SPACEBATTLEGIRLヤマト   作:サイレント・レイ

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第20話 回想:砂礫の海にて

――― 坊ノ岬沖 ―――

 

 

 レアメタルの採集に来ていた巡洋艦ヤハギは不意に地上に下りて、遥か遠方を見詰めていた。

 そして屈んで足元の地面の砂を掴み上げて、掌の中の砂を見詰めていた。

 手袋越しでも感じる程に熱さを溜め込んでいた砂は、水気が一切無いので手を軽く傾けると直ぐに滑り落ちだし、更に細やかな微風で簡単に吹き流されていた。

 

「……こんなんじゃ、芋処か、(アワ)(ヒエ)も作れないわね…」

 

 現在の地表は唯でさえ遊星爆弾によってあらゆる生物が生存出来ない高濃度の放射能に汚染されていたのだが、それと同時に地球の大半を覆っていた海を初めとした水分が蒸発してしまって、金星となんら変わりない渇きと灼熱だけの星となっていた。

 況してや、今ヤハギがいるのは坊ノ岬沖……本来なら潜水艦しか辿り着けない水面下300m以上の海底であった場所、まぁ塩害等で食物は作れないと思われるが、水気をたらふく含んだ泥に近い土が辺り一帯にあるべきだったのだ。

 大地は死んだ、此の渇ききった土はその表れであり、そしてその事は地球を守れなかった自分達艦娘達の罪の表れでもあった。

 

『お前って、本当に馬鹿なんだな』

 

 何度か砂を握っては落としていたヤハギは、不意に出る前にキソとのやり取りを思い出していた。

 

『こんな状況下でレアメタルなんか掘り起こしてどうするんだよ?

どうせ地球は負けんだよ!!』

 

 此の時のキソは一升瓶を担いで酔っ払っている状態だったが、本来のクマ級巡洋艦キソは、多少は毒舌だったが、テンリュウに匹敵する勇猛且つ諦めの悪い艦娘だったが、万に一つも希望を見いだせないガミラス戦の絶望が彼女を此のように変えてしまったのだ。

 当然ながらキソでさえこうなったのだから、ふてぐされた艦娘は、ヤハギが知る範囲でもかなりの人数がいた。

 

『…だからと言って不真面目になるのは生に合いません』

 

『そうは言っても、あの防衛司令部の無能どもの媚売り行為なんか馬鹿を見るだけじゃないか』

 

 だがそんなキソでもごく最近までは絶望に抗っていたのだが、木星沖海戦の敗戦が伝えられるだけでなく、その木星沖会戦自体が負ける事を想定した囮作戦の一つで、元々木星沖海戦に参加した防衛艦隊に旧NATO所属国の艦隊が一切参加していなかった事が疑問視されていたし、本命の決死輸送船団は大きく迂回コースを取っていた為にほほ無傷の状態で地球に近日帰還予定が伝わったからだ。

 ただし決死輸送船団の事は艦娘達処か提督達でさえ一部の者にしか伝えられない機密事項だったのだが、佐世保の場合は山南司令に伝えられたのをナカが盗み聞いた為に漏らしてしまった。

 

『お前も早く死ぬな。

それも戦艦大和の馬鹿な作戦に同行した先代矢矧と同じ様にな』

 

 最後にキソを殴り倒して出ていったのだが、今でもキソの言葉が頭に残っていて、どうしてもやる気が起こせないで硬直していた。

 

「…ヤハギさん?」

 

「ハツシモ?」

 

 だから、偶々近くを過ぎようとしたハツシモが疑問に思って、ヤハギの所にやってきた。

 

「ヤハギさん、どうしたのですか?」

 

「いえ、ちょっと考え事し過ぎていただけ」

 

「…早くやった方がいいですよ。

此の辺りの放射能濃度が致死量の2倍以上になりそうですから」

 

「分かっているわよ……ああ、此の真下にリチウムが有るわね」

 

 取り敢えずヤハギはハツシモの存在で、やる気が出たらしく、早速スマートフォン型の探査機を使って辺りを調べると、武装の代わりに艤装に積んでいた耕作機を取り出してリチウムの掘り出し作業に入った。

 そんなヤハギを確認したハツシモは、自分もこのままヤハギを手伝うか別の場所に移動するか思案していたが、艤装のレーダーに何かを捉えた。

 

「……っ! ヤハギさん!!

