ココロコネクト 面倒くさがりが紛れ込んだようです   作:黒木龍牙

5 / 11
文化研究集会と情報元の命の危険

週末………、普通ならば俺だったら家でゴロゴロしたり、風呂を掃除したり、姉ちゃんと兄貴の喧嘩を止めるために奔走していたり。

もしくは料理の研究で、どの料理にはどの香辛料が合うか……、のような事もしている。

だが、今日は違う。

今は午前11:00。

俺の家は一軒家で、姉ちゃんと兄さんが向かい合わせの部屋として一階を使っていて、二階は基本俺一人となっている。

あ、書籍が二階にあったわ。

そこには学校の書類やら、昔買った本やらがあるため、兄さんと姉ちゃんも使っているのだ。

ちなみにリビングは一階にも二階にもある。

単純に広いわけでなく部屋をぶち抜いて繋げただけなのだが………。

あ、俺の部屋がそこと言うわけではない。

俺の部屋はかなり狭い。

シングルベッドを入れたのだが、俺がハマるくらいの隙間が横にあるくらいの幅で、宿題はほとんど隣のリビングで行なっていたりする。

まあ、縦に長いため、ベッドの足元がぬいぐるみやら睡眠グッズなどで占領されている。

ここが最初に青木に入れ替わられた時に荒らされた場所だ。

そんな事はさておき、だ。

今はクッションの設置やら色々している。

まあ、そこまで散らかっていないのが良かった。

すると姉貴が書籍から出てきた。

 

「ねえ、何してるの?」

 

「あん?文研部総集合で今からちょっとだけ集会するだけだ。今から料理作り」

 

「へぇ?義文くん来るの?」

 

「ああ、来るぞ………?もしかして……」

 

「采花(サイカ)呼んじゃった」

 

テヘペロする姉ちゃんの頭頂部にチョップをかましつつ、俺は考える。

青木采花(アオキ サイカ)、青木義文の姉であり、姉ちゃんと同い年の二十歳。

この二人、もうすでに酒を飲み続けるザルである。

正直ダメだと止めた兄さんも巻き込まれ、酒に弱い兄さんは一瞬で潰れる。

最終的に朝まで飲むと言うのが、姉ちゃんと采花さんのお約束となっている。

となると……、俺はあいつらの飯を作った上、姉ちゃん達のためにつまみまで用意しなければならんのか………。

 

「酒?」

 

「もち」

「……………」

 

「あだ!無言で叩く事ないじゃない!!」

 

「アル中になってもしらねぇぞ?………、つまみは用意するから下で飲んでくれよ?」

 

「はいはい、分かってる分かってる」

 

そう言って、数冊の本を持って下に行く姉ちゃん。

見た所数学の参考書らしかったが……、まあ、あの人達のことだ。

勉強など二の次だろう。

まあ、そんなことは置いといて、俺はあいつらの昼飯を用意しなければならない。

もうすぐ11時半。

いつの間にかこのような時間になってしまった。

すると電話がかかってきた。

唯だ。

 

『もしもーし、聞こえてますか〜?』

 

ん?だが、声が違う。

伊織だ。

 

「なんで伊織が唯の電話に?」

 

『単純に今入れ替わりが起こっているからなのです。ちなみに唯と稲葉んね?』

 

なるほどね。

で、伊織から電話かけてくれっつー話なわけだな。

 

『青木と稲葉ん来てないから、集まったら行くね〜』

 

「はいはい、りょうかーい」

 

電話を切って、俺は料理を作ることに決定した。

 

 

 

 

「いや〜、たらふく食べた……」

 

「美味しかったねぇ〜」

 

太一と伊織がそう言いつつお腹をさする。

青木と唯はまだがっついてるし、稲葉はトイレに。

俺は食った後の片付けをしている。

きのこのクリームパスタ、前菜としてイカとナスの入ったサラダをご馳走した。

青木と唯も食べ終わった。

皿を洗い終わり、ふう、と一息ついて、ソファに座る。

すると、伊織がどっしりと重みのあるクッションを投げ出した。

3つくらいあるので投げ合いになっている。

俺に飛んできたがはらった。

すると、それは跳ね返ってドアの方へ………。

あ、ドア開いた。

 

「ふう、もどっっ!?」

 

バフッ

戻ってきた稲葉の顔面にそれが当たったのは必然だったのだろうか?

