――― 木星沖 ―――
オオヨドや防衛司令部は念入りに木星軌道を徹底的に調べた結果、此の軌道や木星そのモノにガミラスの基地や艦隊はまだいないと判断していた。
もし、いたとしても火星軌道のヤマト達遠征艦隊を迎撃をしに離れているだろうとの、淡い予想は次々にワープアウトして出現してくるガミラス艦隊によって否定された。
で、現れたガミラス艦隊は6隻ずつの3つに分けられていて、重巡リ級を旗艦とした雷巡チ級2隻に駆逐ロ級3隻ので編成された前衛、軽巡ホ級を旗艦として駆逐イ級2隻と同ニ級3隻で編成された後衛、そして空母3隻と駆逐ハ級3隻で編成された本衛であったのだが、此の本衛こそが仰愕する要素を持っていた。
「…っ! 空母ヲ級がいます!!!」
オオヨドの絶叫しながらの報告通り、軽母ヌ級2隻を従えて本衛の旗艦を務めていたのは、軽母ヌ級に似た帽子を被って外套と杖を携えた魔導師を思わせる容姿の空母ヲ級であったからだ。
戦艦ル級と主力の双璧を成す空母ヲ級が含まれている以上、彼女達は偶々現れた警備艦隊などではなく、間違いなく遠征艦隊を待ち受けていたガミラスの主力艦隊であった。
「後方にも敵艦隊!!!
30、いえ、40隻はいます!」
後方からガミラス駆逐艦群4種混合の7個艦隊までが現れて、チトセが絶叫しながら伝えた。
「奴等、包囲する気だニャ」
「オオヨド、何でこんな所にワープさせたのよ!!!」
タマが指摘しなくてもガミラスの狙いは簡単に分かったが、問題なのはガミラスが待ち受けている宙域にワープ座標を設定した事であり、現にオオヨドがイスズに怒鳴られ、ワープ酔いで喋れないカスミに睨まれていた。
「違います! 偶然です!
観測した時にはガミラス艦隊の反応は無かったんです!」
尤も当のオオヨド自身が“計られた”と慌てふためいていた。
「ワープを探知されたのかもしれない。
ワープ航行法に“一日(実際は一ヶ月処か一年でもすまない)”の長があるガミラスに取って、ワープ探知は簡単な事かもしれないわね」
「じゃあ、それって!?」
代わりにアケシがガミラス艦隊が現れた理由を察していたが、ヤハギがギョッとした通り、それは同時に今後ワープをする度にガミラス艦隊が待ち伏せている可能性か大である事でもあった。
「兎に角、ガミラス艦隊を撃退しないと。
波動砲、用意!」
「駄目、波動砲はワープと同じエネルギーを使っているのよ。
ワープしたての現状ではエネルギー不足で使用出来ない」
兎にも角にも、ガミラス艦隊と戦わないといけない事は確かであり、此の間にガミラスの空母3隻が艦載機を発艦させていた事もあって、波動砲の準備をしようとしたヤマトがアケシに止められてしまって、思わず第二主砲のターレットを殴った。
「兎に角、波動砲の充填を始めるんだ!」
『待て!!!』
イソカゼがせっついた通りに、波動砲を充填出来るようにしたヤマトを、変な間を開けていた沖田が止めた。
『ショウカクのワープテストを今から行う。
アマツカゼ、準備にどれぐらい掛かる?』
「……エネルギーの充填だけでなく、ヤマトの艤装からデータを取り出しての調整で、20分は掛かります」
『オオヨド、20分で土星・天王星間へのワープ着地点の算出は出来るか?』
「出来なくてもやってみせます!!」
ワープ中の出来事を思い出して顔を赤くして胸部を両腕で覆ったショウカクの賛否は兎も角として、沖田の指令実行の為の質問にアマツカゼとオオヨドが答えていたが、ヤマトはギョッとしていた。
「逃げろと言うのですか!!?」
『そうだ』
ヤマトが大抵の軍隊では嫌み嫌われ、最悪の場合は即刻銃殺刑となる敵前逃亡を命じた沖田に思わず反対してしまったが、その沖田の隣にいる秘書艦キリシマも同様らしく、沖田に何か怒鳴っていた。
況してや師匠分のイギリス海軍のネルソン以来からの
