それでは本編をどうぞ。
――― 防衛司令部 ―――
「ショウカク大破!!
航行は可能なれど戦闘不能!」
「ハツヅキを着けてショウカクは退避!
艦載機はズイカクに引き渡せ!」
「タマ以下水雷戦隊、エネルギー及び空間魚雷が欠乏寸前です!」
「キリシマ、ナガラ被弾!!
両人共に中破!」
現在防衛司令部では呉での艦隊決戦がリアルタイムで映されており、悲惨な戦況をオペレーター達が次々に悲鳴に近い形で報告していた。
「戦闘機の撃墜率はどうなっている!?」
「約1:5と不利です!」
「…キリシマに通達、砲撃目標をイ級に切り替えさせろ!
それとタマ達には雷撃は控える様に通達!」
「しかし通信状態が酷すぎます!」
「いいからやるんだ!!」
そんな戦況をなんとか打破しようと藤堂と沖田は指示を出し続けていた。
「他に友軍艦隊はいないのか!?
佐世保は何をやっている!?」
「近くに友軍艦隊はいません!」
「佐世保の山南提督からは艦娘全員大破状態の為に出撃不可能と言っています!」
「ならば、ロシアや中国はどうだ!?
フィリピンにはアメリカの艦娘が何人かいた筈だろう!?」
レシーテリヌイとヴェールヌイが確認された事もあって藤堂の参謀長を務めている芹沢虎鉄の様に形振り構わぬ指示を出している者達がいたが、そんな者達に藤堂と沖田が何処か冷たい視線を向けていた。
只、芹沢の場合、彼は藤堂や沖田とは反対の派閥に属していて、呉……と言うよりその呉で建造中の脱出船群の事を尚更気に掛けていた。
因みに、そんな芹沢が藤堂の参謀長であるかと言うと、藤堂のお目付け役として上層部から半ばごり押しに近い形で赴任されたのだった。
まぁ、芹沢自体は参謀長を務めれる優秀な人材である事には間違いないのだが…
「……呉に非常事態宣言を発令。
正規軍及び空間騎兵隊は住民の避難誘導を開始しろ」
だからこそ、藤堂が事実上の呉放棄を命じた時、芹沢は藤堂を睨みはしたが、何も言わずに歯軋りをしながら職務に戻った。
「ヌ級、ハ級2隻を前線に投入して呉への砲撃を開始しました!」
でも実際の現状はそうせざるもやむを得なしの一言であり、奇跡的に沖田の指令が伝わったキリシマとナガラ……更に指令が間違がって伝わったのか、ズイカク達もがタマ達の支援攻撃を開始して駆逐イ級の片割れを撃沈し、もう一方を中破まで追い込んでいた。
だが軽母ヌ級は護衛の駆逐ハ級を駆逐イ級の救援に向かわせ、フリーハンドとなった自分は呉への砲撃……しかもズイカク達のコスモファルコン隊を非驚異と判断してミサイル付きで再開していた。
「大和の準備状況はどうなっている?」
「……駄目です!!
呉とは通信が途絶しています!」
大和に拘る沖田に芹沢だけでなく、此の場にいる殆どの者達が怪訝な目線を向けていた。
だが沖田の期待に反して、肝心の大和が出てくる気配が全く無かった。
(……地上に出てこなければ、瀕死の狸と同じだぞ…)
それでも沖田は大和を信じていた。
――― 呉 ―――
「エネルギーが80%に落ちたぞ!
回路を確認しろ!」
「カタパルトが動かないぞ!
何とかしろ!」
「ヌ級、方位ニ百から三百に移動!」
「砲塁は何やってんだ!?」
キリシマ達が悪戦苦闘いている時、照明が落ちて非常灯が点灯して赤暗い中、兵士達が自分達の職務を必死に務めていた。
で、そんな兵士達を大和が無表情で見詰めていて、殆どは無視していたが、極稀にそんな大和を軽蔑する様な視線を向ける者達がいた。
(…どうやらキリシマ達は戦力分際の愚行に気づいて、駆逐艦へ集中して数を減らそうと目論んでいるみたいね。
でも敵艦隊は機動性に秀でた小型艦艇で編成……いえ、いくら砲撃能力を得たヌ級と言えど、決め手がいまいちなんだから……っ!)