稲葉の頭が後ろに倒れ、真上にクッションが乗って少し面白い。

稲葉が顔を戻し、クッションが落ちる。

その顔には、怒りと恨みが混ざっていた。

 

「おい……………、覚悟は…………、いいな?」

 

なお、稲葉も参戦する模様。

 

 

 

 

 

 

昼の3時。

おやつの時間だな。

俺は未だ続いているクッション投げ大会から抜け出し、自家製のポテトフライでも作ろうかと悩んでいると同じく疲れたのか、唯が出てきた。

 

「お、な〜にしてるの?」

 

「ポテトフライを作ってるところだ。唯もなんか作るか?」

 

「ううん。今はいいかな。それにしても、稲葉まで参戦すると思わなかったわ」

 

「ああ、それはわかる」

 

稲葉がプチギレて、青木と太一、そして伊織にクッションを投げまくったのだ。

そこから試合開始的な感じで、俺以外の七人がそのクッション投げ合い大会をしている中で寝ていたら思いっきり飛んで来て、時間も時間だから出て来たのだ。

ちなみにそれはもちろんうちの姉ちゃんと采花さんも入っている。

まあ、今は酔っていたと言うこともあり、少しダウンしているが……。

 

「ねぇ、今日って何のために集まったんだっけ?」

 

「ん?確か現象のことについての反省会じゃなかったか?」

 

「もう完全にみんな忘れてはしゃいでるわね……」

 

「まあ、もうそろそろ止めといてくれ。あいつら一応運動系ではないんだからな」

 

「はーい、任された〜」

 

唯に頼むと再び部屋の中へ戻って行った。

まあ、帰ったら唯もまた参戦してたんだけどね。

 

 

 

姉ちゃんと采花さんが出て行き、クッションの投げ合いが終わったため、やっと会議に入る。

 

「はぁ………、なんか妙に疲れたな……」

 

「当たり前だ………、ってさっき稲葉はどさくさに紛れて、青木を罵ってたよな………」

 

「『アホ木』連呼してたね」

 

「ってかなんで姉ちゃんいるんだよ……」

 

何をしているのだか……。

ってか、唯が疲れていないのはわかるが、何故に伊織がピンピンしてるのか。

稲葉と太一、それに青木は三人がけのソファでグダ〜としている。

それに比べ、参加しなかった俺、体育会系の唯、それにおそらく少しづつ休憩を挟んで疲れを取っていた伊織は、クッションに座り、ポテトフライをぱくついている。

1番の問題点を言ってみる。

 

「で、だ。現象の反省だろ?まずひとつ。おめーら、トイレ間違えたやつ手あげろ!」

 

俺と稲葉以外の四人が手をあげる。

 

「おい!?お前らは何を考えてんだ!?トイレ行きにくくなっただろうが!?」

 

「いや〜……」

 

「くせで………ね?」

 

義史と伊織がそう行ったので、俺は迷わずクッションを顔面に的確に投げる。

ボフッと当たり、義文は後ろの壁に後頭部をぶつけ、伊織はゴロンと思いっきり倒れる。

おい、伊織、服がまくれて下着見えかけたぞ。

だが、太一の方からは捲れた時に見えていたらしく、頬を赤くし、目をそらす。

 

「太一、死刑。この間青木から借りてた漫画の題名言うだけで勘弁してやる」

 

「水着女子水泳大か………、って待て!?なんでそうなる!?」

 

「いや、何と無くだ。まあ、そこ男子二人が水着好きと分かったところで、だ。女子に粗末な物見せたくなかったら先トイレ行くこった」

 

俺がそう言うと、唯が手を挙げた。

 

「できればでいいんだけど、同じくそれ推奨します………。だって!トイレ行くたびに、男のアレ見ないといけないのよ!?」

 

「いやー、私はもう立ちション出来るくらいには慣れました!」

 

「伊織は少しは抵抗しろ!!」

 

