なんか、最近のヤマト二次小説で“『ヤマト』の装甲はコスモナイト”と間違って書かれているのが多い気がしますが、2199の5話でテクタイトの単語が出ていたので、正解はテクタイトだと思いますよ。
それでは本編をどうぞ。
――― 地球・火星間宙域 ―――
「……夕日の中で、ねぇ…」
ヤハギから自分が発見された時の状況を教えられたヤマトは、少しの間だけ物思いに耽っていた。
「前例の無かった事だったから、防衛司令部ではヤマトがガミラスのスパイ等じゃないかって、かなり疑っていたらしいわよ」
大和(ヤマト)発見後、彼女の艤装から奇跡的に通しナンバーが確認出来るだけでなく、放射線測定での艤装調査から深海棲艦戦時の時代の物である事が判明、更にドック入りした大和を改めてDNA検査をした結果、戦艦大和本人である事が確定したのだが、それでも目覚めた大和本人からの聞き取り調査が行われるまで、ガミラスのスパイ等ではないかと疑う者が多数いた。
「今でも、貴女を見つけた時の事は、よく覚えています」
「…ハマカゼ……あれ、アサシモもみんな?」
ヤマトが少し驚いていたが、何時の間にかにハマカゼ、アサシモ、イソカゼ、ハツシモ、そして丹陽の5人が脇で揃っていた。
「タマは、お邪魔っかニャー?」
坊ノ岬沖海戦に出撃した艦娘達の次代(丹陽が戦没したユキカゼの代わりになると言え、カスミは第三艦隊所属、スズツキは冥王星に囚われていて、フユツキはMIAで、3人欠けているのが悔やまれる)が揃ったので、タマが微笑しながら下がろうとしたが、そんな彼女をヤハギが止めた。
「なんか、ご免なさいね。
こんな生還率の低い遠征に参加するはめになっちゃって」
「先代がどうとか、私達は関係ありません」
「まぁ、敢えて言うなら、ヘマした先代達に代わってヤマトを目的地へ連れていくって言う気はあるけどね」
「だからヤマトには気にせずイスカンダルに1年以内に行って帰ってくる事に専念してほしい」
何となく、ヤマトが頭を下げようとしたが、そんな彼女をハツシモが止めて、更にアサシモが続いた。
だが最後のイソカゼの言葉に、ヤマトが何も返さずにヤハギに目線を向けたので、イソカゼ達は思わずヤマトに呼び掛けた。
「ヤマトさぁん」
「……丹や~ん」
「はいぃ~」
「分かっていますけど、その訛った口調をなんとか出来ませんか?」
「いや、鈍ってねぇス!」
「それを訛っているって言うの!!」
最後の丹陽の呼び掛けに、ヤマトが笑いのツボに入ったので丹陽を注意したのだが、どうも丹陽本人は訛った口調をあまり自覚していなかった。
その為に「えぇ~」と呻いていた丹陽に、イソカゼとハマカゼが笑いながら突っ込んでおり、どうやら国が違えど丹陽は駆逐艦娘達に上手く馴染んでいる様だった。
そんな丹陽にじゃれながらアサシモが色々とアドバイスをしていたが、イソカゼがブーツを鳴らして姿勢を正すと他の四人も彼女に続き、5人揃って右拳を胸に当てる敬礼をした。
「大日本帝国海軍、第二艦隊所属、第二水雷戦隊、集結しました!
イスカンダル遠征艦隊への参加を許可願います!」
五人を代表してのイソカゼの宣言に、ヤマトが「え~」と呻き、ヤハギとタマが視線を合わせて苦笑した。
「貴女達、その古い呼称を使うの?」
「当たり前だ。
見ろ!!!」
呆れているヤマトを他所に、イソカゼ達は右腕を下ろすと、5人揃って回れ左をして左袖の腕章……なんと旧海軍の第二艦隊の物を見せた。
「…丹陽の場合、不味くない?」
「不味いと思うニャ」
ヤハギとタマが小声で話し合っていた通り、日本籍ではない丹陽のみは色々と不味い気がし……実際に丹陽の身勝手な艦隊編入に加えて、旧海軍第二艦隊の腕章を日本側が強要させたとの中国の言い掛かりで大問題が起こるのだが、それは遠征帰還後の話である。
「あ~あー…、古臭い腕章を使っちゃって………って、あれ!?
ヤハギ、貴女も付けてるの?」
「そう言うヤマトも付けてるじゃない!」
明らかにわざとらしかったが、呆れたヤマトがヤハギも旧海軍第二艦隊の腕章を付けていて、更にヤハギもヤマトも同様に腕章を付けている事に気付いた。
そんな二人にタマが苦笑し、イソカゼ達5人が「あー!!!」と叫んだ。
「あ、そうだ。
此れ、隠し持ってきたんだ。
カスミがいないけど、第二艦隊復活を祝って飲も飲も!!」
「あ、それ、美伊じゃないか!」
アサシモが艤装から取り出したのは純米酒『美伊』……元々高価だったのが、ガミラス戦での物資不足で価値が急上昇した高級酒だったので、イソカゼが驚いていた。
「ちょっと、飲酒は…」
「良いニャ、良いニャ!
