SPACEBATTLEGIRLヤマト   作:サイレント・レイ

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第41話 勝利の鍵は過去にあり(後編)

――― 深海棲艦戦時・呉 ―――

 

 

「あ、あそこで誰か演習してるな」

 

「…あれは、鈴谷さんと伊勢さん……あと1人は誰でしょう?」

 

 第十一作戦終了後、小沢治三郎中将率いる第一南遣艦隊旗艦を香椎(香取級練習巡洋艦三番艦)に譲った重巡鳥海が、空母龍驤、軽巡由良、そして軽巡川内率いる第三水雷戦隊(吹雪、白雪、初雪、叢雲、磯波、浦波、綾波、敷波、天霧、狭霧、朝潮、大潮、荒潮、満潮、全員駆逐艦)と共に、第一航空艦隊に先んじて日本本土に帰還して呉を目指して航行していたら、天霧と狭霧が遠くで演習をしている3人の艦娘達を見つけた。

 

「ああ、あれは大和ですね」

 

「あの人が噂の一号艦ですか!」

 

 演習していた3人の内、鈴谷と伊勢は直ぐに分かるも最後の1人だけは塗料まみれになっていた事もあって全員首を傾げていたが、鳥海はその1人こそが戦艦大和だと見抜いて、大潮を最初に他の者達も次々に頷いた。

 因みに、日本の対深海棲艦戦に参戦する少し前から第一南遣艦隊を率いて東南アジアを東奔西走していた鳥海が、徹底的な秘匿状態だった大和を知っていたのは、軍令部次長兼海大校長で、後に第二艦隊司令長官として大和とも重要な関わりを持つ事になる伊藤整一中将と親しい次姉(高雄級二番艦)愛宕から教えてもらったからだ。

 

「綺麗な人ですね…」

 

 元々大和の顔は比較的塗料を被っていなかった上に、大和が伊勢の砲撃の至近弾で発生した水柱に突っ込んだお掛けで塗料がかなり落ちた事で見える様になった全身像から、吹雪が見惚れて溜め息を吐いた。

 

「綺麗なだけじゃあ、この世界は生きてけないわよ」

 

 だが荒潮がぼやいた通り、大和は砲撃は悉く外れているだけでなく、鈴谷の砲撃に被弾して早くも塗料まみれに戻ろうとしていた。

 

「お~…、避けんのは上手そうやな」

 

「だけど、射撃は全く駄目だね」

 

「ホンマやな。

伊勢はんや日向はんみたいに“避けながら撃つ”のを真似とるんかは知らんが、無理な事をやって二頭を追って一頭を得られてない状態やな」

 

「あんなんじゃあ、夜戦は出来ないね」

 

 龍驤と川内が大和の分析をしながら話し合って、要約したら大和はまだまだ実戦は無理だと結論づけていた。

 況してや、大和自身の焦りの最大の要因でもある、早々と初陣を飾って以降も戦果を上げ続けている瑞鶴を知っていた事が、余計に大和に失望感を感じさせた。

 更に不味い事に、自分の砲撃が当たらないのに反して、鈴谷と伊勢の砲撃は当たっている現状から、大和が悔しさと自己嫌悪からしゃがんで泣き出してしまい、鈴谷と伊勢が“少しやり過ぎたかな?”と目線を合わせた後に戸惑いながらも大和に寄ろうとしたが、大和の後頭部に“さっさと続けろ!”の意味で飛んできた何かが直撃して大和が伸びてしまった光景が余計に輪を掛けていた。

 

「…あの、神通さんって、大和さんの教導役でしたか?」

 

「いや、神通は第二水雷戦隊を率いて東南アジアにいる筈たけど…」

 

 どうやら駆逐艦娘達は大和の最後の部分で神通を思い起こしたらしく、2ヶ月前まで神通の指揮下にいた朝潮の質問に神通の姉である川内が、彼女も神通を思う事があった様で戸惑っていた。

 因みに、第二水雷戦隊は確かに川内の言う通りに東南アジアにいたが、神通は先日から呉で休養していた。

 

「……あれは教えてる方が悪いですね。

あれでは、何時まで経ってもまともになりません」

 