唯が吠えた後、伊織が爆弾投下し、稲葉が吠えた。

って、そういえば俺、立ちションしないからなぁ……。

 

「大きさは太一が一番でかいかな。順に太一、龍斗、青木だったかな」

 

「って、何言ってんだ!?」

 

まあた、伊織が爆弾投下した……。

青木まじで落ち込んでんじゃん。

ソファで体育座りして膝に顔埋めてるじゃん。

すると、太一がめっちゃ青木を慰めようと背中をさすっているが、言葉が出てくるわけではない。そういえば、青木が唯になった時、呼び方で結構揉めてたと言うことを思い出した。

 

「とりあえず、お前ら、家族の呼び方面倒臭いからまとめるぞ。義史は親父、お袋、姉ちゃん、唯は杏にママにパパ、太一は母さん、父さん、で………妹の……「莉奈だ」そうそう、莉奈、稲葉んは兄貴に、母さん父さん、伊織はお母さん…………、って感じか。プラスで、俺は姉ちゃんと兄さんだ」

 

「って、なんでそんなに知ってるの!?なんで!?」

 

青木が疑問に思い、言葉にする。

 

「いや、俺稲葉より諜報力あるから」

 

「なんだと?」

 

「一応、この五人の情報は結構知ってるかな。俺の情報をどこまで掴んでるかも知ってるし」

 

俺がそう言うと、皆が唖然とする。

何故って顔するな。

説明するけどさ。

 

「俺、一応、みんなの親とも知り合いだったり、兄弟姉妹とも知り合いだったりするし。八重樫妹はよくアリスと来るし、義文の姉さんも今来てるくらいだからよく来るし、杏はメル友だし、稲葉の兄貴は兄さんと同期だからって理由で結構来るし、伊織の母さんは伊織と買い物する時以外は一緒に買い物行くし」

 

「待て、色々突っ込みたい。兄貴が来るだぁ!?」

「待て!莉奈が来るだと!?」

「杏め……。私の個人情報を……」

「お母さん何しちゃってんの!?」

「知ってるから………もう………いいか」

 

稲葉と太一、伊織が取り乱し、唯と義文は目が死んでいる。

ちなみに、結構マジだったりするのでなんとも言えない。

 

 

 

そんなこんなで夕方。

 

「じゃあな。気つけて帰れよ〜」

 

「帰ったら、兄貴には覚悟してもらわねぇとなぁ……」

「い、稲葉ん〜。ちょっといいか?」

 

「あ?なんだよ」

 

俺はみんなが帰る中、稲葉を呼び止める。

俺はちょいちょいと耳を貸すようにジェスチャー。

耳を傾けてくるから、小声で言う。

 

「お前、ストレス予想以上に溜まってたんだろ」

 

「っ………、うっさい。私は別にストレスなんか」

 

「じゃあ、お前の右腕に出ていたはずのじんましんはどうなったんだ?」

 

「っ…………………」

 

黙りこくってしまった。

事実、ここ最近稲葉の右腕にはじんましんが出ていた。

おそらく、自分と誰かが入れ替わることにより、自分の体がどうなるか。

自閉症と人間不信である稲葉にとってはかなりのストレスになっていたのだろう。

 

「はぁ………、俺はこれでも結構人のことは見ているつもりだ。腕と足、首、顔くらいは見ている。いかがわしいことは、正直興味ないが、お前らの体調を気遣うくらいはしているさ」

 

「…………、知って………たんだな」

 

「まあ、稲葉の性格くらいはわかっている。相談くらいは乗る。何かあってからじゃ遅いからな?吐き気とか立ちくらみ、頭痛、不眠症が出たら俺に言え。俺は、裏切らないつもりでいる。お前が裏切ったら俺は泣く」

 

「泣くなよ……ふふっ……、ありがとう。元気が出たよ」

 

稲葉が、力なくではなく、心から笑っているように見えた。

稲葉と皆が駅に歩く中、方向が違う伊織が俺の方に寄ってきた。

 

「バイクで送ってってよ。暇ならだけどさ」

 

「………、はいはい。分かったよ少し待ってろ」

 