無意識の内に色々戦略を考えていた大和だったが、直ぐ我に返って苦笑していた。
此の事で艦隊決戦主義に捕らわれていた旧日本海軍の洗脳がまだ解けていない事を自覚し、更に此の為に禍根を残した事をも思い出していた。
で、そんな大和だったが、急に影が射したのに気付いて顔を上げると、幼さが感じられる士官が目の前に立っていた。
「大和さん、戦って下さい!」
士官の訴えに大和は溜め息を吐き、子供を使ってまで自分を戦わせようとする沖田や司令部を邪推していた。
まぁ、手段がどうであれ、大和の出す答えに変わりはなく、只黙って顔を左右に振るだけであった。
「…私は戦えない」
「何故なんですか!?」
「あの艤装を見れば分かるでしょう」
大和の言う通り、彼女の艤装は錆で真っ茶っ茶で戦う処か、纏って動かす事さえ出来そうに見えなかった。(今更の話であったが…)
「直してみせます!
なんとしてでも直してみせます!」
どうやらアケシは彼等子供達に艤装の修理方法を教えていたらしく、少年兵達は素人ながら必死に大和の艤装を直そうとしていた。
だが、肝心の大和にやる気が無くてあれやこれやと否定し、それでも士官は大和に戦ってほしい事を訴え……否、最早懇願に近いのになっていた。
まぁ、子供の訴えを拒否し続けている大和も“自分自身も子供だな”と自覚して内心苦笑していた。
「…っ!? 艦隊が帰投するぞ!」
「帰投って、何所のだ!?」
で、そんな中でキリシマやショウカク達と別の艦隊の者達の帰投に現場の者達が驚き戸惑っていたが、その帰還者達であるカミカゼ、ハタカゼ、サツキ、ミカヅキ、そして……外套とマスクで顔や服装がよく分からないが、背丈等から駆逐艦だけは分かる者の計5人が降りてきた。
「何だ、お前達!?」
「後方支援艦隊です!
救援に来ました!」
「救援ったって、武装が無いじゃないか!」
「だから僕達に武装を貸してほしいのです!」
駆け寄ってきた隊長格にミカヅキとハタカゼが取り繕って武装提供を求めていたが、その隊長格から艦娘用の武装保管庫が詰所諸共埋もれた事を伝えられて絶句していた。
只、5人目だけはそんな事より大和の存在に気付き、驚いた後に大和を凝視して硬直し、その大和も自分でも分からないまま彼女を見詰めていた。
「…っ!! アレ使わせてもらうわよ!」
で、そんな中でカミカゼが大和の艤装に気付いて、そこから武装を取り外そうとしたが…
「此れは駄目です!!」
…大和に願い出ていた士官がカミカゼの前に立って遮った。
「何でよ?
此の状況下を分かって言ってんの?」
「此れは大和さんの艤装なんです!」
「…大和?」
ムッとしたカミカゼは艤装の主が大和だと言われ、その大和が壁に凭れているのを見つけた。
それで艤装が妙に古かった事も察した。
「悪いけど、使わせてもらうわよ」
「駄目です!