だが今回の場合、沖田は“前方の3個艦隊の艦隊間の距離が開き過ぎている”“本衛に対して前衛は鋭角に近い右斜め前方、後衛は遥か後方にいる為に連繋が取れない”“前衛と後方の編成が真逆(つまり艦隊配置を間違えて前後逆)”“駆逐艦隊が長時間全力走行をし過ぎた所為なのか、脱落艦が相次いでいる”以上の点から、ガミラスはヤマトのワープに慌ててしまい、本来の待ち伏せ部隊である駆逐艦隊を急ぎ反転させて、別方面の3個艦隊(凄い事に此れ等の艦隊は土星に配備、或いは配置転換中のを転用された事が海戦後に判明)を逐次投入したので、戦力配置が無茶苦茶である事を見抜いていた。
此の状況ならガミラス艦隊の各個撃破の可能性も感じられたが、増援が殺到する危険性から短期決戦は不可と予想、前方の3個艦隊さえ上手く対処したら追撃の可能性が無い上にワープ先に待ち伏せが無いと判断、更に言うとガミラス(と深海棲艦)は追撃戦が苦手との謎の欠点を持っていた事も決定要素の一つとなっていた。
『そうだ。
物資や時間に余裕が無い以上、イスカンダル遠征中は一撃離脱からの戦場離脱を基本とする』
そして只でさえ物資が限られて時間の猶予が乏しいイスカンダル遠征に、やたらめったら海戦を続けていたら枯渇する公算が大との現状を理解している沖田は一撃離脱での撤退を狙う事とした。
そんな沖田の狙いをヤマトは頭の中では理解はしていたが、逃げると言う選択肢への拒絶反応で下唇を噛んでいた。
「あの馬鹿、こんな指令を出して、田中頼三提督みたいに更迭されるわよ」
「それ、
尤もヤマトがカスミとアサシモのやり取りを見た処、他の者達も彼女と同感のようであり、そうでないのはショウカク、チトセ、アケシ3人ぐらいだったが…
『後方の駆逐艦隊は何れぐらいで接触する?
時間的距離で出せ』
「接触まであと25分!!」
『ヤマト、2斉射は許す。
前方のガミラス3個艦隊の各旗艦の機関を破壊して追撃出来ないようにしろ』
「……分かりました」
作戦の好き嫌いは別として、モタモタしているとガミラスの下手な目論み通りになってしまうので、兎に角沖田の作戦通りにしなくてはいけなかった。
「全艦、砲雷撃戦用意!!
第四艦隊から第二艦隊へタマ、レフィ、ヴェルを、第三艦隊へ丹陽を臨時編入。
ヤハギ、チトセ、ハツシモ、アサシモ、カスミは私と共に第四艦隊で待機!」
遠征艦隊(と言うより現在の日本海軍自体)は深海棲艦戦時からアメリカが生み育んだ任務部隊制度を取り入れていて、戦況や現場の判断である程度は艦隊間の編成の入れ替えが可能で、ヤマトは早速此の任務部隊制度を有効活用しようとした。
ヤマトの狙いは2個水雷戦隊でガミラス艦隊を攻撃且つ攪乱させて、ガミラス艦隊が隙を見せたらヤハギとオオヨドと共に砲撃で仕留める、旧日本海軍の水雷戦の基本戦術の応用を行う事であった。
「ニャャャーハッハッハッ!!!
第二艦隊預かるニャ!」
満面の笑みのタマがヤハギの口癖を言いながら彼女の右肩を叩いたらので、ヤハギがムッとしていたが、沖田のとは違ってヤマトのは全員賛成の様だった。
「よし、行わよ!!!」
更にイスズの号令に駆逐艦娘達が「了解!!!」と一斉に答えて戦闘体制を整えていて、此の間にヤマトがショウカクの脇に移動して、アマツカゼがショウカクとヤマトの2人の艤装をケーブルみたいな物で繋げて調整を行っていたが…
「ズイカク、突撃よ!!!」
…ワープする以前から戦闘モードてあったズイカク突進していった。
「ちょっと、ズイカク!!!」
「ズイカクさん、待って!!!」
只問題だったのは、丹陽だけでなく直轄のイスズとアキヅキ級の3姉妹もが出遅れてしまい、危惧したショウカクとアキヅキの制止を無視してズイカクが単独で行ってしまった。
「畜生!!!
先を越された!」
「だから、戦闘モードに入っとくべきだったんデスヨ」
「……っ!」
イソカゼが1人先行したズイカクに悔しがって、丹陽が戦闘モードにしていなかった事を悔やんでいた処をイソカゼが彼女の胸を小突いた。
「お手並み拝見といきますよ」
此のズイカクの単独行動は戦略的に不味い事が起きる可能性があったが、ガミラス艦隊群が既に戦闘体制に入っている以上は下手に呼び止めるとガミラスに先手を取られると判断したヤマトは、不愉快さはあったものの、ズイカクの行為を容認した。
「馬鹿にしないで、これでも開戦当初からのガミラス戦を生き抜いてきたんだから!!」
「本衛の航空隊が多数接近しています!