俺は車庫からバイクを出してきてエンジンを吹かす。

バイクはホンダ CBR1000RR

平成仮面ライダーにおいて多くのバイクの元となったバイクだ。

俺はヘルメットを伊織に渡して、バイクにまたがる。

伊織はヘルメットをかぶり、後ろに乗って、俺の腹に腕を回す。

 

「行くぞ」

 

「うん!」

 

俺はエンジンを吹かして、伊織の家まで走る。

 

『ねぇ』

 

「あん?」

 

ヘルメットのマイク、スピーカーを通して、伊織が話しかけてきた。

 

『稲葉んと、何話してたの?』

 

「………………、あいつのストレスの話だ。あいつ、ストレスで右腕上腕部にじんましんが出てたんでな」

 

『そう………、なんだ………。気づけなかったなぁ……』

 

暗い声。

伊織は人の異常を見抜くことが良くある。

それは少しの行動の違いだったり、違和感を敏感に感じ取る能力を持っているんだ。

だからこそ、気づけなかった。

それは友達として、クラブの部長として、親友として………………。

悔しいというよりは、自分への攻め。

何故気づけなかったのか。

気づかないなんて、おかしい。

そう思っているだろう。

 

「稲葉はお前にも気づかれないよう頑張ってた。俺も、腕まくりした時、偶然気がついた」

 

『でも、気づけなかったんだよ?親友って…………、名乗れないよ……………』

 

俺の胴に回している腕に力が入る。

俺はバイクの速度を下げ、端に止める。

スタンドを下ろし、バイクを仮固定。

エンジンを切ってロック完了。

俺は伊織に腕を少し広げてもらい、前後反対に座る。

ヘルメットを外して、伊織の頭を撫でる。

 

「な、何さ、どうしたの………」

 

「うるせ、黙って撫でられろ」

 

俺は伊織のと俺のヘルメットを前のサイドミラーとグリップに引っ掛け、伊織を抱きしめる。

 

「ちょ、ちょちょ、さすがに恥ずかしい………」

 

「お前のせいじゃないぞ」

 

「っ!」

 

「俺も、伊織が見つけて、俺が見つけられなかった時のことを考えたんだ。そしたらさ、無性に抱きしめられたかった。だから、抱きしめた」

 

俺は伊織の後頭部を撫でる。

安心したように、こわばっていた伊織の体の力が抜けていく。

 

「……………正解だから困るんだよなぁ……」ボソッ

 

しっかりと聞こえているぞ、伊織。

俺はさらに撫でる。

 

「相変わらず、直感よすぎ。もー、あんたはあたし達に甘すぎ。もっと辛く接しろ…」

 

そう言って、俺を抱きしめ返す。

少し驚いた。

まさかこんな反撃が来るとは……。

 

「でも………、今はそれが一番、私にとっての最高のご褒美だからさ。辞めないでよね」

 

「ったく………、自分勝手なこと言いやがって」

 

伊織の頭を撫でる。

優しく、今にも壊れそうな、ガラス細工を扱っているかのように。

それはもう、ヒビが入っていて、今にも崩れそう。

壊れないよう、この子がこれ以上、傷つかないよう………。

ある視線に気がついた。

その瞬間、俺の腕の中にいたのは、冷たい何かだ。

 

「……あれ?気がついちゃった………?」

 

「…………フウセンカズラ…………、しかも俺たちに接触して来た個体とは別個体か」

 

「………そこまで気がつくって………、相変わらずのキチガイ性能………。そう……、別個体…………、二番目でいいよ………」

 

バイクから降りて、伊織の体で喋る二番目。

いつも、基本は笑顔を絶やさない伊織だからか、今の無表情で俺と少し距離を取って話す伊織は不気味以外の何者でもない。

 

「何を……、しにきたのか………。それは、あなたの記憶を戻すため」

 

「は?何を」

 

俺の額から汗が垂れる。

夏も終わり、涼しいと感じる期間で、もうすぐ夜だからか、肌寒いと感じる人もいるであろうこの時間。

なのに汗が垂れて来る。

手の甲で拭うと、それは手の甲に染み着き、皮膚を赤く染める……。

血…………?

