば嘘になる。愛おしいからこそ、その切ない姿もいじらしい。

 

 そして今目の前にいる、強く気高く明るい、まだ性に無知なる幼い少女。

 あれをつける事で、その心境にどのような変化が起きるのだろうか。それが、ただ単に大人になれたという純真無垢な喜びだけと思えないのだ。

 例え予感通りの何事かが起きなくとも、自分が手助けした行為によって引き起こされる感覚への戸惑い、ためらい、なんらかの喪失感、変化……。

 そしてその時に見せるであろう、様々な感情が入り混じった微妙な表情……。さぞゾクゾクとさせてくれる事だろう。

 それは、自然に開かれるまで決して誰も覗いてはならない、ゆっくりと大切に(はぐく)まれるべき秘めた蕾を、一度無理やり開花させるような背徳感。

 純粋なるものに刻まれる、二度と元に戻せぬ穢れ。

 

 ソリュシャンの体内で何かが疼く。(あるじ)の意を察した、プチスライム達の(うごめ)きなのか、それとも自身の……。

 

 これも一種の倒錯的なサディズムだろうか。いや、ナザリックの仲間(NPC)に対して自分が嗜虐性を発揮する事は無い。

 しかしあちらが望んでいるなら、それによって引き起こされる現象で、自分の趣味を満足させるのもやぶさかではない。

 これも、アインズ様がそういう関係を何とかと仰っていた。

『えっと……うぃんうぃん? だったかしら。』

 なぜ擬音がそういう意味になるのかは分からないけれど、至高の御方のお言葉ならばそれが絶対。

 

 シャルティア様が見たらどういう感情を引き起こすのだろう。アウラ様に対しても、そして自分に対しても。

 

 ──だが、ソリュシャンはこの先を見てみたいという欲望を抑えきれなかった。

 仕方がない、きっとこれが自分の、ヘロヘロ様に設定された性格()なのだから。

 

「普段の男装ももちろん素敵ですが……胸の空いたドレスを着こなすアウラ様は、さぞお美しい事でしょう。」

「えっ? や、やだなあ、何言ってるのさソリュシャン、て、照れるなあ。あ、あたしなんか……。」

「いいえアウラ様、貴方様はいずれ大輪の花を咲かせる、輝く蕾……。今でもその(こぼ)れる煌めきは、誰の目にも眩しいですわ。ご自身がまだ自覚なさっていないだけです。」

「……ア、アインズ様……も? アインズ様も、そういう目で見てくださってるのかな?」

「ええ、もちろん。」

 

 恥ずかしがりつつもキラキラと目を輝かせる闇妖精(ダークエルフ)の少女を前に、ソリュシャンは顔が変形するほど笑みが大きくなり過ぎないように、手で口元を抑えて気をつける。

 

 そして、どうせならもっと楽しみたい、っとも思う。

 

『提案してみようかしら。アウラ様は嫌がるだろうけれど、言いくるめ……コホン、納得させるのはきっと簡単ね。』

 

 あの(かた)の方は問題ない。口で何と言っても、本心では試したがるに決まっている。

 ソリュシャンは、すでに胸の大きくなった自分を想像しデレデレと幸せそうな百面相を繰り返すアウラに、さりげなく尋ねる。

 

 

「そうそう、アウラ様、マーレ様も……ご興味がおありなのでは?」

 

 

 ソリュシャンの笑みは抑えた手からこぼれ落ち、顎の先が水面に当たってポチャリと音を立てた。

 

                             

                                            END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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