で、タマの分はあるかニャ?」
飲兵衛のチトセでさえ、少ししか持っていない稀少な酒に、ハツシモがはしゃいでいる駆逐艦娘達を良心的に抑えようとしたが、そのハツシモをタマが止めながら、自分もありつこうとしていたのでヤハギに呆れられていた。
「ああ、もう!!
第二水雷戦隊、静粛に!」
幾らなんでも騒ぎ過ぎなので、ヤマトが静めようとしたが…
「静かにしてくれない」
…此所にはいない筈のズイカクの声に、全員が一瞬硬直した後に彼女の方に振り向いた。
ズイカクがオオヨド(彼女の脇にアケシ、レシーレリヌイ、ヴェールヌイの三人もいた)と話し合っているのを見た処、彼女はワープの為の偵察情報を渡す為、先行して合流した様だった。
因みにズイカクの同伴として、彼女から離れた所にカスミもおり、自分を除いての祝い酒をやろうとした事に、カスミはアサシモ達を睨みながらも、然り気無く左袖の旧海軍第二艦隊の腕章を見せていた。
「あのさ、此方は勝手に騒いでいるんだから、どうしようと勝手でしょう?」
「どうでしょうかね?
第二艦隊だの、何なのと騒がれていたら、鬱陶しいだけよ」
妙に喧嘩口調な上にヤマト達に背を向けて振り向こうとしないズイカクに、お祝いモードだった空気が険悪なモノに急反転してしまった。
「ズイカク、アンタも私達も艦隊を組んだ事があるから、気質は知っているでしょ?」
「尤も、こぉーんなデッカイオムツを穿いた状態だったから覚えてないよねぇ~」
そんな空気の中で、ヤハギとアサシモがズイカクに煽り返して、ハツシモを除いた駆逐艦娘達が笑っていて、後姿でも分かるぐらいにズイカクがムッとしていた。
「此の遠征でのエースは私が取る!
覚悟しておけよ!」
更にイソカゼが、日本艦隊のトップエースであるズイカクを煽って、ズイカクが怒り過ぎてオオヨド達4人がギョッとしながら距離を取っていたが、当人は少しの間硬直していた。
そしてズイカクの何かが切れてヤマト達の所に振り向いたが、彼女の口から出たのは以外なモノであった。
「ヤマト、何で今だったの?
何で、あの時より前に甦ってくれなかったのよ!?」
「あの時?」
「……コンゴウ達が亡くなった時よ!
艦隊が壊滅する前によ!!」
此の時に、ショウカク達第三艦隊がやって来ていたが、ヤマトとズイカクの間を中心としたただならぬ空気を感じ取っていた。
「要するに、捷一号作戦時と同様に命を惜しんでいたんでしょ。
そんなアンタには、私達が命懸けで戦っていた戦場の地獄度合いなんて分からないでしょ!?」
「何だと!!」
「…っ!」
ヤマトは一見したら無反応だったが、彼女に代わって怒ったイソカゼ(を初めとした駆逐艦娘達)を止めた。
「私は認めない。
アンタが最後の希望だって………腰抜け」
ズイカクの最後の吐き捨てにヤハギ達が飛び出そうとしたのをヤマトはタマとハツシモと共に止めたが…
「ズイカクゥー!!!」
…1人離れた所にいたカスミのみが、ズイカクに駆け寄って彼女を殴ろうとしたが、ズイカクが右フックでのカウンターで逆にカスミをKOしてしまった。
「「カスミ!!!」」
「ズイカク、此方に来なさい!!」
伸びたカスミにヤマトとハツシモが駆け寄って介抱して、ズイカクはショウカクの怒鳴っての呼び出しに“しまった”と顔に出しながら、ヤマトの振り向かずに姉の所に向かった。
「……出来の悪い妹を持ったら、姉は苦労するわね」
ショウカクがヤマトに頭を下げた後にズイカクを説教か何かをしに彼女を連れて一旦離れる前に、チトセが苦笑しながらショウカクに同情していたが、後に此の言葉はチトセにブーメランとなって帰ってくる事になる。
「…誰だよ、あの空母を此の艦隊に入れたの?」
艦娘も内面は通常の人間と同じで相性の悪さがあり、旧海軍で言ったら、ギクシャクしていた北上と阿武隈や、張り合っていた朝雲と陽炎等があったが、取り分けて大和と瑞鶴の不仲は“艦娘版・犬猿の仲”の代表格として後世でも有名であった。
片や海軍期待の新星として後方で待機させられていた大和、片や“五航戦の子なんかと一緒にしないで”の言葉通りに期待値ほぼ0でありながらも前線に居続けてトップエースに登り詰めた瑞鶴、こんな真逆な戦歴の2人が相容れる訳が無く、大和と瑞鶴は出会う度に口論(流石に取っ組み合いは無かったが)をしていた。
況してや大和と瑞鶴は竣工日がかなり近かったので相手を意識しないのは無理があり(此の点は榛名と霧島の姉妹仲に近い)、決定的なのはズイカクは先代瑞鶴の犠牲を無駄にした大和(ヤマト)を益々嫌っていたのだから、アサシモが苦虫を噛み締めながらの呟き通りにズイカクの遠征艦隊編入には反対や危惧する声が多数あった。
まぁ、殆どの者は、ズイカクの遠征艦隊編入(ズイカクの実力だけは編入には値する)はイスカンダル遠征反対派の芹沢辺りの差し金だろうと推測していたが、「幸運の女神が付いている」と自称するズイカクに反して、彼女の存在が遠征艦隊に疫病神を招く不安を頭に過らせていた。
(何であの時より前に甦ってくれなかったのよ!?)
