――― 豊後水道 ―――
「…っ! 攻撃を受けている!?」
此の時、軽巡ナトリを旗艦としてカミカゼ級とムツキ級駆逐艦を主体に編制された艦隊が、豊後水道にて深海棲艦戦時に沈没した貨物船を牽引しながら呉への帰路の途中であったが、その呉からガミラスの攻撃のモノと思われる煙と爆発音を確認して驚き戸惑っていた。
しかも砲撃や爆撃の音とは明らかに違う爆音が聞こえ、それが呉で一大事が起こったと分からせるには十分であった。
「艦隊司令部、ナトリです!!
呉がガミラス艦隊の攻撃を受けてます!
どうすればいいですか!? 応答して下さい!!…」
「…行こう。
みんなを助けに行かないと」
ナトリが艦隊司令部に指示を求めていた通信をしていたが、貨物船に繋げていた牽引ビームを解除しながらのサツキの意見にカミカゼも続いて、更に僚艦達が頷こうとしたが…
「待って下さい!
私達の艤装は武装が外されているのですよ!」
…駆逐艦娘の1人が反対した事で全員が「ウッ」と呻きながら硬直した。
だが実際問題、元々ガミラス戦の開戦時から既に旧式となっていたカミカゼ級とムツキ級の彼女達(旗艦を務めているナトリだけでなく、此の駆逐艦娘はカミカゼ級でもムツキ級ではなかったが…)は、早くから戦線から外されるだけでなく、資源枯渇に伴って干上がった海底からのレアメタル回収の為に艤装から武装が取り外されて、サツキのみ多用途輸送機カーゴの載せているだけであった。
現に「スペックが駆逐艦の全てでない」が口癖のカミカゼが思わず黙ってしまった。
「…だがそれでも行くべきです」
「それに武装なら呉に行けば、なんとかなる筈だ」
そんな中でミカヅキが牽引ビームを解除し、ハタカゼもそれに続いたが、そんな2人を駆逐艦娘が止めようとした。
尤も当のミカヅキとハタカゼは「聞く耳持たん」と言わんばかりに無視して呉へと向かい、更にサツキも2人の後を追った。
そんな3人に不安な表情の駆逐艦娘の左肩をカミカゼが掴んだ。
「残念だけど、呉の近くに私達以外いないみたいだから行くしかないわよ」
「……ですが…」
「まぁ、アンタがどう思ってるかは私もよく知っているから。
だけどね、今行かないと、あの時以上の後悔をするのは分かっているよね?」
「……はい」
まだ不安を拭えなかった様だが、そんな駆逐艦娘にカミカゼはニッと笑いながら彼女の尻を叩いてハタカゼ達の後を追い、駆逐艦娘も少し遅れて続いた。
「…司令部から呉救援に向かうようにと指令が……あれ?