 そんな中で、鳥海は大和の不出来の理由は、大和自身ではなく、指導側にあると結論づけていた。

 

「まったく、誰があの人の責任者なんですかね…」

 

 川内達が“えっ?”としているのを無視して、鳥海は呉へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな、悪い師匠で」

 

 数刻後、呉の連合艦隊司令部にて、鳥海が連合艦隊参謀長の宇垣纏少将に帰還報告をして暫くの休養が他共々命じられた後、鳥海が大和の指導に苦言を色々言ったら、宇垣の秘書艦として同室していた日向が仏頂面で返したので、宇垣のみは“黄金仮面”の渾名通りに無反応だったが、鳥海が“げっ”として、龍驤と由良が苦笑した。

 因みに此所に川内もいるべきなのだが、基本的に夜行性の彼女は由良を代理にして夜間活動の為の仮眠していた。

 

「だがな、私なりにアイツに自分で分からせようとしているんだよ」

 

「お言葉ですけど、放任主義も度が過ぎると職務放棄になります」

 

「だったら、私は手取り足取り教えるべきなのか?」

 

「自分達の不出来を、大和の責任に転換しないでください」

 

 日向も自分なりの言い訳をしたが、鳥海は彼女を睨みながら否定した。

 だがそんな鳥海に、宇垣は僅かに目を光らせ、日向は長年の付き合いである事からそれを見抜くと同時に嫌な予感を感じた。

 

「では鳥海、君なら大和を上手く指導出来るのか?」

 

「ええ、私の計算通りならば」

 

「だったら、君を大和の教導役に加えよう」

 

 まさかの宇垣の命令に、鳥海達4人が“えっ!?”とした。

 

「榛名だけでなく、鈴谷が姉妹達(第七戦隊)共々第一航空艦隊への編入が検討されていてな、榛名と鈴谷の代わりを探していたから丁度良かったよ」

 

「私が大和を教えろと?」

 

「君は実戦を幾つか体験した事も魅力的だからな、それとも先の言葉は出任せだったのか?」

 

「……了解しました。

鳥海、大和の教導役を慎んでお受けします!」

 

 宇垣の“拒否は認めない”との強気な目線に、鳥海は少し戸惑ったが、直ぐに顔に“望むところ”と出しながら敬礼した。

 

「鳥海さん、本当に引き受けるのですか!?」

 

「あんた、教官職をやった事が無いやんか!」

 

 踵を返して退室する鳥海に、彼女が俄然やる気な事から、彼女に由良と龍驤が驚き戸惑いながら続いた。

 そんな形で鳥海達3人の気配が消えた後に、日向が溜め息を大きく吐いた。

 

「本当に良いのか?」

 

「軍令部には俺から話しておく。

福留(軍令部第一部長福留繁少将、宇垣の海軍兵学校同期)なら分かってくれるし、上手くやってくれる」

 

「そう言ってるんじゃなくて」

 

「ミナまで言うな。

大和は翔鶴級の姉妹と違って一流では戦場には出れん。

出る為には超一流になるしかないんだ」

 

 日向も思い当たる事があったが、軍令部と海軍省は大和を前線に出す気が無く、表向きは艦隊決戦の切り札としての温存とされているが、明らかに何か別の理由がある気がしていた。

 況してや、現在の連合艦隊司令長官山本五十六は航空主兵主義者の急先鋒である事から、戦艦娘達や大艦巨砲主義者の提督を否定的なのだから尚更であった。

 現に宇垣も、先述の福留との入れ換え人事で連合艦隊参謀長に就任予定だったのが、山本が拒否として第八戦隊司令官だった伊藤整一を起用して宇垣は第八戦隊司令官として、伊藤が軍令部に出向した後にやっと参謀長に就任した後も、黒島亀人や夜森大介等の優遇される参謀達とは真逆で冷遇される証として、宇垣が1人食事をやったのは数えきれない程あった。

 

「だからこそ、お前達に大和をしごかせたんだがな…」

 

「…私達では役不足だったて言いたいのか?

