時に西暦1945年、例年より遅れて桜が開花した春のある時、南シナ海の海上を艦娘達が……戦闘艦艇を模した艤装を纏う戦乙女達が、自分達に襲い掛かる飛行物体を迎撃しながら南下して沖縄を目指していた。
「…っ!? くぅ!!?」
「大和さん!!!」
特に輪形陣を構成する艦隊の中央に旗艦としている史上最強の艦娘である戦艦大和が集中的に攻撃を受け続け、傷を負った左脇を押さえて足を止めて踞ってしまった事に気付いた駆逐艦初霜が思わず叫んだ。
「…大丈夫。 2年前にトラック沖で潜水艦から受けた古傷が開いただけよ」
自分の身を案じる初霜に、大和は笑って誤魔化そうとしていたが、実際のところは傷はかなり深刻であった上、初霜の表情を見た様子だとポーカーフェイスが出来ていないみたいだった。
「…それに、こんなので音を上げたらみんなに申し訳ないじゃない」
「でも…」
「それより私より他の娘達はどうなっているの?」
初霜が遼艦の事を聞かれてウッとした。
「……先程から足が止まりかけていた矢矧(軽巡)さんと、その矢矧さんを救おうとした磯風(駆逐艦)さんがヤられました。(矢矧は既に轟沈、磯風は海戦後に自沈)
それに霞(駆逐艦)さんが艦隊から落伍(海戦後に自沈)しました」
「……っ!? それじゃ…」
「…私も含めて健在なのは雪風(駆逐艦)さんと冬月(駆逐艦)さんの3人だけです」
初霜の言う通り、大和が周囲を見渡すと…確かに自分を守ろうと必死に対空砲を必死に撃ち続けている雪風と冬月しかいなかった。
「……そう…」
戦闘開始前に駆逐艦朝霜が機関不調で落伍(後に航空攻撃を受けて轟沈)し、更にその後に駆逐艦浜風が真っ先に沈むだけでなく、駆逐艦凉月が落伍(大破するも後日佐世保に無事帰還)して、もう自分達の艦隊が瓦解している事を悟った大和は一旦目を瞑ると何かを決心した。
「…仕方が無いですね。
初霜、みんなを連れて撤退しなさい」
「撤退!!?」
「そうよ。 もう助からない私が責任を取るから貴女達は行きなさい」
元々沖縄へと進行した空母ヲ級と軽母ヌ級の20隻を主体とした深海棲艦の大艦隊への迎撃を目的とした天一号(菊水)作戦であったが、実際は投入戦力は僅かに10人の艦娘達だけであった上に時期も適当なとても作戦と言えない無茶苦茶な代物であった。
しかも天皇陛下の「海軍に艦娘はもういないのか?」との質問から発案されたと噂されるこの作戦は“帝国海軍水上艦隊の伝統を守る為”と言われながら、実質的には大和を沈める為だけのモノであった。
「何を言っているのですか!!?
こんな作戦で大和さんが死ぬ必要なんて有りません!」
勿論、この作戦を察してはいた大和だったが、作戦説明時に「此の作戦に豊田副武
「そうです!!」
「雪風達が守ってみせます!!」
「だから大和さん、一緒に帰りましょう!!」
「もう良いの!!!」
冬月と雪風も初霜に同感と示していたが、当の大和は自分の死を悟っていた。
「…此れが私の天命なのよ」
「でも…」
初霜が何かを言おうとしたが、その直前に雷撃体勢の編隊に気付いた大和が彼女を突き飛ばした。
「……っ!
