貧乳派団長とリンゴちゃん   作:やーなん

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先日の虹チケで、念願の水着ペポを手に入れました。
彼女が実装されてから三週間は悶々とする日々でした。
はあぁ、ペポマジ天使……。運営さんは私にとっての神です。5千円をいけにえにするだけでただでこんな天使をくれるんですから!!

ところで、私の好みではないですがセダムちゃんがすごい強烈なキャラしてるようで、ぜひともIF編で絡ませてみたいものです。
スターチスちゃんは出たんですけどね、彼女リンゴ団長的に95点の逸材です。


短編連作 追憶編その11

『続続々・理想の美少女』

 

 

「団長さんはこの間、サクラさんに色々と昔の事を突き付けられた時、毎日悪夢に魘される日々が続いたと言いましたよね?

 ……覚えていますか?」

「悪い、他にいろいろあったから覚えてない」

 ペポが先導する道すがらの質問に、団長は首を横に振った。

 

「私は、覚えているわ。確かにそう言ったわね」

「……私も覚えています」

 対して、サクラとリンゴはぽつりとその質問に肯定を示した。

 

「それはもう、何年も続いているそうですね。

 一人で眠る夜は、必ず」

「ペポ、なんでそれをお前が知っている。

 これはパープルチューリップちゃんにしか打ち明けていないことのはず」

「その原因が、彼女たちにあるからです」

 僅かな驚きと共にそう言った団長に、ペポは断言した。

 

「彼女たちは団長さんが女性と一緒に眠る日以外はずっと、毎日毎日交代で枕元に立って団長さんを守ろうとしていたそうなんです。

 だけど、どういうわけか彼女たちが側に居ると、団長さんは必ず悪夢を見るってことに気付いたそうなんです。

 でも、幽霊さん達はどういうわけか団長さんからそこまで遠くに離れることができないようでした」

「あいつらが……」

 死してなお、魂だけとなってまで付き従おうとする花騎士たちの想いに、団長だけでなく彼の部下も胸の奥が締め付けられる思いだった。

 

「そして、団長さんが苦しむ姿は見たくないからもう止めようという人たちと、団長に取り憑いた彼女たちは離れられないのなら、それでも良い、忘れられたくない、と現状維持を望む人たちに別れたそうです。

 私は一体何が彼女たちの魂を縛り付けているのか、心当たりがあるか忘れられたくないという幽霊さんたちを説得する最中、聞いてみました。

 そしたら、彼女たちも罪悪感を持っていたみたいで、魔法に詳しいらしい一人がこんなことを言ったんです。

 これは多分、呪術じゃないかって」

「呪術? それは、もしかして!?」

 呪術と聞いて、心当たりが有ったサクラは声を挙げた。

 他の全員も、察しが付いたのか驚いた表情になった。

 

「はい、団長さんが使っていた、あの催眠術の本です。

 それが原因と分かるまで、私は呪術に詳しい人が居ないか探し回ることにしました」

 

 

 

「うーん、呪術に関して詳しいことは載って無かったなぁ」

 私はまず、図書館で呪術について調べてみました。

 ですが詳しいことはどんな本にも載ってはいませんでした。

 

 呪術と言えば、古い魔法です。

 古い魔法に詳しい人と言えば、やっぱりあの人しか居ません。

 

「呪術について詳しく知りたい?

 それはまた恐ろしい質問だね」

 そう、マロニエさんです。

 

「呪術は古来より、歴史を動かしてきた魔法……と言うより魔術だ。

 不自然な権力者の死の影には、常に呪殺の疑いが付きまとう。

 魔法の歴史や人類史を語る上で、呪術の話し抜きではそれは出来ないだろうね。

 特にここリリィウッドでは殊更呪術は恐れられてきた。貴族たちには呪術の対策は最早当たり前のようにしているものらしいよ。

 実際の手段に関しては、私なんかより魔女の人たちに聞いた方が早いと思うが」

「あ、いえ、私は掛けるより解く方を知りたいんです」

「それはより厄介だ、基本的に呪いと言うのは防ぐ、返す、移す、解くという順番で難しくなっていくんだ。

 完成された呪術を覆すのはそれだけ難しいのさ」

「そう、なんですか」

「ああそうだ。どうせなら私より、専門家のアドバイスを受けた方がいい」

「専門家ですか?」

 呪術の専門家なんて怪しげな話ですが、私はそれが誰かを聞いて納得してしまいました。

 