皆さぁーん!! 何所に行ったのですか!?」
――― 呉 ―――
豊後水道での事などお構い無しに、ガミラス艦隊の呉攻撃は続いており、そのガミラス艦隊を迎撃しようと次々に艦隊が出撃し、舞鶴のナガラ以下の水雷戦隊(シラユキ、ハツユキ、ウラナミ、アヤナミ、シキナミ、イナヅマ、サミダレ、全て駆逐艦)がキリシマと共に交戦を開始して少しした後、横須賀から出撃してきた空母ショウカクを旗艦とした艦隊(空母ズイカク、ショウホウ、チトセ、巡洋艦タマ、駆逐艦テルヅキ、ハツヅキ、アマツカゼ、丹陽)が呉を目指していた。
「ヤバい!!」
だが呉に着いたのは完全に日が沈んで星々輝く夜になっていた上に、呉の上空で戦闘のモノと思われ……否、どう見ても戦闘のモノである現象が確認出来た為、嘗ての翔鶴級空母と同様にショウカクの妹であるズイカクが思わず叫んだ。
しかも戦局は極めて最悪、キリシマ達の砲撃は悉く軽母ヌ級と護衛の駆逐イ級2隻に跳ね返されており、此の為に駆逐艦娘達がキリシマとナガラの援護射撃下で唯一の攻撃手段である雷撃を試みて突撃を敢行していたが、それ等は軽母ヌ級の艦載機群と駆逐イ級2隻に迎撃されて、ハツユキとウラナミに大破して倒れており、艦載機群の集中攻撃でシラユキの艤装が炎上してのたうち回り、唯一アヤナミとサミダレがなんとか駆逐イ級2隻をいなして、イナヅマがシラユキの艤装を消火していた。
だがアヤナミとサミダレを追い掛けている駆逐イ級2隻は兎も角として、当の軽母ヌ級はキリシマとナガラの砲撃を気にしていない処か、逆に2人に本来は対艦攻撃にあまり向いていない大砲で攻撃し、キリシマとナガラが必死に回避し続け、更に軽母ヌ級の航空隊がそのキリシマとナガラだけでなく、アヤナミとサミダレに襲おうとしていた。
「糞っ!! もっと早く来ていれば!」
「ズイカク、仕方がない事を言わない」
元々距離的問題もあったが、木星沖海戦では彼女達空母艦隊は後方にいた為、キリシマ達とは違ってほぼ無傷でいれたが、壊滅的打撃を受けた艦載機の補充兼再訓練で大遅れをしてしまった。
その結果、キリシマ達が無惨な状況下に置いてしまった事に加えて、呉の艦娘詰所崩落の一報もあって、悔やんでいたズイカクをチトセが慰めていた。
「……チョット、比率を間違えたかな?」
「こんな時にチトセカクテルなんか飲むな!!」
只、チトセが懐から小型の水筒を取り出して彼女特製人工酒チトセカクテルを一口だけ飲んだ為、ズイカクに怒鳴られていたが…
で話を戻して、そのチトセとショウホウにショウカクもズイカクと同じであり、ズイカク以上にその詰所にいる姉妹を思ってアマツカゼとデルヅキ&ハツヅキが顔面蒼白になっていた。
「あわわ…」
只、母港の旅順が遊星爆弾で完全消滅した為に横須賀に入港していて、臨時(と言うより、半ばそう言う雰囲気で)に艦隊に編入された中国の駆逐艦丹陽は立場上どうすればいいのか分からずにいたが…
「全航空隊、発艦開始!」
勿論、内面で怒り心頭のショウカクは直ぐに弓を構えながら艦載機隊の発艦を指令し、ショウカクに続いてズイカクとショウホウも弓を、チトセが……何と言うべきか、航空格納箱と言うカラクリ箱に近い物を構えた。
「くっ、重い…」
ズイカクが矢に文句を思わずぼやいたが、ショウカク達三人の矢とチトセのミニチュアが放たれ……それ等がコスモファルコンの編隊に変化してガミラス艦隊へ突撃していった。
「…っ! サミダレさん!」
「援軍が来たんですね!」