大和さ…」
「…若い娘は戻りなさい」
大和が暗く微笑んだ直後に敵編隊から放たれた魚雷群に次々に被雷した事が致命傷となった大和が左に崩れ落ちると…
「…っ!? 大和さぁぁーん!!!」
…初霜が絶叫して、雪風が頭上に向かって泣き叫んで、冬月が泣きながらしゃがんだ中、大爆発を起こした大和は海底深くへと沈んでいった…
「……はぁ~…」
光無き海底に着底して大の字に仰向けで倒れているも一時だけ目覚めた大和が薄れゆく意識の中、自分の嫌み嫌う戦歴を思い出していた。
空母赤城以下の航空艦隊が壊滅するのを遠方で傍観するしかなかったミッドウェー海戦、南方での死闘時に駆逐艦娘達に“ホテル”と陰口を言われ続けた日々、成功目前にも関わらず目標直前で反転した為に姉妹艦武蔵以下の仲間達の死を無駄にしてしまった
包囲戦の中をしぶとく抵抗し続けたビスマルク、生涯唯一参加した海戦でそれなりの戦果を上げたリットリオ(後にイタリアに改名)、地味な職務をコツコツとやり続けたウォースパイトやアイオワ達等の同時代の戦艦娘達に見劣りする自分のに自己嫌悪していた。
そして何より竣工前から山本五十六達海軍の高官達から“無用の長物”と罵られていた事もあって、今まで何の為にやってきたのかが分からず、両目を右腕で押さえながら泣き出していた。
「……そう言えば戦艦になりたいって清霜や北上が言っていたわね…」
2人に言われた当時ははぐらかしていたが、今なら「戦艦などになるべきじゃない」と自信を持って言えた。
それが艦娘として……戦艦娘としての宿命だとは分かってはいたが、数多の戦いに関与出来なかっただけでなく、滅亡寸前の祖国を守る事が出来ずに
「…もし生まれ変われるのなら……私は客船や貨物船…小さな漁船でも良い。
私は……肌を焦がす暑き南方や
最後に天上に手を伸ばして切実な願いを吐いた大和は意識を手放して眠りに就こうとした。
だが少しした後、瞼越しに光を感じて何気なく目を開くと、流星の様な何かが自分に向かってきて……自分の心臓部分に直撃し…
「……っ!?」
…再び意識が戻った大和が最初に何かの計器の稼働音が聞き取れ、自分が口に酸素マスクを着けた状態で不自然な緑色の液体に満たされた金属体の中にいる事に気付いた。
そして昔、轟沈した艦娘を深海棲艦が回収して自分達の手駒しようと改造するとの噂が頭に浮かんで、悪足掻きとして正面の扉と思われる箇所を必死に殴り始めた。
更に酸素マスクが外れた事もあって、大和が余計に暴れた事で、外の者達が気付いたらしく、直ぐに排水が行われ始めたが、半分まできた処で大和が扉を破壊して出てきてしまった。
「…直ぐに提督と長官に
大和が咳き込みながら飲み込んだ液体を吐き続けていたが、破壊した扉を掲げると外の者達目掛けて振り回して暴れ始めた。
「不味い、錯乱している!!」
「早く精神安定剤を…っ!?」
暴れる大和に手を付けれず必死に逃げ回っていたが、此の騒ぎに気付いて入室した…見るからに満身創痍の状態の眼鏡の女性が一瞬に現状を理解して大和の隙を突いて彼女の懐に入って一撃で殴り倒した。
「……全く…面倒を掛けさせないで下さい」
大和が倒れた隙に関係者達が次々にのし掛かって取り抑えながら彼女に精神安定剤を打っていたが、大和を殴った女性も傷が開いたのか、
「……いったいわね…っ!?」
関係者達を振り払って立ち上がろうとした大和だったが、自分を殴った女性にギョッとした。
「…霧島、何故貴女がここに?
