――― 坊ノ岬沖 ―――
地球に降下したイソカゼとハマカゼは早くも坊ノ岬沖に到着して、早速ガミラスの斥候を探索していた。
「しかし、何故ガミラスはこんな所に現れたのでしょうか?」
「ああ、坊ノ岬沖に基地や資源採掘所があるとは聞いていないからな」
だが、やはりガミラスが坊ノ岬沖に現れたのかが気になって、ハマカゼとイソカゼは揃って思案していた。
「坊ノ岬沖と言ったら、大昔の深海棲艦戦時に戦艦大和が沈んだ海だとしか…っ!?」
「レーダーに感、近くに何かいる!!!」
元々2人の先代である駆逐艦磯風と浜風が沈んだ海域でもあった事から、2人揃って戦艦大和が頭に浮かんだが、レーダーが何かを捉えたので周囲を警戒していると…
「…いたぞ!!!」
…2人の前方に単独で何かを探しているらしい駆逐ニ級が低速で動き回っていた。
元々駆逐ニ級は探索能力に秀でている艦級とは言え、今更感のある単艦行為に明らかに違和感を感じさせた。
「よし、叩き落としてやる!!」
まぁどうであれ、敵としているのは確かなので、イソカゼが身構えて、ハマカゼも続いた。
で遅まきながら駆逐ニ級もイソカゼとハマカゼの2人の接近に気付いて慌てて加速しながら退避行動に入ったが、明らかに出遅れた上に動き自体も鈍かった。
現にイソカゼとハマカゼを必死に振り払おうとし上下左右不規則に動いていたが、それが出来ずにイソカゼに最適な雷撃ポジションを取らせてしまった。
「もらった!!!……っ!?」
当然、イソカゼは魚雷を放とうとしたが、その魚雷が発射させず、発射管(x2)自体から何か変な音が聞こえていた。
「どうしたの、イソカゼ!?」
「魚雷発射管が2つ共壊れている!!」
「接続不備、規格があってなかったの!?」
「分からん!」
ギョッとするハマカゼが真っ先に疑ったのは、自分達カゲロウ級駆逐艦の致命的な欠点である互換性の無さだった。
カゲロウ級は前級アサシオ級駆逐艦を原型としたステルス駆逐艦として設計され、此のカゲロウ級の為だけにハツハル級駆逐艦のハツシモとワカバの2人を、ステルス実験艦に改造しての慎重且つ丁寧に計画されていたのだが、ガミラスが熱探知等の対ステルス用の探知能力を強化した為に地球側のステルス機能が早々と無力化(後日判明するが、ガミラスは次元潜航艦の研究開発を大方進めていたので、ステルス対策が簡単に出来た)、此の結果に加えてステルス機能の生産・維持の困難さもあって純粋なアサシオ級の強化型に変更されたのだった。
処が、当時の日本は相当慌てていたらしく、基本要点以外は各製作所に一任させた事が原因で艤装形状や服装がバラバラになってしまい、結果で艤装面の一例だと、カゲロウの“マジックアームを多用した独自型”、イソカゼの“シラツユ級の改良型”、ユキカゼの“シグレとサミダレの折檻型”、ノワキの“ハツシモ&ワカバの改良型”、アマツカゼの“シマカゼの転用型”……服装はカゲロウ以下大半の“ブレザーベスト”、次点のイソカゼ達の“伝統のセーラー服”、ユキカゼ・トキツカゼ・アマツカゼの“ワンピース型セーラー服(但しアマツカゼは色違い)”等々……開き直ったのか、末妹アキグモに至っては改カゲロウ級ことユウグモ級駆逐艦の試作品を両面に託されてしまった。(不思議な事にアサシオ級の改良型は無かった)
此の結果、“高性能だが互換性が無いので整備・維持が物凄く面倒臭い”と称されるカゲロウ級は姉妹艦同士で武装を共用すると規格違いによる動作不良をよく起こしており、だからこそ次級ユウグモ級では規格統一を第一とした為に日本艦娘屈指の小柄体型のマキグモがダブダブの制服を着続けると言う、訳の分からない問題が起こっていた。
「アキグモ、あの馬鹿、何をしたんだ!!?」
話を戻して、なんとか魚雷を放とうと艤装を弄っているイソカゼがアキグモに悪口を言っていたが、基本いい加減な性格な上にユウグモ級の試験艦であるアキグモから魚雷を拝借したイソカゼにも問題はあると思う。
だがイソカゼの雷撃不能状態にハマカゼが気を行っていたこの隙に、駆逐ニ級は宙返りをして一気に逃げ出そうとした。
「不味い!!!
