ココロコネクト 面倒くさがりが紛れ込んだようです 作:黒木龍牙
「〈フウセンカズラ〉……、ってなんでそんなマイナーな植物の名前が……?」
フウセンカズラがそう名乗ってすぐ、他のみんなが動けない中、稲葉がそう言った。
「……はぁ?………さぁ?………まあ立場で言えば、『皆さんを観察する存在』みたいな感じで……ああ…やっぱりもういいや。じゃあ、僕はただのしがない〈フウセンカズラ〉ということで………」
「んで?ごっさんは今、気絶してるようなもんか?」
俺がそう言うと素直に頷くフウセンカズラ。
「ええ、……全くその通りです。………相変わらず……梶田さんは理解が早い……」
「俺は名木沢だ。チッ、前の苗字を持ってくるんじゃねぇ……」
フウセンカズラは相変わらず、梶田の名前を使ってきた。
チッ、あの夢は本当だったか。
「まあ……、梶田さんの言う通り、体を意識と意識の間に間借りさせていただいてます………。この人だったら、記憶がなくても寝てたで済ましそうですし……」
その部分だけ皆納得してしまった。
あと、梶田じゃねぇ。
「と言うより、……説明に入らせてもらってもいいですか?と言うより入らせてください。そして帰らせてください。お願いします」
気だるそうに、そして、相手のことを考えないマイペースさで、【後藤龍善の姿】をした〈フウセンカズラ〉は言う。
すると、義文が手を挙げた。
「と、言うことは……、この現象について説明してくれるということでございましょうか?」
妙な丁寧口調で、言った義文の言葉に〈フウセンカズラ〉はなんとも気だるそうに言う。
「……まあ……、あなた方の望むような説明じゃないかもしれないですが………。期待に応えるつもりもないですし……。じゃあ……早速………、あ、メモらないで大丈夫ですか………?………そうか……、記憶力抜群の稲葉さんと梶田さんがいましたね……。」
だ、か、ら、梶田じゃねえって何回言ったらわかるんだ。
あ、言ってねえわ……。
「ええとまず……、とりあえずこれから当分の間、皆さん六人の間で……時々アトランダムに人格が入れ替わるんです。皆さんご苦労様です、って一応言っておきます。……本当は全然思っていないですけど。……あれ?今僕最後に余計なこと言いましたよね……?ああ……、またやっちゃった。普段から独り言多いですからねぇ。治したいとは思ってるんだけど………。いや……、あんまり思ってないし、もう治そうとするのやめようかな……」
「誰と誰が入れ替わるってのも、いつ入れ替わるのかってのも、両方含めてランダム?」
今までおとなしくしていた伊織がいつも以上に声にドスは効かせず、冷静に聞いた。
いつも以上に冷たいからか、正直、底冷えした感じを覚える。
「ああ………さすが永瀬さん。その通りなんですよ。で、そんなランダム人格入れ替わり状態である皆さんを、僕が観察する……ただそれだけの話です。ああ……観察するといっても四六時中皆さんのプライバシーを覗き見てるわけではないのでご安心を……。特定の条件の時だけしか見ませんし………、というより見たくないですし面倒ですしねぇ……。とりあえず事態の把握はできましたか?できてないと言われても帰りますけどねぇ…。」
「説明不足が過ぎるだろ……。」
稲葉が不満をぶつけるが俺が先に質問させてもらう。
「なあ、とりあえず、質問だ。このランダム性には特殊な因果律もなく、何かお前らが作った機械みたいなので反映してるだけなんだよな?」
「よくお分かりで……、まあ、本当なら想像にお任せします……と言うところですが……、面倒くさいことはしないんです。僕は……、なので、コントロール下にあるわけではありませんからね……。」
「チッ、面倒だが、私からも質問を絞ってやる……。【なぜ私たちなのか】【これを終わらせるには】【お前の目的は】この三つだ。」
「チョイスがいいですねぇ……、稲葉さんも何回か経験しているんじゃないですか……?」
と訳のわからない事を言ったフウセンカズラだが、ゆるゆると話は続く。
「そうですねぇ……、一つ目ですが……、たまたまです……。あえて言うなら、皆さんが
なかなか面白かったから。という事になりますかねぇ……。」
「なかなか面白い……、って何だよ……。」
「皆さん……、それぞれ色々と面白いじゃないですか……?ああ……、自覚がある人とない人がいるんですねぇ……。」
ゆらりと口の端を釣り上げる……。
不気味だ……。
「あと……、なんでしたっけ?これの終わらせ方と……目的……ですか。………でも答える義理なんて無いですしねぇ……。終わるのは……なんとなく『ああ…、面白くなった』と思えるよになれば……。………しゃべることももう無いようですし……、帰ります。では……」
勝手に完結し、勝手に帰ろうとした《フウセンカズラ》。