貴女は確かガダルカナルの戦いで沈んだ筈じゃ…」
2年前に沈んだ筈の霧島の存在に驚いている大和だったが、精神安定剤が効いてきて冷静なったのか、よく見たら左目や右腕を初めとした身体の至る所を包帯で巻いているのは兎も角として彼女から何か違和感を感じていた。
「…残念ですけど、私も戦艦キリシマですが、貴女が知る金剛級巡洋戦艦四番艦の霧島ではありません」
大和は霧島……ではなく、キリシマの言葉を否定しようとしたが、よく確認したら此の部屋のあらゆる物が映画に出てきそうな未来的な物なのばかりであった上、何よりこの場にいる者達全員が大和の方を異物として見ているのを感じ取った。
只、大和が自分を深海棲艦戦時の戦艦霧島と勘違いした事に、キリシマは安堵の息を吐いている事も気にはなった。
そしてこの部屋に入室してきた……見慣れない服装の軍人達が自分を見て驚いている光景に決定的となった。
「…彼女の容体はどうなんだ?」
「見ての通り健康そのものですよ」
見るからに最高位と思われる、黒いコート姿の白髭を蓄えた初老の軍人へのキリシマの報告に、全員が驚き疑っていたが、当の大和はその理由が分からないでいた。
「…貴方達は何者なの?」
周囲の反応もあって苛立った大和が老人に近づこうとした為、取り巻き達が彼女に銃を向けようとしたのその老人が手で止めた。
「それは私が君に聞きたい事だ。
艦娘と言え、何故君は高濃度の放射能の大気の中にいたのに無事なんだ?」
「…放射能?」
老人の質問に益々分からなくなっていた大和だったが、老人が取り巻きの1人に顎で指示を出すと…その者は室外から台車に乗ったある物を運んできた。
「…っ!? 私の艤装!!」
それが自分の艤装である事が直ぐ分かった大和だったが、問題なのはその艤装が大破状態であるだけでなく、錆で完全に茶色くなって今にも崩れそうになっていた。
その状態が日や月処か年単位で出来るものでない事を察して答えに達しようとしていたが、それを必死で否定しようとした。
「もう一度訊ねる。
何故二百年以上も前の艦娘である君が、今ここで生きているのだ?」
此の老人……後に上官となる沖田十三の質問に答えず硬直している大和が、今自分がいるのは西暦2199年の未来である事を理解するには少し時間が必要であった。
感想・御意見御待ちしています。
と言う訳で宇宙戦艦ヤマトが艦娘となって深海棲艦に大暴れする作品がそれなりにあるが、“数多の苦難を乗り越えてイスカンダルに向かう作品が一つも無いじゃん!!!”と思って作っちゃいました(苦笑)
作品は基本的に実写版のを母体にしていきますが、省かれた戦いはある程度追加していき、更に最後に地球目前で特攻したヤマトは本作では無事に帰還させる予定ですが、特攻の要望が多数あったら変えるかもしれません。
それとヤマト側の人間は沖田と藤堂以外は全くと言ってもいい位に出ない上、沖田もイスカンダル遠征に同行せずに藤堂共々出番が少ないのでそれは了承して下さい。
その代わりにヤマトに同行する艦娘をある程度着けますので以下はその予定のです。
・坊ノ岬組(矢矧、朝霜、浜風、磯風、初霜……雪風と現在未実装の冬月&凉月は除く)
・エンガノ岬組(瑞鶴、瑞鳳、千歳、千代田、大淀、五十鈴、多摩、秋月、初月……伊勢と日向、未実装駆逐艦群は除く)
・三川艦隊(鳥海、古鷹、加古、青葉、衣笠、夕張、天龍……未実装の夕凪は除く)
・榛名
・明石
・阿武隈
・丹陽(本来は台湾時代の雪風だが、本作は別艦として分離)
・ヴェールヌイ
・レシーテリヌイ(本来は日露戦争時に暁を襲名したロシア艦だが、ヴェールヌイの姉妹艦として出るが、中身は暁そのまんま)
・照月(未実装の若月&霜月の代打)
尚、よく竣工日が近い事から艦魂系で大和と仲が良いとされる瑞鶴(ズイカク)ですが、本作のズイカクは同世代故に実写版の古代と雪並にヤマトと仲が悪いとしています。
その理由はヤマトはズイカクの戦歴に嫉妬して、ズイカクは箱入り娘だったヤマトを馬鹿にする…特にレイテ沖海戦での出来事が致命的になっているとする予定です。
長門
「…ふっ、当然此のビッグ7の長門は出るのだろ?」
此れ以上の戦艦投入は戦力バランスの崩壊と大和(ヤマト)が食われる危険性があるので出す予定はありません。
特に長門は
長門
「……そ、そんな…」(〇| ̄|_)
ウォースパイト
「……でしたら…」
ビスマルク
「私達の…」
イタリア
「誰かが…」
アイオワ
「出るしかないわネ!!」
…出さないって言っただろ!
それに“PartIII ”にする気か、お前等!
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還