――― 火星・木星間小惑星帯 ―――
「…潜望鏡を、見た?」
「はい!!!」
少し退く程、自分を叫んで呼びながら駆け寄ってきたサミダレの「潜望鏡を見た」との報告に対するヤマトの反応はと言うと、眉間に皺を寄せての
「潜望鏡って、潜水艦が装備しているアレだろ?」
「それが、むこうに有ったんです!」
サミダレの必死の訴えに反して、思考面での消化不良を若干起こしていた事もあって、深海棲艦も潜水カ級と同ヨ級の2種類の潜水艦を運用していたのだから、深海棲艦に関係のあるガミラスにも潜水艦が有ったんだとしか思えず、呟きに近い形での質問をしたアサシモから見ると、他の者達もヤマトと同じ様だった。
「その下は、本体はどうなっていたのよ!?
此所は宇宙であって、海じゃないのよ!」
だが現実問題、カスミの言う通りに潜望鏡の主が問題だった。
「それが、消えていたんです」
「消えていたぁ?」
「はい、潜望鏡も潜る様にして消えてしまいました」
「……お前な、カミカゼなら兎も角、
なあ、カスミ……って?」
判断に困っていたヤマトは別として、アサシモが呆れている処からだと、彼女はサミダレを信じていなさそうだった。
そんなアサシモがカスミに同意を求めたが、そのカスミは真っ先に噛み付くだろうとの予想に反して硬直していた。
否、カスミだけでなく、アブクマとハツシモが何かを小声で話し合っていた。
「……何か思い当たるのですか?」
ヤマトの質問にアブクマとハツシモは揃って頷いた。
「もしかしたらですけど、今私が戦っているのは、宇宙の潜水艦、
「…1つ聞くけど、宇宙で潜水艦は成り立つのですか?」
サミダレは兎も角として、アブクマとハツシモを疑っている訳ではないが、ヤマトにして………否、大方の一般人にしてみたら、海面下に潜って隠れる潜水艦が、基本的に隠れる場所が無い宇宙で成り立てるのかを疑問に思うのは至極当然であった。
まぁ、実際に少なくとも2190年代では潜水艦娘が1人もいなかった現状も含めて思う事はあるらしく、アブクマとハツシモが苦笑していた。
「少なくとも地球の理論上では、潜宙艦は存在しています。
超高性能ステルス艦を潜宙艦と呼ぶ事もありますが、私達は“次元潜行艦”と呼ばれる、文字通りに異次元に潜るか、亜空間断層を発生させるモノをそう言っています」
「それ、本当?」
「私はイスズと一緒に、ガミラス戦前に行われたドイツの次元潜行実験に何度も参加しているから確かです!!」
どうやらガミラス戦中に竣工したので潜宙艦を知らなさそうなアサシモに、アブクマが唸り声を上げながら抗議していたが、ハツシモ達3人は納得している様だった。
因みに言うと、地球で一番潜宙艦の研究開発をしていたのはドイツであり、やはりドイツは潜宙艦によって嘗ての潜水艦大国の復活(ドイツだけでなく、潜水艦自体が艦娘の宇宙進出で衰退した)を目指していたようだった。
だがドイツ処か、地球各国は潜宙艦開発に悉く失敗していた事(故にハツシモみたいなステルス艦で代用していた)から、ガミラスも潜宙艦は保有していないとの一方的且つ勝手な思い込みが有って、その事を今の今まで疑いもしなかった事を、歯軋りをしているカスミやハツシモが悔やんでいるようだった。
「じゃあ、どうするんですか?