待て、これはおかしい……。

これは………、現実か?

いや、現実の映像と同時に、もう一つ、記憶が同時に流れている。

フラッシュバックか……………。

そうだ、これは夢の続きだ。

俺は、人を殺した。

自分以外が敵にしか見えなくなった。

現象だ。

そういう現象だったのだ。

そうだ。

俺は、親友を殴り殺したんだ。

今は記憶がかすれてしまった………、名前が思い出せない。

頭から流れる血は、そいつが抵抗した跡。

顔の判別がならないくらいまで、ぐちゃぐちゃになるまで殴った。

その時、親友が俺の額に石を打ち付けできた傷、そこから出てきた血は俺の額を、頰を、目を濡らした。

だが、次の日には親友を含めたみんながいつも通りだった。

その親友の命は吹き返し、顔は元のまま。

いや、異常だったんだ。

現象を知っていたのはその親友を含めて俺と四人。

だが、その親友の中で、俺は知り合い程度の判別になっていた。

俺は引きこもった。

俺は親友を殴り殺したという自分の容赦のなさ、そして、他の三人までも、俺は殺してしまうのではないかという恐怖からだ。

親友以外の三人は、見舞いとして、来てくれたが、俺は食事を摂ることも、外に出ることもなく、部屋に引きこもり続けた。

栄養失調で倒れ、一ヶ月絶対入院と、俺の体はかなり弱体化していた。

そして俺が学校に戻った時、……………その四人は失踪した。

正確には入院中に家族ごと消えた。

学校側、クラスメイトに聞いても、そんな奴はいなかったの一点張り。

そうだ。

俺が引きこもったから、あいつらは。

 

「ねえ…………、思い出した?」

 

世界がぐにゃりと曲がる。

目が回る。

焦点が定まらず、平衡感覚がなくなり、倒れる。

 

「…………?やりすぎ………かな」

 

呼吸が荒くなる。

汗がとめどなく出て来る。

全身の筋肉が痙攣を始めた。

 

「………、トラウマって…………、こうなるんだ」

 

「………だ………ま…れ…………」

 

絞り出した声が自分の声なのか。

それさえ分からないまま、意識が遠のく。

伊織の声が反響し、脳を揺さぶる。

ダメだ。

揺らぐ世界の中、なんとかとらえた伊織の顔は、笑っているように見えた。

 

 

 

伊織視点

 

「え?」

 

さっきまで抱きしめられていたのに、その感覚がなくなり、今地面にへたり込んでしまった。

なんで、こんなに疲労感が?

それに、バイクに座ってたのに……。

そう思うと同時に、目の前で倒れている龍斗に目が行く。

近付いて息をしているかどうか確認する。

大丈夫、息はしてる。

でも、荒い息だ。

 

「ハァ…………、ハァ…………、ハァ…………、ハァ…………」

 

「きゅ、救急車呼ばないと」

 

急なことで、手が震えて思うように動かない。

携帯を落としてしまう……。

それを拾おうとして手を伸ばす。

でも、携帯が差し出された。

携帯を拾ったのは全く知らない人でもなく、私の手でもない。

 

「………、落とし……たぞ」

 

「龍斗!よかった!死んじゃうんじゃないかってヒヤヒヤしたんだから!!」

 

本当に、びっくりした。

抱きしめる。

強く、強く。

苦しいはずの龍斗は、私の頭を優しく撫でた。

 

「大丈夫、大丈夫だ…………」

 

「苦しい!?よね!?救急車呼ぼうか!?」

 

「耳元で声を荒げるな………、大丈夫………、落ち着いた……」

 

「でも、目から血が!!」

 

大丈夫と言っている龍斗だけど、涙じゃなくて、血涙を流している!

こんなの、大丈夫じゃないよ!

