SPACEBATTLEGIRLヤマト   作:サイレント・レイ

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第25話 第二次木星沖海戦(後編)

――― 土星・エンケラドゥス ―――

 

 

 艦娘達が身を寄せるコロニーの目の氷原に多数建てられた亡くなった艦娘達の墓標群…その中で四六時中座って伏せているハルナの前にあるのは、コンゴウの葬られた直上に突き刺さっている、彼女の大破した主砲の1基で代用された墓標であり、その墓標にはコンゴウの艤装で唯一無傷だったヘッドギアが架けられていた。

 不味い事に、ハルナはコンゴウ死後から全く飲食をしなくなり、現に彼女の直ぐ脇に空母ズイホウが持ってきていた水筒とレーションが、手を付けられていない状態のまま凍っていたし、なによりハルナ自身が少し雪ダルマになっていた。

 

「ハルナさん、こんな事にいたら風邪を引いてしまいますよ」

 

 仲間達は、ハルナがこのまま死にそうなのを危惧して、交代で彼女の身を案じていて、この時は空母アカギがハルナの所に来ていた。

 

「…先代と同様に、ハルナも何も出来ずに、愛するモノ全ての最後を見る事になるのでしょうか?」

 

 だがハルナはアカギに振り向かずに、いつもの一人言を呟くだけだった。

 レイテ沖海戦直後に金剛の死を見た先代榛名と同様に、長姉コンゴウの死が原因で、先代榛名が大和や仲間達がやられていくだけでなく、広島が原爆で消滅するのを目撃した事から、自分達を含めた地球の破滅を連想して、ハルナは気力の殆どを失っていた。

 

「姉や仲間達、そして誇りを戦場で失う事は、とても辛い事ですからね。

只、私は先代の空母赤城以上にやってしまいました」

 

 溜め息を吐いてしまったが、生存者達の中で1番ハルナの心情を理解しているアカギは、自分の右掌を見詰めながら姉のアマギ、親友だったカガと彼女の妹トサ、同じ空母娘だったリュウジョウ、ソウリュウ、ヒリュウ、タイホウ等の大切な仲間達、そして彼女等空母娘達に従っていた者達を、ガミラス戦の中でムザムザ死なせてしまったのに、自分だけが生き恥を晒している事を感じていた。

 因みに、今のアカギの両手は、怪我で親指以外の指4本を纏めて固定されているので、最低限の日常生活を送るには支障がない範囲で軽く握る事しか出来ず、当然ながら弓矢を使う事も出来なかったので事実上の戦闘不能状態だった。

 更に言うと、そんな両手からあまりに多くの命を溢れ落としてしまった事からの罪悪感で、軽度の拒食症を引き起こしていたので、アカギは少し(ヤツ)れていた。

 

「アカギ、直ぐ通信室に来て!!」

 

「どうしたんですか、アケボノさん?」

 

 アカギはハルナの雪と氷を払い落とすと、彼女と一緒にコンゴウの墓標を見詰めていたが、そのアカギに血相を変えた駆逐艦アケボノが駆け寄ってきた。

 

「…ザラ達が防衛軍の通信を傍受したんだけど、木星の沖合いで海戦が起こったそうなの!」

 

「海戦がこんなに早く起こったのですか?」

 

 アケボノは白い息を吐きながら息を乱していたので少しの間喋れなかったが、膝に手を当てながら屈んで息を整えた後、木星沖での海戦勃発を伝えた。

 妙に早く起こった海戦に疑問があったが、遠征艦隊の事は知っていたので、アカギは此の報告に驚きはせずに“遂に来た”と思った。

 

「それだけじゃない!

ナチの話だと、艦隊の総指揮を取っているのはキリシマじゃないそうなの!」

 

「誰が旗艦なのですか?」

 

 興奮しているアケボノがキリシマが遠征艦隊にいない事を上手く伝えられてないので、アカギはショウカク辺りが旗艦だと予想していた。

 

「ヤマトよ。

旗艦は、宇宙戦艦ヤマト!!!」

 

「ヤマト!?

あの日本が新造戦艦を作ったと、言うのですか!?」

 

「だからと言って、防衛軍の馬鹿どもは役立たずのクソ戦艦の名前を付けたのよ!」

 

 遠征艦隊の旗艦がヤマトである事を伝えられて、アカギもキリシマが地球残留だけでなく、ヤマトの存在に驚き戸惑っていた。

 

「……ヤマト」

 

 2人してこんな状況だった為、ハルナが小声を呟きながら顔を上げ、彼女の目に光が灯ろうとしている事に気付いていなかった。

 この直後、ハルナの目の前で、コンゴウのヘッドギアが小風に揺れて、小さな金属音を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 木星沖 ―――

 

 

「やるわね…」

 

 ズイカクが単独且つ短時間でガミラス3隻を沈めた光景に、ヤマトはヤハギとオオヨドと各々に視線を合わせながら感銘の声を漏らしていたが、ショウカクのみは妹がヤマトを意識しすぎて暴走しかけている事を見抜いていて、ズイカクが足元を掬われそうな事を危惧していた。