「キンギョソウ団長さ。

 彼の家、呪術対策の助言で他の貴族から収入を得てるらしいよ」

 

 

 

「大海の器を持つ者よ。

 市井の者どもは呪わしき力の本質を知らぬが故にその影をより大きく見てしまうものだ」

「真面目な相談してるんだから真面目に答えてあげなよ」

 私はマロニエさんに紹介され、キンギョソウ団長さんの執務室に行きました。

 

「ああ、うむ。

 ところで、呪術と聞いてどのような物を想像する?」

 彼は気取った口調をやめて、そんな風に私に聞いてきました。

 

「ええと、呪われた道具を触ったり、遠くから特定の人を呪い殺したり、ですか?」

「そうだな。呪われた金貨や宝箱に触れて石になる、呪われた指輪やネックレスを身に着け苦しみ悶え死ぬ。

 前者は物語などで有り触れているが、そんなものは素人だ。

 呪術の、呪いの本質は後者にある。なぜ呪術なんて物が有るのか?

 それは可能な限り痕跡を残さず、術者が犯人と知られずに相手を殺害せしめたいが為だ」

 彼は呪術とはそのような物だと説明したんです。

 

「たまに知られずに遠くの誰かを呪い殺せますか、と尋ねられることが有る。

 我は決まってこう返す。可能であるが、現実的ではないとな。

 例えば毎日決まった時間に決まった道を歩く人間に、石に躓いて転んで頭を打って死ぬ、という呪いを掛ける。

 術者も同じ時間に呪いが成就するように儀式を行う。これで成功確率は1%未満だ」

「随分と、低確率なんですね」

「呪いとは祈りのようなものだからな。

 だからこそ、術者はそれを成功するまで繰り返す。その悪意が、執念が、憎悪が呪術の負のイメージそのものなのだ。

 相手の運命を捻じ曲げ直接的に遠距離から害するのならば、それは呪術ではなくただの攻撃魔法だろう」

 確かにそれは現実的ではないようです。

 人を呪い殺すのは、それだけ難しいそうと。

 

「だが、ここで問題が有る。

 その程度なら、教会に行って護符を貰う程度で防げる。

 だがこの呪術の成功確率を飛躍的に高める方法が有るのだ」

「えッ、本当なんですか」

「ああ。相手を呪い殺す為に、触媒を用いるのだ。

 と言うより、それらを使用せず呪術を行うことなどまず無いのだが。

 その触媒に最適なのが、呪い殺す本人の髪の毛や爪、血液などの体液、普段から着用している衣服などと言った代物だ。

 これらすべてが揃っているなら、我は世界花の加護でも得ていない限り誰でも呪い殺せる自信がある」

「そんなの自信満々で言うことじゃないでしょ!!」

 ドヤ顏でそう言った団長さんはキンギョソウさんにどつかれました。

 

「我が呪術で人を殺すか!! それだけ触媒を揃えて、呪殺を行えば相手はかなり不審な死に方になるし、魔法的痕跡も残りやすい。

 確実な呪殺はそれだけひっそりと殺害したいと言う呪術の本質とは遠ざかると言うわけだ。

 呪殺されたと分かった時点で、呪殺ができる者や触媒を集められそうな身近な者は拘束されるしな。

 我など真っ先だ、我が一族は呪術に対抗すべ呪殺を会得しているとここの貴族なら誰もが知ってる」

 まあ呪殺についての助言を求められることの方が多いが、と団長さんはぼやいていましたが。

 そんなわけで呪術による殺害は現実的ではないそうです。

 