相手が潜宙艦だとしても、居場所が分からないと、なにも出来ませんよ」
話を戻して、確かに相手が潜宙艦なら“姿を見せないガミラス艦隊”や“解析不能な攻撃手段”等の不可解要素全てが納得出来るのだが、ヤマトの言う通りに潜宙艦の所在が分からないと反撃すら話にならなかった。
だがアブクマは解決法を思い付いているみたいだった。
「そこでなんですが、ヤマトさん、ワープをしてくれせんか?」
「ワープを?」
「ああ、平行宇宙型があったから、確かにワープなら異次元に潜行してる奴を見つけられるかもね」
アブクマの提案にヤマトは首を傾げてしまったが、カスミは自分なりにアブクマの狙いを察して、サミダレやアサシモと一緒に納得していた。
「ですけど、ワープをしたとしても異次元にいる人達を攻撃出来るとは思えません。
それ以前にワープで潜宙艦のいる次元に行けるとは思えませんし…」
だがハツシモの指摘通りに色々と問題が考えられて、却下の気配があったが…
『いや、ワープを行え』
…沖田の天の声で決行となった。
更に言うと、沖田側も敵が潜宙艦との予測に同感としているみたいだった。
『確かにワープでは、潜宙艦の所には行けないかもしれないが、潜宙艦が何らかの反応を起こす可能性が高い。
小惑星帯を抜けた直後に不意を突く形でワープを行えば、潜宙艦を炙り出す事が出来るかもしれん』
沖田の言う通りに加え、反対する意見も気も無かったので、沖田の指令を行う事に決定した。
「……潜宙艦、か…」
ワープをしに小惑星群からの離脱をしようと直前、ヤマトは左足に視線を落とすと、左足のハイソックスの袖口を握って……沖田との通信がまだ繋がっている事もあって意を決した。
「…アブクマ」
「え、あ、はい」
ヤマトに突然呼ばれたアブクマが驚き戸惑っていたが、少し間を明けた後にヤマトは大きく息を吐いて口を開いた。
「取り敢えず此の戦いの間、旗艦を貴女に譲ります」
「わ、私が、旗艦にですか!?」
「対潜宙艦戦の知識が全く無い私より、その手の知識がある貴女を旗艦にしていた方が勝率が高いでしょう」
自分達の指揮を取れとの畏れ多い命令にアブクマだけでなく、ハツシモ達3人までがギョッとしながらヤマトに振り向き、当のヤマトはと言うと、今の自分の行為を絶対しないだろうし命じられて了解しても嫌がるだろう武蔵と長門の2人の顔を思い浮かべて苦笑した。
「直ぐ沈んだと言え、愛宕は重巡の身でありながら捷一号作戦時に総旗艦として私達を指揮しました。
アメリカでも、重巡洋艦インディアナポリスが総旗艦を何度か務めていたらしいわよ」
「でも、巡洋艦の私がヤマトさんをも指揮するのは……オオヨドさんの先代の事もありますし…」
ヤマトは前例があった事を言いたかったらしいが、アブクマは豊田副武GF長官が武蔵から引き継いで最後の連合艦隊旗艦を務めた軽巡大淀を嫌って武蔵の再任を求めていた事が頭に思い浮かべて嫌がっていた。
此の事は提督達だけでなく艦娘達もそうらしく、現にアサシモが露骨に冷たい目線をアブクマに向けていたが、直ぐにカスミに関節技を掛けられていた。
「…沖田提督は旗艦変更をどう思ってます?」
『じゃあ、私からアブクマに旗艦変更を命令しよう』
埒が明かないと判断したヤマトは、沖田にアブクマへの旗艦変更を打診して、沖田も賛成したので、要望から命令に変わったのでアブクマの逃げ道が失われた。
「お願いします、アブクマさん」
更にハツシモ達3人(泡を吐いて失神しかけているアサシモは置いておいて)も賛成していたのが、決定打になった。
「……巡洋艦アブクマ、ご期待に答えます!!」
少し躊躇いがあったが、アブクマはヤマトに敬礼し、ヤマトが答礼した事で旗艦変更が行われ、直ぐにワープの為の小惑星群からの離脱に入った。
「で、どうしておけば?」
「取り敢えずは、ステルスタイプであった事に備えて、広範囲爆破兵器を用意しておいて下さい」
「それじゃあ、主砲に三式弾を装填しておきます」
「信管は時限式に変更を、副砲には空間照明弾を装填しておいて下さい」
ヤマトがアブクマの言う通りにしているだけでなく、ハツシモ達も自主的に空間魚雷の信管を時限式に変えていたが、カスミが時限式信管に面倒臭そうな目をしていた。
尤もヤマトにしてみたら、時限式信管は感覚的につい此の間まで使っていた物なので、手慣れた手付きで交換からの調整をしていた。
「あの~、次元潜行タイプだった場合は、どうしておけば?」
「その場合は打つ手がありませんから、諦めて逃げるしかありません」
「んじゃ、ステルスタイプである事を祈るしかないね」
アブクマのサミダレの質問への返しに、カスミから解放されたアサシモが冗談みたいなのを言っていたが、此の時のヤマトは少し暗い表情をしていた。
「……アブクマに、責任を押し付けちゃったかな?」
自分のやったのは逃げただけだったのではと思っていたヤマトは、正直な処は潜宙艦戦に不安しかなかった。
何故なら貧乏海軍だった旧日本海軍は、ゲームで言えば攻撃力に全振りしていた為に後方を疎かにしてしまい、結果的に深海棲艦戦時に潜水艦に散々な目にあっていたからだ。
此の為、ヤマトが知っているだけで、駆逐艦では水無月・磯波・狭霧・敷波・漣・雷・電・子日・時雨・五月雨・海風・山風・涼風・大潮・霰・浦風・谷風・秋雲・風雲の19人、軽巡では天龍・龍田・球磨・多摩・大井・長良・名取・夕張・阿賀野の9人(プラス五十鈴だが、坊ノ岬沖海戦の同日にスンバワ島沖で沈んだのでヤマトは知らない)、重巡では加古・足柄・愛宕・摩耶の4人、空母では翔鶴・大鷹・大鳳・雲龍の4人、その他諸々で金剛・速吸・間宮・あきつ丸・瑞穂・松輪の6人、合計して42人(➕1)の艦娘達が潜水艦によって戦没していた。
更にヤマト(大和)自身も、戌一号作戦時の
「ヤマト、アンタ不安なの?」
そんなヤマトの心情を察したカスミが彼女に声を掛けたが、そのカスミは先代達と同様に対潜能力を疑われている事にムッとしていた。
「心配しなくてもいいわよ。
寧ろ、対潜が一番安心出来るモノよ」
「はぁ…」
確かに旧日本海軍から見たら不安かもしれないが、現在の日本艦隊には旧日本海軍の後継組織である海上自衛隊の血筋が流れていた事を、ヤマトが知らないのか分からないのかは分からないが、カスミが言っている事を此の時のヤマトは分からないでいた。
「Ich habe YAMATO wieder ergaenzt!」
(訳:ヤマトを再補足しました!)
