SPACEBATTLEGIRLヤマト   作:サイレント・レイ

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第3話 深まる絶望(前編)

――― 防衛司令部 ―――

 

 

 戦時下もあって地球防衛を担う防衛軍の中枢である此所・防衛司令部は誰もが忙しく動き回っていた。

 

「北京、食糧不足から大規模テロが発生した模様です!」

 

「モスクワ、通信係が錯乱したらしく“XopoШий δαйκ (サヨウナラ)”を打ち続けています!」

 

「ケニア、通信途絶!!

電力が尽きたもようです!」

 

「第15区画にて高濃度放射能を検知!

区画の放棄を求められています!」

 

…例え、泣き叫ぶか、全てを投げ捨てたくなる程の絶望的状況下でも変わらない様だった。

 

「相変わらず酷い状況ですね」

 

「ああ、艦娘がいないと暇になる君とは違うのだよ」

 

 そんな状況下でも防衛軍を束ねる防衛司令長官として最善の指揮を取り続けている藤堂兵九郎に沖田は声を掛けていた。

 

「…で、君の艦娘達の状況はどうなんだ?」

 

「最悪だ。 キリシマだけでなく生き残った巡洋艦の多くは(ことごと)く大破状態で修理の目処(めど)が全く立たない。

空母は全員動ける事は出来るが、艦載機が無いので死んだのと同じだ。

動けるのは僅かな巡洋艦と駆逐艦だけだ」

 

 沖田の報告に藤堂は「そうか」としか言えなかった。

 

「やはり木星沖海戦の傷は深刻だな」

 

「ガミラスは強い。

数や質に優れているだけでなく、奴らは我々が1つ学べば百や千も先へと進んでいく」

 

 数多の戦いで艦娘達を指揮し続けた沖田の言葉の裏には、先の木星沖海戦を無謀に推し進めた上層部への非難が含まれていた。

 

「そして我々はその争いに敗れた上、満足に戦える艦隊を壊滅させてしまった」

 

 元々木星沖海戦に断固反対していた藤堂も、彼なりに艦娘達に悪びれている様子であった。

 

「……これで例の作戦が行われる………その日が来る事になる…」

 

 沖田が見るからに嫌そうだったが、どうも藤堂の口振りだと例の作戦……選ばれた地球人類の脱出作戦が決行される事が決まった様だった。

 実は木星沖海戦は脱出作戦の為の宇宙船建造資材を地球に運ぶ為、負ける事を前提に強硬されたモノだったのだ。

 勿論、この事実は囮となった艦娘達どころか沖田達現場司令官達にも内密にされていたのだが、艦娘の多くが轟沈かMIA(Missing in action:作戦行動中行方不明)認定を受け、辛くも生き残った者達もほとんどが大破状態となり、此れは本命の輸送船団の護衛艦隊も似たようであったのもあって、艦隊総戦力が壊滅した上に囮であった事を秘密にされた事から上層部への不信感が極限まで高まり、実際にドイツで戦艦ビスマルクを御旗とした艦娘達の反乱が勃発し、()の鎮圧戦でベルリンの地下都市が壊滅する悲劇が起こってしまった。

 当然、日本でも艦娘達が沖田や藤堂達への不信感が高まっていたが、幸いな事に長年沖田と組んでいたキリシマ以下の良心派が抑えてくれた為に大事には至らなかった。

 

「…だがキリシマ達も次の作戦を聞いたらどうするか分からんぞ」

 

 だが上層部はキリシマ達、傷ついた艦娘達の修理資材までもを使用して建造中の脱出船が全船完成次第、まともに動く事すら困難な艦娘達までもを動員して脱出船団を逃す為に一大艦隊特攻を勇敢させるつもりであった。

 その事を止める事が出来なかった藤堂は、過去に彼が発言した「艦娘ではガミラスには勝てない」と馬鹿の1つ覚えみたいな作戦を作成し続ける上層部への非難発言を、あろう事かその上層部が自分勝手に解釈して脱出作戦を作成するだけでなく、誰もが就任拒否をした事もあって否応なしに就任させられた防衛司令長官としても酷く悔やんでいた。

 

「…本当に私は山本五十六になった気分だよ」

 

「いえ、貴方はあの三流軍人とは違います。

それにまだ希望はあります」

 

 自虐的な藤堂は完全なる絶望的でも希望を持っている沖田にキョトンとした。

 

「……藤堂さん、私に大和を託してくれませんか?」

 

「…何だと?」

 

「大和には一部のエリートが僅かな時間を生き残る為にではなく、人類の希望の為に旅立たせたいのです」

 

「…例の坊ノ岬で見つかった二百年前の艦娘をか?」

 

 どうやら上層部内でも大和の事はそれなりに話題がある様だった。

 勿論、これは大和が蘇っただけでなく、二百年前の艦娘にも関わらず高濃度放射能の大気の中を、朦朧とした状態であるも生きていた事からであった。

 