「おい、俺の質問、もう1つだ」
「はい?答えるギリは無いと」
俺は瞬間的に移動し、フウセンカズラの胸ぐらを掴む。
「良いから答えろ、俺の記憶はなぜ戻った?お前は俺を、どうしたい?」
「別に梶田さんの記憶は僕に関係無いと思うんですけど………。多分、私を認識したことによって……記憶が呼び起こされたのでは……?目的は決まってます…………、面白おかしくしたい………です」
そう言うと、フウセンカズラは俺の腕を下から引き上げ、ひねって背負い投げする形で廊下に放り投げようとする。
俺はそれを逆手にとって、俺の腕を掴んでいるフウセンカズラの腕を掴み引っ張って、膝蹴りをフウセンカズラの背中にぶつけ、体制を崩す。
だが、腕をうまく引っ張ることができていなかったようで、俺の手から逃れた右腕の肘が、俺の鳩尾を深く突いた。
「ゴフッ!……………、痛えな……」
「それはこっちもですよ……。全くあなたは、相変わらずですね?梶田さん」
「だから、梶田じゃねぇ……」
俺は苦しいのを我慢し、なんとか立っていられるように踏ん張る。
皆が驚いているが気にしない、気にしていられない。
俺はさらにまだ引き止めようと、踏み出す。
右腕を突き出し、肩を掴む。
だが、フウセンカズラの左腕が俺の腕を左肩から引き剥がし、横にずれて引っ張る。
俺は鳩尾の痛みを考えることなく、その行動に移っていたわけだが、やはり痛む。
動きが鈍っていた俺がバランスを崩したところに、腹に蹴りが入る。
「ガッ!」
「梶田さん……、本気出してくださいよ。“あの時”みたいに」
俺はよろめいて後ろに下がり、長机に倒れこむ。
ドア側の脚が倒れ、斜めになり、ガチャンっと音を鳴らした。
俺はずるずると、重力のまま、滑って尻が地面に着いた。
息が少しできなかったが、なんとか息を吸い込んで、息を整える。
「はっ………ゴホッ………、あんなの……ゴッさんに使えるかよ……」
「まあ、そうですね……肋骨粉砕しますし……」
「「肋骨………」」
俺の言葉に面倒ごとを増やすように説明を加えたフウセンカズラのせいで、唯と稲葉が絶句する。
その瞬間、目の前が真っ暗になる………。
「ふっ……………、ぐう………ぅ…………」
目の前で俺が唸っている……。
俺は周りを見回すと、太一、唯、伊織、稲葉がいた。
ということは、俺が入っているのは青木か……。
だが、全員が周りを見回している
「あれ……?このタイミングで入れ替わりですか……。これは………面白い」
フウセンカズラはそう言って去っていった。
「いってぇ………」
悪いな、太一。
俺が手を出したばっかりに……。
男性陣内で三人が、女性陣内で三人がといった感じで入れ替わった。
俺が義文に、義文が太一に、で、太一がみぞおちに肘食らった俺にといった感じだ。
女性陣は稲葉が伊織に、伊織が唯に、唯が稲葉になっている。
俺の体の太一はソファで寝っ転がっている。
「ってか、龍斗ってあんだけ早く移動できたんだね?」
「ん〜?ああ………、えっとなぁ………。お前らは多分、あの直前までソファにいたと思ってるだろうけど……、唯の後ろに少し猫背でいたぞ?」
「ゑ"!?」
おい唯、稲葉の口からは絶対に聞こえてはならないような声で驚くな……。
みんなびっくりしてるんだろうが……、
「「ぶふっ!」」
面白すぎて義文と同時に吹き出してしまった。
我慢した方なんだけどなぁ。
「な、何よ……、そんな笑わなくてもいいじゃない!!」
「いやいや、笑うなって方が無理があるでしょ!」
机をバンと叩きつつ、立ち上がる唯(稲葉)。
義文(太一)は腹を抱えて笑っている始末である。
うん、やっぱりその姿で唯の言葉だとかなり無理がある。
伊織(唯)も笑っているし、本人である稲葉(伊織)も笑っている。
すると、伊織(唯)がずっと疑問だったのであろう事を聞いてくる。
「でも、なんで龍斗の事を梶田って呼んだんだろ?」
「そういえばそうだな……、心当たりはあるのか?」
稲葉(伊織)もその疑問に乗っかる。
心当たりが無いわけではない。
むしろ“あるに決まっている”。
なんせ、俺は……
視界が暗転。
自分の体に引き戻されたのだろう。
腹部に痛みが走る。
「う…………、痛い…………」
「戻ったか……」
その場で解散となった。
俺はトイレに寄って、腹を見てみると見事に青いアザが。
内出血……、くそ、通りで少しフラフラするわけだ。
「大丈夫?」
「ああ……、まあな」
今日は唯が門の前に残っていてくれた。
どうやら心配をかけてしまったらしい。
まあ、唯は俺が持ってきた自転車のカゴに自分のカバンを乗せ、サドルに座る。
俺はふと思った事を口に出してしまう。
「なぁ……、唯は俺のこと……、どう思う?」
「ん〜……、ふふっ、教えない」
んー?