当然、ガミラス艦隊もショウカク達の航空隊に気付いて、アヤナミとサミダレを攻撃していた航空隊だけでなく、軽母ヌ級から新たなる航空隊が発艦、直ぐに合流して迎撃に向かった。
そして両航空隊が騎馬戦さらがらの突撃合戦が起こり……数的には不利な筈のヌ級のが勝っていった。
「……やはり錬度が…」
ショウカクのぼやき通り、確かにショウカク達の航空隊は軽母ヌ級の4倍以上はいたのだが、軽母ヌ級のが百戦錬磨の玄人揃いであったのに反して、ショウカク達のは先述の通りに元々木星沖海戦で壊滅したのを補充したばかりの上、数値上はガミラスの艦載機に対抗出来る筈の新型機(?)のコスモファルコンを受領したてで、その慣熟訓練中にガミラス艦隊襲来で慌てて出撃してきたのだか錬度など無いに等しかった。
更に言えば、ショウカク達自身もコスモファルコンの特性をまだ理解していない為に上手く使役出来ておらず……結果を言えば、コスモファルコンが七面鳥さながら…
「なんですって!?」
「…ズイカク」
…殆どバタバタ打ち落とされ、何機かは敵機を振り切って軽空母ヌ級に攻撃を仕掛けようとしていたが、その軽空母ヌ級だけでなく、警戒していたのか予備戦力であったかは分からないが、新たに対空能力に秀でた駆逐ハ級2隻が出現して軽空母ヌ級に合流すると対空ミサイルとパルスレーザーで迎撃されていた。
「……コスモタイガーさえ、間に合っていれば…」
「ズイカクさん、無いのを言っても仕方がないです」
どうもコスモファルコンが気に食わない様であるズイカクが文句を言ってショウホウに注意されていたが、現在ズイカク達が使っているコスモファルコンは、元々新型艦載機コスモタイガーの開発及び生産の遅れから将来性のある陸上機を艦載機に改造した事から若干使い勝手に悪さがある代物であった。
まぁ、此れでも木星沖海戦までは旧式化していたコスモパンサーを使っていたのだから、まだマシではあったが…
「ショウカク、私は此の間に…」
「分かってます。
アマツカゼさんの丹陽さんと一緒にいって下さい。
それとタマさんはイナヅマ達の所に行って下さい」
ショウカクの許可を得たチトセは此の間に、艦隊から離脱してハツユキ達の所に向かった。
元々個人的に医療知識を持っていたチトセは、日本唯一の工作艦アケシの姉妹艦が建造取り止めになった上にアケシ唯一の僚艦のユウバリがMIA認定となった為、ユウバリ代艦として修理機能が追加されていたので艦娘の治療が出来たのだ。
「え、あ、はい!」
「……ふん」
そのチトセに従属する様に命じられた丹陽は、次世代機関を試験搭載した事から機関中心に修理機能を持っていたアマツカゼに加えて、自分が選ばれた事に驚いて変な声を出していた。
だがその為にアマツカゼ(と連装砲君)に殴られていた。
「来ました!!
対空戦闘用意!」
「「「はい!!」」」
「あ、はい!」
で、チトセ達三人が離脱した直後にガミラス機も攻撃をしようと突進してきた為、ショウカクが命令下で直援用の予備の編隊を放ちながら陣形が整えられ、デルヅキとハツヅキが対空砲を撃ち始めたが、何処か余裕が感じられたガミラス側と違って、ショウカク達からは必死さが感じ取られ……実際、空対艦ミサイル1発だけとは言え、早くもショウカクが被弾して小破した。
「キリシマさん、ショウカクさんが!!」
「…大丈夫。
まだ終わらない……まだ終わらない!」
ショウカク被弾にナガラが思わず叫んでいたが、キリシマは救援に来させた事は兎も角として、それまでにガミラス艦隊を撃退出来ないでいた不甲斐ない自分に歯軋りをしていた。
「……ジンツウ、貴女がいてくれたら…」
「いない奴の事は言わない!