上空に飛行物体です!」

 

「へ?」

 

「落下します!!」

 

 レーダーが無いのか壊れているのか、ヤハギは全く気付かなかった為、ハツシモの報せた落下物体に素っ頓狂な声を出して彼女の示した方角に振り向いたら……確かに何か発光体が此方に向かっていた。

 ハツシモの発見と報告が遅過ぎたと言え、超高速のソレはヤハギとハツシモの2人が何かの反応を起こす前に、彼女達の近くに落下(と言うより墜落?)して2人を吹き飛ばしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蒼天の海上、潮の香る青く美しい世界で、長姉アガノのミニチュアと言うべき容姿だった幼いヤハギが、その長姉アガノを追いかけっこをしながら楽しく移動し、次々姉ノシロがそんな2人に飽きれていたが、そんな彼女達を出迎えに来たのか、駆逐艦娘達と訓練中の艦隊の旗艦を務めていた、今の自分にそっくりな艦娘に胸がトキメキ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!」

 

 仰向けで倒れている状態から目を覚ましたヤハギは打ち身によるモノと思われる全身からの痛みを感じながら、頭を押さえながら起き上がった。

 

「……今の…」

 

 痛みを紛らわす為だろう、つい先程まで見ていた夢を思い出していた。

 だが夢の内容に反して、ヤハギは元々内陸部の出身で海に縁がなかった上に、物心がついた時にはガミラスの遊星爆弾によって海が蒸発していて、アガノやノシロは兎も角として、少なくともヤハギは“海”や“潮の香り”を全く知らないので、海の夢など見ようにも見れなかった。

 

「じゃあ、今の夢のは先代達の?」

 

 此所は坊ノ岬沖、戦艦大和と共に沈んだ先代矢矧の記憶が艤装を通して自分の中に現れたのかと推測していたが、その事で自分の艤装を思い出した。

 だが直ぐ脇に何かの金属片を見つけ、嫌な予感をしながら周囲を見渡すと自分の艤装は完全にバラバラになっていた。

 更に少し離れた場所にハツシモ(彼女の艤装も壊れている)が俯せで失神していたが、彼女との出会い頭の言葉が頭に浮かんだ。

 

(此の辺りの放射能濃度は致死量の2倍以上になりそうですから)

 

「…っ!!」

 

 ヤハギは慌てて自分の艤装を調べたが、彼女の艤装は生命維持装置まてもが壊れていた。

 超人的な能力を誇る艦娘と言えど、彼女達の肉体の強度そのモノは通常の人間と変わりなく、通常の人間と同じ様に発熱や病気に掛かるし、艤装の加護が無ければ通常の人間と同レベルの悪しき出来事で怪我をすれば死ぬ可能性もあった。

 つまり今のヤハギの様な艤装無しの状態では被爆して直ぐに死んでしまう筈だった。

 此の為、ヤハギは無意識の内に喉を両手で押さえながら息を止めて、急いで艤装を探って探査機を取り出すと、その探査機での放射能濃度の値は殆ど微量……今の地球では有り得ない本来の値を示していた。

 

「…何で……?」

 

 ヤハギは故障だと疑って探査機を揺すっていたが、何時までも死なない自分にも疑問を感じて少しの間だけ硬直していたが、不意に振り向いた先に変な揺らぎを見つけた。

 立ち上がったヤハギは千鳥足でそこに歩いていき、揺らぎの出本であったラグビーボール型の機械物が少し埋まっていて、屈んでソレを持ち上げた。

 ヤハギは機械物の正体を探ろうと思ったが、その直前に意識が遠退き始めて、自分が死ぬんだと勘違いをして抗う事なく左に倒れた。

 だがヤハギは再び意識を失う前に、自分の前方の土が盛り上がったと思ったら、そこから何者かが這い出てきた処で彼女は失神した。

 這い出てきた者は失神しているヤハギとハツシモを見付けて暫く茫然と見ていたが、ゆっくりと立ち上がるとヤハギを右手で抱き上げ、次にハツシモの首裏を突かんでそのまま引き摺って何所かへと歩いていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球沖 ―――

 

 

 殿として他の者達より大遅れしていたキリシマ達日本艦隊の面々が地球の沖合いに辿り着いた直後、地球へと向かっている赤く輝く球体の物体に気付いた。

 此の高速で飛翔する物体…自転しながら所々で炎を噴いている地球に死をもたらす悪魔の星・遊星爆弾の初弾は、憎たらしい事にキリシマ達の脇を過ぎようとしていた。

 

「…っ!」

 

「アラシ、駄目!!」

 

 その遊星爆弾へアラシが主砲を構えたが、そんな彼女をハギカゼが止めた。

 

「放せよ、ハギー!」

 

「此の距離じゃ、遊星爆弾に届きません。

それに、今の傷付いた私達には弾薬やエネルギーが殆ど無いのですよ」

 

 アラシを止めたハギカゼだったが、表面にこそ出ていないが、アラシを掴んでいる両腕に変に力が入っていた事から彼女も遊星爆弾を迎撃出来ない自分達に悔しい思いをしているのをアラシは察した。