戦艦イタリア以来の大物であるヤマトに3度目の奇襲に成功したガミラス艦隊は、ヤマトへの総攻撃を行う為に小惑星群にいる全艦を集結させていたのでヤマト達から離れていたが、小惑星帯から抜け出ていたヤマト達を見つけ出していた。
「Alle Schiffe,vorbereitet fuer simultan Blitzschlag!」
(訳:全艦、一斉雷撃用意!)
ヤマト達が何故か反転して速度を落としていたのが気になったが、兎に角にもヤマト達が気付かずに自分達の所に向かっていたので、予定通りに旗艦の号令下に楔型陣形を整えての雷撃の準備が始まった。
「Countdown start,dreiβig sekunden vorher……zwanig sekunden vorher……vor zehn sekunden…」
(訳:秒読み開始、30秒前……20秒前……10秒前…)
此の時のガミラス艦隊は一斉雷撃によって、ヤマトが撃沈する未来絵図を夢見ていた様だが、直ぐに冷や水を掛けられる事になる。
「YAMATO,ich werde mich bald verziehen!!」
(訳:ヤマト、間もなくワープをする模様です!!)
従属艦の1人がヤマトがワープを行おうとしているのを察して、大声でそれを伝えたら、ガミラス艦隊の全員が、ヤマトがワープを行う理由が分からない事もあって、ギョッとした。
「…っ! Alle Schiffe,stoppe den Angriff!!
Bereite dich darauf vor,mit Kentten zu varfogen!」
(訳:全艦、攻撃中止!! ワープによる追撃準備!)
「Am Ende Koenner sich jedoch nor sechs Gefaeβe sofot verziehen!」
(訳:しかし、直ぐにワープ可能なのは、最後尾の6隻だけです!)
旗艦の急な命令に危惧した従属艦の1人が旗艦に反発した事で変な混乱が生じてしまい……此の間にヤマト達はワープをしてしまった。
「Lass die Beute nicht entkommen!!!」
(訳:獲物を逃がすなぁぁー!!!)
ワープしたヤマト達に、ガミラス艦隊の殆どが呆然としてしまったが、旗艦の怒鳴り声で我に返って、命令通りに最後尾の6隻が姿を現して、直ぐにヤマト達を追い求めてワープを次々に行った。
感想か御意見を御待ちしています。
大和
「今回のってPartⅢの次元潜行艇の話が元になっていますね」
分かる人は分かってくれる筈ですが、前回から土門竜の役をやらせたサミダレ(五月雨)は、此れの為に起用となりました。
ですけど、此れでガルマン・ガミラス&ボラー編での次元潜行艇のは完全に出来なくなりました。
もしやるとしたら、リメイク版のになります。
大和
「リメイク版も、ガミラス編で次元潜行艦をやりましたから、ガルマンガミラス&ボラー編のは相当変わると思いますしね」
因みに、ヤマトが言った潜宙艦の疑問は、昔“宇宙戦艦ヤマト”を知らない身内が言ったのを元にしています。
大和
「次回はいよいよ潜宙艦戦ですけど、対潜武装を代用している事から“タクティカル・ロア”を思い起こさせますね」
…不吉な事を言うな。
(注:“タクティカル・ロア”の潜水艦1回戦は、対潜武装を代用した事もあってか主役艦が敗北して大破)
大和
「どのみち、ガルマンガミラス&ボラー編での次元潜行艇のは不吉でしょ」
(注:旧作での次元潜行艇戦は、『ヤマト』が捕獲されて完敗)
最後に、後半辺りでヤマトが左足を気にしていた事は、戦艦『大和』がトラック諸島沖で潜水艦『スケート』の雷撃を受けた史実と、艦これ版大和の左右で長さの違う靴下をヒントに思いつきました。
艦これ原作のは知りませんが、本作での大和の靴下は元々は左右均等(右足のが本来の)だったが、潜水艦の雷撃を受けて出来た左足の傷痕等(無くても痛みがあったり、気にするようになった)があるので、左足だけ長くしたのと予備設定があります。
もしかしたら、深海棲艦は此の事を知っていたから、坊ノ岬沖海戦で大和の左(足)側を集中的に狙ったのかもしれません。
大和
「と言っても大和の靴下で長いのは左、『大和』が被雷したのは右舷第三主砲部分なので、左右逆ですけどね」
そこは少し残念。
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還