ハマカゼ、追え!」
「はい!!!」
当然、魚雷発射管故障で身動きが取れないイソカゼは、ハマカゼに攻撃を頼んで当人が了解して直ぐに駆逐艦ニ級に振り向いた。
「…っ!? 嘘!!!」
だがハマカゼが振り向いた直後、ハマカゼの背部の艤装が爆発・炎上を起こしてしまった。
「駄目です!!
オーバーヒートを起こしました、っ!!」
「馬鹿、掴むな!!!」
どうやらハマカゼのは機関が吹っ飛んだらしいのだが、墜落コースに入ったハマカゼは偶然脇下を過ぎようとしたイソカゼの右足を突かんでしまい、イソカゼが足掻いていたが、イソカゼのも機関が吹っ飛んでしまい……ものの見事に2人揃って 坊ノ岬沖の海底(?)に墜落した。
因みに駆逐ニ級はと言うと、ハマカゼとイソカゼの醜態に気付く事なく、最大速度まで加速して何所かへ逃げてしまった。
更に蛇足ながら、駆逐ニ級はそのままワープで離脱してしまったので、防衛司令部や遅れて此所に向かっているキリシマ達も見失っていた。
「…ハマカゼ、大丈夫か?」
「人の事より、自分の事を心配して下さい」
2人揃って墜落で半分埋まるも、頭の出血箇所を押さえながら起き上がった砂まみれのイソカゼがハマカゼを気にしていたが、そのハマカゼも脱臼した左肩を押さえながら起き上がって無事を報せた。
「くそっ!! 惜しかった!
一隻たけでも撃ち落としてやりたかった!」
駆逐艦ニ級を取り逃がした事を悔しがっているイソカゼ、そんな彼女に「うん!」と頷いているハマカゼの2人からは微塵も闘争心が失われていないようだった。
「でも、此の艤装はどうします?」
「……あ」
取り敢えず、お互いの応急処置を施した後、どちらかの艤装を直せないかどうか調べては、実際にやっていた。
「……駄目だな。
此れはアケシに任せるか、ドックに入れるしかない」
「あ~あ~…、アケシに殺されますね」
で、イソカゼがハマカゼの脱臼した左肩をはめて、彼女のスカーフで左腕を吊るした後に長時間やった結果は駄目。
しかも不味い事に夕陽で赤くなっていて、日没まで時間が残されていなかった。
「どうします?
佐世保か沖縄、どっちに行きますか?」
「いや、キリシマ達が来るかもしれないから、此所で待つのも手だ。
救難信号発信器も生きているしな」
日単位での歩いての長距離移動やガミラスの再襲来等の不安要素を思う事はあったが、少なくとも厳重に強固に作られていた艤装の生命維持装置は無事だった上にキリシマ達の後続が近い内に来る可能性が高かったので、2人揃って気を楽にする事が出来た。
「…それにしても、何故ガミラスは此の海域にニ級を遣わしたのでしょう?」
で、やっぱり気になるのが、ガミラスが坊ノ岬沖に斥候を遣わした事であったが、その疑問を口に出したハマカゼ本人だけでなくイソカゼも分からずにいた。
そんな2人は揃って夕焼け空を暫く見上げていたが、背後で何かの音と気配を感じた。
「……おい」
「…ですね」
イソカゼとハマカゼが真っ先に思い浮かべたのは、自分達が追撃したのとは別のガミラスの斥候、だからイソカゼは艤装から主砲一基を取って、ハマカゼは緊急用に携帯していた
その後、先にイソカゼが岩壁に添って慎重にゆっくり進み、少し遅れてハマカゼがコスモガンを身構えながら続いて、曲がり角の所で二人揃って止まった。
「「……っ!」」
少し間を置いてイソカゼとハマカゼはお互いの視線を合わせて頷きあうと、2人揃って飛び出して身構えたが、その薄暗い谷間の先にいたのはガミラスではなかった。
「……あ」
「ハツシモと、ヤハギ!?」
「2人共、どうしたんだ!?」
いたのは、失神しているヤハギを爪先を引き摺って背負っていたハツシモで、頭を打ったらしく右目が見えなくなる程の頭から派手に出血しているハツシモはハマカゼとイソカゼに存在に安心して屈んでしまった。
しかもハツシモの艤装は2人以上に壊れていた上、ヤハギに至っては何故か艤装その物が無かったので、ハツシモはヤハギに自分の艤装を接続していて、ハマカゼとイソカゼは慌てて駆け寄って、取り敢えずイソカゼが持っていた予備のマスク型の生命維持装置をハツシモの口に付けた。
「ハツシモ、何があったのです?
