SPACEBATTLEGIRLヤマト   作:サイレント・レイ

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第10話 最後の希望(後中編)

――― 呉 ―――

 

 

「此の下にいます!」

 

「ジャッキだ!!

ジャッキを持ってこい!」

 

「此の先にも一室あるぞ!」

 

「熱反応がある!

生存者がいるぞ!」

 

「爆薬はいい、削岩機をもっと持ってきてくれ!」

 

「酸素チューブをもっと伸ばしてくれ!

衛生兵はまだか!?」

 

「今だ!!

引っ張り出せ!」

 

 現在の呉の地下都市では崩落した詰所からの艦娘達の救助作業が、ハマカゼとアサシオの2人を先導として慌ただしく行われていた。

 

「もっとコンクリートを持ってこい!

構わんから、ミキサー車ごとでだ!」

 

「ミサイル車は向こうに止めてくれ!

高射砲はそっちだ!」

 

「ブルドーザーとスチームローラーはもっと増やせないのか!?

ぼやぼやしていると、次の航空便が来るぞ!」

 

「チトセさん、此方に来て下さい!」

 

 更に地上では大量の照明群を頼りに、主体となっているガミラスの再襲来へ備えての防御陣営の再編、地上から計器を使っての救助隊への援護、怪我人の治療、重傷者の横須賀か佐世保等への航空移送の為の飛行場代わりの平地作りが急ピッチで行われていた。

 で、ガミラス艦隊殲滅の最功労者となった大和はと言うと、チトセの簡易診断で取り敢えずは異常無しと診断された後、最終便での横須賀への移動が行われるまで手持ち沙汰だったので、防護テントの中で大破状態から更に壊れた自分の艤装に凭れて座りながら、自分の職務をやり遂げようとしてる外の者達を“ぬ~ぼ~”と見詰めていた。

 因みに他の艦娘達はと言うと、現在も治療で駆け回っているチトセの診断で、キリシマやショウカク達等の重傷と判断された者達は別の所にある医療テントで大人しくし、軽症と診断されたズイカク(出る直前に大和に凄い仏頂面をしていた)やハツシモ等の者達は応急処置を施された後に哨戒任務に出ていた。

 

「随分と暇そうね」

 

「…チトセ」

 

 で、そんな大和が1人いる防護テントに、汚れた白衣を着たチトセが水筒を片手に入ってきた。

 

「深海棲艦戦で暇な事には慣れています」

 

「あんまり慣れて欲しくないモノね。

だけど、あの時と違って軽蔑の視線は感じなくなったでしょ?」

 

 チトセが言う通り、確かに軽母ヌ級と戦艦ル級を撃破した事での呉防衛成功で、少なくとも此の場には大和を軽蔑の目線で見る者はいなくなり、現に大和と視線が合った者達は彼女に一礼か敬礼していた。

 で、チトセは水筒の蓋を開けて飲もうとした。

 

「いいんですか?

こんな放射能まみれな場所で飲んで」

 

「良いの。

ちゃんと除染はしたし、私にしてみれば此れは万能薬の一種みたいなのだから」

 

「………」

 

「…あ、新発見!

時間が経つと味が良くなってる」

 

 一口飲んだチトセは嬉々として、自分を怪訝な目で見ている大和に水筒を突き出し、何か嫌な予感を感じていた大和は一間置いて受け取った。

 水筒の飲み口を少しの間だけ凝視した後、意を決して口を付けた大和は、一口飲んだ直後に胴体にアッパーを食らったかの様な吐き気を感じた後、暫く噎せていた。

 

「あっちゃ~…口に合わなかったか…」

 

「…何ですか、此れ!?」

 

 そう言う大和だが、飲んだのが酒だとは分かったのだが、明らかに度数が高過ぎる上に独特な味に違和感を感じていた。

 

「私特性の人工酒。

いつの間にかにみんなから“チトセカクテル”って呼ばれてるわよ」

 

「そう言うんじゃなくて!

明らかに度数と味がおかしいですよ!」

 

 チトセの先代である空母千歳は空母隼鷹と、連合艦隊で双璧を成す大酒飲み(実はもう1人・潜酔艦ことイヨ(伊14)がいたが、大和は彼女を知らない)だったが、どうやらチトセも先代と同様に飲兵衛の様だった。

 

「知りたい?

