SPACEBATTLEGIRLヤマト   作:サイレント・レイ

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第11話 最後の希望(後編)

――― 呉 ―――

 

 

『…大変長らくお待たせしました。

此れより藤堂兵九郎防衛司令長官による発表会見を行います』

 

「あっ、キサラギ姉さんが出てきた」

 

「いつもながらキサラギ姉さんは綺麗に決めてますね」

 

 日本では普通なら誰もが眠りの中にいる時間帯なのだが、緊急的な記者会見にも関わらずに大勢の記者達が詰め掛けて騒いでいたが、司会役のキサラギの報せで全員が一斉に静まって身構えた。

 此の為に貴重な電力を出し惜しみなく使用して地球中のテレビとラジオが全て使われていて、大和達がいる防護テントでも勿論そうであり、テレビが提供されるが発電機等は無しだったが、アケシとアマツカゼの閃きと努力の結果、応急処置が施された大和の艤装に繋げる事で使用可能となった。(「人の艤装を何だと思ってるのですか!?」by大和)

 更に地下都市にいたアサシモとハマカゼ、哨戒任務に出ていたナガラ、ハツシモ、サツキ、ミカヅキ、カミカゼ、ハタカゼの六人が戻ってきたので、テントの中で狭さを感じながらテレビを注目していて、最初に芹沢以下の幕僚達が入室して右側の壁に並んで、次に沖田達……土方竜や山南修等の歴戦の日本提督達が左側の壁に並んでいった。

 更に、沖田にはキリシマ、土方には補給艦タイゲイ(後の空母リュウホウで、アケシの代理)、山南には巡洋艦ナカがいる通り、提督達の後ろ脇に秘書艦が各々に控えていた。

 

「お! キリシマの奴、完治しているみたいじゃん。

アイツ、バケツ(高速修復材)でも使ったのか?」

 

「いえ、多分アレは麻酔や特殊メイクで外見を誤魔化しているんですよ。

現にナカが足を引き摺っていましたし…」

 

「要するに厚化粧か」

 

 アサシモの疑問に、チトセが画面越しに分析して、キリシマ(達)は不足気味の高速修復材(使われている容器に因んで、通称:バケツ)を使わずに誤魔化しているのを見抜いたが、そのキリシマが痛みを我慢して右眉を動かした為にイソカゼの毒に反応したかの様に見えた。

 で、そんなんでヤイヤ言っている間に、最後に藤堂が現れて、日本国旗と地球旗(元は国連の旗)に一礼した後に壇上に登ってマイクの前に立ち、記者達が自分達を見渡している藤堂を一斉にカメラで撮っていた為、カメラのブラッシュが何度も光っていた。

 

『…日本国民の皆さん、世界中の皆さん、今から地球の未来に関わる重大な事をお伝えします。

どうか、冷静に対応するようにお願いします』

 

 場が落ち着いてからの藤堂の一言目は此れであったが、記者達だけでなく此の会見を見ている者達の殆どが今更感を感じていた。

 更に噂されていた地球脱出計画の発表かと、推測しているのが殆どであった為、藤堂の二言目は予想外であった。 

 

『先日、坊ノ岬沖で回収された落下物を解析した結果、落下物は通信カプセルであり、重要なメッセージが含まれている事が判明しました。

此れがそのメッセージです…』

 

 藤堂の発言に合わせて、キサラギが藤堂の背後にスクリーンを展開し、直ぐに始まった映像は先ず白い球体を映した後に拡大していって、一際大きい球体を中心に木目を連想させる九重に並んだ楕円を映した。

 

『……此れが我々の太陽系……更に我々の(アー)(天の川)銀河を示すモノと思われます…』

 

 藤堂のレーザーポインターを使いながらの説明もあって、映像が宇宙地図だとは分かったが、問題は映像は拡大は続いてA銀河から離れて他の星系や銀河系が見える所まで来ていた。

 “何所まで行くんだ?”と思われ始めた直後に頂点に達したらしく、大小二つの銀河系が並んだ所の大きい方に向かって縮小が始まった。

 

『…そして此の大マゼラン銀河に位置する……此の場所……此所がメッセージの発信源、惑星イスカンダルです』

 

 何故、遥か彼方に位置する大マゼラン銀河の惑星の一つが示されたのかが全員分からずに硬直していた。

 

『彼等、イスカンダル人は惑星全土を高濃度に汚染する放射能を完全に除去して、自然環境を回復する何らかの手法……仮に放射能除去装置としますが、それを我々に提供する意思があるそうです』