まさかガミラスが近くにいるのですか?」
「……違います……此の先に、此の先にいる人に助けてもらって………でもあの人も危険なので、助けを呼びに行こうと…」
ハマカゼの質問へハツシモの返しに、ハマカゼとイソカゼが目線を合わせたが、取り敢えずはハツシモとヤハギを助けたらしい人物が此の先にいるのは分かったので、イソカゼがヤハギを背負って、ハマカゼがハツシモを右肩で担いで遅れながらも谷間の先に進んでいった。
「……っ!」
「イソカゼ、どうしたのです……あ!?」
そして谷間を抜けた先にハツシモが言っていただろう……否、艦娘らしき者が小高い丘の上にいた。
その艦娘は錆びた艤装の右側の主砲に凭れ、ヤハギが見つけた謎の機械物を左手で抱えて座っていた。
「…Have withstood pain to cleate many weapons.
Yet,those will hands never hold anything」
(訳:彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う。 故に生涯に意味は無い)
「何ですか?」
「古い英語の詩文の一部だ。
出所は忘れたがな」
夕日を背に悲しくも何処か美しい雰囲気を醸し出している艦娘に、イソカゼがとある英語の詩を思い出していたが、問題なのは此の艦娘の正体なのだが、何故かイソカゼとハマカゼはその正体を何となく察して……否、恐らく艤装を通して先代が此の艦娘を教えてくれた気がしていた。
「…大和……戦艦…大和、なのですか?」
ハマカゼの呟きにイソカゼが反応出来ずに硬直していたが…
「…っ! あそこだ!!
あそこにイソカゼとハマカゼがいるぞ!」
「イソカゼ、ハマカゼ、無事だった………っ!?」
…アサシモとカスミが2人(+α)を見つけて駆け寄ろうとし、更にキリシマ、チトセ、シラユキ、ウラナミの4人も急ぎ続いた。
そして6人共、夕日を背に眠っている艦娘に気付いて、驚いていた。
「…嘘でしょ?
こんな
直ぐにチトセが艦娘に駆け寄って診断して生きている事を確認した。
「…や、大和?」
「コイツは戦艦大和だろ!」
「……信じられない。
此の人、戦艦大和です。
防衛軍が保管していた大和の遺髪とDNAが一致しています!」
どうやらカスミだけでなく、録な学を持っていない……つまり大和を名前だけでしか知らない筈のアサシモも、イソカゼとハマカゼと同様に艦娘が大和だと思っていたらしく、チトセが計器を使って調べた結果、坊ノ岬沖海戦で戦没して行方不明になっていた大和本人である事が確認された。
「此れって、D案でしょうか?」
「まさか、二百年以上前の艦娘ですよ」
D案……深海棲艦戦時、深海棲艦の艦隊を撃滅した時に艦娘が確保(或いは出現)する出来事が、ガミラス戦バージョンとして大和が現れたんだとシラユキは思っていたが、その当時の艦娘がその時の状態で現れていたのでウラナミが否定した。
「兎に角、連れて帰りましょう。
出現理由とか二百年以上前の艦娘がどれ程やれるのかとかが気になりますが、沖田提督からも回収命令を受け取っています」
キリシマの言う通り、大和の出現に色々と疑問はあるが、少なくとも大和を此の場に置いておくとの選択肢は無かった。
「……イソカゼ、どうしたのですか?」
「いや、なんにもない……なんにも、な…」
チトセがシラユキとウラナミと共に大和をどう連れていくのか話し合っていたが、大和確認後からヤハギは兎も角としてハツシモが安心したかの様に失神し、怒りや失望感とかがいつの間にかに消え失せていた事にイソカゼ、ハマカゼ、アサシモ、カスミの4人が驚き戸惑って目線を合わせ、キリシマの質問に答えられないでいた。
「艤装や私達の肉体を通して、先代達が大和との再会を喜んでいるのでしょうか?」
シラユキとウラナミが両脇から大和を抱え上げている中、ハマカゼの呟きにイソカゼ、アサシモ、カスミの3人は無言のままでいた。
(夕日を浴びて死んだ様に眠る大和…)
(…ですが、大和には希望が託されているのです)
(その秘められし恐るべき力を発揮するのは何時の日か…)
(大和、二百年と五十四年の眠りから目覚めて下さい)
感想・御意見を御待ちしています。
今回の投稿前に第8話と第10話に、量は微量ですが意味合いは多分大きい追加をしました。
更に“設定 ガミラス”のガミラス鶴棲姫と試作・戦艦デスラー鬼を追加しました。
只、“設定 ガミラス”でも書いてますが、鶴棲姫は出したいけど、物凄く悩んでいます。
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還