――― 呉 ―――
「……畜生…」
ガミラス艦隊とキリシマやショウカク達の艦隊戦の結果はと言うと、ガミラスの勝利で終わろうとしていた。
その証拠に、キリシマとナガラは艤装共々傷付き疲れはてて地上で踞って動けなくなり、ハツヅキと共に退避した姉ショウカクから指揮を引き継いだズイカク達空母艦隊は、傷付きながらも比較的軽傷なので艦隊行動は支障が無いのだがコスモファルコン隊が壊滅してしまって、上空の軽母ヌ級を睨んでいて、タマ達水雷戦隊とズイカク達と同じ様な状態で傷付いたショウカク達を治療しているチトセを守るように前方に展開していた。
それに対してガミラスは、駆逐イ級2隻と駆逐ハ級の計3隻を失うも、無傷の軽母ヌ級が多分小破状態の駆逐ハ級共々艦載機隊を戻していた。
そして軽母ヌ級と駆逐ハ級の2隻はゆっくり降下し始めた。
「アイツ等、呉にトドメをさす気ですね」
「ええ、危険なモノを徹底的に消すつもりよ」
砲撃能力が付加されたと言え、基本的に艦載機による攻撃を主体とする軽母ヌ級が降下してきたと言う事は、ガミラスはキリシマやズイカク達を脅威と見なしていない事の表れであった。
だがガミラス側の判断は正しく、現にキリシマとナガラは身動きが取れず、ズイカク達やタマ達は艦載機や空間魚雷(ミサイル)が尽きてしまって、全員が戦闘不能となっていた。
で、そんなズイカク達を嘲笑うかの様に軽母ヌ級と駆逐ハ級の2隻は地貫通爆弾を複数投下、射出口近くに次々に着弾して派手な砂煙が上がった。
此の爆撃に艦娘達だけでなく、呉の地下都市で逃げ惑う住民達が悲鳴を上げながら生き埋めになっていく光景が否応なく思い浮かび、ズイカクが弓矢を構えながら前進しようとした。
「ズイカクさん、早まらないで!」
ズイカクがコスモファルコン隊共々特攻で軽母ヌ級を葬ろうとするのを察したショウホウがしがみついて止めた。
「離しなさい、ショウホウ!
呉が殺られるのを指を食わえて見ていろって言うの!?」
「落ち着いて下さい!
あれは表面を抉る程度のです!」
だがそのショウホウでさえ最後の手段は特攻しかないと内心思っていて、迷いからズイカクを止める力が少しづつ弱まっていて、そんな2人にキリシマは一瞬だけ目線を向けた。
で、奇妙な徹底振りを見せるガミラス艦隊に何かを誘きだそう……否、大和を狙っているのではと推測し、沖田の推測通りに大和には何かあるのではと思っていた。
「どうやら司令の推測は外れたみたいね。
帰りましょう、ヴェル」
尤もそんな事など知る訳が無いレシーテリヌイはウラジオストクへ帰還しようとした。
「いや、そうとも言い切れないよ」
「どう言う事?」
そんなレシーテリヌイをヴェールヌイが呼び止めた。
『…ズイカク!』
で、そんな時に沖田の通信が入った。
『直ちに残った航空隊を全て発進させろ』
「全機発進!?」
「攻撃させたら一瞬で壊滅する可能性大ですよ?」
沖田の指令にズイカクが戸惑い、ショウホウが疑問を感じた。
『否、防空は兎も角、攻撃はしなくていい』
「じゃあ、私達は何をすれば?」
『着弾観測だ』
沖田のショウホウの質問への返しにショウホウとズイカクが疑問を感じ、唯一該当しそうなキリシマが戦闘不能である事をショウホウが言おうとしたが、その直前に埋まっていた射出口の扉が大量の土砂共々上空に吹っ飛び……射出口と思われる場所からハツシモもカミカゼが主砲を身構えて警戒しながら出てきたのに続いて、サツキ、ミカヅキ、ハタカゼの3人係りの牽引ビームで吊り上げられた大和が砂煙の中から出てきた。
「…大和……あの子達は、ナトリの処のだ…」
「遅かったじゃない…」
大和の登場にナガラがカミカゼ達が妹の1人の配下である事を察しながら驚いている隣で、キリシマは苦笑していた。
「まさか、沖田提督の狙いはあの人?」
「何でアイツが今更出てくるのよ!?」
更にショウホウが戸惑っている隣で、ズイカクは絶句し、先代瑞鶴を犬死にさせた大和にズイカクが嫌悪感全開の視線を向けていた。
「サツキ、取舵一杯」
「おう」
で、当の大和はそんなズイカクに気付きもせずに、教導役のサツキに指示を出していた。
更に言うと、そのズイカクは諭していたショウホウと共に予備のコスモファルコン隊を仏頂面で発艦させていた。