大和さんにも出撃命令が出てるんです!」
武装が欲しがっているカミカゼに士官が食い下がった為、大和をもう一度見た後に士官を睨んだ。
「…貴方、アイツが二百年前に何をしたか知ってるの?」
カミカゼに士官は左右に首を振った。
「アイツは沢山の艦娘達の死を無駄にしたのよ!!」
カミカゼの言っているのはレイテ沖海戦の事であり、大和の汚点と言っていいモノであった。
「ズイカクの先代達が命懸けで深海棲艦の大艦隊を引き付け、更にヤマシロの先代達が壊滅したのに、アイツは目標直前で引き返したのよ!」
「ですけど、あのまま大和さん達が進撃していたら深海棲艦の大艦隊に包囲殲滅されていたと聞いています!」
“羅針盤に嫌われる”との呪いの言葉がある通りに、艦娘達が本人達の意思に反して反転してしまう悪しき行為は度々有り、原因こそ未だに解明出来てはいなかったが、解決方法として航行の改善やレーダー等の電子探知機を発達させていって、深海棲艦戦後期から序々に効果を発揮していき、2199年迄には殆ど起きなくなっていた。
だが意図的であったレイテ沖での大和の反転行為は、当時の艦隊司令官・栗田貫一中将に因んで“栗田ターン”の悪行名で後世からは非難多数だが、“日数が経過し過ぎていて主目標の輸送船団を殲滅していても意味が無い”“西村艦隊を撃ち破った戦艦部隊が立ち塞がって、北方の空母機動艦隊と挟撃して殲滅される可能性が大”等の擁護が深海棲艦戦当時から存続していた。
まぁ、それ以前に反転を言い出したのは部下の宇垣纏中将で栗田は当初それを拒否していたし、なにより大和が生き残らせた艦娘達によって北号作戦等の決死輸送作戦が度々行われ、結果的にアメリカの反抗作戦までの時間稼ぎが出来た事が評価され始め、相変わらず否定派が多数を占めているものの、年を重ねる度に擁護派の数が増していた。
勿論、カミカゼもその事は分かっており、彼女の狙いは敢えて憎まれ役を演じる自分に大和が怒って“なにくそ”と思わせて行動をさせようとしていた事であった。
(…コイツ、未だに海底に沈んでいるんじゃないんでしょうね!?)
だが肝心の大和は怒る処か、逆に落ち込んでしまっていて、そんな大和にカミカゼは無反応だと勘違いして益々怒っていた。
「だけどね、コイツは更に沖縄特攻をやって燃料と駆逐艦娘を無駄にしたのよ!!」
正直な処、カミカゼは内心やってしまったと自覚し、此れで大和は絶対動かないと思ったが、その直後にカミカゼの頭に岩が直撃した。
「アンタの先代はその特攻に同行せずシンガポールで悠々していたのに、ふざけた事言ってんじゃないわよ!」
「…っ!?」
伸びたカミカゼをハタカゼが介抱していたが、投石した者……失神しているオオヨドを左肩で担いでいるカスミの声に大和が驚きながら反応した。
否、カスミだけでなく、彼女の後ろにイスズを
当然ながら座り込んだカスミ達に気付いた衛生兵達が殺到していたが、そのカスミ達4人……坊ノ岬沖海戦で戦没した駆逐艦娘達と瓜二つの次代達(カスミ達だけでなく、日本の艦娘達自体が二百年前の旧海軍と艦種がほぼ同じであった)から距離を取ろうとしていた。
「…大和、何で戦わないだ?」
「戦える訳ないでしょ!!」
イスズを衛生兵に託したイソカゼが先程の士官と同じ質問をしたが、見るからに怯えている大和が先程と口調が違った。
「…私は大切な仲間達を犠牲にしてしまったんです。
貴女達だって先代達の後悔や無念を知っているでしょう!?」
“何故自分だけが二百年後の危機的状況下の未来で甦ったのか”と内心悩んでいる大和にして見たら、イソカゼ達四人は坊ノ岬沖海戦の汚点を具現化した様なモノであったが、当人達は揃って主砲を胸前で立てた。
「…先代の後悔は知っています。
だがそれは大和、貴女を目的地までに守れなかった事です!」
ハマカゼの返事に大和が顔を上げ、カスミ達三人も同感と揃って頷いた。
「私の先代なんか、海戦直前で脱落してしまったしな」
「惨めね」
更にアサシモの言葉へのカスミの毒づきでハマカゼとイソカゼが苦笑し、再び立ち上がろうとした。
「みんな、そんな体で出撃なんか無理だ」
「五月蝿い!!
大和を否定する様な奴等に大和を託せるか!」
だが傷付いてる彼女達…特にカスミは木星沖海戦での傷が開いて血がボタボタ落ちていて、サツキとミカヅキに止められていた。
「お願いします、大和さん!!