 況してや、自分達が戦争の相手にしているのは、数多の艦娘達を葬り、地球を危機的状況に追い込んでいる、高い戦闘学習能力を持ったガミラス艦隊。

 そのガミラス艦隊が、このまま殴られっぱなしな状況を黙っている訳がなかった。

 

「…っ!?」

 

 で、実際にショウカクの不安は的中して、後衛から先行した軽巡ヘ級2隻がズイカクへの砲撃を開始し、不意を突かれたズイカクは、急いで上下左右不規則な蛇行をしながら距離を取ろうとしたが、軽巡ヘ級2隻は巧みに彼女を追撃し続け……ある程度近付いた処で空間魚雷を多数放った。

 

「…くそ!!……っ!?」

 

 此れ等の空間魚雷群をズイカクは、チャフをばら蒔きながらのパルスレーザーの弾幕でなんとか防いだが、矢筒の矢が空になっていた事に今頃気付いてギョッとしている事から、彼女では避ける以外の策は無かった。

 だからズイカクはコスモタイガー隊を呼び戻そうとしたが、それ等は本衛の空母ヲ級も軽母ヌ級のガミラス艦載機隊に阻まれていて、どうやらガミラス艦隊は先ずはズイカクを葬ろうとしている様だった。 

 だが軽巡ヘ級2隻が一斉射でズイカクを仕止めようとした直前、背後からの砲撃が次々に直撃して2隻立て続けに沈んだ。

 

「ズイカクさん、大丈夫ですか?」

 

「…ああ、テルヅキ」

 

 両頬に掠り傷による赤い髭が出来ていたズイカクは、軽巡ヘ級2隻が沈んだ事からの安心感で一気に疲労感が出た為、溜め息を大きく吐きながら顎下の汗を拭うと、左脇にテルヅキが着いた事から、砲撃の主は戦闘域に辿り着いた第二&第三艦隊の面々である事を察した。

 

「先に行くだけが、能じゃないっスヨ!」

 

 更にズイカクの右脇に着いた丹陽の発言に、ハツヅキだけでなく、近くを過ぎようとしている第二艦隊の5人までが笑っていたので、ズイカクがムッとした。

 まぁ、尤もハツヅキのみは、直ぐにイスズに小突かれていた。

 

「統制雷撃とターゲッティングを開始するわよ!

目標、ガミラス本衛艦隊、空母ヲ級!!」

 

「タマ達は後衛を狙うニャ!!」

 

 イスズ、更に続いてのタマの号令に、全員が一斉に「了解!」と返事し、タマ達第二艦隊は向かってくる後衛へ突撃して、イスズ達第三艦隊はズイカクが艦隊に組み込まれながら呼び戻したコスモタイガー隊と共に本衛(と微妙に合流している前衛)への下部に向かって突撃した。

 第二艦隊は反航戦での砲雷撃で後衛を殲滅していたが、第三艦隊のは、前衛の援護とガミラス艦載機隊の牽制と、レシーテリヌイとヴェールヌイの重雷装姉妹を有する第二艦隊と比べて空間魚雷の使用本数がかなり少なかった事で、反航戦での雷撃が駆逐ハ級を沈めて軽母ヌ級を中破させるだけで終わった。

 

「ターゲッティング完了!!」

 

 だがズイカクはコスモタイガー隊を通して、空母ヲ級と重巡リ級の正確な位置情報を捉える事に成功して、それ等をヤマト達第四艦隊に送った。

 

「主砲、斉射!!!」

 

「「主砲、一斉射!!!」」

 

 ヤマトの号令にヤハギとオオヨドが復唱した直後に衝撃砲が一斉に発射……途中で21条の光線群が、8条に束なって……ヤマトのは空母ヲ級が驚きながら背後の緑色光線群へ振り向いた直後に空母ヲ級の上半身を消滅させ、ヤハギとオオヨドのは空母ヲ級と同じ様に重巡リ級も被弾したが、こちらはなんとか耐えるも直ぐに2人の第二射が直撃し、2隻立て続けに大爆発が起き、防御の為に密集体形を取っていた事が仇になって、ガミラス艦載機隊と従属艦群が巻き込まれた。

 

「空母ヲ級及び重巡リ級、撃沈!!

前方のガミラス3個艦隊、壊滅!!」

 

 チトセの観測報告を聞くまでもなく、前方の3隻の旗艦の大破を狙いだったのに、結果的にガミラス3個艦隊が壊滅した事にに、高速で離脱中の第二&第三艦隊のズイカクとヴェールヌイ以外の者達が歓喜の雄叫びを各々に上げていた。

 

「……凄い、今までと違う…」

 

「此れが、波動エンジンの恩恵!」

 

 一方の第四艦隊では、前衛に止めを差したヤハギとオオヨドが新しい主砲の火力に驚き戸惑い、そんな2人と同様でショウカクは硬直して、チトセとアケシはハイタッチをした。

 因みに今回の遠征の為、参加艦娘達は波動エンジンの搭載だけでなく、武装の更新も各々に受けていて、ヤハギとオオヨドにタマの3人の主砲は、備えているも今回使われなかったヤマトの副砲と同じ砲身(オオヨドのみは砲塔ごと)に交換されていた。