「艤装はなんとかなってます?」
「…元から壊滅している機銃と高角砲は駄目。
副砲は砲弾が無い。
主砲は3基共動かせて三式弾が装填できたけど、
元々坊ノ岬沖海戦の損傷がそのままの上に錆の塊となっている大和の艤装にミカヅキが不安になって訊ねるが、大和の返事に益々不安が増していた。
「そう言うのを、普通は絶望的って言いませんか?」
「そうかもね」
更にハタカゼも指摘してきたが、当の大和は何処か他人事の様な返事をしなから艤装を確認していた。
「空間魚雷の準備、何時でもいいです!」
「…目標、軽母ヌ級。
主砲全門斉射用意!」
ハツシモとカミカゼがガミラス艦隊の急接近に備えて身構えるのを確認した大和は直ちに射撃準備に入った。
『距離12万、上下角45度、待機速度秒速5千キロだが徐々に速度を落としている。
但し駆逐ハ級は先行し、若干加速』
『ハ級は無視、ヌ級を狙え』
「進路は?」
「2隻共に変化確認出来ず、真っ直ぐ下りてきている」
「だったら仰角9時から9時5分に設定!」
ショウホウの観測報告に沖田の指令で大和は軽空母ヌ級に狙いを定めていたが、本来落下物への射撃は非常に難しいモノなのだが、幸いな事に軽母ヌ級は大和の存在と状態に戸惑っているらしく、駆逐ハ級を先行させた以外は速度を落として単純な動きをして隙を見せていて、狙うには絶好の好機であった。
で、大和はショウホウだけでなく、カミカゼのオオヨドから拝借したレーダーでの測量下に3基の主砲を動かしていたが、背部の第三主砲に違和感を感じて後ろに振り向いた。
『第三砲塔、0.2秒遅れているぞ!
しっかりしろ、訓練通りにやればいい!』
「此の状態じゃあ、しょうがないでしょ!」
沖田も大和の第三主砲の動きの遅さに気付いて、直ぐに注意が入った。
「サマール沖みたいな空振りは許されないの分かってる!?
此れ外したら、ただじゃすまないのよ!」
「言われなくても分かってるわよ!!」
全弾外すと軽母ヌ級が射程圏外に逃げる危惧もあってカミカゼが怒鳴り、レイテ沖海戦で空母群を取り逃がした醜態を言われて大和が怒鳴り返した。
だが、第一、第二主砲が準備を終えて軽母ヌ級の動きに合わせてゆっくり動いているのに反して、第三主砲は3本の砲身が上下バラバラに動いて中々揃わない為、大和に焦りが感じられた。
『間も無く距離11万、何やってんの!!?』
「急いで、ヌ級の手足が開いてる!」
ズイカクの怒鳴りだけでなく、深海・軽母ヌ級と違ってガミラス・軽母ヌ級の下腹部には艦隊戦ではあまり役に立たない大型砲が搭載されていて、その軽母ヌ級の手足を広げる事が砲使用の合図であるので、実際にそれをやったのを確認したサツキからも危惧された。
「…くそ!!」
軽空母ヌ級の下腹部が光り始めた直前、大和が第三主砲の砲身3本を揃え、射撃の準備は全て整った。
「みんな衝撃に備えて!……発射!!!」
カミカゼ達が耳を塞いで身構えたのを素早く確認した大和は直ぐに軽母ヌ級目掛けて主砲を放った!
此の発射反動で大和が少し後ろに吹き飛ばされて驚いていたが、9発の主砲弾は風や空気抵抗等で若干ぶれるも深海棲艦戦から二百年以上の年月を掛けた技術革新で砲弾自体に搭載された誘導装置が作動して修正が行われ、なにより射線自体が完璧であった以上、9発全弾が軽母ヌ級の下腹部に直撃、軽母ヌ級が痙攣するかの様に激しく震えると絶叫しながら爆散した。
此の軽母ヌ級が爆沈した光景に、駆逐ハ級が少しの間硬直していたが、軽母ヌ級の仇を取ろうと大和目掛けて突進してきたが…
「逃がさない!!!」
「守ってみせます!!!」
…その事を予測していたカミカゼとハツシモが空間魚雷を発射……カミカゼのは駆逐ハ級に避けられたが、カミカゼのは囮であり、本命のハツシモの魚雷群が背後から回り込んで駆逐ハ級を追跡、駆逐ハ級が回避行動を取りながら主砲を放って迎撃しようとしたが外れ、此れ等も全本が命中して駆逐ハ級を爆沈させた。
「ヌ級、ハ級、撃沈!!!」
カミカゼの大声での報告にチトセの治療を受けているのも含めた駆逐艦娘達が一斉に歓声を上げ、チトセとショウカクは驚いて硬直していた。
「凄いですよ、三式弾は!!!