大和の教導役を頭を下げて頼んだのは誰だった?」

 

「あの時はお前等が此処まで教え下手だとは思わなかったからな」

 

 宇垣と日向は暫く睨み合っていた後、同時に笑いだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こんな時間に、こんな所にいたのですか」

 

「…っ! 鳥海、さん!?」

 

 鳥海が宇垣達と別れた後、罰マラソンをやらされていた後に呉から姿を眩ませた大和を探していた為、彼女に出会えたのは日が暮れてからかなりの時間が経った時だった。

 

「こんな所が有るとは知りませんでした。

いい具合に木々が周りに生えてますから、絶好の隠れ家ですね」

 

「なんで此所が分かったのですか?」

 

「夜間訓練中の川内が、此の島で変な光があったって教えてくれたのですよ」

 

 大和がいたのは、岩壁を背にしたあばら小屋のみが存在する、呉から少し離れた小島で、此のあばら小屋近くの岸部に大和は座って抱えた両膝に顔を埋めていた処に、鳥海が背後から現れたので驚いて彼女の方に振り向いた。

 鳥海が驚いている通り、此所は艦娘達処か地元の者達も認知していない忘れられた小島だったが、大和は此の小島を秘密の自主鍛練所としていた様で、あばら小屋の中に、水筒、大量の缶詰、幾つかの教本があり、更に大和の近くに鎮守府から勝手に持ち出した遠隔操作(リモコン)式の的や旗付きブイが複数、十四年式拳銃、九九式小銃までがあった。

 鳥海が見た処だと、大和はつい先程まで射撃の自主練……大和前方の海に浮かぶ的3つ各々に貼ってある鈴谷、伊勢、日向の等身大ポスターが色々落書きをした後に蜂の巣になってる事から、ほぼ八つ当たりに等しいのをやっていたが、虚しくなったから止めた様だった。

 

「よくもまぁ、頑張ってたものですね。

貴女、連合艦隊旗艦の職務は大丈夫なのですか?」

 

「連合艦隊旗艦は殆ど長門がやってますから、事実上のお飾りですよ」

 

 辺り一帯に落ちている大量の空薬莢等で、大和の負けん気の強さや努力痕は鳥海でなくても分かる事は出来たが、やはりそれ等が実積に結び付いていない事から大和は拗ねていた。

 鳥海はそんな大和の思いを察しながら、彼女の隣に進むと沖で流されいる的の1つに主砲を向け……見事1発でその的を射ぬいた。

 

「まぁこんな的は、鈴谷や伊勢さんと違って、動き回ったり本気で避けようとはしませんからね」

 

 鳥海は言いながらもう1発撃って、先程の的に開けた穴に砲弾を通し……高等射撃技である“ワンホールショット”をやったが、大和は益々ブスッとして両膝に顔を埋めていた。

 

「…ですけど、此の距離であの的を射ぬいているんですから、大したものです」

 

「おだてても何もありません」

 

 大和は世辞と勘違いしていじけていたが、鳥海は射ぬかれた的群と、昼間の演習で鈴谷と伊勢各々がいた海域に砲弾を落としていた事から、大和の潜在性の高さを確信していた。

 更に大和の艤装も最新鋭戦艦の名に恥じない代物だったが、たった1つの歯車が噛み合っていない為に内外揃って不調を起こしている事を見抜いていた。

 

「あの的を射ぬけれるのに、どうして鈴谷や伊勢さんには当たらないのでしょうね」

 

 此の時、鳥海は大和の射撃を狂わす歯車の直し方が分かっていた。

 

「簡単な事です。

貴女は的がどう動くのかを知っているからです」

 

「だからどうしろと言うのですか?」

 

「鈴谷と伊勢さんの動きの法則を読めばいいんですよ」

 

「動きの、法則?」

 

 鳥海の指摘に、大和の目の色が変わった。

 

「暫くは塗料まみれになりますが、2人の動きの法則を探りなさい」

 

「え~…」

 

「いいですか、5戦5勝も5戦3勝2敗も大した差は無いんですよ。

寧ろ5勝全勝は危ない傾向を招く代物ですが、3勝2敗は随分タメになりますよ」

 

 鳥海の教えに大和はどうかは知らないが、もしかしたら鳥海はこの時既に、後にミッドウェー沖での慢心による大敗を引き起こす事になる日本海軍の危険性を察していたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 火星・木星間小惑星帯 ―――