「今の地球に生きる全ての者に必要なのは食料や医薬品よりも希望……明日の光を見出だし今を生きる力を与える希望なのです。

希望を失えば人は死に、絶望は致死性の毒薬と化す、私は多くの戦いをえてそれを実感しました。

だからその為に、大和には僅かな人間を逃す為でなく、今度こそ希望を掴む旅に出させたいのです。

そうすれば人間も艦娘達も絶望の中でなく、希望を持ったまま……死んでゆく事が出来ます」

 

 此の時の沖田は何かを口に含んでいるようで、最後の部分で言い淀んだ時に、歯に何か固い物が当たる音がした。

 普通なら失礼な行為なのだが、藤堂は気づいている筈なのに、沖田に注意する処か反応すらしていなかった。

 

「……しかしな…あの娘がどれだけの事が出来るのだ?

彼女本人だけでなく、防衛軍内部でも武蔵処か、長門か陸奥の方がまだ役に立つと言う者はかなりいるぞ」

 

 沖田は大和を買っていたが、防衛軍上層部だけでなく艦娘達の間での大和の評価は“ピラミッドや万里の長城に並ぶ世界三大馬鹿の一角”と言われる通り、ドン底であった。

 此れには大和が二百年前の艦娘と言うだけでなく、まともに勝ったり作戦成功の功績が皆無である以上は当たり前の話であった。

 ましてや、その大和を冷遇した山本五十六が、ホレーショ・ネルソンや東郷平八郎に並ぶ程に神格化していた上、なによりレイテ沖での目標を目前にしての反転行為は致命的であった。

 尤も前者に対しては「大和が世界三大馬鹿の一角なら、その大和や戦艦娘達を遊兵にし続けた山本五十六は地球一の大馬鹿だ」と主張する山本非難の希少人種である沖田はあまり気にしていないと藤堂は思っていた。

 だが実際大和自身はそれ等……特に後者を気にしていて、「自分達を行かす為に囮として散った武蔵か、日本戦艦の誇りを最後まで背負い続けた長門を蘇らせるべき。その為なら自分は解体されても良い」と言い続け、更に嘗て艦娘達の犠牲を省みない作戦を立て続けて自分達は生き残った日本帝国海軍上層部と同じ様な大罪をしでかそうとする防衛軍上層部への不信感から軍務だけでなく全てに不真面目となっていた。

 

「いえ、私は武蔵や長門と陸奥ではなく、大和でないと駄目だと思っています。

それに土方からの報告は知っているでしょう?」

 

 実は沖田や藤堂達僅かな者達しか知らない事だが、大和は確保される時に外宇宙からの通信カプセルを持っていて、その後の大和の検査と再教育を一任された、沖田の同期である土方竜の報告によると、基本的な戦闘能力は現在でも通用する(どころ)かキリシマ達全ての艦娘を遥かに超える恐るべき数値を出したのだ。

 防衛軍は通信カプセルが大和に何らかの影響を与えたと判断して急ぎ研究解明が行われていたが、沖田は通信カプセルに更に注目している事があった。

 

「…だから藤堂さん、私が提出した作戦を認めてくれませんか?」

 

「……沖田、君はどんな物語を描いて、あの娘にどんな役を与えるつもりだ?」

 

 部下と上官との間柄を超えて戦友と言うべき仲の沖田を信じたがっていた藤堂だが、後一押しを欲していた。

 それに沖田が答えようとしていたが…

 

「緊急報告、軽母ヌ級1隻と駆逐イ級2隻のガミラス艦隊をレーダーに確認!!

呉に向かって降下しています!」

 

…その直前にガミラス艦隊出現の報告に遮られてしまった。

 

()()どもめ、また懲りずに現れたか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 呉 ―――

 

 

 ガミラス艦隊出現の報告に当然ながら呉では自分達が狙われている事もあって動き出そうとしていた。

 

「もう、本当にガミラスの蛆虫(うじ)達は遠慮知らずなんだから!!」

 

 勿論、キリシマも大和を引っ張って艦娘専用の射出室に来ていたが、どうやら“友は類をなす”は戦友にも適応されるのか、沖田と似た様な言葉を発していた。

 

「…艦娘に出撃命令が出されました!」

 

「……出撃って、私を含めて此所の艦娘達は皆重傷なのよ!」

 

 当初は誤報と思っていたキリシマだったが、修理中の自分の艤装(と間違ったのか、大和のも)が運び込まれたのを見て、ギョッとした。

 

「間違いありません!

比較的軽傷な者達を出していくそうです!」

 

「その軽傷な娘だって中破しているのよ!