「あの、私は呪いを解きたいのであって、誰かを呪い殺したいわけではないんですが」

「焦るな。これは基礎知識だ」

 聞きたい話とは別のことを話す団長さんは、逸る私を制してそう言いました。

 

「我が祖先には、死霊魔術を得意とした者が居る。

 死者を蘇らせ、霊魂を呼び寄せる研究をしたそうだ」

「でもそれって外法のはずじゃ……」

「後世の人間がそれを外法とした。ただそれだけのことだ」

 そう語る団長さんは、どこか愁いを帯びていました。

 

「そして彼は死者の魂を呼び寄せ、使役する為に死者が生前に使用していた物品を触媒に用いたらしい。

 こうなると、呪術と言うより降霊術の類であるが」

「つまり、幽霊さんたちを現世から縛り付ける憑代があるってことですね」

 そこまでは私も予想はしていました。

 ですが、それが具体的にどう言ったモノかキンギョソウ団長さんのおかげで具体的になったんです。

 

「うむ、先も言ったが、死者の遺髪や爪、血液などの体液が付着していた物、生前使用していた衣服などがあるならそれが一番怪しい。

 あの情の深い男なら、そう言ったモノを所持していてもおかしくはあるまい。

 それを発見したのなら、我に伝えよ。死者の霊魂を解放する儀式のやり方を教えよう。

 あと、奴が使用していたという催眠術の本とやらの現物も持ってきてほしい」

「分かりました」

 

 

 

 ペポの回想を聞きながら、一同はリリィウッド郊外にある慰霊碑の前にやって来ていた。

 慰霊碑の前には蝋燭が円を描くように配置されており、ペポはそのひとつひとつに火を点けていく。

 

「あの、その、ペポちゃん。

 もしかして、その触媒って……」

 サクラがとても言いにくそうに、ペポに尋ねる。

 団長は額から脂汗をだらだらと垂らしながら、現実から目を背けるように明後日の方を向いていた。

 

「はい、これです」

 微妙な表情のペポは全員が見覚えのある物品を、カバンから取り出した。

 

 それは、一見して分厚いアルバムのようだった。

 しかしそれが何なのか彼の部下たちは悟り、全員が引き攣ったような表情になった。

 

 そう、それが何なのか、この場の全員が知っていた。

 話だけでしか知らない者も多かったが、直感的にそれだと悟った。

 

「あ、それ、だんちょのパンツコレクションじゃん!!」

 言いにくいことを、さっぱりとランタナは言ってのけた。

 

「体液の付着した、普段から身に着けていただろう衣服……」

 全員が、一斉に団長の方を見た。

 誰もが表現しづらい表情をしていた。あの下らない話は伏線だったのかよ、と。

 

「他人に預けているって、ペポさんにだったんですね……」

「分かりますか、皆さん。団長さんにこれを預けてほしいって頼んだ私の勇気を」

 死んだ魚の目でそう語るペポに、リシアンサスは心底同情していた。

 

「いやぁ、それを貸してほしいって聞いた時、ペポにそう言う趣味があったのかってビックリしたなぁ。

 正直言って、どんなふうに使うのか想像して興奮した。ゴメン悪かった」

「そんなわけないじゃないですか!!

 団長さんのバカ!! バカッ、バカ!!」

 誰かを罵倒するなんてまずしないだろうペポの貧困な語録に、団長は申し訳なさとか苦笑とかが入り混じった曖昧な笑みを浮かべた。

 

「とにかく、私がこれを手に入れて、先日ようやく全員の説得に成功したんです!!