前衛からも接近していますので注意して!」
「ワープは20分後、それまでに戻るんです」
「りょーかい!!」
ワープ着地点の算出に加えて砲撃の準備をしているオオヨドに代わってのチトセの戦況報告に加えてのヤマトの念押しに、ズイカクがふざけたかの様な返事をした直後にガミラスの航空隊が彼女目掛けて突撃してきた。
「コスモタイガー隊、発艦始め!!」
ズイカクは直ぐに弓を構えると矢を放ち、虎と言うよりは美しき鶴を思わせる新型戦闘機コスモタイガーの編隊に変わり、半分は前衛に向かわせると急降下による一撃離脱での雷撃(ミサイル攻撃)を実施して駆逐ロ級1隻を沈め、残りの半分は前衛の航空支援を行おうとしているガミラス航空隊への迎撃に向かわせた。
コスモタイガー隊とガミラス艦載機隊の空戦の結果は、新型の面目通りにコスモタイガー隊が圧倒するも、ガミラス側が2倍以上の数を揃えていたので何割かがズイカクへ空襲しようとしたが、ズイカクは弓を一旦胴体に対角線上に挟んで対空ミサイルを多数発射しながら回避運動として左右に蛇行したが、生き残って突撃してきた艦載機群をスピードスケートみたいに体を大きく寝かしての右の急旋回をしながら艤装のパルスレーザー群とコスモガン二丁で次々に撃ち落としていた。
更に艦列を乱しながら突進している前衛から、射程圏内に入った重巡リ級が、少し遅れて雷巡チ級2隻が砲撃を開始、ズイカクが少し驚くも、直ぐに彼女はコスモガン二丁をしまって弓をまた手に取ると
「良い感じじゃない!」
1人で前衛を撹乱しているズイカクは、コスモタイガーが“宇宙の虎”の名前通りに獰猛な高性能を発揮している事に満足していた。
因みに、コスモタイガーは試作機をⅠ型として無理を承知で量産した為、出撃までにショウカクとズイカクの予備を含めた分しか生産出来なかったので、チトセにはコスモファルコンが搭載されていて、ガミラス戦後に量産性向上と運用実績を元に改良されたⅡ型が防衛艦隊の主力戦闘機として長期間運用され続ける事になるのだが、それはまだ未来の話である。
で話を戻して、ズイカクの気がコスモタイガーにいった隙を突こうと、雷巡チ級が代名詞である大多数の空間魚雷を一斉に放ったが、直ぐ隣の重巡リ級がギョッとした通り、雷撃するにはまだ距離がありすぎたのだが、此の雷巡チ級に吊られた駆逐ロ級2隻も空間魚雷を続けて放ってしまった。
「…っ!」
前衛の雷撃に、ズイカクは当初は驚いたが、直ぐに意外に近くにいた本衛の方に一瞬振り向くと、前衛にニッと笑った後に本衛目掛けて全速力で突進し、前衛も慌てて彼女を追い掛けた。
勿論、本衛も接近してくるズイカクに迎撃の砲火を多数繰り出していたが、ズイカクが巧みで小刻みな左右の動きで避けていた上、前衛への誤射を怖れて精度を落としていたので、ズイカクに掠りもしないでいた。
そして雷巡チ級と駆逐ロ級の計3隻の空間魚雷群がズイカクに直撃寸前で、そのズイカクは狙いをつけた右翼の軽母ヌ級の股座をスライディングで滑り抜け……ズイカクの行為に唖然としながら目線のみで彼女を追い掛けていた軽母ヌ級の背部に、空間魚雷群が間違って次々に直撃して爆沈した。
「見たかぁぁー!!!」
前衛と共に誤射で沈んだ軽母ヌ級を呆然と見詰めている本衛から距離を取ったズイカクは、右拳を頭上に上げながらガミラス艦隊に向かって吠えた。
「やるわね…」
ズイカクが単独且つ短時間でガミラスを3隻を沈めた光景に、ヤマトはヤハギとオオヨドと各々に視線を合わせながら感銘の声を漏らしていた。
ズイカク1人が飛躍する中、艦隊戦はまだまだ続く…
感想・御意見お待ちしています。
他の作品と違って、宇宙戦艦ヤマト……特にガミラス編のは“逃げる”と言う選択肢がよく選ばれているってのは面白いよね。
まぁ、艦これでも、捨て艦と言う悪例があるけど、逃げる事を戦略に入れる事が出来ますしね。
大和
「まぁ、今は逃げる事を前提にしていますけど、良いも悪くも、瑞鶴のお陰で初戦は制してますね」
但し、此の作品には艦これ要素が多数入っています。
詰まり、提督(プレイヤー)なら最低一回は泣くか怒る、艦これの悪しき出来事が起こります。
元々、実写版でもそう言うのがありましたけどねぇ~
大和
「それって、まさか…」
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還