 ご覧の通りにヤハギとオオヨドは問題はなかったが、イスズはアキヅキ級を統制する防空巡洋艦を求められた事でアキヅキ級と同じ主砲に改装、タマは火力過剰の傾向が強かったので失敗と指摘する声が多数あった。

 

「……ふぅ…」

 

 ヤマトは呉空中戦で此の事が分かっていたので、安堵の息を吐いていた。

 

「ヤマト、やったわね!」

 

 そんなヤマトに、アマツカゼがサムズアップをして、ハツシモ、カスミ、アサシモのワープ酔いの3人は引き吊った表情で頷いていた。

 

『ショウカク、あと何分だ?』

 

「あ、はい!! エネルギー充填完了まで、あと5分です!」

 

『オオヨド、ワープ可能な場所の特定は出来たか?』

 

「まもなく」

 

『チトセ、後方の駆逐艦隊はどうなっている?』

 

「接触まで、あと10分」

 

 ショウカクが沖田への返事に少し詰まりはしたが、3人の報告だと逃げる算段は準備万端の様だった。

 

「ズイカク、タマ、よくやってくれました!

あと5分でワープですから、直ぐ戻ってきて下さい!」

 

 チトセの呼び掛けに、ズイカクとタマが揃って「了解!」と返し、あとは第二&第三艦隊が戻ってショウカクでのワープで逃げるだけだった。

 

「見た、チトセ?

やっぱり、ズイカクには幸運の女神が付いているのよ!」

 

「そうかもね」

 

 ズイカクとチトセの笑いながらの通信通り、此の時までは遠征艦隊に幸運の女神が付いていた、或いは女神を引き寄せたのかもしれない。

 そして、このままワープで離脱出来たら、ガミラス戦初の完全(ワンサイド)勝利として記録されたかもしれない。

 何故、推測形で語るのかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チトセお姉!!!』




 感想・御意見を御待ちしています。

大和
「…最後のって、実写版の“森機の遭難(オリジナルの山本機の落伍に該当)”の該当の前振りですよね?
明らかに、ヤマト原作よりタチが悪くなっていますよ」
(注:実写版ヤマトでは、森雪はツンデレなコスモタイガー乗り)

 まぁ、艦これの“2-4”等を知っていたら、此の後にヤマトが何をするのか分かりますよね?

大和
「貴方、今年に入ってからドロップと羅針盤に嫌われてますからね」


















































 最後に“宇宙戦艦ヤマト2202”の5章と波動実験艦『銀河』の影響で、SUS編(復活篇)で出る予定だったムサシ(武蔵)を、白色彗星帝国(ガトランティス)編で銀河と共に(か『銀河』に代わって)前倒し登場を決めましたので、“設定 艦娘”の“まだ見ぬ戦友”を書き換えました。
 但し、まだ迷いが有りまので、2202と『銀河』次第で“銀河のみの登場”“銀河と揃って超ヤマト級戦艦キイと交代”になる可能性があります。

 更にムサシ登場が確定した場合、“設定 ガミラス”での継ぎ足しから分かる通り、2編(ガミラス編&ガトランティス編)に渡っての“ヤマトvsムサシ”が最低一回は行う予定です。
 但し、少なくとも『伊勢湾大海戦』『修羅の波濤』『超機密自衛隊』の3つの仮想戦記と『(映画版)青き鋼のアルペジオ』で『大和』vs『武蔵』が有りますが、此の4作品全てで『大和』と『武蔵』は相討ちとなって沈んだので(此のお陰で『修羅の波濤』と『超機密自衛隊』で“大和級を沈められるのは大和級のみ”との格言が出来た)、禁じ手に等しい危険な行為なので、何か意見が無い限りはガミラス編版ヤマトvsムサシはやらない可能性があります。

武蔵
「……つまり、ガトランティス編版ヤマトvsムサシは確実にやるんだな?」

 因みに先行情報として、深海棲艦戦時に武蔵vs大和が起こる可能性があった事を後々描きます。
 その重要な鍵なのは“大和と武蔵の姉妹内でのGF旗艦交代は、実は大和の剥奪に近いのだった”つまり旧日本海軍は何らかの理由で大和に不信感を持っていたのです。

 後、ガミラス編版はまだ真っ白ですが、ガトランティス編版の勃発理由は仮決定……ケッコン(指環)システムを悪用したズォーダーと強制契約されてしまったヤマト(未婚)が洗脳(此の影響でヤマトは銀髪緑肌に変色して感情損失)されてしまい、ヤマト奪還にムサシが立ち向かうとしています。

…あー、ガトランティス編が描きたいなぁ~…と思う日この頃。

武蔵
「だったら、ガミラス編をさっさと終わらせるんだな。
お前だけだぞ、30話目前にしてまだ木星沖にいるのは」

本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?

  • 実写版通りに、特攻
  • なんとしてでも、地球に帰還
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