 幽霊さん達を解放するのに最適な日が今日のこの時間で、皆さん最後に団長さんと一緒に過ごしたいっていうから団長さんと幽霊さん達の思い出話とかしてたのに、ランタナちゃんは邪魔をするし!!」

「正直済まんかった……」

 そこまで詳しく話してなかったのか、憤慨するペポにランタナもしょんぼりだった。

 

「なあ、つまり、ペポよ。あいつらはここに居るのか?」

「そう言ってるじゃないですか!!」

「そうなのか……」

 知らなかったとはいえ惨いことをしたと、団長も酷く落ち込んだ様子だった。

 

「まあ、なんだ、お前ら。

 亡霊になってまで俺に付き従うのはまだ早すぎる。

 俺もいずれそっちに行く。そして他の連中と共に再び害虫どもと戦うぞ。

 その時まで、各自鍛錬を怠るな。以上だ」

 だが最後の最後だけは、騎士団長として取り繕うことはできた。

 

 ペポは蝋燭の円の中心に設置してある焚き火に火を点け、その狂気の結晶を開いた。

 

「どうせだから団長さんも手伝ってください。

 名前を呼びながら、ひとつずつ火に投げ入れてください」

「ああ」

 ばちばち、と団長は手渡されたそれを開くと、中から一枚ずつパンツを取り出し、その持ち主だったと思われる女の子の名前を呼び名がら炎の中に放り投げる。

 

 一枚一枚燃えながら、不思議な青白い火花となって空へと消えて行く。

 団長はその光景を見ていると、不思議と肩が軽くなるような錯覚を覚えていた。

 全身に繋がれた鎖が解き放たれたような、そんな感覚だった。

 

 ありがとう、と誰も口を開いていないのに、そんな声が聞こえた気がした。

 

「これでようやく、私も肩の荷が下りました」

 そうして団長が最後の下着を焼き捨てると、全てをやり遂げたペポは大きく息を吐いた。

 

「世話を掛けたな、ペポ」

「本当ですよ!! でも、無事に終わって本当に良かったです」

 そしてようやく、ペポは笑顔を見せた。

 団長が何としてでも手に入れたいと思う、無邪気な笑顔だった。

 

 

「なあ、ペポ」

 これにて解散となり、散り散りに町に戻っていく面々の中で、ペポに話しかける人物がいた。

 

「彼女たちは、私について何か言ってなかったか?」

 それは、クロユリだった。

 彼女にしては張りの無い弱弱しい問いだった。

 

「いいえ、特には」

「そう、か」

「団長さんが約束を守ってくれているから、何も言うことは無いそうです」

「…………」

 クロユリはただ帽子を深く被り、早足で去って行った。

 

 

 

 

「それで、なぜペポを語る上でランタナの奴の話になるのかと言うとだな」

 団長はちょっと酒が入っているのか、だらしない笑みを浮かべてマルメロとリンゴにこう語った。

 

「むふふふふふ~~。

 俺はある時、ランタナの奴がどこからともなくペポの背後に現れて、こう後ろから齧ったり弄繰り回したりする光景を見たんだよ。

 あいつは時々ああやってペポの体をおもちゃにして嵐のように去っていくんだが。

 その後のペポのすべてを諦めたような不憫な表情!!

 あれ……初めて見た時、ふふっ、下品だがね、勃起しちまってね」

 下品というより下劣な笑みだった。

 普通の女性が見たらドン引きするだろうゲス顔だった。

 

「わかりますぅ、やっぱりペポちゃんはランタナちゃんにもてあそばれた後の表情が一番かわいいですよね~」

 しかし、マルメロは普通の女性じゃなかった。

 

「だろう? わかってるなぁマルメロちゃん、そら、もっと飲め飲め」

「かわいい女の子を見て飲むお酒は最高ですけど、女の子の一番かわいい表情を肴にして飲むお酒も最高ですよね~」

「まったくだよな!!」

 むっはっは、むふぅ~、と居酒屋で酒を飲みながら笑いあう似た者同士たち。

 誰がどう見てもおっさん同士の会話にしか聞こえなかった。

 

「ううーん、むにゃむにゃ……」

 二人がそんなバカ話を続けていると、いつの間にかリンゴはテーブルに突っ伏して幸せそうに眠っていた。

 

