SPACEBATTLEGIRLヤマト   作:サイレント・レイ

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第55話 悪意ある挑戦状(後編)

――― ????? ―――

 

 

『Millieu,Was soll das sagen!!?』

(訳:ミリュー、此れはどう言う事だ!!?)

 

 クロシオを集団的暴行からの解放はヤマト達地球に衝撃を与えていたが、実を言うとガミラスも衝撃が走っていて、現に冥王棲鬼は直ぐにミリューに抗議の通信を行っていた。

 

「…Was sagst du,worueber sprichter?」

(訳:…どう言う事とは、どう言う事だ?)

 

『Es geht um die POW schiffstochter!!!』

(訳:捕虜の艦娘の事だ!!!)

 

 元々常日頃から“嫌な上官”として内心嫌っていたが、今回のクロシオへの仕打ちの黒幕にも関わらずに他人事の様にしているミリューの態度に吹っ切れたらしく、冥王棲鬼は“上官”や“礼節”を忘れて、画面から出てきそうな程に荒ぶっていた。

 

『Werden private Sanktionen und freiwillige Befreiungen fuer Kriegsgefangene nicht vom Militaer streng verboten!?』

(訳:捕虜の私的制裁や、勝手な解放は軍規で固く禁じられていた筈ではないか!?)

 

 ガミラスには例外なき軍規が存在していたらしいが、残念ながら此の太陽系みたいな辺境では無きに等しくなっていて、通常型が破るのを責任者である超弩級が見て見ぬふりをするのが相次いでいた。

 現に冥王棲鬼も大型の艦娘達の何人かに勝手な行為をしていたのを知っていたミリューは、彼女に冷たい目線を向けていた。

 

「Es ist mein eigener Weg.

YAMATO wird sicherlich zu Pluto kommen」

(訳:私なりの手向けだよ。

此れでヤマトは冥王星に確実に来るぞ)

 

『Wie viel!!?

YAMATO sollte in unserer Strategie nicht zu Pluto kommen!!?

Faengt YAMATO nicht die Tatsache ein,dass stationierte Flotta von Pluto als chance fuer die Eroberung von Pluto drastisch reduziert wird!!?』

(訳:何ぃ!!?

私達の作戦だとヤマトは冥王星に来ないと言いたいの!!?

ヤマトは冥王星の駐留艦隊が激減しているのを冥王星攻略の好機と捉えないの!!?)

 

「Auβerdem wurde mir ein Gefuehlder Mission vermgttelt,als ich einen schlechten Kriegefangenen zurueckgege benhatte」

(訳:それに加えて酷い状態の捕虜を返された事で使命感を(アオ)らせてやったんだ)

 

 自分達のヤマト誘引の拙さを指摘されて、更に小馬鹿にされた気がした為、冥王棲鬼はミリューを睨んだ。

 

『Ich weβes nicht ……ich will es nicht verstehen!

Hast du Militaer besiegt,nur um so etwas zu tun!!?』

(訳:私には分からない………否、分かりたくない!

こんな事をする為だけに軍規を破ったのか!!?)

 

「Die Affen der Erde werden sich wie ein Retter fuehlen,wenn sie den Zustand der Kriegsgenen sehen.

Aber nichts ist so leicht zu handhaben wie der billige Humanismus,der das sagt.

Unter diesen Umstaenden sagen sie, dass Gefuehl der Mission durch das Besiegen von Lebendiger Geist stark geschimpft wurde,aber es heiβt,dass die Ressentiments eine Fallstricke sind」

(訳:捕虜の有り様を見て、地球の猿どもは救世主の様な気持ちになるだろう。

だがそう言う安直なヒューマニズムほど扱いやすいモノはない。

況してや奴等は潜宙棲鬼を倒した事が使命感が強く煽られてきた筈だが、その昂りが落とし穴だと言う事だ)

 

 ミリューの正論は一応的を獲ていたが、それが逆に冥王棲鬼を腹立たしい気にさせていた。

 況してや、ミリューが潜宙棲鬼戦没を逆に利用していたのが、彼女の事で更迭されかねていたのだから尚更であった。

 

「Und vor allem diese Frau eine Frau,die zu gut ist.