ヌ級を一撃で沈めるなんて!」
「…いえ、こんな威力は有り得ない」
更にナガラが興奮していたが、キリシマは能力値以上の効果を発揮した三式弾に驚きながら疑問を感じ、その原因と思われる大和を凝視していた。
その大和は左右の第一、第二主砲を少し見た後、胸元に視線を落として胸部中央に手を当てていた。
「…あんなの、砲弾での攻撃が古すぎて対処法を忘れていたヌ級が油断していたからのまぐれよ」
「ズイカクさん、素直に誉めてやって下さい」
興奮する周囲に反してズイカクが大和を認めようとせず、そんな彼女をショウホウがあやそうとした。
『何をやっている!!?
敵はまだいるぞ!』
「え?」
「え、っ!?」
…ズイカクがショウホウに何か反論しようとした直前、沖田が怒鳴って注意したら、頭上からの赤い光線がショウホウを貫き、そのまま彼女の背後で大爆発を起こした。
「ショウホウ!!?」
「ショウホウさぁーん!!!」
吐血しながら後ろに崩れたショウホウを背後からテルヅキが抱えて彼女に呼び掛けていたが、少ししてテルヅキが絶叫した事でショウホウの安否は簡単に分かった。
「……何で?」
ショウホウの事での現実への拒絶反応でズイカクが茫然としていたが、今度はチトセ達の近くで派手な爆発が起こった。
更に言うと、タマ達もショウホウが殺られた事に気が行っていたらしくチトセ達がやられるのを第2射も含めて茫然と見ていた。
「…ショ、ショウカク姉ぇー!!!」
誰がどう見ても、傷付いた艦娘達を狙った攻撃であるのは間違いないのだが、思考が停止しているズイカクは姉の安否を求めてショウカクのいるだろう場所を凝視するだけだった。
更にキリシマもズイカクと同様にショウカク達の場所を茫然と見詰めていたが、コチラは理由が違って自分達を攻撃していたガミラス艦隊が5隻だった事であった。
と言うのも、ガミラス(と深海棲艦)は基本的に6隻で1個艦隊を編制、偵察任務や艦隊を複数編制する時に稀に4隻の場合である事も含めて、基本的に現れる総数は“6か4の倍数”のどちらかなのだから、5隻との中途半端な数は普通に考えたらおかしかった。
沖田はその事を疑問に思っていた様だが、キリシマは攻撃の混乱で“稀なケース”だと自然な内に判断を……それに対する否定要素として駆逐ハ級2隻が遅れて現れたのに、勝手にしてしまった自分への嫌悪感からであった。
「何をしているの、ズイカク!!!
戦いはまだ続いているのですよ!」
でそんなズイカク(とキリシマ)にショウカクが怒鳴って正気に戻した。
よく見たら煙の中でショウカクとチトセが大破しても無事だったのは、どうもシラユキ達4人が咄嗟に庇った為らしいが、そのチトセとショウカクの前方にフブキ級の誰かと思われる首と左腕がない遺体が横たわっていてフブキ級3人とシキナミの安否に不安を感じさせた。
「……そうだ……艦載機、艦載機を…」
「キリシマ、狙われているわよ!」
ズイカクがコスモファルコン隊を探索に向かわせようとしたのとほぼ同時に赤い光線がキリシマを狙って飛んできたが、大和の怒鳴りに反応したナガラがキリシマの首根っこを掴んで引っ張ったお陰で、2人揃って吹き飛ばされたが直撃は免れていた。
「月軌道から何か降りてくるぞ!!」
此の間にカミカゼが大気圏外の遥か上空の敵をレーダーで探り当てた。
で、カミカゼの言う通りに頭上に注目していると、確かに何かが降りてきていたが、その何かが人型であった事に不安が湧きだしていた。
直ぐにズイカクがコスモファルコン隊の一部を向かわせて……そこにいた者は…
「…っ! 戦艦、ル級!?」
「此処でル級ですって!!?」
…ガミラスの主力の一角である戦艦ル級をズイカクが悲鳴に近い形で報告し、キリシマが絶叫した。
「何でこんな所にル級がいるのよ!!?」
ついでに言うと、レシーテリヌイも戦艦ル級の存在に仰愕して立ち上がった為にヴェールヌイに引きずり下ろされていた。
厄介な事にガミラス・戦艦ル級は確認された個体数が極少数なのだが、此の10年間の戦いの中で追い散らす事は出来るも1隻も撃沈出来てない為、文字通りの絶望的存在と認知されていた。
感想・御意見お待ちしています。
…先ずは一言、私にとって、祥凰は小型空母内では千歳と飛鷹と並んで、お気に入りです……はい…
祥凰
「幾らなんでも、此の扱いは酷い!!!」
諦めなさい、貴女は“アニメ艦これ”での前科があったんだから…
(芹沢の声で)悲しいけど、此れ、戦争物なのよね…
瑞凰
「だかと言って、また炎上するかもしれませんよ」
その点は大丈夫だと思うよ。
だって、前回の話にルパン三世が潜んでいる事を、だぁ~れも指摘してこないから、此の作品の読者層のタカはしれているよ。
龍凰
「……開き直っている…」
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還