いや、そういうつもりで言ったんじゃないんだ。
そうじゃない……。
でも、唯は笑顔で俺を見ている。
「怖く……、ないか?」
「何よ、さっきのことでびっくりしてはいるけど……、今までの関係が変わるわけないじゃない?何せ私たちは幼馴染なんだから」
そう言い切って笑顔をこちらに向けてくる唯。
あーーーー…………、負けた。
俺は唯の頭を撫でる。
髪が乱れないよう優しく。
「な、何よ?どうしたの?」
「ん〜ん、なんでもない。ありがとな、唯」
すると、後ろの網の上に乗っけたクッションの上に唯が座る。
俺はゆっくりと歩を進める。
駅前に着くまで、ずっと黙って居たが、居心地が悪いわけではなかった。
駅前に着いたので唯が降りる。
「乗せてくれてありがとうね。あ、今度、お菓子持って行くわね!」
そう言って、改札を通って行った。
見えなくなって俺は腹を撫でる。
やはり痛い。
おそらく、肋骨が亀裂骨折しているのではなかろうか?
ジンジンと痛みが増してくる。
カバンから携帯を取り出し、俺は姉ちゃんに電話をかける。
数コールあって、家に帰って居たであろう姉ちゃんが電話に出る。
「もしもし、姉ちゃん?」
『リョウくん?どしたの?』
「こけて机の角に肋骨を打った。痛みが増しているため、病院行ってきます」
『うわ、無理しないでね〜。あ、そうそう、アリス私が引き取ってるから、来たら凄いことになるわよ〜』
なんでそんなことになってるんだ。
まあいいか。
了解して電話を切る。
と言うことで俺は病院へ向かうのだった。
翌日 肋骨の痛みとあざは消えていた。
恐らくフウセンカズラだ。
流石に、最初から自分が干渉したことで日常生活に支障を来たすことは、消したかったらしい。
同時に左手首も痛めて居たことに病院で気がついたのだが、それも無くなっている。
入院せず、絶対安静と言われたので、昨日はホテルに泊まった。
問診だけで、レントゲンなどで確認して居ないことが、事実を無効化する力を持っている。
すると、電話がかかって来た。
今は朝の6時。
画面を見ると……、ゴッさんだった。
「もしもし、ゴッさんか?」
『ええ………、まあ………、そうです……』
後藤龍善にしては異様に覇気がない。
もしかして……、
「フウセンカズラ………か?」
『そうですね……、本題に入ります……。あなたが病院に行った記録全てを消しました。もちろん、医者の記憶や、そこに居た人たちの記憶全て』
「………やりすぎじゃないのか?」
『いえ、これが正しいんです……。まだ始まったばっかりですからね。あなたには、もっと、面白くしてもらいます』
そうかよ……。
「あ、姉ちゃんの記憶は?」
『もちろん、消したつもりです。ですが……、あの人は前の現象のことを知っていて記憶を持っている人物でもあります………、ああ、知らないんでしたね?僕とは違うフウセンカズラが……、あなたのお姉さんを巻き込んで………………“現象を引き起こした”ことがあったんですよ………、。ですが………、記憶を消失させたのに覚えているようでして……』
待て、そうだったのか?
だったら、説明がつく。
昔、姉ちゃんの反応が異常に遅い時があった。
その時だろう。
「そうか……、まあ良い。あいつらには俺から説明しておく」
『お願いします。では………』
俺は学校にいつもより早く来た。
ちなみに時計は7:13を示している。
勿論、部室に入りメールで全員に召集をかけた。
『できれば召集
昨日の怪我のことで話がある。
昼休みでも良いが、いけるか?
場所は部室だ。』
お、返信きた。
えっと、稲葉だな。
さすが早いな。
『了解
私は大丈夫だ。
他の奴らはどうだ?』
って個人かよ。
集団で出したのに個人で送るってか?
するとメールがもう一件きた。
青木だ。
『悪い!
寝坊した!
電車内以外メールできない!』
お、こっちは全員に送ってるな。
めんどくさくなったので文面だけで説明する。
『もうメールで話すわ。義文は後で説教な
昨日、フウセンカズラに蹴られただろ?
昨日病院行ったら問診だけで、でも、おそらく骨にヒビ入ってたと思う。
問診でもそう言われたし、痛みがどんどん増して行ってたんだけど、フウセンカズラが治してくれたらしい。
あいつらの考えは分からんが……まあ、人間じゃないから超能力的な何かで治したんだろう。
なんでもありだからお前らも気を付けろよ』
俺はメールでそれを全員に送信した。
その後、部室棟を降り、教室に向かう。
うー、少しフラフラする。
やはり朝だからか、頭に血が上っていない。
そう思っていた瞬間に、一瞬で目の前が道路になった!?
見覚えがある。
おそらく青木の家の近くだ!
「ふざっ…………、けんな!!」
俺は駅まで猛ダッシュすることになったことは言うまでもない。
今回は少し短くなってしまいました。
それにこんなにも遅く………、フウセンカズラとの対決シーンですが………、文句は言わないでくださいね?
文才なんか皆無です。
主人公は役に立ちたかっただけなのです。
仕方な……………、くはないですね。
原作を取り入れたほうがよかったかもしれませんが、少し僕の妄想を採用させていただきました。
それと、主人公と唯が普通以上に仲が良いことも分かりますかね?
唯から主人公への想いは恋人以上かも……、しれませんねぇ?
では、また次回