「そろそろお開きか?」

「そうですね」

 二人は惜しみつつも、今宵のささやかな宴を終わりにするのだった。

 

 

 

 

 

『裏切りのスクワイア!? 洗脳魔術の恐怖!!』

 

 

「ふーむ、興味深いな」

 キンギョソウ団長はいつぞやの一件でペポから預かったリンゴ団長の催眠術の本を読みながら唸っていた。

 この本の内容を見て彼女に的確な対処法を伝えたのもすでに数ヶ月前。

 すっかり返す機会を失ったそれが本棚に埋もれているのを発見し、とりあえずあの時できなかった熟読をしてから彼はペポに返却するつもりだった。

 

「それ、この間ペポさんから預かった奴でしょ?

 たしか、結構ヤバイ内容だったって話だったけど」

 キンギョソウはその胡散臭いハウツー本みたいなタイトルの本を見やりそう言った。

 

「ああ、うむ。おそらく著者は腕の立つ若い魔女だったのだろう。

 お金のためにこの本を書いたのか、本を書くのに慣れていない文章構成だ。

 この本に記載されている催眠術の多くは魔女が行う魔法のダウングレード版とでも言うべきものだが、後半は降霊術に言及し始めている。ネタ切れして方向性を見失っているな」

「降霊術ねぇー、そういうの素人が手を出すと危ないってよく聞くけどどうなの?

 たまに学生が火遊び感覚でやったりするっていうけど」

 怪しげな儀式に興味のあるキンギョソウは、珍しく好奇心が前面に出ていた。

 

「危険なんてものではない。自殺行為だ」

「えッ、本当!?」

 険しい表情で断言する団長に、キンギョソウも驚いた表情になった。

 

「素人はまず、悪霊から身を守る方法やきちんとした手順で送還する方法を間違えたり、そもそもしないことが多い。

 呼び出すだけ呼び出して終わりだ。好意的な精霊ならばいいが、動物霊の喚起ならばほぼ間違いなく術者は害される」

「やっぱり危ないんだね……」

「もっとも、まず成功しないことが大半だがな。

 術式や儀式そのものが不完全であったり、喚起できる霊がいなかったり。

 だがまれに、日時や星の廻り、地脈などの影響により不完全な成功が齎されることもある」

 一番危険なパターンだな、と団長は言った。

 

「そうなれば、退魔士に依頼するほかなくなる。

 我が眷属よ、魔女の秘術に憧れる気持ちはわかるが、決して真似をしてはならぬぞ」

「わかってるってば!!」

 珍しくキンギョソウの方が拗ねたようにそう応じた。

 

「しかし、この内容を見る限り、大量の霊魂を定着させるには奴もおおよそ筆者の想定外の使い方をしたようだな。

 魔法の専門知識があれば本来の効果が発揮できるだろうこの本は危険か。あとで王城に使いを出さねば」

 そこでふと、団長は本のタイトルを見下ろした。

 催眠術、というを文字を見て彼は閃いたのである。

 

 

 

 

「待っていたぞ、ナイトシェード!!」

 三度、いつもの怪盗コンビを郊外に呼び出した団長は、彼女たちと対峙していた。

 

「今日であったが百年目、正直我とキャラ被るので今日という今日こそ現世から退散させてやろう、ヴァンパイア!!」

「えッ」

「えッ、ですぱ」

「なにその反応!?」

 前と横の反応に、お気に召さない様子のワルナスビ。

 

「そうか……ではそちらに配慮して……現世から消えるのはナイトシェード、貴様の方デース!!」

「安易な語尾はやめるですぱ!!」

「えッ」

「えッ……」

「なんですぱ、その反応!!」

 これ以上は触れてはいけないことなので、二人はあえて深く突っ込まなかった。

 