確か、今回主体にしたのは……え~と、医療用アルコールの…」

 

「もういいです」

 

 “医療用アルコール”の単語が出た時点でとんでもない代物だと分かった大和は、不満そうなチトセを無視して遮った。

 因みに先代千歳の元は水上機母艦であったが、此のチトセの元は病院船であった為、先代と違って医療知識を持っていたので艦娘達の治療(更に巡洋艦ユウバリのMIA認定後、艤装の修理機能と知識が追加)が出来るのだが、此の反動でか医療用アルコールで人工酒を作るタチの悪い飲兵衛になってしまった様だった。

 現に偶々テントの前を過ぎようとしたアマツカゼと連装砲君が、大和がチトセカクテルを飲んだのを察して“お気の毒”と揃って合掌しながら一礼していた。

 

「自分で言うのもなんだけど、まだチトセカクテルはましだよ思うわよ。

ジュンヨウの本醸造『隼鷹』は、安い日本酒を工業用アルコールで希釈するとんでもない物よ」

 

 最後の部分の日本語がおかしかった様な気がしたが、隼鷹なら工業用アルコールを直飲みしてそうだったので、そんな彼女の次代ならそれくらいしそうだと違和感は感じなかった。

 

「来たんだったら、此れを直してくれませんか?」

 

「あ~駄目駄目、此処まで壊されていたら私じゃ直せない。

そう言うのはアケシが帰ってきてから頼んで」

 

 半分冗談で言ったチトセだが“噂をすれば影”“口は災いの元”の2つ通り……聞こえてきた何かのエンジン音が近付いてきていると思ったら、テントに大型バイクに股がった女性が砂埃と共に入ってきて急停止した!

 

「…貴女が大和ね」

 

「え、ええ、そうですけど」

 

 なんかアマツカゼが倒れていて、連装砲君が見当たらないのが気にはなったが、当の女性はバイクから降りるとマフラーとゴーグルを外して頭を左右に振った。

 

「呼ばれて飛び出て、工作艦アケシ、参りました!」

 

 女性こと、嘗て大和も何度かお世話になった明石の次代であるアケシが満面の笑みで敬礼した

 

「アケシ、貴女秘書艦なのに土方提督はどうしたの?」

 

「土方提督なら沖田提督に臨時指揮を任せて防衛司令部に向かってるよ。

私は土方提督の命令で戻るように言われたの。

実際、私は必要でしょ?」

 

「ええ、まぁ、そうだけど…」

 

「アケシ、何すんのよ!!」

 

 アケシが先述のユウバリのMIAに僚艦となって気心が知れていたチトセと簡単なやり取りをした後、そのアケシにアマツカゼが走り寄って怒鳴った。

 

「あ~あー…見事に錆びてる上に壊れてるね。

ガミラスがもっかい来るかもしれないから、早速修理させて貰うわよ」

 

「人の話を聞きなさい!!」

 

 脇で怒鳴っているアマツカゼを軽く受け流しながら、マイペースなアケシは大和を追いやって彼女の艤装の修理を開始した。

 尤も先代明石と……陸奥以来の戦艦であった事から訓練期間中に教導役の者達と共に大和に付き添って艤装の整備・調整をしてくれ……その翌年にねぐらにしていたトラック諸島の沖合いで潜水艦の攻撃で傷付いた大和に応急処置をしてくれた工作艦と全く変わりがないアケシに大和が微笑していた。

 

「でも、お酒の味が分からないって、貴女意外にお子様なのね」

 

「長門はもっと酷かったですよ!

あの人、梅酒を御猪口一杯飲んだだけで倒れる人でしたよ!

だから祝杯の時、長門は1人だけほうじ茶で飲んでました」

 

(…っ! どうしたの、長門!?)

 

(此れ、ウィスキーじゃない!)

 

(伊勢、またお前か!!?)

 

(そうよ、犯人は此の子)

 

(陸奥の裏切り者ぉぉー!!!)

 

 とある宴会にて、伊勢と陸奥の悪戯でほうじ茶からウィスキーにすり替わった事に気付かずに飲んだ長門が、即失神してそのまま一週間寝込むとの不祥事で、後日陸奥に罪を被わされた伊勢が1人始末書を書かされていた事を、大和が思い出していた。

 

「ああ、やっぱりナガトの先代も下戸だったんだ」

 

 だがチトセも長門の次代であるナガトを思い出して遠くを見詰めて、更にアケシと彼女を手伝っていたアマツカゼ(と何時の間にかにいた連装砲君)が一瞬硬直した。

 

「……ナガトはどうしたんです?」

 