だけどショウカク達が敵の艦載機を抑えてくれてます。
此の間に軽母ヌ級を仕留めるんです!」
「はい!」
形はどうであれ、取り敢えずは一番厄介な軽母ヌ級の航空隊をショウカク達が対処(と言うより撒き餌になった?)してくれているので、軽母ヌ級への攻撃の好機が生まれてキリシマとナガラは突進を開始した。
「アヤナミさん、キリシマさん達が突撃を開始しました!」
「……御待たせなのです」
「タマ達は駆逐イ級2隻をやるニャ!」
「「はい!!」」
「はい、なのです!!」
更にアヤナミとサミダレが2人の行動に気付き、シラユキだけでなくハツユキとウラナミを安全圏に待避させて、彼女達をチトセに託したイナヅマも2人に合流し、更にタマも合流してキリシマと行動しているナガラに代わって旗艦となって駆逐イ級へ牽制した。
だが先述の通り、肝心の攻撃方法は雷撃しかなく、そしてそれはガミラス側に知られており、キリシマやタマ達の砲撃を無視して懐に入られての雷撃を警戒し、駆逐イ級2隻は高速で蛇行しながら、軽母ヌ級と駆逐ハ級2隻(ショウカク達のコスモファルコン隊も対処しながら)は月軌道から砲撃を続けていた。
そして悲しい事に、隙を突いてタマ達4人が放った空間魚雷が駆逐イ級2隻に避けられて反撃の砲撃で右往左往して、キリシマとナガラは懐に入れずに雷装を庇ったナガラが左目の上を切って派手に出血して、キリシマは艤装に被弾して数少ない稼働出来る武装の1つである第三主砲が吹き飛ばされていた。
「……情けない。
2個主力艦隊が警備隊レベルの小艦隊に遅れてを取るなんて…」
キリシマが歯軋りをしながら悔しくしていたが、此れは此の場にいる艦娘達全員が思う事であり、ガミラスの小規模艦隊に地球主力艦隊が苦戦している此の現状が地球とガミラスの戦況を具現化していた。
「……全く情けないわね。
見なさいヴェル、レディの戦いにはほど遠いわ」
そんなキリシマ達の戦いを、ロシアの艦娘であるレシーテリヌイ(通称:レフィ)とヴェールヌイ(通称:ヴェル)の駆逐艦姉妹が遥か遠くから見ていた。
「イヤ、彼女達日本艦隊はよくやってる方だよ。
私達ロシアなら瞬殺されているよ」
「むぅ~…」
ヴェーヌイの言う通り、元々艦娘が比較的少なかったが、ロシアも木星沖海戦で壊滅的打撃を受けるだけでなく、特攻作戦の噂で士気がドン底に落ちた為に出撃のボイコットが相次ぎ、そんな艦娘達への懲罰で戦える状態でなかった。
「でもこのままだど、壊滅するのも時間の問題ね」
「どうかな?
ガミラスの艦隊編成と攻撃姿勢に積極性が見られないね」
「……誘き出しての艦隊殲滅戦をやろうって言うの?」
「違うね。
日本が隠し持っている何かを待っているんだよ。
今更ガミラスが私達の事なんか気にも止めてないよ」
ロシアの貴重な活動可能な艦娘であるレシーテリヌイとヴェーヌイが遥々呉に来ていたのには、彼女達の母港ウラジオストクへの攻撃に備える事に加え、先日日本が坊ノ岬沖で見つけた何か……つまり大和を確認する為にであった。
確かに日本は坊ノ岬沖で大和を発見したと発表はしていたが、それ以外にも何であったか暈しており、それをロシアだけでなく中国やアメリカ、果ては欧州各国も探りを入れようとしていたが、中国は旅順消滅でそれ処(なにせ自国の丹陽が日本にいる事すら気付いていない)ではなく、欧米は距離的問題で出遅れていた。
そしてなにより、ガミラスがらしくない呉攻撃を行っている事から確信めいたモノを感じずにいられなかった。
「…そ、そうだよね」
尤もレシーテリヌイは一切合切分かっていなさそうであったが…
だが、キリシマ達が傷付いていっているのに、大和は出てくる気配が全く無かった…
感想・御意見、御待ちしています。
今回出た丹陽は本来は台湾(中華民国)の駆逐艦ですが、二百年以上経過していたら中台問題はいい加減解決して統一性しているだろうと思って中国所属としました。
非難が有ったら台湾に書き換えますので…
霞
「此の作品、そんなコアなファン抱えていると思えないけどね」
…さ、最後に今回の投稿で“設定 ガミラス”を公開します。
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還