「くッ、作者の語学力の無さ故に決してこの作品に登場できないハナミズキの魂を呼び寄せたのは間違いだったか」

「彼女を勝手に殺すな!!」

「しかし!! 今回も何の策も無く一人で貴様の前に現れたと思うなよ!!」

 そう言って高笑いする団長。

 ワルナスビは周囲を警戒するが、しかし今回は最初から開けた平地で魔方陣らしき文様は見当たらない。

 

 彼女はハッタリだと思った。

 団長とワルナスビはお互いに相手のことを残念だと思っているが、怪盗は淑女であり吸血鬼も紳士なので口に出すことは無いのである。

 

「さあ吸血鬼の恐ろしさを知るがいい、魔眼開放!!」

 ぴかー、と団長の両目が何らかの魔法で光った。

 真夜中に突然であって両目が光ったらそれはホラーかもしれないが、少なくとも対面しているだけのワルナスビには手品でしかなかった。

 

「ふっはっはっは!! 世界花の加護を受けし我にそんなぴかぴかするだけの魔法が効くかー!!」

 腰に手を当てて大笑いするワルナスビだったが、それは事実だった。

 魔眼というのは基本的に封印するほど強力なものは普段から専用の道具を用いなければならない。

 団長はそういうのはしていないので、たとえ本当に魔眼持ちだったとしても、自力で抑えられるレベルの効力なら花騎士相手に通用するはず無いのだ。

 

「それはどうかな?

 さあ、ラークスパーよ、我が軍門に下るがいい!!」

「はっはっは、そんなそんなぴかぴかにラークちゃんが屈するわけ」

「わかりましたですぱ、マインヘール」

「えええッ!?」

 ワルナスビはふらふらと団長の下へと歩いていくラークスパーの行動に目を向いて驚いた。

 

 彼女は団長の前に立つと、いそいそとマントを取り出しさっと身に纏い、ワルナスビに向き直った。

 

「ど、どうしたの、ラークちゃん!?」

「私はマインヘールの真の魅力に気づいたですぱ。

 かつてはマイスターのスクワイアでしたすぱが、今ではマインヘールのレラティブですぱ」

「まい? れら?」

「ご主人様の眷属ということですぱ!!」

「ああなるほど、って、本当にラークちゃんってば団長さんに魅了されちゃったの!?」

 おそろいのマントを着て立ちふさがる二人に、ワルナスビも戦慄する。

 

 彼女とて怪盗に必要な知識として魔法に関しての知識がある。

 生半可な精神干渉系の魔法は、まず花騎士には通用しない。

 それこそ、自ら受け入れない限りは。

 

「うん?」

 だがそこで、ワルナスビの怪盗としての審美眼が発揮された。

 

「ラークちゃん、そのマントいくらしたの?」

「ぎくッ」

 ラークスパーは、ワルナスビの指摘にあからさまに目をそらした。

 

「それ、団長さんの家の家紋入っているよね。それ一族以外が勝手に付けると法律で罰せられる奴だよね?

 私たち一緒に団長さんの家の家紋をお屋敷で何度も見てるし、間違いない。

 それにそのマントの生地、染料の匂いと裏地が真っ赤だから相当いい奴だよね。

 ……団長さんに買ってもらったの?」

 怪盗には優れた見識や洞察力が求められる。

 そして有名な某怪盗三世がそうであるように、怪盗は時として名探偵としての役割が割り振られたりするのだ。

 

「いくらしたの?」

「は、80万ゴールドですぱ」

「やっぱり、買収されたの!?」

「こ、今回だけだからって言われたんでぱ~」

 罪悪感からついに正直に白状してしまうラークスパーだった。

 げに恐ろしきは、吸血鬼の魅了の(財)力である。

 花騎士の給料でも躊躇うような代物で彼女の心を奪ったのである。

 

「うぉっほん!! 我が新しき眷族よ、かつての己の主人に別れを告げるがいい!!」

「はッ、了解ですぱ、マインヘール!!」

 団長から催促をされ、罪悪感を振り払いラークスパーはじわじわとかつての主人に近寄っていく。

 