 

 元々地球では放射性物質は数世紀単位での自然浄化しか手段がなかった為(だからこそ原子力や核兵器が嫌み嫌われた)、それを可能とするイスカンダルの技術力は驚異以外何物でもなかった。

 

『我々防衛軍は此れを検討した結果……辛うじて艦隊戦力を有する日本に、最後の戦艦娘を主体とした艦隊を編成して、此のイスカンダルに遠征させる事を決定しました!』

 

 藤堂の発表に会見場にいた者達だけでなく、地球上全ての者達が時を止められたかの様に硬直していた後、一斉にざわついていた。

 

『そんな遠くに行けるのですか!?』

 

『ガミラスの罠だとは考えられないのですか!?』

 

『時間は、時間は何れくらい掛かるのですか!?』

 

 当然ながら会見場では質問が殺到していたが、テント内ではイスカンダルに行かされるのが……キリシマはあの状態(記者達の反応を見た感じだと、大方はキリシマが行くモノだと誤解しているようだった)だし、他で確認されている戦艦にはロシアのガングード、フランスのリシュリュー、イタリアのローマ、ドイツのビスマルク(彼女のみ反乱首謀者の疑いで牢獄に入っている)、イギリスのウォースパイト、そしてアメリカのアイオワがいるが、藤堂が“日本”と言った為に大和だと察して、全員が大和を注目していた。

 

「そうか、それで大和は艦隊に編入されなかったのか!」

 

「なに納得しているんよ?」

 

「なんでですか?」

 

 で大和のイスカンダル行きに納得していたナガラに、カミカゼと小声で話し合っていたカスミが否定した。

 

「調べた処、大マゼラン銀河は16万8千光年の彼方にあるのよ。

そして普通の艦娘では冥王星に行くまで3週間は掛かるので、計算した結果、片道だけで39億2千万日も掛かるらしいよ」

 

「…地球、何回滅んでるかしらね?」

 

 カミカゼの返事に、ハタカゼが空笑いをし、全員がギョッとして“島流し”の単語が頭に浮かんだ。

 

『軍事上の機密に関わるので此れ以上公表は出来ませんが、我々はイスカンダルから技術提供を受けていて、遠征期間は一年前後と見積もっています。

現に、此の影響で先程呉を攻撃していたガミラス艦隊を撃滅する事が出来ました』

 

「イスカンダルからの、技術提供?」

 

「もしかして、アレ?」

 

 藤堂の言葉に一瞬キョトンとしたアマツカゼとアカシだったが、直ぐに大和の艤装のエンジンが思い浮かんで、そちらに振り向いていた。

 

『いくらなんでも無謀すぎる!』

 

『行かせる戦艦娘は信用出来るのか!?』

 

『確実に帰ってこれる確証は有るのか!?』

 

『国民の意思はどうなんだ!?』

 

『防衛軍の横暴だ!

政府は何を言っているのだ!?』

 

『国民投票を実施すべきだ!』

 

『…そんな時期ではないんだ!!!』

 

 元々軍へのアレルギーが強い日本人の気質もあって、変に感情的になっていた記者達が否定し続けていたが、そんな彼等を藤堂は怒鳴って静めた。

 此の穏和な性格で知れる藤堂らしからぬ行動に、沖田以外の防衛軍の面々は驚いていた。

 

『地球は“無謀”だとか“保証”だとか、そんな事で躊躇していられる状態では、最早ないんだ』

 

 先程の怒鳴りもあって記者達は藤堂の言っている意味を理解出来ずに硬直していたが、芹沢達幕僚達は藤堂が言おうとしている事を察してギョッとした。

 

『…防衛軍の試算では、地球人類が放射能で滅びるまで、もって……あと一年!!

科学者の中には数ヵ月と言う説まである!』

 

 “人類滅亡まで、あと一年”……防衛軍や地球政府の最重要機密事項である藤堂の暴露に、記者達は顔面蒼白となって騒いでいた。

 否、記者達だけでなく、地球全土でざわついており、現に秘書艦であるキリシマ達が藤堂に目をひんむいていた。

 

『…イスカンダルからの申し出は……我々にとって……最後の希望なのだ!』

 

 自分に言い聞かせる様な発言をした藤堂は、大型カメラの一つに顔を向けた。

 

『…国民の皆さん、放射能除去装置さえ手に入れば、我々人類は生き延びる事が出来る。

地下を脱け出し、再び地上に住む事が出来るのです』

 