 

「あ……、目に力入れすぎたか…………、大丈夫、すぐ治る……」

 

「でも!」

 

自分でも焦っているとわかっている。

だけど、今、すごく疲れた顔をしてる。

なんでだろ、自分の視界までぼやけて来る。

龍斗は上半身を起こして、私の涙をぬぐって頭を撫でてくれる。

龍斗は無理して私に優しくしてくれているんだ。

 

「大丈夫だからさ、落ち着いてくれ。伊織」

 

「うう………、ぐずっ………」

 

なんで、私が泣いているんだろう。

自分でもそう思うくらい謎だ。

落ち着いて来た。

龍斗も、ティッシュを出して、目を拭いている。

 

「悪い、こっからは一人で帰れるか?」

 

「そっちこそ、大丈夫なの?目は見えてる?」

 

「うん、大丈夫。見えてるよ」

 

「血は?」

 

「治った………、と思う。口の奥の方でまだ血の味するけど」

 

「………?なんで口の中?」

 

「あー、目と鼻と口と耳は繋がってるからだ。涙と鼻水が同時に出るのと同じ理由」

 

初めて知った。

だから、口の中が血の味しているのか。

 

「でも、帰れる?」

 

「ああ………、なんとかな。いざとなれば姉ちゃん呼ぶし、大丈夫」

 

「そっか…………」

 

これ以上接していたら迷惑になるだろう。

 

「じゃあ、また明日。いざって時は休むんだよ」

 

「………ああ……、またな。伊織」

 

 

 

 

龍斗side

やべ………、貧血だ………。

未だに口の中が赤いらしい。

道端にぺっと唾を吐いたが、真っ赤に染まっている。

伊織のヘルメットをシート下に入れ込み、ヘルメットをかぶる。

バイクにまたがるが、血の涙が出た右側の目が少し見え辛くなっている。

まずかったかな。

俺はすぐにエンジンをかけて、家に引き返す。

数分で家について、家に入る。

すると、飲んだくれ二人が、まだ下のリビングで飲んで居た。

兄さんは帰って来て居ないのか。

俺はまず洗面所で目を洗う。

血をぬぐい切った後、二階に上がって、自分の部屋に入る。

自分の部屋のベッドの奥。

そこに、薬を入れている小物入れがある。

つまみを左手の指先でしっかりと持って引っ張るが開かない。

あれ?

俺は右手でやってみると簡単に開いた。

そう自覚した途端、左腕に筋肉痛に似た痛みが来る。

二番目に記憶を掘り起こされた時、無意識のうちにかなり左腕に力が入って居たのだ。

家に帰って来たと同時に緊張がほぐれたのか、左腕に力が入らなくなってしまったらしい。

湿布と痛み止めの錠剤を取り出し、台所へ。

水を取り出して、コップに注いで薬を飲む。

上半身を脱いで、左腕になんとか湿布を貼って、上着を着る。

俺は台所、二階リビングの電気を消して、自分の部屋に戻る。

ベッドに潜り込み、電気を消す。

入れ替わり………、それ以上に俺からしたら、フウセンカズラが厄介だな……。

目を閉じる。

布団の温かみ、左腕の湿布の冷たさ。

未だに思い出す額から顔に流れる血の感覚。

深い闇に飲み込まれるように、俺はゆっくりと夢に溶け込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「………余計な事をしてくれましたね…………。面白いから良いですけど」

 

「問題………ないよ……ね?………まあ、彼は正直いらないと思うけど……」

 

「少し………、入れ替わりから除外してみましょうか」

 

「そうね………そうしましょ」

 

「ああ……、なんであなたなんかに………、とりあえず………あなたは静かにしておいてください」

 

「うん………、いいよ………」




どうも、センター試験真っ最中の黒木です。
とりあえず、次回からアニメなどでの三、四、五話あたりをしていこうと思います。
長くてすいません。
はい、龍斗君ですが、かなりの傷を負っています。
人を小学生で殴り殺す。
他人、自分以外が敵に見える。
小五の子供からしたら、精神的ショックが大きかったのでしょう。
親友だった子、名前は忘れてしまっているようですが、やはり親友が自分のことを忘れてしまうと言うことは辛いことだと思います。
全てはフウセンカズラが悪い。
そして、龍斗の情報元がまさかの五人の家族だったり、青木姉が出てきたりと、そのうちオリジナルキャラのプロフィールでも出そうと思います。
ではでは、おやすみなさいませ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。