 まぁそれ以前に、初期の遊星爆弾こそは迎撃が可能、破壊出来なくても軌道を逸らして地球直撃を回避出来たのだが、現在のは初期型より遥かに巨大・強固化していたので迎撃処か軌道を逸らす事すら出来なくなっていた。

 そんな遊星爆弾は艦娘達を嘲笑うかの様に過ぎ去ると、そのまま地球に落下して宇宙からでも確認出来る程の大爆発を起こし、更に2発が後に続いて別の場所に落下していった。

 

「……駄目だ、今はもう防げない。

あの遊星爆弾を防ぐ手立ては…」

 

 キリシマの言う通り、地球に落ち続けている遊星爆弾を迎撃出来ない自分達の無力さに何度も失望させられていた。

 

「そして此れが母なる地球の姿とはね…」

 

 しかも地球は既に破壊の限りを尽くされて、海は蒸発して数多の生命が死滅した、赤茶けた姿となっているのに遊星爆弾はまだまだ落ち続けている、ほぼ“死体蹴り”状態なのだから尚更であった。

 況してや、キリシマ達は勝っての帰還ではなく、負けての帰還なのだから、益々自分達を責め立てていた。

 此の為、“地球に帰りたくない”の一言であり、“帰るぐらいなら自殺でもいいから死にたい”と思っていたが、“ガミラスとの戦いはまだまだ続いていて、次の作戦に備える必要がある”と内心の言い訳を許している自分自信にもまた失望しているのが殆どであった。

 此の為に前々から噂の合った、嘗ての戦艦大和のと同様の特攻作戦に参加したいと思う者達がそれなりにいた。

 

「…ガミ公め」

 

「諦めない、私は諦めないわよ」

 

 だがイソカゼやハマカゼの様に此の万に一つも無い絶望下でも絶望を拒否する者達もおり、そんな二人にキリシマは気付かれないように目線を一瞬だけ向けた。

 だが此所まで来たら、個々がどう思っていようと後は地球へ降下して地下基地に帰投する、それが普段通りであった。

 

『…キリシマさん!!!』

 

「どうしたの、キサラギ?」

 

…どうやら今回は違うらしく、キリシマに血相を変えたキサラギの通信が入った。

 

『大変です!!

ガミラス艦隊が現れました!』

 

 キサラギの報告にキリシマだけでなく全員がギョッとし、真っ先に“追撃”の単語が頭に浮かんだ。

 

「それで、何所に現れたの!?」

 

『それが問題なのです!

斥候らしいガミラス艦隊は九州坊ノ岬沖に突然現れたのです!』

 

「坊ノ岬?

何であんな辺境にガミラスが現れたのよ!?」

 

『それが分からないので、防衛司令部は今大騒ぎなのです!』

 

 謎の行動をするガミラスにキリシマとキサラギが戸惑いながらのやり取りをして、他の者達は各々に戸惑っていたが、取り敢えずはガミラスの斥候が地球上の坊ノ岬にいるのは確かなようだった。

 

「…っ!」

 

「待って、イソカゼ!!」

 

 そんな中で飛び出そうとしたイソカゼをハマカゼが止めた。

 

「止めるな、ハマカゼ!!!

ユキカゼやウラカゼ達、奴等に殺された者達への怨みを胸の中に納められるか!」

 

「私は止める気はありませんよ」

 

 ハマカゼの返事にイソカゼがキョトンとしたが、直ぐにハマカゼの微笑しながらの頷きに彼女のを察して決心が就いた。

 

『既に坊ノ岬で消息不明になった人がいるらしく、キリシマさん達から何人かを選抜して坊ノ岬に向かってほしいとの事ですが…』

 

「だから、今の私達は皆傷付いて……っ!?」

 

「アキグモ、持っていくぞ!!」

 

「ふえ!?」

 

「マイカゼ、お借りします!」

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

 水掛けに近いやり取りをキサラギとやっていたキリシマだったが、イソカゼがアキグモから魚雷を、ハマカゼがハギカゼから主砲を各々の背後から拝借して飛び出した。

 

「行くぞ、ハマカゼ!!」

 

「良いですよ!」

 

「待ちなさい、2人共!!!」

 

 キリシマが怒鳴って止めようとし、他の者達が呆然としていたが、当の2人は素早く準備を整えるとそのまま地球へと向かっていった。




 感想・御意見お待ちしています。

 此の作品の特別設定で、元々の矢矧は阿賀野と同じロングストレートだったが、大和に憧れてポニーテールにしたとしています。

 後、“艤装の加護の無い艦娘の肉体強度は通常の人間と同じ”との設定は“聖闘士星矢”から取っています。

本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?

  • 実写版通りに、特攻
  • なんとしてでも、地球に帰還
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