「冥王星沖の海戦で亡くなったよ。

いえ、ナガトだけじゃなく、ムツもイセもヒュウガも、フソウもヤマシロも、コンゴウ、ヒエイ、ハルナも……みんな、みんなガミラスとの戦いで死ぬなり行方不明になっちゃった」

 

 親しかった者達の死に対して戦況を覆す事が出来ない事への無念は、深海棲艦戦もガミラス戦も変わりがなさそうで、現にテントの脇に視線を向けると、そこには戦死した者達が柩代わりの袋に入れられて並べ置かれ、アヤナミが妹のシキナミが入っているモノの前で、イナズマと共にしゃがんで、シキナミの僚艦達共々にも含めて合掌していた。

 だがその事で“なにくそ”と思えない自分自身の劣化を自覚して大和は心の中で苦笑していた。

 尤も深海棲艦戦にはまだアメリカの反攻への期待があったが、ガミラス戦には破滅の未来しか見えてないのでこう言うのは大和だけではなさそうだった。

 

「だけど大和、今回の一件で貴女は確実に防衛艦隊に編入させられるわよ」

 

 既に艦隊特攻が確実視されている中での艦隊編入なのだから、再び十死零生の任務でのキリシマと10番目か11番目の戦没戦艦にならされそうな事に大和がブスッとした為にチトセが笑っていた。

 で、こんな時にイソカゼが息を切らして駆け込んできた。

 

「イソカゼ、傷が開くから落ち着きなさい!」

 

 そんなイソカゼにチトセが大声で注意したが、当のイソカゼはチトセを無視した為、チトセがムッとした。

 

「…さっき防衛司令部から大和を復帰させるとの通達が入ったんだ!」

 

「来るべき事が来たわね」

 

 大和が嫌そうに目線を逸らしたが、軽母ヌ級と戦艦ル級を撃破した以上はこうなる事は分かり得たので、チトセは唸りながら納得していた。

 

「だけど、妙な事も通達された」

 

「妙?」

 

「…大和は……防衛艦隊には編入させないそうなんだ!」

 

「はぁ!?」

 

「まさか、大和を嫌っている人間や艦娘はそんなにいるの!?」

 

「それが、此れを藤堂長官に提案したのは沖田提督だそうだ。

だからキリシマがカンカンになって、異常なスピードで司令部に向かっていったぞ」

 

 イソカゼの言葉にチトセが“えっ”となったが…

 

「ちょっと、何此れ!!?」

 

…その直後にアマツカゼが大声を出してアケシが硬直していたので、大和は思わずチトセとイソカゼと共に自分の艤装を覗き込んだ。

 

「此れ、何!!?」

「「…っ!?」」

 

 どうやらアケシとアマツカゼは、大和の艤装の装甲を外して機関部を確認しようとしていたらしいが、問題はその機関部で……何故か機関部の外装だけが錆びていない事から嫌な予感がしていたが……本来そこに有るべき艦本式タービンが無く、代わりに見慣れない……円柱型2つが向かい合って、2匹の蜘蛛がお互いの腹を見せながら脚を伸ばしているかの様に多数のアームが伸びた、エンジンと思われる物が存在していた。

 

「……アレ、此のエンジン、なんか在視感がある?」

 

 アケシが仕切りに首を捻っていたが、他の者達は勿論の事ながら新型機関を試験搭載している事でエンジンに詳しいアマツカゼでさえ知らない代物なのだから、大和が此のエンジン……波動エンジンを知る訳がなかった。

 

「防衛司令部から間も無く重大発表があるそう……ってみんな、どうしたの?」

 

 でこんな時にカスミがやって来た。




 感想・御意見お待ちしています。

千歳
「5話でも出てたけど、チトセカクテルって、やっぱり?」

 はい、“さらば宇宙戦艦ヤマト”のみに出た人工酒・ヤマトカクテルまんまです。

千歳
「でもあの人工酒って、ヤマト屈指の呪いのアイテムでしたよね?」

 そうですよ。
 さらばには二回出て、一回目は『ヤマト』が宇宙気流に飲み込まれてしまい、二回目は佐渡、アナライザー、徳川、土方の四人が立て続けて戦死しました。

千歳
「本編、大丈夫なの?」

 ショウホウ(祥鳳)達が死んでも誰も苦情等が無かったので大丈夫だと思いますよ。
 まぁ、チトセの死に場所が大体予想出来るかもしれませんがね。

千歳
「……え?」

本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?

  • 実写版通りに、特攻
  • なんとしてでも、地球に帰還
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