此の時のヤマトは、つい先程のズイカクの問い掛けが頭の中で再生されていたが、その問いの答えは“何故甦ったのが自分だったのか?”を含めて、彼女自身が知りたい事であった。
――― ????? ―――
「Offenbar scheint die Erdflotte auf das aeussere Universum zu zielen」
(訳:どうやら、地球艦隊は外宇宙を目指しているようだな)
「Es scheint so」
(訳:らしいな)
何所かの暗い大部屋で、2人の存在が遠征艦隊が映る大型モニターを見ていた。
「Was machst du?
Wirst du Millieu Admiral um Anwerisungen bitten?」
(訳:どうする? ミリュー司令に指示を仰ぐか?)
「Lass nichts deragleichen auf dieses Selbst uebertragen Chu.
Sie wissen,was passiert,wenn Sie ihm “Diese Person” den Status quo melden?」
(訳:あの自己チュー野郎に伝わるような事は一切控えろ。 奴に“あの御方”に現状を報告されたらどうなるか分かるだろ?)
「Es versenkte nicht nur das Schlachtshiff Lu Class “dieser Person ”,sondern der Angriff auf interplaneteren Gefechtskopfgeshosse scheiterte」
(訳:“あの御方”の戦艦ル級を沈めてしまっただけでなく、惑星間弾道弾での攻撃が失敗したからな)
苦笑した一方に、もう一方が睨んだが、どうやら此の2人は対等な立場で話し合っている様だった。
「Verwandeln Sie die Begleiteinheit der Transportflotte in Richtung Jupou in eine Abfangstation zum Mars,aber sagen Sie ihr,dass sie nach dem “Latenter Daemon” Ausschau halten sollen」
(訳:木星へ補給基地の建設に向かっている輸送艦隊の護衛部隊を火星へ迎撃に向かわせるが、“潜宙棲鬼”に警戒するように伝えろ)
「Ich verstehe」
(訳:分かった)
相手に同意した一方は、直ぐに指示を出しに退室していった。
「Aber warum kuemmert sich nicht nur Millieu,sondern auch “Diese Person” um diess Schlachtshiff?」
(訳:しかし、何故あの戦艦をミリューだけでなく、“あの御方”までが気にかけているのだ?)
残った一方は、遠征艦隊の映像を操作して、1人だけ拡大されて映っているヤマトを見詰めていた。
感想・ご意見お待ちしています。
大和
「最後の場面で“ミリュー”って、名前と思われる見慣れない単語があったんですけど」
奴は宇宙戦艦ヤマトのキャラではありません。
初代・徳川太助と中の人が同じ松本零士キャラのですから、奴の正体が分かれば此の作品に関わっている松本零士作品が分かります。
前回報せた第8話と第10話の書き換えは、此の為の布石です。
大和
「大丈夫なんですか?
此の作品には、ガミラス側の提督(将軍)や司令等は出さなんじゃなかったのですか?
現にガミラスのキャラで出るのはデスラーだけじゃないですか」
本作独自の大和(ヤマト)の過去の秘密を書くのに、どうしても奴の存在が必要になったんです。
只、作品を終わらせる危険性があったら、投げ捨てる可能性はありますよ。
大和
「はぁ…」
最後に語学力の無い作者にはガミラス語が書けないので、ドイツ語で代用しています。
で先行情報として、深海棲艦の武装がアメリカ規格たったのに対して、ガミラスの武装はドイツ規格となっています。
さあ、次回はワープ実験からのヤマト初の宇宙での艦隊決戦です。
初のワープだから、アレがあるかもよぉ~ん。
大和
「此の作品は挿し絵の無い小説だから、有っても無くても変わりないと思いますけどね」
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還