貴女なら此の危機を解決出来る筈です!」
「……貴方、何故私を信じられるの?」
「僕の遠い遠いお祖父さんが二百年前、沖縄へ向かう大和さんを見たんです。
“戦艦大和は誇りと不屈を心に持って沖縄へ向かった、男に生まれたなら大和の様に不屈の男になれ、それが負けると分かった戦いでもあっても”ってお祖父さんや父さんに教えられたんです」
「じゃあ、貴方はあの時の…」
坊ノ岬沖海戦の前日の早朝、先代朝霜が深海棲艦と誤認した漁師の老婆と子供をよく覚えていた大和は、その子供の子孫が目の前の士官だと分かって目を見開いた。
そして“実際は違う”と否定出来ないでいた。
「頼むわよ大和、必ず坊ノ岬沖の次代の私達が守るから…」
悩み蠢いている大和にカスミ達4人も懇願した。
「……否、坊ノ岬沖に行った駆逐艦の次代はもう1人いる…」
頭のたん瘤を濡れタオルで押さえているカミカゼの言葉にカスミ達がキョトンとしたが、そのカミカゼが顎で五人目の駆逐艦を示し……当人は少し硬直していたが…
「…で、アンタもどうする?」
「……私も、今度こそ貴女を、守ってみせます」
「…っ!? 初霜(ハツシモ)!!」
…マスクと外套のフードを外して素顔を見せた駆逐艦が、坊ノ岬沖海戦で最後まで自分を守り帰らせようとした駆逐艦初霜と瓜二つの顔であり、初霜の次代であった事に大和だけでなく、カスミ達も驚いていた。
只、此のハツシモは純粋さが感じられた先代と違って影を感じさせ(多分ガミラスとの絶望的日々でハツシモでさえそうなった)、ハツシモを見たアサシモがツバの悪そうな顔をした。
更に言うと雪風、凉月、冬月の3人の次代達もいたら完璧なのだが、残念ながらユキカゼは木星沖海戦で戦没、スズツキとフユツキの姉妹はMIAとなっていた。
「…私からもお願いします。
大和さん、戦って下さい」
最後にハツシモに頼まれた大和は、無言で立ち上がって自分の艤装に近寄って撫でていた。
大和が自分の心の中で迷いや罪悪感を払拭しようとしているのを全員察して、誰もが大和を静かに見詰めていた。
「射出室動力回路、準備良し!」
「よし、スイッチオン!!」
「……ヌ級は月軌道を離脱して降下してきます!」
動力が回復して戦況報告が再び飛び交いだした中、大和は目を強く瞑りながら主砲の砲身の1つを握った。
(…お願い……助けて…)
そんな大和に不意に、寝そべった少女の光景がぼやけながらも一瞬映った後…
「…貴方、名前、何て言うの?」
「……古代です。
古代守二等宙尉です!」
「…今回……だけですよ」
「…?」
「……総員、戦闘配備!!!」
…士官こと古代守が大和の瞳の中に僅かな光が点ったような気がした後、カスミ達やカミカゼ達、駆逐艦娘1人1人に目線を合わせた大和が深く息を吸って大号令を発した。
感想・御意見お待ちしています。
長門
「(前書きを見ている)お前は何やってんだ!!?」
いや、“最後の希望”が予定していた文字数の三倍以上になっちゃったんです……はい…
一つ言い訳するなら、宇宙戦艦ヤマトの二次小説って、軒並み尋常じゃない文字数なんですけど、此れ等を書いてたらギョッとする量になったんです。
陸奥
「じゃあ、此の作品、どんだけ文字数が必要になるのよ?
100話に達しても大マゼラン銀河にすら辿り着いていない最悪の事態が起きないわよね?」
いや、それが、本当にその危険性が出てきそうなんでよね…
陸奥
「(公開予定の艦娘設定を見ている)あ~…此れ、本当に100話越えしそうね…」
長門
「下手に長引きさせそうな奴が三人もいるじゃないか!?」
本作でのヤマトの最後はどうしてほしい?
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実写版通りに、特攻
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なんとしてでも、地球に帰還