 元々藤堂は参謀等の後方型の軍人であり、戦略面では疑問符が付く代わりに人心掌握力に秀でており、彼等記者達ではなく地球人類一人一人に訴える手法に切り替えていた。

 そして記者達も黙って藤堂の発言に聞き及んでいた。

 

『このままガミラスの遊星爆弾に身を任し、地球が滅びていくのを手をこまねいて見ていて良い筈がありません』

 

 更に連戦連敗で意気消沈している艦娘一人一人へ“戦わねば生き残れない”と訴える様な発言をした後、キサラギが再びスクリーンを動かした。

 

『此れは我々に与えられた、最後のチャンスなのです!』

 

 藤堂の発言のラストスパートに合わせて、元は観光宣伝用のモノと思われる映像群……森林の合間を縫って移動する上空映像、チベットの何所かの寺から撮られている天高く聳えるヒマラヤ山脈、イルカの群れを追い掛けながらの海上の上空映像、戯れる白熊の親子の背後に映る北極、そして太陽に照らし出される青く輝く地球、どれもが今は無き地上の光景であった。

 

『…我々自身の手で緑の地球を取り戻すのです。

放射能除去装置を手に入れ、十年前の……美しい地球を取り戻そうではありませんか』

 

 此の映像群で、懐かしさから記者達が泣き出しているだけでなく、防衛軍の面々も此れ等を奪ったガミラスへの怒りを露にしていたのだから効果は絶大であった。

 

『…防衛軍は各国に遠征艦隊への協力を求めています。

星間航行に必要な航行技術やレーダー等の観測機器、艦娘の日本艦隊への派遣、整備改装の為の資源提供…』

 

「…イスカンダル、ですか。

大和さんは、どう思っているのです?」

 

 最後に一旦下がった藤堂に代わってキサラギが色々やっていたが、ハタカゼの質問に大和は何も答えずにテントから出ていき、その大和をハツシモとイソカゼが追い掛けた。

 

「……大和、さん?」

 

「さっきのル級、最後に私に“合格ダ”って言っていた気がするの」

 

 空を見上げている大和にハツシモが声を掛けたたが、大和の返事にイソカゼ共々理解出来ずにお互いの目線を合わせた。

 

「で、アンタはたった一年でイスカンダルに行って帰れる自信はあるの?」

 

「そこまでは、まだ分からない…」

 

 イスカンダル云々は大和自身、あまり考えられないでいた。

 だが、二人には言わなかったが、戦艦ル級が最後の最後に「此所(宇宙)に来い!」と言っていた気がした事から、日の出の兆しとして東から青くなりだしていながらも星々がまだ輝いていた空の彼方に広がる宇宙に思いを馳せ参じていた。

 

「…只、私……宇宙に行きたい。

あの星の海と呼ばれる場所に行ってみたい」

 

 深海棲艦戦時では夢物語かと思っていた宇宙に赴く事に、大和は自分でも理解出来ない高揚感に満たされていた。

 そんな大和の背にハツシモとイソカゼは静かに頷いていた。

 

「で、カスミ、ハマカゼ、アサシモ、アンタ達もどうする?

私は同行を命じられると思いますが、それを了解しようと思ってますよ」

 

「勿論、私達も行きます。

今度こそ、大和を目的地まで守り送ってみせます!」

 

 チトセの質問に答えたハマカゼに、カスミとアサシモも“同感”と頷いた。

 

「……朝日が昇る…」

 

 自分はナトリ共々残留させられる事をなんとなく察し寂しく微笑んだたナガラが示した後、丁度大和達三人の前方から太陽が昇ってきた。

 斯くして、此の時から大和と地球の長い長い一年が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…此れで、本当に良かったのか、沖田?」

 

「ああ、後は任せろ」




 感想・御意見お待ちしています。

…やっとイスカンダルの単語が出せた。

長門
「イスカンダルの言葉が出るのに11話か。
漸くスタートラインに立てるって事か」

 いやね、それが、2話ばか寄り道しますがね…

陸奥
「何やってんの!?
此の“最後の希望”だって、三倍以上の文字数を使ってんのよ!」

…こ、此の作品、コナンみたいにやたらめったら“編”が付く可能性が高いですよ。

長門
(…逃げたな)
陸奥
(…逃げたわね)

 それにしても、イスカンダル遠征、原作の艦娘達だったら“行きたくない”って言う奴探した方が早い状態になるだろうな。

陸奥
「少なくとも望月、初雪、山風、名取の四人は嫌がるでしょうね」

本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?

  • 実写版通りに、特攻
  • なんとしてでも、地球に帰還
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