Ich werde die Pluto-Erfassungsrihenfolge difiniv nicht ablehnen」

(訳:それに何より、あの女は人が良すぎる性分だ。

間違いなく冥王星攻略命令を拒否はしないぞ)

 

 冥王棲鬼はどうもミリューの言う通りにヤマトが確実に冥王星に来る事は認めていたようだったが、その事での拒絶反応として歯軋りを露骨にしていた。

 

「Wenn Sie es verstehen,machen Sie sich bereit das Abhoeren!!!」

(訳:分かったなら、さっさと迎撃態勢に入ってろ!!!)

 

 冥王棲鬼は敬礼等を一切せずに通信を切ったが、後々ミリューから妙な違和感を感じる事になるのだが、この時は怒り心頭状態だった為にその事に気づかなかった。

 だが、ミリューの秘書艦である戦艦タ級もその事を感じるだけでなく、理由や訳を………つまり、ガミラス内ではヤマトの情報が未だに少ないのに、ミリューがヤマトの人格を知っている事を察するか知っているかもとの疑惑で、露骨に鼻を鳴らしたミリューを冷たい目線で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 地球 ―――

 

 

 地下都市の深部の議会や防衛司令部が存在する重要区画のゲート前で大勢の人々が押し掛けて右腕を振り上げながら叫んでいて、そんな者達を空間騎兵隊が横陣で楯と警棒で侵入を阻止しつつ解散を目論んでいた。

 此れは政府が勝手に1人辺りの食料配給量を減らしたり、酷い時は配給そのモノを取り止めにする為の抗議として度々行われていたのだが、今回のは少し事情が違った。

 

「ヤマトを冥王星に向かわせろ!!!」

 

「冥王星のガミ公を殲滅しろ!!!」

 

「捕らえられた艦娘を救いだせ!!!」

 

「ガミラスを横暴を許すな!!!」

 

「藤堂長官、御決断を!!!」

 

 御覧の通り、クロシオの解放でガミラスへの怒りを爆発させていた。

 本来ならクロシオの事は箝口令がひかれていた筈だったが、その事が藤堂達の所に報告が入った時にクロシオと同じカゲロウ級のハギカゼとアラシの2人(特に後者が問題で、後日厳罰処分)がいた事が原因で、生き残りのカゲロウ級の姉妹艦達に漏らしてしまったのだ。

 だが元々短気で仲間意識が強い駆逐艦娘達が此のまま黙っている訳がなく、カゲロウ級の誰かがユウグモ級の誰かに漏らした事が呼び水となり、水雷戦隊旗艦として駆逐艦娘達を束ね抑える巡洋艦娘達の多くが入院していた事もあって、瞬く間に駆逐艦娘達全員に知れ渡ってしまい、更に駆逐艦娘達の上官の多くも彼女達に同調した為に軍内部で冥王星攻略を求める声が多数出た。

 更に外部にクロシオ解放が漏れてしまい、死んだ自分達の親族が冥王星で囚われているのではとの淡い思いもあって、クロシオの親族達を御旗とした冥王星攻略を求める大騒動が起こって今に至った。

 

「……はぁ…」

 

 暴動寸前の処までいっている群衆に、将官用の病棟の一室から彼等を見下ろしている藤堂は溜め息を大きく吐いていた。

 

「沖田さん、すみません」

 

 藤堂が振り返った先では、山南が沖田の代理として冥王星攻略を阻止出来そうにない事に、ベット上の沖田に座りながら頭を下げていた。

 そんな山南の後ろでは、彼と共に会議に参加したホウショウも同様にしていた。

 

「……まさか、ガミラスが此処までの行為に及ぶなんて…」

 

 当の沖田は“仕方がない”と手を翳して山南達を許していたが、沖田を挟んでの山南達と反対の所にいるキリシマは、その一因であるクロシオ解放に顔を青くしていた。

 

「長官、やはりヤマトさんを冥王星に向かわせるのは危険です。

なんとか阻止は出来ないのですか?」

 

 キサラギは藤堂に進言して明らかに潜宙棲鬼での密約を反故しようとしていたが、どう考えてもガミラスが罠を仕掛けているのが簡単に分かるので、キリシマはキサラギに抗議等は一切せず、寧ろ彼女に同感として頷いていた。