 

 

「そんじゃあキリシマ、いっくよぉー!」

 

「頼むわよ」

 

「スズヤ航空隊、エンジン着けずに発艦!!」

 

 スズヤがキリシマ達が準備を終えたのを確認すると、スズヤはボーガンでコスモパンサーを次々に放ち始めた。

 

「あ~…仕方がないと言え、勿体ないです」

 

「アカギさんがいたら、確実に怒りますね」

 

 レムレースを解析する為の囮として失われるだろうコスモパンサー隊に、イナヅマとサミダレが目線を合わせて苦笑した。

 因みに、解析用のコスモパンサー隊は2セットはあるが、もしもの時の保険としてヤマトのコスモタイガー隊も囮に投入予定だが、チトセがコスモファルコンを使っている事から見て取れるが、コスモタイガーは只でさえ生産数が絶対的に少ないので、そうなったら資源が悲惨な事になる筈だった。

 

「来なさい、レムレース」

 

「餌に食い付きなさい」

 

「お前の動き、しっかり見抜いてやる」

 

 まぁそんな事など関係なく、キリシマとキソがコスモパンサー隊が飛んでいった、レムレースがいるだろう宙域を睨んでいる通り、彼女達はなんとしてでもレムレースの動きを解析するつもりだった。

 

「…っ、いいじゃん、いいじゃん!!」

 

「……ほぉ~…」

 

 コスモパンサー隊がヤマトがいる小惑星密集宙域に突入し、スズヤはエンジン無起動状態のままに四方八方に散らせた。

 ヤマトがそうである通りに、スズヤの見事な使役に誰もが感服していたが、当のスズヤは言葉の割りに顔から派手に汗が吹き出ていた。

 

「スズヤ!!」

 

「…動力エンジン始動!!!」

 

 キリシマの叫びにスズヤが答え、予定通りにコスモパンサー隊全機のエンジンを一斉に起動させた。

 此の事でコスモパンサー隊の使役の難易度が遥かに上がったが、高速で小惑星群の僅かな隙間を不規則に飛び回るコスモパンサー隊は全機追突処か、小惑星に掠りもしていなかった。

 

「…凄い!!

あの人、本当に空母になりたての元巡洋艦娘ですか!?」

 

「もっと誉めなさい!

スズヤは褒められると、もっと凄くなるよ!」

 

 スズヤの見事な使役に、アクィラが驚愕していたが、スズヤは自分を誤魔化そうと敢えて調子の良い言葉を発した。

 

「さぁ、レムレース!!!

食えるもんな、食ってみろ!!!」

 

 此のスズヤの挑発的な叫びがどうやら死語になったらしく、この直後にコスモパンサー隊30機全てが周囲の小惑星群諸共一斉に爆発した。

 

「ああ!!?」

 

「ぬぅ!!?」

 

 当然、此れがレムレースの攻撃である事は誰の目でも明らかであり、スズヤが硬直したり、ローマが唸り声を短く上げたりした様に、此の宙域にいた艦娘達だけでなく、此の光景を目撃した防衛司令部の者達までが驚きや戸惑いの声を上げていた。

 

「…っ!」

 

 だがキリシマ達6人は、はっとしたキリシマがキソ、カモイ、キサラギ、アヤナミ、サミダレ、ミカヅキの6人に順番に目線を合わせての頷き合いをした。

 

「…ヤマト、沖田提督……出来たわよ。

レムレースの動きのパターンの解析が出来たわよ!」

 

 キリシマは興奮しながらの報告に、ヤマトは“来たか”と目を向き、沖田は「うむ」と頷いた。

 

「先ず良い事を教えるわ。

レムレースは……奴は、艦隊行動をとってない、単艦で動いてるわよ!」

 

 キリシマは事実上ヤマトにバトンを渡したが、そのヤマトがやる事は1つしかなかった。




 感想、御意見をお待ちしています。

 次回か、次々回あたりでレムレースと決着が着きます。
 仕留めろよ、大和!

大和
「大和、全力で参ります!!!」

本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?

  • 実写版通りに、特攻
  • なんとしてでも、地球に帰還
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