あの土方提督やアケシがこんな場当たり的な命令を出すなんて信じられない!?」

 

 後に分かる事だが、この時、土方はアケシを伴って防衛司令部に出向いて不在だった上、市民が助けを求めて基地に殺到した為、留守を任されていた者達が慌てて出したモノであった。

 

「直ぐ防衛司令部に連絡は取れない?」

 

「その防衛司令部から工厰だけでも死守せよと指令が入っているのです!」

 

 工厰死守……要約すれば“地球脱出船群の楯になれ”との指令にキリシマは愕然としていたが、この事を伝えた()の若い……否、若い(どころ)か幼過ぎると言うべき兵卒自身が泣き出しそうになっていた。

 だが実際、彼みたいな若い兵卒だらけの()の場でも混乱が生じているのだから、最早修正は無いと判断したキリシマは歯軋りをしていたが、壁に凭れながら座っている大和は、この光景を他人事の様に傍観していた。

 

「……でしたら、私が出る娘を見極めます」

 

 大和に諦めとも思える冷たい目線を向けたキリシマは、少しでも成功率……否、艦娘の生存率を上げようと艦娘達の詰所への通信を取ったが、どうも“泣きっ面に蜂”の言葉通りに悪い事は重なるのか、大爆発音が聞こえた直後に何かの轟音が響いた。

 

「……何なの…今のは何だったの!?」

 

 詰所への通信が途切れた事もあって、何か嫌な予感を感じたキリシマは直ぐ伝令を走らせた。

 そしてその数刻後、伝令が顔を青くして戻ってきた。

 

「…何があったの?

一体、詰所で何があったの!?

答えなさい!!」

 

 自分の悪い予感を否定したがっているキリシマは思わず怒鳴ってしまった。

 

「…詰所が……艦娘の詰所が…先程の攻撃で崩落していて壊滅していました!」

 

 伝令の泣き出しながらの報告に、キリシマは見るからに顔を青くした。

 

「……生存者は?」

 

「………」

 

「……そんな…」

 

 僅かな希望を求めたキリシマだったが、伝令の沈黙から生存者が皆無である事を……日本の艦娘が零に限りなく近づいた事を察してキリシマは崩れ落ちて座り込んだ。

 だが、それでも大和は何も反応しておらず、なによりガミラスの攻撃は続いていて時折地下都市の何所かで爆発音に続いて何かが砕ける音が聞こえていた。

 

(艦隊の頭脳なのでショ?

だったら貴女は、是が非でも生き残らないといけないネ!)

 

(此の命に代えて、ユキカゼがお守りします!)

 

「…コンゴウ姉様、ユキカゼ、こんな地獄を見せる為に私を生き残らせたのですか?」

 

 他の艦娘であれば、この現状で取り敢えずは我に返れると(おも)われるが、キリシマの場合はガミラスから配下の者達をむざむざ虐殺に等しい行為を受けさせただけでなく、コンゴウやユキカゼを初めとした仲間達を楯にして逃げたも当然の退却をした木星沖海戦を思い出していて、絶望の淵に沈んでいた。

 

「…沖田提督より通信が入りました!」

 

 そんなキリシマの元に伝令が沖田からの通信を伝えた。

 一瞬キリシマが、木星沖海戦でコンゴウ達がキリシマを逃す為の行為を許可した事もあって、沖田に恨みに近い何かを見せたが、直ぐ直属の提督の通信に出た。

 

『…キリシマ、何をやっている?』

 




 感想・御意見お待ちしています。

陸奥
「…この大和って、あの鶴翼版?」

 はい実写版古代を参考にしていますので少し違うと思いますが、”鶴翼の絆”の大和と言われても否定はしません。
 只、鶴翼版には二水戦がいましたが、本作のはどん底評価で弁護する人は余りいません。
 だからこそ此の作品では、武蔵や長門が駄目で大和なのかを書いていきます。

陸奥
「だから此の作品中では大和より長門や武蔵の方が人気があるのよね。
まぁ、私はあんな最後だから無理だと思うけどね」

 でも実際“宇宙戦艦ヤマト”が無かったら、大和が此の作品みたいになっていた可能性があるんだよね。

陸奥
「“宇宙戦艦ヤマト”を生み出した故・西崎義展氏と松本零士先生は偉大よね。
これだけじゃないけど、大和が実物が海の底なのに専用博物館が出来る程に神格化したも当然だからね」

 因みに私は去年地元であった講演会で松本零士先生を実際に見ています。
 その時に感じた松本零士先生の印象は“銀河鉄道999”の主人公星野鉄郎がそのまんま老人化した様な、ヤンチャで子供っぽい人だと思いました。

陸奥
「その時、確か五万円以上作品を買っていれば松本零士先生直筆のサインが貰えたのにね」

…よりにも……よりにもよって、金が全く無い時に講演会があったんだよ!
 あれば有り金全て使ってでも買いまくったのに!!(床を叩きながら号泣)

本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?

  • 実写版通りに、特攻
  • なんとしてでも、地球に帰還
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