 況してや、攻略派が意図的にクロシオ解放を外部に漏らした事が推測されてもいては、地球発でヤマトの身に何かが起きるのが目に見えていては尚更だった。

 だがキリシマとキサラギは元々頑固気質の沖田を説き伏せる事が2人揃って出来そうに無く、そこに来ての今回のガミラスの行為に感謝の気持ちが心の片隅にあり、その事は藤堂が無念そうに顔を左右に振ったのを見て確信した。

 だからと言ってクロシオへの行為以外も含めて、ガミラスの行為を許す訳がなく、矛盾する思いの攻め際いがキリシマとキサラギの顔に出ていた。

 

「沖田さん、どうします?」

 

 だがキリシマとキサラギが見た処、山南やホウショウに藤堂の3人も2人と同様の様で、現に冥王星攻略の阻止の事を一切口にしそうになかった。

 

「……潮目、かもしれんな…」

 

 此の為、病室内に沈黙による変な空気が暫く漂っていたら、突然沖田が溜め息を大きく吐いた。

 

「キリシマ、ヤマト達4人の状態はどうなんだ?」

 

「アケシの報告だと、ほぼ無傷のハツシモは兎も角、カスミとアサシモは早くなりそうなのですが、ヤマトは補助エンジン2基揃っての修理でどうしても3日は掛かるそうです」

 

「ですけど、チトセさんは5日は待ってほしいと進言しています」

 

「そんなにクロシオは酷いのか?」

 

「元々かなり衰弱していた上での発熱状態で暴行を受けてますので。

抵抗物質を注射する等して峠は超えたみたいですけど、意識が戻らない事もあってまだ予断は許さないそうです」

 

 キリシマのアケシの報告と、キサラギのチトセからの進言に、沖田は「そうか」と答えると目を瞑って硬直した。

 

「…藤堂さん、ガミラスに示しましょう」

 

「何をだ?」

 

 藤堂は沖田に質問はしたが、その答えを既に察していた。

 

「地球は、“力による支配”“理不尽な圧力”に決して屈しないと言う事をです」

 

 藤堂と山南を前から何となく察していたと思われるが、この時にキリシマ達3人は実は沖田が誰よりも冥王星攻略を望んでいたのを察した。

 これまでは沖田は冥王星攻略を理性で抑え込んでいたが、どうやらクロシオ解放で感情が勝った様だった。

 

「藤堂長官、遠征艦隊による冥王星攻略を許可頂けますか?」

 

「沖田、思う存分やれ」

 

 沖田の質問に藤堂が即答した事で、やらねばならぬ全てが決まった。

 

「キリシマ、5日以内に第7次冥王星攻略作戦を立案しろ」

 

 キリシマは沖田の命令に「了解!」と姿勢を正しながら答えた。

 




 感想・御意見お待ちしています。

 やっと此処まで来た。
 次回やる作戦会議を挟んでいよいよ冥王星攻略に入ります。

大和
「大分前に言ってましたが、本作での冥王星はやる事がたくさん有るのですよね?」

 コスモゼロさんの“宇宙艦これヤマト2199”の感想欄で書いてますが、その1つで2199版ビーメラ星での反乱に該当する要素として、遠征艦隊の1人に“伊藤四郎”(注:コミック版は星名透)に該当する艦娘がいて、此の冥王星攻略の終盤でヤマトの暗殺未遂をします。
 当然、裏切り者がいるのだから、その対抗要素である“星名透”(注:コミック版は伊藤四郎)に当たる表返る者もいますが、表返る者はヤマト原作では藤堂の命で動いてましたが、本作のは土方の命令で動いていると変更しました。

…それにしても、何でコミック版は裏切り者と表返る者が逆転したのかな?
 前々から伊藤がやたらヨイショされていたのが気になってましたが…

大和
「……感想欄でもそうでしたが、誰が裏切るのですか?」

 コミック版伊藤が言う官簇は、実は既に裏切りの前兆が微量ながら出ていますよ。

 さてさて、誰が裏切るのかと、表返る者は誰なのかが分かる人はいるかな?

本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?

  • 実写版通りに、特攻
  • なんとしてでも、地球に帰還

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