「や、やめて、ラークちゃん」

 さすがの彼女も一時物に釣られたとはいえ親友に手を上げることができずに、背後から拘束されてしまった。

 

「ふっふっふ、覚悟するですぱワルナスビ様。

 くッ、出会った頃は同じくらいだったのにワルナスビ様だけこんなに……ッ!!」

「やめてよー」

 更に後ろから揉みしだかれて涙目になるワルナスビ。

 いろいろな負の感情が渦巻いている気がするが、気のせいだろう。

 

「そうだ、この光景が見たかったのだ!!」

 そして仲のいい二人を仲違いさせて絡み合ってる光景を見て感動している外道が感極まったようにそう呟いた。

 

「ところで、マインヘールは何もしないんですぱ?」

「ああ、我は気高い女性が屈服して悔しそうにしている表情が見たいだけであって、別に痛めつけたり陵辱したい訳ではないのだ」

「あ……そうなんですぱ……」

 どうでもいいところで、というか一番肝心なところで紳士な団長だった。

 

「ふう、我的にはだいぶ満足である。帰ってこのリビドーを文章にまとめねば。

 しかし我のお小遣い3ヶ月分の出費は痛かった……」

 ここまでは、団長の予定通りだった。ここまでは。

 

「うわーん、ラークちゃんに80万ゴールドのマントをプレゼントしたってキンギョソウさんに言いつけてやる!!」

「おい、待て。ちょっと待て、ストップ、ストップだ。

 それはやめろ、やめてくれ、やめないか」

 半泣きだったワルナスビの叫びに、完全に勝利目前だった団長の腰が一気に低くなった。

 

「落ち着こう、それは駄目だ。そんなことはしてはいけない。

 我があ奴にそんな浪費をしたと知られたらどれだけ怒られるかわからないではないか!!」

 焦ってそんな情けないことを口走る団長。

 

「もしかして、団長、キンギョソウさんにプレゼントとかしたことないの」

「う、うむ」

「さすがにそれはちょっとどうかと思うですぱ」

 そんな団長に、二人もドン引きだった。

 団長に対するキンギョソウの献身はそれはもう、彼の部隊では来て日が浅い二人にもよく聞こえていたのである。

 

「これ、返すですぱ。キンギョソウさんに何か買ってあげたほうがいいですぱ」

「いやそれは駄目だ。男が一度プレゼントしたものを返してもらうなど……あ、いや、一時的に預かるので、落ち着いたら改めて渡そう」

 そんな風に納得して、団長はラークスパーからマントを返してもらうのだった。

 

 そんなこんなで、本日の対決はうやむやになった。

 ちなみに、ワルナスビとラークスパーの二人はこんなことがあってもすぐに仲直りした。あんなアホの策略で絶たれるほど二人の絆は柔ではなかったのである。

 

 そして後日。

 

「団長さん、この82万4000ゴールドの領収証、なに?」

「なッ、なぜお前が我が家の帳簿を持っている!?」

 団長の頭上にキンギョソウの雷が落ちたとかなんとか。

 

 

 

 次回予告!!

 

 恐るべき邪悪な吸血鬼の策略を絆の力によって退けたナイトシェード!!

 次回の対決は未定だが、奴は次なる謀略を張り巡らせている!!

 負けるな、ナイトシェード!! 決してネタ切れとかじゃないぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




システムボイス:リンゴ団長のペポ攻略フラグロックが解除されました。
今回の話は水着ペポ手に入れてから書くと決めてたので、書かせてもらいました。
ようやくR版更新できるぜ!! どうもペポ攻略しないでほかのキャラ書く気になれなくて……。

ところで、ペポのお供であるオバケのクレピですが、性別はどちらなのでしょうね?
某所では男性と考察している方がいましたが、私としては女性であるという印象を受けたのでそのように当作品ではさせていただきます。

それではまた、次回、
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